【映画評】夏休みジブリ映画3本立て ― もののけ姫

たぶんこれが、私が初めていいなと思った宮崎作品。

理由は山ほどあるが、第一にヒーロー、ヒロインに感情移入できるかってことだと思う。
前述のように私はどうしても宮崎ヒロインに共感できないし、むしろ見ていてイライラするタイプが多いのだが、『もののけ姫』のヒロイン、サンは別格だ。なにしろ、出てくるなり口のまわりを血だらけにして、ペッと血を吐き出したりするんだから、これだけでも惚れた!(笑)

参考

夏休みジブリ映画3本立て ― 私が宮崎駿を嫌いなわけ

夏休みジブリ映画3本立て ― 『となりのトトロ』

夏休みジブリ映画3本立て ― 『借りぐらしのアリエッティ』

しかも山犬(狼)に育てられた狼少女! インドの狼少女アマラとカマラ、なんて言ってももう覚えている人いないだろうけど(あれは結局ガセだったらしいね)、それとは何の関係もなく、前述のように『狼少年ケン』や『シートン動物記』の「狼王ロボ」に夢中だった幼女時代、いつも四つん這いで「狼ごっこ」をして遊んでいたような私には他人とは思えない!

そして私的にポイント高いのは、動物たちがすばらしい。(声が美輪明宏でさえなければ。美輪さんは役者としては好きなのだが、モロを三輪が当てるとどうしてもオカマの狼にしか見えないという難点がある)
この『ナルニア物語』風に言えば「ものいうけもの」たち、もちろんこの作品では山の主とか神とか精霊とかの設定なんだけど、普通の動物じゃなくて、言葉をしゃべって、しかも普通の動物より大きいというあたりはナルニアそっくりだ。

それで、そういう獣は無条件に愛してしまう。だいたい動物が人間なんかにやられるのはやっぱり知性がなくて体が小さいからで、気高く美しくかっこいい動物さんに知性とサイズさえあれば人間なんかたちまち蹴散らしてくれる! と、すでに完全に山犬視点で見てますがな!

【注】もちろん「人間的知性」の意味だからね。動物は十分賢いが人間的な意味での知性はないから。

山犬以外もいい。猿だけは嫌いなので猿が悪役なのもいい。
家畜だがヤックルがまたいい。馬じゃないところだけが私としては残念だが、あれってカモシカだよね? あんなカモシカ日本にいるか?って思ったが、そこはやはり架空の動物でいい。
個人的にはあのツノがあるとすごい乗りやすそうでいいなと思った。馬にもツノあるといいのに。あ、それじゃユニコーンになってしまうか。

シシ神/デイダラボッチは無条件に古今のクリーチャーの中でもベストの部類だろう。シシ神時の静謐な気高さはナルニアのアスランなんかよりよほど威厳があるし、デイダラボッチの圧倒的な巨大さとパワーもすごい。何より得体が知れなくて何も考えてないように見えるあたりが神っぽくて良い。

ヒーローもいいね。これまた宮崎ヒーローというと、2枚目半のおどけ者か、引っ込み思案のおとなしい男の子が多いように思うのだが、アシタカって蝦夷(えみし)の王子なわけでしょ。しかも呪いを受けて追放された身の上って、貴種漂流譚でもあるわけで、かっこよすぎ!
しかも、呪いのせいでなんか超人的に強いし。この映画ってよく「中二病的」って言われるけど、私は永遠の中二だ。文句あるか?

あと、このカップルが宮崎アニメにはめずらしく性的なものを持っているのがいい。だいたい宮崎作品は主人公が子供ばっかりなので、こういうのはあまりなかったし。サンとアシタカだって年は15とか16なんだろうが、この時代にはれっきとした大人だし、セックスしてもまったく問題ない年齢だしね。
有名なセリフ「生きろ、そなたは美しい」だって恥ずかしいけどやっぱりかっこいいよね。しかもこのセリフが飛び出すのが、アシタカがサンに殺されそうになったときってのが最高だし、それを聞いたサンが柄にもなくうろたえるのもかわいい。
(でも2ちゃんで見た、このセリフの反対語は「死ね、ブス」だというのには笑った。それこそ身も蓋もねー!)

この映画の外国人のリビューで、「これがアメリカ映画なら主人公の2人は間違いなく最後に結ばれてキスシーンで終わるのに、あえてそうならないのがいい」というのがあったが、そういうベタベタした愛情表現をしないのが日本の良さで、いっしょには暮らしてないが、この2人やることはやってまっせ。
ヒーローとヒロインは無条件で恋に落ちるという映画のお約束が嫌いな私は、むしろこの微妙な距離感が快感。サンはあくまで動物側、アシタカはあくまで人間側で、敵同士であるにも関わらずお互いのことは尊重し愛し合ってる。だけどあえて白黒は付けずに中間地点で仲良くしてるあたりがいかにも日本的で、こういうのは外人には理解できないだろうなあ。

それを言ったら、一見、人間vs自然の二項対立になっているようでいて、そのどちらも悪ではないというのも、ハリウッド映画では見られない日本映画の良さ。

ただ、サンやアシタカや動物たちが魅力的すぎて、エボシ御前やジコ坊の影が薄くなってしまい、むしろ物語の邪魔なような気がするのがちょっと惜しい。殿様の軍勢とか戦争とか、政治的な背景を入れたのも、私にはよけいな気がするんだが、社会派っぽく見せるためには必要だったのか。私はむしろ完全に神話の世界の冒険みたいなほうが好きだったかな。

あと、宮崎アニメをほめるときにいつも言われる絵の美しさや音楽の美しさだが、私はこれまでぜんぜんピンとこなかったのに、この作品ではちょっとすてきだと思った。
シシ神の森は屋久島の森がモデルらしいが(行ったことないし私の足ではもう無理だろうが)屋久島は大好きなので、美しさと神秘性にドキドキした。
カウンターテナーの米良美一が歌う主題歌もこの上なく美しいし、人間離れしていて雰囲気に合っている。しかしこの人、本物のカストラートと違うの? どう見てもちょん切っちゃったとしか見えないのだが。

作品がいいと嫌いなはずのキャラもんまでよく見える。コダマのことを言ってるのだが、人の真似をしたり、頭がカラカラ回ったりしてマジかわいい。

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