★★【映画評】Dr.パルナサスの鏡 (2009) The Imaginarium of Doctor Parnassus

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“You can’t stop stories.”というのは美しい概念だと思わない? 物語のつむぎ手というのは、ひいては監督のギリアム自身のことでもあるし、映画のメタファーにも なってるし、だいたい「想像力や夢見ることの大切さ」ってすごく重要な美しいテーマだし。

Director:

Terry Gilliam

 

♠ おー! 我々の名前がちゃんとトランプのスーツで出てる! あれなんで◎○△☆に変えたんだっけ?
♦ 確かMSゴシックだとすごい歪んでちっぽけで見づらかったんだよ。だけど、ネットじゃこちらでフォント指定するの面倒だから、あきらめて◎○△☆で代用してたの
♠ 「競馬の予想紙」じゃあるまいしと評判悪かったよね。
♦ ネット以前はもっと苦労してたんだよ。どうしても自分の思い通りのふっくらしたイメージを出すために、外字を自作してたんだから。ドットで文字書いてさ。だけどそれはネットには上げられないし。
♠ それがまたどうしたわけで?
♦ なんかの拍子でふと書いてみたら、メイリオだとこの通りきれいに出るのに気付いたのよ。
♠ でもこのブログってフォント指定できないんじゃないの?
♦ 他人の機種でどう見えるかなんて、もう気にするのやめた。自分ちできれいに見えればいいの。ああちなみに、気になる方はコンピューターの方のフォントをメイリオに指定すると、たいていなんでもきれいに見えますよ。

(というふうに、ワープロやエディタではきれいに見えていたのだが、やはりブラウザで見ると豆粒のようになってしまうということを、アップロード後に発見。これはもうしょうがないのでこのまま行くことにした。見づらくてすみません)

♦ って、いきなり関係ない話させるな! いろいろと時間もおしてるのに、これではこの半年に見た映画について何も書けないということで、映画評は多重人格にスイッチしてお送りします。
♠ こっちのほうがずっと早いし楽だしね。これだと年とか社会的地位とかも気にせず発言できるし。
♦ そんなもの気にしたこともないくせに。

♦ とにかく忙しいんだからすぐに本題行こう。で、テリー・ギリアムだよね。いつもいつも残念がられる、微妙な立場のギリアムさん。
♠ それだけどさ、そんなに期待するほどの人材? もちろん元モンティ・パイソンという肩書きがあるからこれだけこだわってるんだろうけど、もうあまりにも昔の過去の話だし、監督としてはまあこのレベルの人だったんじゃないかと。
♦ モンティ・パイソン時代はそこまで評価してなかったよ。もちろん彼のアニメーションは大好きだったけど、あくまでプラスワンの存在で、正式メンバーとは一線を引いてた。アメリカ人だし、アニメーターだし、醜男だし(笑)。
♠ 彼のアホの子演技はけっこう好きだったけどな。
♦ だいたい彼だけ芝居できないから、あんまり出演してなかったし。

♦ だけど、映画監督になってみたら、これほどの才能の持ち主だったのかと驚愕して。
♠ 『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』(Monty Python and the Holy Grail テリー・ジョーンズとの共同監督)、『ジャバーウォッキー』(Jabberwocky)、『バンデットQ』(Time Bandits)、『未来世紀ブラジル』(Brazil)と、ここまでは神扱いだった。
♦ ところがそれ以後の映画が全部微妙で‥‥
♠ 4本も傑作映画を撮れればもういいんじゃない? だいたい過去の巨匠も晩年は駄作続きなのが普通だったし、そんな傑作ばかり作れるもんじゃないよ。
♦ それはそうなんだけど、やっぱり夢よ再びと思ってしまうわけよ。
♠ その4本のうち、最初の2本はギリアムのっていうよりモンティ・パイソン映画だったし。
♦ でも『ブラジル』が神過ぎた。まあ、時代の影響もあるけど。
♠ 私はあきらめてたな。結局この男はティム・バートンの同類なんだと思って。

♦ それ前も書いてたよね。そんなに似てるかな?
♠ イギリス在住のアメリカ人、アニメーター出身、独特のチープで子供っぽいテイストのファンタジー世界、夢いっぱいと見せかけて実はブラックなところ。ジョニー・デップ。そっくりじゃん!
♦ ジョニー・デップはそんなに使ってないが、それもそうかな。でもいくらなんでもまだそこまで落ちてない!
♠ 元々そんなに好きじゃなかったが、近年のバートンはひどすぎるからね。
♦ 逆にギリアムはこれの前の『タイドランド』(Tideland)でちょっぴり希望の光が見えたんで、期待していたんだが、次の作品であるこの映画まで4年も待たされた。

♦ しかし幸か不幸か、宣伝文句は「ヒース・レジャーの遺作」って言葉で埋め尽くされちゃったよね。
♠ マジでこの男(ギリアム)、疫病神でも憑いてるんじゃないの?! なんか映画撮るたびにこのたぐいの致命的トラブルが発生するよね。『ブラジル』しかり、未完に終わった『ドンキホーテを殺した男』も主演のジャン・ロシュフォールの病気降板が原因だし。
♦ まあ、トラブルの中には本人が招いているものもあるようだが、不運なのは間違いない。でも今回は途中で投げ出さなかったんだからえらいじゃない。
♠ ヒースは撮影途中で急死したんだけど、彼の友人でもあった3人のスター、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルが、ヒースの代役を演じたことで、かえって客寄せになったみたいね。
♦ そりゃそうでしょ。3人とも主役級の人気スターだし。
♠ 死因ってなんだったの?
♦ 薬物中毒と言ってるけど、ドラッグじゃなくて睡眠薬の飲み過ぎかなんかみたい。
♠ 28才か。リバー・フェニックスが死んだときのことを思い出す。確か彼の死にもジョニー・デップがからんでなかった?
♦ リバーが死んだナイトクラブの共同経営者じゃなかったっけ。
♠ まあ、だいたいこいつらは同じ穴のムジナ。ハリウッドスターなんてどうせめちゃくちゃな生活してるんだから死なないほうが不思議。つーか、この世界で生き残ってる奴らは、矢でも鉄砲でも死なない感じ。
♦ でももったいないことをしたよ。リバーもだけど、ヒースも、評論家筋の評価もファン人気もうなぎ登りでこれからって所だったのに。

♦ 対談だと早いと言いながらちっとも早くない! さっさと映画の話をしよう。
♠ うん、それじゃあらすじから。(当然ネタバレありです)

舞台は現代のロンドン。パルナッサス博士(Christopher Plummer)(パルナサスは日本語として違和感あるのでこっちで書かせてもらう)、娘のヴァレンティナ(Lily Cole )、助手の小人パーシー(Verne Troyer)、下働きのアントン(Andrew Garfield)らは、不思議な鏡を使った怪しげな旅芸人の一座。
実はパルナッサス博士はかつて悪魔ニック(Tom Waits)と賭をしてその賭に勝ち、永遠の命を手に入れて千年間生きているのだ。
しかし、愛した女性を自分のものにするために、再度ニックと取引をした博士は、娘が16才になったらニックに渡すという取引をしてしまっていた。
その誕生日が近付いた頃にニックが現れ、期限までに5人の信者を集める競争に勝てば娘は許してやると、パルナッサス博士にもちかける。

ちょうどそのころ、彼らは橋で首を吊られて死にかけている男トニー(Heath Ledger、Johnny Depp、 Jude Law、Colin Farrell)を見つけて助け、仲間に加える。謎だらけだが調子のいいトニーはたちまち博士やヴァレンティナに取り入り、ニックからヴァレンティナを救ってくれるかと思えたのだが‥‥

パルナッサス博士とニック

パルナッサス博士とニック

 『ファウスト』ですな。
♦ うん、だから私も、悪魔との契約の話がメインプロットなんだと思って見てたの。でもどうも違うし、実際の映画はこんなにすっきりした話じゃない。
♠ だいたいタイトルにもなっているあの鏡(イマジナリウム)の意味がよくわからないし。Wikiには「他人の想像の世界を垣間見る鏡」と書いてあるし、IMDbには「夢が現実になる場所」と書いてあるけど、それだけじゃないでしょ。
♦ あの鏡の世界は、「たまたまそのときテリー・ギリアムが思いついた空想が現実になる世界」(笑)。というのは冗談として、ある意味、いかにも夢らしいと思ったな。現実と関わりはあるけど、荒唐無稽で意味がないようなところが。
♠ 金持ちババアの世界はまだわかるんだよな。靴とか宝石とかがいっぱいで、ジョニー・デップとイチャイチャできる(笑)というわけで。だけど最初の酔っ払いが入り込んだのは悪夢の世界じゃない。
♦ まあ、あれはヴァレンティナを追って勝手に入り込んだんだから。

♠ それで酔っ払いが反省すると天国みたいなものが見えるんだけど、反対側にニックが出店を出していて、結局そこへ入り込んで破滅するという。
♦ あの金持ち女のときも夢の中にはニックがいて誘ってたよね。モーテルに誘い込もうとして。
♠ ところがトニーが止めるでしょ。トニーは悪人じゃなかったの?
♦ いっしょにモーテルに泊まろうという女を説き伏せて、ゴンドラに乗せて押し出すんだけど、あの川がどう見ても三途の川で。ダイアナ妃とかジェームズ・ディーンとか、死んだ人たちの船が流れて行くし。
♠ だから女も最初ためらうんだけど、トニーが「彼らは神になったんです。だからあなたも」みたいなことを言って丸め込んで、結果としてニックがチッと舌打ちするってことは、こっちを選んで正解だったんだ。なんでなんで? わけがわからないよ。
♦ とりあえずあの時点でトニーはパルナッサス博士のために働いてたんだから、あれが正解なんじゃない? だいたいニックははっきりトニーを嫌ってるし。
♠ 私には単にジョニー・デップが年増女とホテル行くのがいやだから適当なこと言って逃げたように見えたんだけど(笑)。
♦ だから好きなように解釈すればいいんじゃないかな。見る人によっていろんな解釈が成り立つ、夢のような世界って好きよ。

♠ それを言ったらパルナッサス博士そのものがいちばんわからない。ファウストだから魔術師なのかと思ったら、若い頃は修験者風で、東洋のグルという感じ。ヘンテコな東洋風の寺院に、僧侶たちと暮らしていて。
♦ めっちゃくちゃうさんくさいよね(笑)。でもあの場面にこの映画の主張というかテーマのすべてがあったと思うよ。あそこでパルナッサスたちがやっていたのは、「終わりなき物語」を紡ぐこと。そして彼は物語が世界を存続させていると主張するんだけど‥‥
♠ ニックがちょっかいを出して、僧たちの口を封じてしまう。
♦ ところが世界は元通り存続していて、パルナッサスは誰かがどこかで別の物語を紡ぎ続けているという啓示を得る。だから、“You can’t stop stories.”というのは美しい概念だと思わない? 物語のつむぎ手というのは、ひいては監督のギリアム自身のことでもあるし、映画のメタファーにもなってるし、だいたい「想像力や夢見ることの大切さ」ってすごく重要な美しいテーマだし。
♠ それにしちゃ鏡の中の世界はずいぶん即物的だし散文的だな。
♦ それは入っていったのが俗物ばかりだからじゃない? あの美術のチープさは狙ったものだし。
♠ とりあえずああいうふうに登場人物に哲学的なこと言わせようとする場面って、たいてい陳腐なセリフとか、意味もないアホらしいことしか言えないものなのに、あそこのセリフは妙にかっこよかったね。

♠ だけどパルナッサスってキリストっぽくもある
♦ 根拠は?
♠ 1000年生きてるっていうのと、12人の弟子を集めたって話。これはモロじゃない? あとヴァレンティナに見せてた本にもそれっぽい絵があったような気がする。
♦ まあほのめかしだけどね。パルナッサスが何者なのかはあえていろんな鍵をばらまいてわかりにくくさせてる感じ。ファウスト博士でもあり、キリストでもあり‥‥
♠ 私はプロスペローとか、リア王も連想した。
♦ プロスペローは娘のことで、リア王はラストの放浪シーン?
♠ でもパルナッサスという名前はギリシア語だよね。
♦ 出典はギリシア神話だけど、そこから転じて詩歌のことや、「詩歌その他創造活動の中心」という意味もある。やはり物語のつむぎ手なことは名前からもわかる。

♠ それではそのパルナッサスを演じたクリストファー・プラマーについて。
♦ ヒース・レジャーと仲間たち以外、誰が出てるのかも知らずに見てたからさ、ずーっと気になってたんだよね。これ誰だろう?って。こんなハンサムなじじい見たことない。でも絶対知ってる顔なんだけど、誰なのかはさっぱり思い出せなくて。
♠ 『サウンド・オブ・ミュージック』のトラップ大佐でした(笑)。まだ現役なのも知らなかったよ。
♦ 元からそうだけどハンサムだわー。若い頃よりぜんぜんいいわ。この年でこんなにすてきだなんて‥‥
♠ なるほど♦が出てきたのはジジイ専科ということか。
♦ 失礼ね。私はイギリス爺には特別な感情を持ってるだけよ。
♠ カナダ人ですが。
♦ カナダはいいのよ。キアヌもだし。

♠ なんか許せない感じ。この手のイケメンって、若い頃の面影なんかまったくないくせに、年を取っても老人としてはイケメンのままなんだから。
♦ だけど、種明かしをすると、これって演技補正がかなり入ってるよ。特にこれだけ分厚いメイキャップをしてると。なぜか西洋の爺さんって、こういう長髪ひげもじゃの魔法使いスタイルが似合うんだよな。扮装を取って素に戻ると、案外みすぼらしいジジイだったりする。あの醜男のイアン・マッケランが、ヒゲのばしてローブ着て杖持っただけで、あんなに威風堂々とした魔法使いになれるんだから。
♠ クリストファー・プラマーの若い頃って、いやったらしい色男だったよね。ジュード・ロウがまさにそのタイプなので‥‥
♦ 今から楽しみだわー! この子は絶対年取ってもイケるから、それまで消えないでいてほしいと願ってたのよ。
♠ クリストファー・プラマーというと、私は娘さんの方が印象に残ってたんだがな。
♦ アマンダ・プラマーね。最近見ないね。
♠ でも一頃はカルト・ムービーの常連だった。どこか壊れた感じのする女の子で、役柄も異常性格ばっかりで好きだった。
♦ でもちっとも美人じゃないんだよね。むしろそこが個性で良かったんだけど。お父さんはあれだけハンサムなのに。
♠ 今は♥好みの一癖あるおばさんになりましたぜ。

トニーの四変化

トニーの四変化

♦ じゃあ、役者の話を続けよう。続いてはやっぱりアンタゴニストのトニーを演じたヒース・レジャー
♠ てっきりこの人が主役なんだと思ってたよ。あの宣伝を見たら。
♦ 普通なら敵役は悪魔のニックだと思うもんね。それで、若いイケメンは娘と結ばれる役と思うじゃん。
♠ ところがそうじゃないあたり、久々にギリアムらしさを感じて、トニーの正体がわかってきた中盤あたりからワクワクしてきた。ところでヒース・レジャーってイケメンなの?
♦ 私の好みじゃないが、そういうことになってるんじゃないの?
♠ 『ブラザーズ・グリム』に出てたよね。マット・デイモンとのコンビで。『A Knight’s Tale』の主人公でもあるよ。あれは大好きだったなー。
♠ でも一般に名前が知れ渡ったのは、私がけなした『ブロークバック・マウンテン』のホモ男。その後、『ダークナイト』のジョーカー役が大当たりして一躍スターダムにのし上がった。この作品はその『ダークナイト』の直後に撮っていて、本当にスターになったとたんの死だった。ところで『ダークナイト』って見たっけ?
♦ 撮りだめした録画の中に入ってない?
♠ ないみたい。
♦ 彼のジョーカーは見てみたいけど、なんかもうアメコミ原作はうんざりなんだよね。『リターンズ』は録画したので見始めたけど、20分で挫折して消しちゃった。

♠ で、どうなの? 好きなの?
♦ どうもこの手のオーストラリア男って大味で粗野な感じで好みではないんだけど、マット・デイモンとか、ジェイク・ジレンホール(ギレンホール? まあどっちでもいいが)とか、ブラッド・ピットがハンサムって言われるんだったら、この人の方がよっぽど魅力的だとは思う。ある種の野性的なセクシーさがあるし。まあ、私的にはイギリス人じゃないっていうだけで、ほとんどの役者は失格なんだけど。
♠ 何だ、そりゃ。若いけど演技派だったみたいね。そこもなんかリバーを思わせるんだが。
♦ こんなに若くして亡くなったのは本当に残念だよ。もっと見たかったし、他の役も見たかった。

♦ 続いてはジョニー・デップ(笑)。もう聞くまでもないような気がするけど。
♠ 昔はね、好きとは言えないが好感は持ってたんだよ。まだ比較的無名で、インディーっぽい映画によく出てた頃は。『クライ・ベイビー』、『シザーハンズ』、『 ギルバート・グレイプ』、『妹の恋人』のあたり。
♦ 根は善良なんだけど、イカれた変な人っていうキャラで。それがどこからおかしくなってきたんだろう?
♠ ティム・バートンが悪い(笑)。ティム・バートンが毎回まったく同じメイク、同じキャラで使ってるから、もううんざりしてきた。
♦ 目張り入れてね。それだったら、『パイレーツ・オブ・カリビアン』も同罪じゃん。そういやあれ見てないね。なんで?
♠ ジョニー・デップにもうんざりだし、今さら海賊ものでもないじゃん。
♦ 今さらチャンバラ映画も西部劇もないと思うが。
♠ とにかくジョニー・デップは露出しすぎ!
♦ そのくせ、べつにハンサムでもないし、かっこいいわけでもないし、演技がうまいわけでもないからなあ。
♠ 変なキャラのくせに二枚目ぶってるし。要するに実力と人気が合ってない気がするんだよね。あんなやつ、顔的にもキャラクター的にもスティーヴ・ブシェミの同類じゃん。だからブシェミみたいにカルト映画で笑われながらも愛されてるっていうならわかるわけ。
♦ 確かに二枚目ではないわな。
(こいつらはジョニー・デップ憎しでこんなこと言ってるけど、いちおうハンサムには違いないと思いますよ。少なくとも若い頃は)

♦ でもこの映画にはぴったりだったじゃん。とても代役とは思えないほど。
♠ だからデップが出てくるといきなりティム・バートン映画になっちゃうんだってば。
♦ まあ似たようなもんだし。
♠ ちがーう!
♦ でもいつも通りの(目張り入り)デップで、なんの違和感もなかったじゃない。デップがヒースの代役じゃなくて、ヒースがデップの代役だったと言われても不思議はないレベル。
♠ それは確かにそうだけど。
♦ そのせいか、鏡の世界のセットがどうしても『チャーリーとチョコレート工場』に見えちゃって困った。

♠ 続いてはジュード・ロウか。
♦ 上にも書いたように、今はかつての絶世の美少年の面影はないが、熟成中。もう少し寝かせた方がおいしい。あと、イギリス人というだけで5割増しだから。
♠ 映画の話は!
♦ あの目張りがいや。もともと濃い顔だからよけいいやらしくなって。
♠ 目力ありすぎ! あの満面の笑いがいやらしかった。

♠ コリン・ファレルは?
♦ えーと誰だっけ? コリン・ファースといつも混同してしまう。
♠ 田吾作面はいっしょだけど、こっちのほうがずっと若いよ。『アレキサンダー』の人。
♦ あれか! オリバー・ストーンの怪作になったかもしれない映画を、アイルランドの田吾作面でぶちこわしにしてくれた男!
♠ なんか親近感の持てる顔立ちなんだけどね、なんでこの人がハリウッドで成功したのかはわからないね。でもアイルランド人だから7割増しでしょ?
♦ アイルランド枠はジョナサン・リース=マイヤーズとキリアン・マーフィーでいっぱいだから。
♠ あの存在感のありすぎる下がり眉のゲジゲジ眉毛だけなんとかすれば、もう少し見られると思うんだがなあ。
♦ まあ、あの情けない感じがちょっとセクシーというのはわかるけど。
♠ でもいちばんおいしいところ持って行ったね。
♦ おいしいっていうか、まあラスト担当だから。出番もいちばん長かったし。しかし、あの詐欺師役が妙にハマっていて、このキャスティングは納得だ。

♦ しかしトニーってひどいやつ! 身寄りのない子供を助ける慈善事業家の仮面の下で、子供の臓器売買をしていたって、死の商人かよ!
♠ あのfund raising partyのシークエンスってちょっとマイケル・ジャクソン意識してない?
♦ ジャーヴィス・コッカー(Pulp)が怒って殴り込んだあれ?
♠ そういやそんなこともあったっけ。子供で商売しといてペドってあたり。
♦ 本当にペドファイルかどうかは藪の中だけどさ、あの子供並べて自分を崇拝させるのは気持ち悪かった。あれと同種の気持ち悪さは感じたね。
♠ なのに日本の宣伝は例によって、ヒース・レジャーが女の子を救う!みたいな誤解させるものだったみたいね。Amazonとかのレビューでだまされた人が怒ってるんで笑った。
♦ こっちのほうがよっぽど悪魔だって。

♦ じゃあ、次はその悪魔役(悪魔とは一言もいってないし、古典的な悪魔でもないが、いちおう)のニックを演じたトム・ウェイツ。
♠ ずるいよ! 子供と老人と動物とトム・ウェイツ(スティーヴ・ブシェミでも可)を出すのは反則だよ。
♦ 何言ってるんだ(笑)。
♠ というわけで実に味のあるいい訳者なんだけど、歌手として偉大すぎる人だけに、こうやって映画でばかり見るのはちょっと不本意でもある。
♦ 歌もやってるでしょ。でも確かに妙にかわいいんだよね。すごい醜男なのに。

♠ しかもいい人じゃん! 16才の誕生日が迫って、娘がピンチだって言うのに、パルナッサスは何もできずに飲んだくれてるだけなんで、見るに見かねて助け船を出しに来たりして(笑)。
♦ うん。何もしなければヴァレンティナは彼のものなのに、あの取引きはニックにはなんの得もないよね。
♠ むしろパルナッサスのほうがずっとひどい。女欲しさに実の娘を悪魔に売る約束しちゃうなんて。

♠ そこで私は考えた。ニックは実は天使なんじゃないかと。
♦ 一理あるな。確かにニックがやってるのは一種の勧善懲悪で、罰を下すのはなんらかの罪人だけ。ヴァレンティナみたいに何の罪もない人間には悪いことはしてないんだよね。
♠ 冒頭の酔っ払いは自業自得だし、それにくらべてあのおばさんは誘惑を退けたんでOKと。
♦ 代わりにトニーの魔手にはまったから幸せとは言えないんだけど。
♠ パルナッサスも娘の件に関しては明らかに彼が悪いし、不老長寿を望んだのも傲慢の罪と思えば‥‥
♦ 実際はパルナッサスは勝ったんだけど、それがニックの策略だったって言って、ちっとも幸せそうじゃない。
♠ あ、ちなみに不老長寿じゃなかった。年は取ってるんだから。不老ならばそもそも女を誘惑するのに悪魔の手を借りる必要もなかったんだし。
♦ ヨボヨボの浮浪者同然で生きていけっていうのも一種の罰だよね。
♠ それを言ったら、そもそもパルナッサスにちょっかい出しに、わざわざあんなところまでやってきたのもあやしい。
♦ ふーむ。物語を人に語らせるんじゃなくて、自分で生きろってことかな。
♠ 少なくともあんな聖地みたいなところにこもってた隠者を、欲望渦巻く人の世に送り込んだのにはわけがありそう。

♦ あの鏡の由来って何も語られてなかった気がしたんだけど。
♠ 覚えがないな。
♦ あれ、最初はパルナッサスの術(?)かなんかで作ったんだと思ってたけど、明らかにニックの道具だよね。
♠ というわけで、私はニックは実は天使だったんだと思う。そう思い始めたら、ラストはてっきり、パルナッサスに別れを告げて立ち去るニックの後ろ姿に、小さい羽が生えている‥‥となるんだとばっかり。
♦ マンガとかならともかく、映画じゃそれは恥ずかしすぎる! でもなんかそんなような話あったな。スティングが天使の役の。
♠ あー、あれか。“Brimstone & Treacle”。寝たきりの少女を強姦しちゃうやつ。
♦ ひどい天使!
♠ だからこれもその逆転イメージがおもしろいんだよ。

ヴァレンティナとアントン

初々しいヴァレンティナとアントン

♦ 続いては若い二人、パルナッサスの娘のヴァレンティナを演じたリリー・コールは?
♠ スーパーモデルだと聞いて驚いたよ。だってすごい変な顔だから。
♦ スーパーモデルは背が高くて個性的でさえあれば、美人である必要ないよ。ジョニー・デップと付き合ってたケイト・モスだってすごいブスだし。
♠ あっ、確かにタイプ似てるかも! ただケイトはガリガリだったけど、この人は巨乳だが。
♦ あと、赤毛。無性的なモデルが多い中ではモロにセックスアピールを感じさせるタイプだな。
♠ でも背低いじゃん。
♦ これでも179cmあるらしい。
♠ えー! そうは見えなかった! 長身のイギリス女好きでしょ?
♦ ブスは嫌い。
♠ 身も蓋もない(笑)。つーか、私はてっきり10代だと思ってたけど、このときはたち越えてたのね。こういうロリ顔の女も嫌いでしょ。
♦ これはこういう役だからいいの。16才って設定なんだから。肉感的なところもロリロリしたところも含めて、ヴァレンティナには適役だと思ったな。

♠ じゃあ、相手役のアントンのアンドリュー・ガーフィールドは?(「アンドルー」だっちゅうの!) この人も期待の若手だよね。スパイダーマンに抜擢されて。
♦ アメコミばっかりだな。それはともかく、役者としてはかなりの逸材と見たよ。顔は好みじゃないけどね。アメリカ生まれだけど、英国育ちで、半分イギリス人だから2.5割増しで。
♠ 何言ってんだか(笑)。でもこの人も若いと思ってたら、今はもう31才ってけっこうショック。
♦ 実年齢はともかく、あえて幼く見える二人を選んだ感じね。彼らはパルナッサスやトニーの対局にいる、いわば無垢なるアダムとイブだから、やっぱり無垢な子供たちのイメージ。そう思ってみるとほほえましくてなかなか好感の持てるカップルだった。
♠ 女の方はかなりトニーに惹かれてたけどね。
♦ でも必死にトニーから彼女を守ろうとするアントンは健気でよかった。
♠ その意味、ヒーローなんだけど、それをデブ女とか小人の格好でやるから笑える。

♦ これでキャストは全部まとめたかな。
♠ パーシーを忘れてる! あの小人。演じるのはヴァーン・J・トロイヤー。
♦ そうそう、ギリアム作品でフリークスが登場するのは、ほとんどお約束だしね。
♠ フリークスはひどい、と言いたいが、けっこうグロい小人だよね。
♦ 『ゲーム・オブ・スローンズ』のティリオン役、ピーター・ディンクレイジは体こそ小さいが、サイズ以外は健常者と変わらないタイプだったけど、この人はねえ。
♠ と思って画像検索したんだが、この映画はメイクやコスチュームがあれだけど、素顔はやっぱり普通の人だった。これはあれだよ。この人は小人としては普通だけど、ピーター・ディンクレイジって小人症さえ患わなければ、すごいハンサムに生まれついていたはずなんじゃないの?
♦ それを思うとよけい痛ましいね。とにかく、この種のフリークショーはギリアムの十八番なんで、この人を出してくれたのはすごくうれしい。
♠ 痛ましいとか言ったそばからひどいことを(笑)。でも実際パーシーは良かった。陰に日向にパルナッサスを支えてくれて。
♦ 「おまえがいなくなったら、わしはどうすればいいんじゃ」というパルナッサスの言葉に、「別の小人を見つければ?」(実際は“Find a midget.”しか言ってない)というのは名言だし。
♠ しかしこいつ何者? アントンはおそらく孤児かなんかを拾って育てたんだろうというのはわかるんだけど、パーシーは人間離れしすぎてるし。
♦ それ言ったらパルナッサスも普通の人間じゃないし、なんかその辺の人ってことで。

♠ それじゃそろそろ締めますか。
♦ トニーのあの笛のトリックは?
♠ ありがちなトリックだけど、だまされた! だっていきなり首吊り状態で見つかるんだよ。誰だって彼は被害者だと思うじゃない。
♦ 実は細い笛を呑み込んで気道確保した上で吊られてるんですけどね。
♠ それにしたって死ぬほど苦しいと思うし、一歩間違えれば死ぬと思うし、間違って食道の方に呑み込んじゃったらどうするんだよ!
♦ というような突っ込みは別にして、おもしろかった。あえて死んでみせることでいつも逃げるってのがマゾっぽくて変態ぽいし。
♠ ところがパルナッサスはそのトリックを見抜いて、すぐに壊れる偽の笛をつかませたんだが‥‥というどんでん返しもおもしろい。
♦ 『デスノート』かよと思った。

♦ 最初見たときはここで終わらせといたほうがいいのにと思ったのよ。パルナッサスと娘の再会シーン(パルナッサスが遠くから見ているだけで再会はしてないんだが)は蛇足な気がして。
♠ でもあれがあるおかげで後味が悪くない、泣かせる映画になったじゃない。
♦ 確かに身から出た錆とはいえ、あのままじゃパルナッサスがあまりにもかわいそうだったからね。それがアントンと結婚して子供ができて幸せそうなヴァレンティナを見て救われるというのはきれいなエンディングだった。
♠ パーシーとも再会できたし。
♠ しかし私はハッピーエンディングだったので驚いたよ。『タイム・バンディッツ』みたいに、子供主人公にして、やっとおうちに帰れて良かったというところで、家爆ごと爆発させちゃうような鬼畜だから、この男は(笑)。
♦ やっぱり年取ったかねー。
♠ それがかえって心配だわ。鬼畜と言われた作家が妙に丸くなると死期が近かったりするから。
♦ あのエンディングには他にも何か意味がありそうだったんだけど、録画消しちゃったからブルーレイが届いたら確認しよう。
♠ 買っちゃったんですか。
♦ うん。テリー・ギリアム久々のクリーンヒットだし、ヒース・レジャー追悼の気持ちも込めて。あとメイキングが見たかったし。

♦ あとなんか言い忘れたことは‥‥
♠ 美術! やっぱり専門家だけあって、美術はいつもすごいでしょ。
♦ うん、鏡の中の世界はおそらく意図的に作り物くさくチープに作ってるけど、あの移動舞台はすごいと思ったね。
♠ 中世そのものの馬車が現代のロンドンの町を走り回るだけでもすごいビジュアルだよ。
♦ 出だしのアントンとヴァレンティナの衣装もかわいいと思わなかった? こっちはギリシア風で。
♠ パルナッサスの「寺院」もやたら壮大だしね。

♠ いい映画だったね!
♦ うん。少なくともこれは私の映画だと思った。テリー・ギリアムが健在だったのを見るだけでも価値があった。
♠ そういえばモンティ・パイソンのパロディーまであったね。あのミニスカポリス(ただし全員むくつけきおっさん)の歌と踊り。
♦ あれはまあ、今さらモンティ・パイソンやる必要があったのかねえ。あまりに唐突だし。ああいうおバカなことやってると、ますますティム・バートンと見分けが付かなくなるぞ。
♠ 大笑いしたけどね。
♦ 気のせいかも知れないけど、鏡の中の世界では昔のギリアムのアニメーションを思い出させるところもけっこうあった。

♠ あと、これだけのスター4人が1つの役を演じるってケースは、こういう特殊事情がなくてももう二度とないんじゃないかな。2人1役とかはけっこうあるけど。
♦ というか、ヒースが死んだときに撮ってたのが、たまたま主人公を途中で入れ替えても無理のない映画だったというのも奇跡的。
♠ しかもこいつら実際、けっこう似てない? コリン・ファレルの眉毛は別として。
♦ 確かに友達同士だけあって妙に似てるね。顔だけじゃなく、あの脳天気で子供っぽい雰囲気とかも。
♠ 私、思うんだけど、テリー・ギリアムってキャスティングの天才じゃないかと思うんだ。
♦ マジで?
♠ うん、『ブラジル』にジョナサン・プライスってすごい発想だと思わなかった?
♦ それは彼がウォルター・ミッティ(ヒーローになる夢ばかり見ている平凡な中年男)だから。
♠ でもあの温厚で人畜無害なマイケル・ペイリンを残酷な拷問者にするところとか。
♦ 確かにそういう才能はあるな。
♠ ヒース・レジャーを発見したのも早かったし、『ドンキホーテを殺した男』のジャン・ロシュフォールが、ドンキホーテのイメージ通りなのにも驚いた。
♦ ふーむ。確かにキャスティングは完璧かも。
♠ ね?

♦ で次作はどうなってるのかな?
♠ 『ドンキホーテを殺した男』を撮り直すみたいですよ。
♦ ほんとに? またジャン・ロシュフォールの代役立てて?
♠ 詳しいことはわからないんだけど、ジョニー・デップは出ないらしい。ただ、2011年公開予定がまだ公開されてないってことは‥‥
♦ またかよ! もう無理ならあきらめて別の撮れよ!
♠ つくづく修羅の道を歩む男だなあ。
♦ 普通に映画撮れれば天才なのに‥‥

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