★★【映画評】遊星からの物体X ファーストコンタクト (2011) The Thing

the-thing-2011-poster(ホラーだし、グロいモンスターの写真はあるし、えげつない描写もありますので、いちおう閲覧注意です。グロい写真はリンクだけにしておこうと思ったんだけど、このブログじゃできないみたいなんで。
しかし、元が好きな映画のせいか、久々にちゃんと中身のある「論」になってるので乞うご期待

♣ これ見てて何が怖いと言って、♠が終始うれしそうにクスクス笑ってるのが怖かった。
♥ いや、こいつはカーペンター版を劇場で見てたときも笑ってたから。さすがに声には出さないが、ずっとニマニマしてた。
♦ あのときは隣のおっさんが「うわーっ!」って顔で口開けたまま、ずっと硬直してたのが印象的だったのに。
♠ 悪い? だって好きで好きで好きすぎるんだもん。そりゃ顔もゆるみますよ。それに、カーペンター版の「本歌取り」が至る所に出てきて、うれしくってさ。

Director:

Matthijs van Heijningen Jr. (as Matthijs van Heijningen)

Writers:

Eric Heisserer, John W. Campbell Jr. (short story “Who Goes There?”)

リメイクとプリクエル

♦ というわけで、ジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』(1982年)、この邦題ダサすぎるから、以下『The Thing』と呼ぶが、それのリメイク、じゃなくて、プリクエル(前日談)となります。
♥ なのにこっちのタイトルも同じ『The Thing』! リメイクでもないのに同名ってめっちゃ混乱しない?
♦ 制作者たちが言うには、これにビギニングだの、オリジンだのという副題を付けるのは、かえって冒涜だと思ったからなんだって。理由になってないが。
♠ 確かに、『遊星からの物体X ファーストコンタクト』なんちゅう邦題は、見るからにアホっぽいし、映画に対する冒涜に他ならないが
♣ これを機に『ザ・シング』にしちゃえばよかったのに。
♥ それもアホっぽいよ。『ザ・寝具』ってなんだよ(笑)。家具屋かよ。そうじゃなくてもカタカナだとsingかと思うし。

♣ ややこしいのはカーペンターの『The Thing』自体がリメイクなんだよね。
♦ リメイクのプリクエルというわけ。
♠ オリジナルの映画は1951年のハワード・ホークス版『The Thing from Another World』(邦題『遊星よりの物体X)。ちなみに監督としてクレジットされたのは、クリスチャン・ナイビーだが、実質はホークスが撮ったとされている。
♥ そのまた原作はジョン・W・キャンベル・Jrの『Who Goes There?』(邦題『影が行く』)(1938年)で、ホラーSFだからもともと私のジャンル。
♦ なんかこうやって並べると、名作みたいな気がしてくるじゃない。
♠ 実際名作でしょ。70年以上に渡って語り継がれているっていうのは、名作の証でしょ。

♦ それでこれはカーペンター版のプリクエルに当たるという、ややこしいことになってます。
♠ いいんじゃない? 原作に近いのは、カーペンター版のほうだし、カーペンターの『The Thing』こそは映画史に残る金字塔なんだから。
♣ 原作小説とホークス版も悪くはなかったんですがね。それ以上にカーペンター版の衝撃がすごかったからね。
♥ 衝撃ってグロいっていうだけじゃない。

『The Thing』はなぜ偉かったか

♦ それじゃ、『The Thing』プリクエルの話に行く前に、本家『The Thing』の魅力について語りなさい。ただし三行で。
♠ 魅力? えーとね、

その1、ロブ・ボッティンのモンスターの独創性とグロさが、当時の特撮技術では考えられないレベルだったこと。
その2、一種の密室もので、外界と完全に隔絶された環境に閉じ込められ、誰がモンスターかわからないという情況から生まれる疑心暗鬼や内紛、裏切りなどの心理サスペンス。
その3、単なる怪獣ギャオー!で終わらせない、緻密で先の読めないミステリ調の脚本。
その4、女がひとりも登場せず、主人公でさえもいつ死ぬかわからないストイシズム。

といったところかな。
♦ 三行と言ったのによくしゃべるな。
♠ ジョン・カーペンターというのは典型的なアホ(だけどおもろい)監督という認識だったんだけど、その先入観を吹き飛ばす、不滅のマスターピース
♣ 当然ながら、後世のホラー/モンスター映画に与えた影響は計り知れない。
♥ 『サイレントヒル』のモンスターも、ちょっとこれのパクリっぽいよね。

私がモンスターを愛するわけ

♦ ホント好きねえ、グログロモンスター。
♠ そこんとこ、はっきりさせてもらいたいんだけどね、ホラー映画もスプラッタ、ゴアのあとは、「切り株映画」だそうで、そういう人体破壊ものがはやっているようだけど、私はそんなのぜんぜん好きじゃないの。
♣ 『バッドテイスト』には興奮してたけど。
♥ ピーター・ジャクソンは別格でしょ!
♠ ちなみに「切り株映画」ってのは人間の首とか手足をちょん切って、切り株を見せびらかすような猟奇殺人映画のこと。私は間違えて何本か見ちゃったけど、正直言ってあほらしいだけでつまんなかった
♣ 逆に言えば、医者ならしょっちゅう見てるようなもので、べつに珍しくないし。
♥ グロいの嫌い。医学的なグロさは。だいたい人間なんてみんなグロいんだ!

♠ でもモンスターは大好き! ただしゴジラみたいなでかすぎるのは、リアリティがなくて嫌い。やっぱりせいぜいが恐竜サイズだよね。よって、詳細は省くが、映画史上最強かつ最凶かつ最もかっこいいモンスターはAlienで決まりなのだが、最もグロいのはthe thingというわけ。(the thingもエイリアンだし、まぎらわしいので映画『エイリアン』のエイリアンはAlien、『The Thing』のエイリアンはthe thingと記述します)
♣ 『サイレントヒル』のモンスターもグロかっこいいよ。
♥ とりあえず関係ない話すんな。
♠ なんでthe thingがあんなにもグロいかというと、やっぱり人間のパーツが入っているからなんだ。でも本当には存在しないから怖くない。
♦ よくわからん心理だが、そろそろ本題に入らないと。

プリクエルの存在意義

♥ 最初はてっきり本家『The Thing』のリメイクだと思ってて、やだなあとしか思わなかった。名作を汚されたらやだと思って。
♣ でもあれをリアルなCG使って撮ったらどうなるだろうとは、かねがね思ってたよね。
♦ 1982年だから当然すべて手作りのメカなんだよね。下で大勢でワイヤ引いたりして。
♣ でも本家the thingみたいな不定形生物は実写でやるのはかなりむずかしい。だからCG向きなんじゃないかと。
♠ それは思ったけど、その後CG使ったクリーチャーをいろいろ見るにつけ、やっぱりロブ・ボッティンは偉大だったと思わずにはいられないよ。CGモンスターってぜんぜんリアリティがないし、しょせんは絵っていう感じじゃない。

♦ CGの話は置いといて、でもプリクエルと聞いて、うまいこと考えたなと。
♣ うん。オリジナル『The Thing』はノルウェー隊が全滅したところから始まってるんだけど、そこへ至るまでの真相は残留物や残された記録やビデオでほのめかされるだけだった。
♠ そこからだいたい想像が付くようにできてるんだけどね。あくまで導入部だから時間もないし、詳しくはわからない。
♣ でもあの人たちだって人間だったんだし、ああなる前はどんな阿鼻叫喚地獄が‥‥と想像するとぞっとするよね。
♦ あの巨大宇宙船は誰のものなのか?とか、どうしてあそこにあったのか?とか、the thingはなぜ地球に来たのか?とかの大きな謎も手つかずだし。
♠ 今こそ明かされるスペースジョッキーの秘密!
♥ それは『プロメテウス』ですがな。あれも謎解けてないけど。

♠ 私は特にヘリに乗ってきた、ノルウェー隊の最後の生き残り二人のドラマが知りたかった。無関係なアメリカ人を殺しても、自分の命を捨てても、the thingの息の根を止めなくてはという、あそこまで追い詰められるまでの過程を。
♥ the thingを一度でも見たら、なんとしてもぶっ殺そうと思いますがな。
♦ カミソリで喉を掻き切って自殺していた男の話も見たかった。
♠ うん、ああいうの好き。ゾンビものでよくあるけど。
♥ だってthe thingみたいなのに食われるぐらいなら自殺した方がましだと誰でも思うじゃん。
♠ おまえは黙ってろ。

♥ しかし、今も話に出た『プロメテウス』といい、『猿の惑星』といい、最近プリクエルがはやってるの?
♣ マイナーだったけど『エクソシスト』のプリクエルもあったね。
♥ ウォシャウスキー姉弟が『マトリックス』のプリクエルを撮るという噂があるよ。
♣ 『T4』も前日談じゃなかったっけ?
♦ 理由は例によってのネタ不足でしょう。おかげで今は手垢の付いたアメコミとかでなんとか食べてるけど、それもいずれは飽きられるかネタが尽きるし、ヒット作のプリクエルなら確実だし。
♠ リメイクだと「またか」と言われるし、オリジナルとくらべて叩かれるのは必定だけど、プリクエルだとごまかせるという利点もあるしね。
♦ 確かに見る気が起きるのはそっちだな。
♥ 『マトリックス』みたいに完結しちゃってると続編の作りようがないという事情もある。
♣ 『エイリアン』なんか主人公をクローン再生してまで引きずったけど。
♦ その意味このプリクエルは成功が約束されていたと言ってもいいな。あのモンスターをCGでどう描くかという興味もあるし。

スタッフのこと

♥ ただ、『プロメテウス』は御大リドリーが撮ったけど、こっちは名前も聞いたことのないオランダ人監督で、だいじょぶなんか?という懸念はあった。
♠ カーペンター=ボッティンで撮るわけにいかなかったのかねえ。それなら夢の映画だったんだが。
♣ あの人たち何してるの? 最近聞かないような気がするけど。
♥ カーペンターなんてもう66才だよ。グログロホラー撮ってるような年じゃないじゃん。
♦ いや、それでも好きな人は撮るが。
♠ 2002年の『ヴァンパイア/黒の十字架』まではわりとコンスタントに撮ってたんだけど、2010年の『ザ・ウォード/監禁病棟』が最後だね。
♥ しかし私はどっちも見てないと。
♣ 『ザ・ウォード』はおもしろそうじゃない。これは見たい。
♦ だいたいここ5年ぐらい、私はほとんど新作映画って見てなかったから。国際線の飛行機の中で見るのがいちばん多かったぐらいで。
♠ 一方のロブ・ボッティンは2002年以降消えてる。
♣ ええー! こっちこそなんでなの? 『ロボコップ』、『セブン』、『トータルリコール』、『ファイト・クラブ』と、大物ばっかり手がけてきた人なのに。
♥ 健康問題とか何か理由がありそうだね。まあとにかく彼らはもう過去の人でしょう。

♥ しかしこの監督のマシーズ・ヴァン・ヘイニンゲン・Jrって誰よ?
♦ 本当に無名の新人。これが劇場映画第一作だけど、その前は短編やビデオが少しあるぐらい。IMDbのバイオにさえ何も書いてないレベル。
♣ ほとんど一般人(笑)。
♠ プロデューサーはリメイク版『ドーン・オブ・ザ・デッド』のコンビだから、柳の下のドジョウをあさってるだけの奴らみたいだし。
♥ 脚本は『エルム街の悪夢』のリメイクの脚本なんか書いてるが、ほとんどまともな仕事してないし。
♠ よくまあこれだけクズだけ集めたという感じ(笑)。
♦ 先にこのメンツ知ってたら絶対見なかったよね。

♠ でもね、先に結論言っちゃうとなぜかそれが正解だったのよね。つまり、この監督(たぶん監督の趣味だと思うんだけど)、よほどの『The Thing』おたくだったみたいで、オリジナルを徹底的に研究して、寸分の矛盾もなくつながるように作ってるうえ、全編、カーペンターへのオマージュみたいなものなの。
♦ 私は『スキャナー・ダークリー』を思い出したな。あれも監督がディックおたくで、マニアにはたまらない、と言うには不満もいっぱいあったけど、でも原作への愛が感じられるから許さざるを得ないという。
♣ 監督のリチャード・リンクレーターはともかく、あっちは役者は超一流だし、プロデューサー連も超一流が揃って、これとはくらべものにならないよ。
♥ こっちは予算もなかっただろうにね。それにしてはがんばった。
♣ これはオーディオ・コメンタリーを聞いてみたいと思ったよ。なんかめちゃくちゃ思いがこもってそうだから。
♦ まあ、なんだかんだで、もちろんオリジナルの足元にも及ばないけど、それなりに楽しめる映画にはなったね。

ショッカーとしての『The Thing』

♠ 私が笑ってたのはそういうわけ。見てると、「あ、ここもだ」「あれもだ」という感じに「本歌取り」のオンパレードなんで、つい笑いがこみ上げてきてしまった。
♣ 出だしの音楽の、あの低音の鼓動のような「ドドッ、ドドッ」ってやつからしてパクりだったもんね。しかもオリジナルスコアを使うわけに行かないから微妙に変えてある。
♠ カーペンターは作曲も手がけてたんだけど、彼の音楽好きだったんだ。
♦ あれこそ定番じゃないの。あの「キンキンキンキン!」ってやつとか。
♠ だからその定番はカーペンターが作ったんだってば。
♣ いや、あれの元祖はヒッチコックの『サイコ』でしょう。

上がオリジナル、下がプリクエル、というわけで、そっくりな死体検分シーン

上がオリジナル、下がプリクエル、というわけで、そっくりな死体検分シーン。この手の「本歌取り」がいたるところに。

♦ とにかく、オリジナル(リメイクだけどめんどくさいからカーペンター版をこう呼ぶ)のノルウェー基地を完璧に再現して見せた。
♠ それだけじゃないよ。オリジナル『The Thing』の名場面はすべてオマージュとして出てくるのね。いや、名場面に限らず、マニアじゃないと見逃しそうなさりげない場面まで。
♥ 見方によっては二番煎じとも呼びますが。
♠ シチュエーションは同じでも、もちろん何もかも同じなわけじゃないから、予想を裏切られてびっくりさせられるのがおもしろいんじゃない。
♣ わざとフェイントかましたりしてね。

♦ あの最初のthe thingの登場シーン! みんながパーティーやってる間に、黒人がひとりで氷漬けエイリアンの死体を見てるシーンなんだけど、これは絶対出ると思ってハラハラして見てたら、後ろから「わっ!」って、マジで驚いたじゃないかよ!
♥ それで「なーんだ。フェイントかよ」と思ったとたんに、ドドーン!と出るあたり、定石だけどおもしろかった。
♣ ショッカーとしてもよくできてたと思う。

♥ 私がいちばん手に汗握ったのは、これも冒頭の檻に入れられた犬のシーン。いつあのピュルピュルが飛び出すかとハラハラさせられたけど、これは完全なフェイントだった!
♠ だってこの犬は最後のシーン(かつ、オリジナルのオープニング)で使うことは決まってるんだから、ここで変身するわけがないじゃないか。ノルウェー基地では犬はこの1頭しかいなかったし。
♣ でも『The Thing』でいちばんキモかったのはdog-thingだから気持ちはわかる。
♦ いちばん最初のお目見えだったし、暗くてよく見えないからよけい怖かったよね。

モンスターを見せるということ

♣ でもその割にこの映画は最初からthe thingを見せまくって大盤振る舞いだったよね。
♦ 確かにオリジナルはじわじわと恐怖を盛り上げていく構成だったから、今回も本体が登場するのは中盤以降かと思ってた。
♥ 観客には正体ばれちゃってるからね。今さら隠してもしょうがないし、『エイリアン』シリーズもだんだんそうなっていった。どう考えても最初のやつの方が品はいいし、映画的にはおもしろいんだが。
♣ 観客的には、「ネタは割れてるんだからさっさと見せろ!」となるしね。
♠ 最初の『The Thing from Another World』なんか最後までモンスターは見せないよ。だから見せちゃいけないってことはないんだけど、見せ方は工夫してほしいな。
♦ the thingの正体も早々にばれちゃったね。これも観客にはわかってるから引っ張っても意味ないという判断か。
♣ 普通はスチルじゃあまり見せないモンスターの画像も、こっちは大々的に出回ってるし。
♠ あとやっぱりCGのほうが安上がりってのもあるよ。だからつい見せたくなる気持ちはわかるのだが‥‥

CGモンスターの是非

♦ それじゃいよいよ、この映画でいちばんかんじんと思える、CGモンスターの仕上がりについて。
♣ 最初の氷から飛び出すやつは、早すぎてよく見えなかったので、ヘリの中で変身するのがCG thingとの最初のご対面かな。
♥ 「やっちまったなー」と思いましたわ。頭が2つに裂けるやつの変形なんだけど‥‥
♠ いかにも3Dモデルに顔のテクスチャー貼りましたっていう出来で、もうがっかり。
♦ あれは特別下手っていうか、単なる失敗だったんじゃない? あとのほうのはちゃんとしてたし。
♠ マジであれは寒気がした。このあともずっとこれだったら冒涜なんてものじゃないと思って。

非常に評判の悪かったヘリのCG thing

非常に評判の悪かったヘリのCG thing。ぜんぜんリアリティがない。

♠ それで心の底から確信したのは、CGはホラーじゃ使えんということ。
♥ 『サイレントヒル』は?
♠ あれは元がゲームだしさあ、元からCGだからいいけど、一度「本物」見ちゃうと見劣りがひどい。

♣ 何が違うかって動きよね。CGってヌルヌル動くんだよね。
♦ それがかえってグロくていい場合もあるんじゃない?
♥ そう思ってたけど、メカニカルは当然ギクシャクしてるじゃない。あのギクシャクした唐突な動きがかえってキモい。予想のつかない虫的な動きで。
♥ わかる! ゴキブリの何がキモいって、どっちに走ってくるかわからない点なんだ。その点ヌルヌルCGは逆にいかにも人間が操作してますというふうに見える。
♠ CGって軟体動物みたいじゃない? 見るからに骨入ってない感じ。
♣ 確かにオリジナルのthe thingは固い骨の上にしっかり筋肉が付いてる感じがした。
♠ 実際、メカは金属の骨格にラテックス(だかなんだか)かぶせてるから。
♥ そこが異形ではあるけどやっぱり生物っぽく見えるんだけど、CGはなあ。
♣ 人体に触手がグサグサ突き刺さるシーンがあったじゃない。でも軟体動物だからあんなの刺さる気がしないんだよ。痛そうでない。
♥ その点、オリジナルで犬に突き刺さるのは見るからに痛そうだった。犬はキュインキュイン鳴くし。
♦ 人の悲鳴より犬の悲鳴の方がこたえるよね。

♠ あとCGで不満だったのは連続変形かな。『The Thing』で画期的だったことのひとつが、メタモルフォシスが1回で終わらなくて、どんどん連続して変形していくところだったんだよ。
♥ Norris-thingですね。
♠ うん、あの細動除去器(心臓に電気ショックを与える医療器具)のシーン。胸がズボッ、歯がニョキッ、ガブッ、腕がブッツリと、ここまでは誰でも予想できるんだよ。問題はその後で、その穴からニョキニョキ木が伸びて、その木のてっぺんに顔と足がついてるという展開は予想できなかったんで、私はもうニヤニヤ笑いが止まらなかった。
♣ しかもみんながそれに気を取られてる隙に、本体の頭がズルズル、ブチッと千切れて、蜘蛛の足が生えてちょこちょこ歩き出す。あのしつこさには爆笑してしまったわ。
♠ でも当然ながらあれは実写じゃワンカットではできなくて、実際カットのつなぎ目もかなり粗かった。ところがCGならあれを連続でできると思ったので、CG版が見たいとか思ってたんだ。ここでも同じじゃなくても似たようなのはやるだろうと。

何度見てもキモいNorris-thing(1982年版)

何度見てもキモいNorris-thing(1982年版)。こういうの見ちゃうとやっぱりCGはアホくさくて見てられない。

♦ ところがなかったと?
♠ いちおうスプリットフェイスのがそうだったようなんだけど。
♣ なんかテンポが悪かったよね。あれはもっとテンポよく変身してほしかった。どれだけ長くブリッジしながら待ってるんだよと(笑)。
♥ でもたいていは、なんでも一気にブワッと見せちゃうんだよね。それも花ざかり過ぎで装飾過剰。しょせんは絵だからつい余分なものまで書き加えたくなるんだろうけど。しかも変身が早すぎて、早変わりじゃないんだから!と言いたいところが多かった。
♣ そういやメカニカル変身ってどれもすごいゆっくりだったな。あれ以上は早くできなかったんだろうけど。
♦ あっという間だから、あんまり怖がってる暇がないのよね。
♣ それにゆっくりのほうがグロい。絶対グロい。

♠ それとCGって無菌というか清潔な印象なんだよ。CGだと血糊まで血液サラサラな感じじゃない(笑)。
♥ わかる! その点、オリジナルの血糊はなんかドロドロ、ネバネバしてて、見るからにえんがちょ! 触っただけでうつりそうという感じ。
♣ the thingには火炎放射器以外では絶対に攻撃したくないね。Alienと同じで、銃なんかで撃ったらビシャッと返り血浴びそうで。
♣ 血だけじゃないよ。CGそのものが清潔なんだ。だからあんまり怖くない。
♠ だいたい血も少なすぎ! もっと血みどろにしないと。
♦ 元はケーブルとかを隠すためになんでも血みどろだったからね。
♠ そんなの何の手間でもないのに肉が生っぽ過ぎる。あと白いところも入れて! 人体にしちゃ脂肪が足りない!
♥ いろいろと注文がうるさい(笑)。

グロCGあれこれ

♦ 今回、このレビュー書くためにスチルを集めてたのよ。1982年版と2011版の両方ね。それで新しいほうのスチルはどれ見てもなんにも思わないのに、ボッティンthingはスチルで見ても「おえー!」と思うほど気持ち悪いの。こっちのほうが写真も少ないし、画質も悪いし、何より私は何度となくビデオで見てるのに。
♠ gifなんてマジで吐くレベル。
♦ 結論としてCGはホラーに向かないってこと?
♣ 単にこの映画のCGが安かっただけじゃないの? 何度も言うけど『サイレントヒル』のモンスターなんかほんとにグロいし。
♠ でもグロさのレベルが違う。生理的嫌悪を引き起こさないんだよ。しょせんは絵だから。
♥ 『サイレントヒル』はデザインの良さだけは買う。

♥ 余談だけど、人体がパカッとお花みたいに開いてそこに歯が生えてて触手ビルビルってはやりなの? 最近のホラー見ると、そういうのばっかりのような気がするし、この映画でもやたらそればっかりだったんだけど。
♣ それこそNorris-thingが元祖でしょ。
♦ さすがにこう何度もやられると白けるね。
♥ 人の胸から次々とチェストバスターがぴょんぴょん飛び出してくるレベル(笑)。ああいうのは1回限りだからいいのに。

♦ じゃあ、この映画のオリジナルというと。
♣ スプリット・フェイス(1982年版のノルウェー基地で見つかった、人間の顔が左右によじれて裂けたように見える死体)の生成過程を見せたことかな。
♥ 確かにあれは印象的だったから、どうしてああなったのか知りたかった。
♣ 実際は裂けたんじゃなくて、二人の顔が融合してたのね。というだけですが。
♠ あれがブリッジ状態で蜘蛛みたいに歩くのはヘッド・スパイダーへのオマージュかね。
♦ ブリッジで蜘蛛歩きというと私は『エクソシスト』を連想するんだけど。

スプリット・フェイス(融合前)の蜘蛛歩き

スプリット・フェイス(融合前)の蜘蛛歩き

♦ あとはヘリのと女が変身したやつ(どっちも特に特徴なし)と‥‥
♥ モンスターに個性がないね。どれも同じに見えてしまうし、ガバッと体が開くパターンいっしょだし。
♣ 腕モンスターがある。
♠ 腕がポロッともげて、足生えて歩き出すんだけど、『アダムズ・ファミリー』かよ!
♣ 犬thingが出なかったのは残念だ。とにかくオリジナルではあれがいちばんグロかったので。犬でなくてもアニマルthing見たかった。
♦ 『エイリアン』ですらアニマル・エイリアン出してきたのにね。
♥ ホラー映画じゃ人体は破壊されすぎてるせいか見慣れちゃったけど、動物は見慣れないからよけい痛ましくて、かわいそうな気がする。
♣ 結局さあ、CGにはあまりお金かけられなかったのと違う? もともと低予算映画に違いないし。その割に大盤振る舞いで見せちゃったから、なんか安っぽく見えるだけで。

血液検査のシーン

♦ というわけで、ノルウェー人たちはthe thingに憑依された人間を割り出すため血液検査をすることになるんだが、the thingの妨害工作により、検査ができなくなってしまう。というところまではオリジナルとほぼ同じ。それからどうするんだろうと思っていたら‥‥
♠ いやあれは十分理にかなってるんだよ。the thingは生体しか同化できないってのは。だからその意味ではこっちのほうが科学的なぐらいなんだが、ならばたいてい誰もが体の中に入れている人工物ということで‥‥
♥ 「はーい、皆さん、お口を大きく開けて、あーん」(笑)
♣ オリジナルのあのシーンは、たとえモンスターじゃないとわかっても、あの「ジュッ!」という音が怖くて、すごい緊迫感だったのに。
♥ 虫歯の検査だもんな。
♠ しかも虫歯のない人や詰め物をしてない人は人間とみなしてもらえない(笑)。
♦ (苦笑しながら)でもさ、口の中ってある意味グロだし、喉の奥からあれがピギャーッと飛び出してくるんじゃないかと思うと、そこそこのスリルはあったよ。
♣ いっそ、そうすればよかったのに。結局あそこでは何も起こらないから、よけいオマヌケな感じがしちゃうのよね。
♥ それと、あの場面では全員を縛り上げておかないと意味がない
♠ そういやそうだった。そうしないともし彼らの中にthe thingがいた場合、確実に何人か死ぬからね。

ポスターのこと

the-thing-2011-poster♣ でもポスターはかっこいいよね。これだけはオリジナルよりかっこいい。
♦ オリジナルはフードをかぶった男(マクレディ?)の顔がキラキラ光ってるという、よくわからんもんだった。
♥ これも名シーンだよね。ベニングスだっけ?
♠ “It’s not human yet.”「まだ人間じゃない」というキャッチコピーもいいな。
♣ ところがこんなシーンはこの映画にはなかったという。
♥ マジ?
♠ 少なくとも記憶にない。見たのがテレビだからもしかしてカットされたのかもしれないけど、原則としてBS、CSってカットなしでしょ?
♦ じゃあ、完全にオリジナルへのオマージュで作ったの?

女性をヒロインにしたことについて

ヒロインのケイト

ヒロインのケイト。うしろうしろ!

♦ そういえば、ヒロインの話が出てない。『The Thing』といえば、映画史上でも稀な、「女性がひとりも出てこない映画」で、そこを褒め称えてたので、さぞかし逆上してるのかと思ったら。
♥ いいんじゃない? 私はむしろ『The Thing』の主人公のマクレディ、っていうかカート・ラッセルがじんましんが出るほど嫌いだったから、女の子の方がいいわ。
♣ オリジナルが男だけだったからこそ、差別化を図るためにヒロインものにしたんでしょうね。
♦ あれ? 意外と好評。
♥ 演じたメアリ・エリザベス・ウィンステッドも知的なブルネットで、学者に見えなくもないしね。
♠ 何者だっけ?
♦ 『ダイハード4』でブルース・ウィリスの娘役をやった人としか覚えてない。

♠ でもこれはないな。映画の学者ってみんなそんなものだけどリアリティがない。
♥ なんで? 美人過ぎるから? 学者がブスばっかりだと思ったら大間違いよ。
♠ 若すぎるから。日本みたいな年功序列はないにしても、国を揺るがす、どころか世界を揺るがす大発見なわけでしょ。それもまだ国家機密扱いの。そんなところに大学院出たばっかりみたいな娘っ子を連れて行くわけがない。
♦ なるほど。言われてみるとそうだ。
♠ 小保方さんみたいに色仕掛けで取り入ったというならまだしも。
♦ 時事ネタを入れるなって。あとから読んだ人がわからないから。
♣ しかし現実のアメリカの学者なんて見ると、どのジャンルでもめちゃくちゃキャラの立ったキチガイ博士みたいなのが多いのに、どうしてああいうせっかくのキャラを活かさないのかと思うね。映画の科学者というと冷静沈着でクールな奴ばっかりでつまんない。
♥ あれそのまんま出すと、「コメディでもないのに悪のりしすぎ」って言われるからだよ。

♥ おもしろいのは、彼女がしばしば『エイリアン』のエレン・リプリーを彷彿とさせるんだよね。
♦ 宇宙船の中で隠れてる彼女にthe thingが触手を伸ばしてくるところなんかモロでしょ。
♣ これ、意識してたらしい。監督がコメンタリーでそう言ってるって。
♠ だめだあ! それなら下着姿にならなくちゃ(笑)。
♦ ヒロインとしては悪くないけど、体を張った色気はいまいちでしたな。
♠ 『グラビティ』といい、なんかリプリー・オマージュ多いね。
♥ そりゃリプリーさんは究極のヒロイン女の理想ですもの(遠い目)。
♣ シガニーお姉様もてすぎ(笑)。

♦ でも女性を主人公にすると興ざめしない? どうせ死なないことはわかってるし。
♠ この映画の場合は死ぬことがわかってるんだよ。
♦ あっ、そうか!
♣ と、信じ切っていたんだけど、実はラスト‥‥
♥ その話は最後にしよう。

『The Thing』と『エイリアン』

♣ 女性はもうひとりいたよね。
♠ いいんじゃない? どっちもキャーキャー言うタイプの女性じゃないし。
♦ 『エイリアン』のもうひとりはキャーキャー言うタイプだったよ。
♥ そういやあれも女性は二人だったし‥‥胸が裂けてピギャーッと‥‥んんん? もしかして『The Thing』と『エイリアン』って似てる?
♠ そりゃ似るなってほうが無理でしょう。どっちも宇宙から来た寄生型モンスターと逃げ場のない密室の中で戦う話だから。
♣ さらに「体内の蛇」タイプのクリーチャーだというところまでいっしょ。
♥ あれー、そんなにそっくりだなんて、今までほとんど意識してなかった。どっちも死ぬほど好きな映画なのに。
♠ 『エイリアン』との比較は最初から出てるだろうが。

♦ たぶん公開時、かたや宇宙SF、かたや化け物ホラーとして紹介されたからじゃない?
♥ どっちもSFホラーじゃない。
♠ ジョン・W・キャンベル・JrはアメリカSFの父だぞ。その意味じゃこっちのほうがSFとしては権威があるぐらいだ。
♣ 男性原理の映画か、女性原理の映画かという違いもあるかも。Alienはメスらしいから。
♥ IMDbだったかな? 読んでたらthe thingの性別で論争が起きているようで笑った。そこでもthe thing=メス説が有力だったよ。
♣ ええー! なんかやだ。
♠ 穴があればなんでも女かよ。
♥ いや、「歯の生えたヴァギナ」というのは向こうじゃ男の悪夢の原型のひとつだから。

国籍の謎

♥ 女がいるのはいいけど、なんでノルウェー基地にアメリカ人がぞろぞろいるわけ?
♦ そこはほら、大人の事情でしょ。アメリカの観客はノルウェー語に字幕が付いた映画なんか見たくないという。
♠ でもオリジナルに忠実に作ったんでしょ。カーペンター版ではノルウェー基地にアメリカ人がいたなんて一言も言ってないぞ。
♣ こういうところだから多国籍チームがいても不思議はないじゃない。それで多国籍チームなら英語が標準語じゃない。
♠ でも映画内では国家機密扱いにするとかなんとか言ってたよね。だから負傷者の搬送にも反対してたぐらいで。なのにチームにわざわざアメリカ人を引き入れるのがわからない。

♣ 英語で思い出したけど、ラースが生き残るのは最初からわかってたんだよね。
♦ なぜ?
♣ だって、チームで英語がしゃべれないのは彼だけだから
♠ ああっ、そうか!
♥ オリジナルの冒頭、犬を追ってきたノルウェー人たちは、必死でアメリカ隊に危険を伝えようとするんだけど、ノルウェー語なので伝わらず、結局誤解から撃ち合いになって殺されてしまう。
♦ 普通、南極に来るレベルの北欧人なら英語ぐらいしゃべるから、今にして思うとあの脚本は無理があったな。
♣ あのとき意思の疎通ができてれば、映画はあそこで終わってしまうからしょうがないよ。

♠ 私は二人生き残ってたということだけは覚えてたから、その一人はカーターだっけ? 最後まで生きてたあのアメリカ人だと思ってたよ。あいつがマクレディの役柄かと。
♣ ところがそうじゃなかったんですね。英語がしゃべれるというだけで、彼は最後に殺されるのがわかってた。
♥ しかし、最後に突然現れたっていうか、戻ってきたヘリ・パイロットは誰? あんなのいたっけ? いたとしても出て行った場面の記憶がないんだけど。
♣ オリジナル『The Thing』も最初見たときはそうだったけど、男たちはみんな似ていて誰が誰だかわからない。
♠ 私も狙撃者はヒゲ面のクマ親父だったということだけ覚えててさ、でもカーターはそうじゃないから変だなあと思ってたの。
♥ そしたら最後で唐突にラースが生きててああなった。彼は確かにオリジナルのノルウェー人そっくりだわ。

舞台について

♥ でもオープニングはまばゆいまでの真っ白な南極風景で始まって、すぐに暗くて不気味な夜のシーンばかりが続くというあたり、オリジナルの良さをそのまんま残したから許してあげる。
♠ 私は南極が好きなんで、南極が舞台っていうだけでも5割増しよね。
♦ しかしあの南極基地のセット、よく再現したなあ。ほんとに元のセットで撮ってるみたいだった。
♠ これは80年代という設定だからできたことだな。今の南極基地は宇宙基地みたいにハイテクでピッカピカだからね。
♥ そうなの?
♦ やっぱりホラーはこういう薄暗くて狭くて汚いところを舞台にした方がいいよね。
♥ ノストロモ号(『エイリアン』の舞台となる宇宙船)も未来の宇宙船だから船室はピカピカなんだけど、貨物船だから船倉は暗くて汚くてイメージ通りだった。

宇宙船の話

♦ そういや、あの宇宙船どう思った? 今回は宇宙船の中も見せるんだよね。
♠ てっきり中にはスペースジョッキーの死体と卵があるものとばかり。
♥ だからそれは『エイリアン』だって!
♣ さすがにギーガーはパクらなかったよ。そんな予算もなさそうだし。
♠ でもなんか似てるんだよな。シチュエーションが似てるとああなっちゃうのか。
♥ とにかく『プロメテウス』もあったし、てっきりあの宇宙船には本来の持ち主の異星人が乗ってるものと思ってた。

♦ 実はオリジナル・アイディアでは、乗ってたんだけどね。
♥ マジで?
♣ 監督が撮った最初のバージョンでは、あの「テトリス」(キラキラ光るキューブ状のモザイクみたいなやつ)のところには異星人のパイロットの死体があったんだって。
♠ えー!
♣ この異星人たちはあちこちの惑星から生物標本を集めている途中で、だけどその中にいたthe thingが全員を殺しちゃったという設定で、最後にひとりだけ生き残ったパイロットは、宇宙船を意図的に地球に墜落させて、the thingと無理心中するつもりだったけど、the thingは生き残ってしまった‥‥という設定だったんだって。
♦ でもプロデューサー連に反対されて、この案はすべてボツ。パイロットを隠すためにあんな変なモザイクをかけたんだそうだ。

♠ えー、元のほうが絶対いいじゃん! わざわざ作ったエイリアンを隠す必要もないし。
♦ そこら辺がバカ・プロデューサーらしいところ。
♥ でもそれなら、やっぱりあれはthe thingの宇宙船じゃなかったんだね。実は諸説あったんだよね。あれを操縦していたのはthe thingなのか、別の宇宙人なのかって。
♣ そもそもthe thingの正体ってのが謎なのよ。AlienはシリーズだからだんだんAlienのライフサイクルや生態もわかってきたけど、the thingは謎のまま。
♦ そもそも本体がどんな格好なのかもわからない。

the thingの謎

♥ これは諸説あってね、あの細胞1個1個がthe thingなんだって説もある。
♠ 単細胞生物かよ!
♣ それはないね。明らかに知性あるし。
♦ 集合知性かもよ。アリみたいな。
♠ それにしちゃ賢すぎる。
♥ でもあの血液検査の場面、血の一滴でも逃げようとするってのは細胞単位でも意識がある証拠じゃなかった?
♠ でも単細胞生物が人間に擬態するとき、仲間内でも違いがわからないほど完璧に擬態するってありうる?
♥ それどころか偽装工作までやるよ。
♦ 常識的に考えてあれはありえないよね。あれほど異種の生物が人間の文化や感情まで理解してるってのは。
♣ じゃあ、乗っ取られた人は自分の意思で行動してるってわけ?

♠ 待て待て。私の推理では、やっぱり乗っ取られた人間にはそれがわからないんだと思う。ちょうどAlienに寄生された人間が自分ではそうと気付かないように。
♥ ふむふむ。
♠ だけど、本人の知らないうちに、the thingにコントロールされているわけ。ちょうど寄生虫が、寄生したカタツムリに、わざと高いところに登って自ら鳥に食われるよう仕向けるように。
♣ 確かにそれだとあまり高い知性は必要ないね。「取り憑かれたことがバレないようにしろ」とか、簡単な指令だけ出してあとは本体に任せればいいんだから。
♥ じゃあ、あのキエー!が始まったときはどうなってるの? 明らかにもう人間の意識は残ってないよね。何がきっかけでああなるの?

♠ それについても仮説があるんだ。私が思うに、the thingは不定形の寄生生物で、独自の形は持たず、宿主の姿形を借りて生きている。と、ここまではいいね。
♦ 道理ですな。
♠ でも彼らの生まれた惑星で、本来の宿主の中にいるときのthe thingはあんなんじゃないんだよ。
♣ 確かにちょっとおかしいよね。あれだけ知性のある生物にしちゃ、行動も突発的ででたらめだし、形もむちゃくちゃ。あれじゃどんな環境でもあんまり長生きできそうにない。
♠ ところが、その本来の生態系から引き離され、地球に置いてきぼりにされたthe thingとしては、やむなく地球の生物に取り憑いたんだが、基本的な生理が違うために融合の途中で狂ってしまって「暴走」が始まってしまう。つまりあのthe thingは病気だし正常じゃないんだよ。狂ってるからあんなにめちゃくちゃな格好だし、異常に凶暴になるわけ。
♥ 妙に説得力のある意見。
♦ 確かに、ここで正体現しちゃまずいでしょって場面で、いきなりキエー!が始まるからね。
♣ あの醜悪な姿も細胞単位の暴走と思えば、一種の奇形としてありうるかも。

♦ いいじゃん! その意見、ハリウッドに売り込めば?
♣ だめだと思う。すでにもっと過激な説も出てるもん。the thingに害意はなく、友好のために地球に来たんだとか(笑)。
♥ なんだ、そりゃー!
♣ いつも最初に攻撃するのは人間側だって言うんだよ。それでしかたがないから応戦してるだけで、the thingはthe thingの言葉で「仲良くしましょう」って言ってるのに、人間にはわからないだけなんだって(笑)。
♦ もうなんでも言ったもん勝ちだな(笑)。
♠ そもそも寄生生物の言う仲良くって、自分の中に取り込むことなんじゃ‥‥

『寄生獣』と『The Thing』

♣ 寄生生物で思い出したけど、ちょうど今マンガ『寄生獣』がアニメ化&実写映画化されてるんだけど、やけに似てない?
♥ 顔がぱっくり裂けたり、そこから刃物が飛び出してきてグサッと刺さったり‥‥
♠ 『寄生獣』こそ『The Thing』オマージュでしょ。作者がそう言ったかどうかは知らないけれど。
♦ 何年だっけ? 『The Thing』が1982年で、『寄生獣』が1988年連載開始。
♥ モロぱくりですな。
♠ 忘れたの? あの映画が公開されてからというもの、マンガも映画も『The Thing』オマージュの洪水だったじゃない。『寄生獣』もそのひとつだと思ったから、当時の私は「またか」って感じであまり評価してなかった。
♣ モンスターの造形自体は、むしろこの映画のほうが『寄生獣』に似てるんですけどね。これは映画の方が『寄生獣』をパクったのかも。

ケイトに何があったのか?

♦ というわけで、ラストは男二人が生き残り、ヘリで犬を追っていくことは見る前からわかっていたので、サプライズは何もないはずだったのだが、その前に疑問が残ってしまった。
♣ ヘリ・パイロットが帰ってくる前、ラースがまだ死んだと思われていたとき、最後に生き残るのはケイトとカーターのアメリカ人二人。ところがカーターが付けていたピアスがなくなっていることに気付いたケイトは、涙ながらに彼を焼き殺す。
♥ でも変身しなかったよね。もしかして人間だったの?
♠ 姿は変わらなかったけど、例の超音波を発していたからthe thingだったのは間違いない。
♦ ひとり残されたケイトは、雪上車の運転席で放心した顔。彼女の出番はこれが最後。
♥ 彼女がどうなったのか知りたくて、エンド・クレジットの最後まで見てしまったよ。もう一回ピギャー!があるんだとばかり思って。

♦ ケイトの運命は想像にゆだねる、という方針みたいね。死んだのかも知れないし、逃げたのかも知れないと。
♠ なんか消化不良だな。
♦ これもアメリカ人をいちおう「主役」にしなきゃならない大人の事情かな。最後はノルウェー人しか生き残らないのはわかってるんだが、それじゃ締まらないから、その前にアメリカ人の見せ場を作るための。
♣ いちおうこれも、オリジナルのマクレディとチャイルズの宙ぶらりん型エンディングをまねたんじゃないの?
♠ あれはすごい緊張感の中で終わったからいいんだけど(ていうか、これ以上考えられないベスト・エンディングのひとつだよね、あれって)、こっちはぶつ切りすぎて、彼女のこと忘れちゃったんじゃないかと思うレベル。

♦ これ、IMDbで読んだんだけど、コメンタリーで監督が、「ケイトは雪上車でアメリカ基地に向かい、マクレディとチャイルズを救出して3人で生還する」という可能性もほのめかしてたらしい。
♣ ええー! それは!
♠ だめだ、そんなハッピーエンドなんか!
♥ でも、なんの救いもない話なんだから、ちょっとぐらいそういう夢を見るのもいいんじゃない?
♣ 私がロメロのゾンビで想像したみたいなエンディングだなー。でも時間軸が合わないような気がする。
♦ 基地までの行程が何日もかかるとすれば?
♠ だって犬が走って行ける距離だぜ。
♥ the thing犬だからものすごいスピードとスタミナなんだよ。
♣ なんだそりゃ。

♦ えーと、アメリカ基地は完全に破壊されたから、マクレディとチャイルズはどっちにしろ凍死する運命だったんだよね?
♠ うん。
♦ でもノルウェーはそこまで破壊されてなかったよね。だったらケイトはあそこで生きていけるんじゃないの?
♣ でもアメリカ人たちが発見したときは室内も凍り付いていたってことは、暖房は壊れてたんじゃないの?
♥ どっちみちあそこには誰もいなかったし、ケイト自身が存在しなかったはずの人間だから、その推理は無理がある。
♦ うーん。

♦ というわけで、CGの出来はいまいちだったが、全体としては低予算のわりに楽しめる映画だった。
♥ ていうか、私は強引に楽しんだだけ。好きなものは骨までしゃぶる主義
♣ それで『The Thing 3』はいつですか?(笑)
♠ あり得ないことではないな。
♦ あれ、全部殺したんじゃなかったっけ?
♥ ヘリに乗っていたやつがどうなったのかは描写されていない。墜落で死ななければ生きてるかもしれない。
♠ 同乗していたカーターともうひとりが生き残ったということは、the thingも生きてる可能性大だな。
♣ ていうか、カーターに取り憑いたのがあれなんじゃない?
♦ その辺もよくわからないんだよね。不定形生物なら何人もの人に寄生できるのかも。
♥ なんか3も作られそうな気配。
♠ それはそれで楽しみだけど。

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