【映画評】キャリー (2013) Carrie

carrie-2013

スティーヴン・キング原作、ブライアン・デ・パルマ監督の1976年の映画のリメイクだが、結果として(オリジナルのキャリーを演じた)シシー・スペイセク賛歌で終わる。いじめについての被害者の気持ちをまったく配慮しない発言あり。

Director:

Kimberly Peirce

Writers:

Lawrence D. Cohen (screenplay), Roberto Aguirre-Sacasa (screenplay), Stephen King (novel)

Stars:
♥ あの『キャリー』を「美少女」をヒロインにして撮るなんてまったく何考えてんだか‥‥

♣ あの映画はシシー・スペイセクで持ってるようなものでしたもんねー。
♥ オリジナルの『キャリー』は私の考えじゃホラーのオールタイムベストを選べば10位以内確実なんだが、その成功の理由は原作10%、監督30%、女優60%だから。
♣ あのシシーの後だから、誰が演じても文句言うのはわかってたんだけど。
♥ というわけで、これはスティーヴン・キング原作、ブライアン・デ・パルマ監督の1976年の映画のリメイク

♣ 文句言うのわかってんならなんで見たの? 『The Thing』ならばまだ今のCG技術でどうなるかっていう期待もあったけど、『キャリー』はあのオリジナルを越えるのはまず不可能だと思うけど。
♥ たまたまデ・パルマの『ブラック・ダリア』を見ちゃってさ、それでなんかモヤモヤしてたところへ、これをテレビでやってたから、つい好奇心に駆られて見ちゃった。
♣ いったい誰がキャリーを演じるんだろう?という好奇心ね。でも主演がクロエ・グレース・モレッツだなんて知らなかった!
♥ ミスキャストっていうか、これじゃもう『キャリー』じゃないじゃん。
♣ でも本物のティーンエイジャーがキャリーを演じたのはこれが初めてだって。2002年にもテレビ・ムービー化されて、これが3度目の映画化なんだけど。
♥ 若きゃいいってもんじゃないでしょ。たしかにシシーはもうけっこういい年だったし、若い頃からババア顔だったけど、なぜか少女の傷つきやすい脆さと、それとは裏腹な危険な色気がむんむんしてたもん。
♣ 今回はレズ路線か。それで♥が出てきたのね。

♥ 愛してたんだよー、シシー! はっきり言ってブスだけどさ、なんとかしてあげたくなるタイプのブスなんだよね。
♣ ああいうのはブスって言わない。アメリカのブスって本物の化け物だし。
シシー・スペイセクは、あー、超個性的女優さんというだけ。しかもおよそハリウッド女優らしくない。
♥ 『ダレン・シャン』のヒロインにもそんなこと言ってたよね。
♣ あの子はほんと普通のお嬢さんというだけ。その意味シシーには確かに『ブラック・ダリア』で言ったような女優のカリスマがあったから。演技力は言うに及ばず。

Cissy-Spacek

シシー・スペイセク then & now

♥ それでつい思い出して、今どうしてるのかしらと思って調べたの。あまり作品には恵まれないようだけど、ちゃんと現役で女優やってるのね。写真も見たけど、見事にブスのおばさんになっていてほっこりした。
♣ 意味がわからん!
♥ だからさー、ブスでも好感の持てるブスっているじゃない。
♣ 鼻の整形したらしいのは気に入らないな。なぜか整形って年取ってくると崩れてみんな同じ顔になるんだよね。
♥ むしろ整形すべきところは鼻じゃないだろう!と。細い豚目だろうと。
♣ いや目は小さくもないし、吊り目でもないんだけどなぜかそう見えるのよね。
♥ お化粧一切しないせいもあるかも。きちんと化粧すればそれなりの美人だと思うんだけど。
♣ ブロンドの人はまつげも眉毛も色がないからないみたいに見えるしね。普通はごってりマスカラ塗ってるんだが。
♥ なぜかいつもスッピン。ところでお嬢さんも女優になったんだよ。シュイラー・フィスクっていう名前の。
♣ (写真を見ながら)あまり似てないね。なんかやけに大柄で骨太だし、お父さんに似たのかな。娘の方が美人だけど、そのぶんつまらない顔になった。だいたいママとのツーショットばっかりじゃない。やっぱり親の七光りで売ってるの?
♥ 知らん。私はそれよりシシーがまだこれだけ注目されてるのに驚いたよ。
♣ 一度見たら忘れられない顔ですからねえ。
♥ 女版ケヴィン・ベーコンとでも言うか、変な顔だけど妙に惹かれるタイプの顔。
♣ 私はシシー・スペイセクなら『キャリー』の前の『Badlands』(『地獄の逃避行』)のほうが好きだったな。本当に初々しくて。映画はティーンエイジャー版『ボニーとクライド』なんだけど。
♥ まだ美少年だった頃のマーティン・シーンが相手役だしね。アルトマンの『三人の女』の貧乏少女の演技も超絶すごかった。

♣ ところでこれ、『キャリー』のリメイクの話でシシー・スペイセクとは何の関係もないんですが。
♥ だって見れば思い出しちゃうじゃない。詳しいことは当時のリビューに書いたからあまり繰り返したくはないんだけど、この当時のシシーはほんとキャリーそのものだった。まずいじめられっ子と言われて、これだけ納得するルックスもないじゃない。
♣ べつにいじめられるのはブスだけじゃないんだけど‥‥
♥ でもなんかいじめ倒したくなるルックスしてるじゃない。
♣ とにかく傷つきやすそうで脆そうに見えるので、彼女がいじめられるのを見るのはものすごく痛々しくてかわいそうで、見るに堪えないんだけど‥‥
♥ その反面、なんでか、あのみじめさ、情けなさを見るとつい余計いじめたくなるという、やっぱりいじめられっ子のタイプってあるよね。

♣ それに較べるとクロエ・モレッツではいじめ甲斐がないと。
♥ まるっきりない。つまんない。とにかくシシーは何にも演技しなくても、そこに立ってるだけで、ああ、この子は不幸で悲しい生い立ちなんだなって思わせるけど、クロエなんてごく普通の家庭でまっとうに育ったお嬢さんにしか見えないじゃない。
♣ ま、それは演技力の違いもあると思いますがね。
♥ クロエもそれを意識して、わざと猫背で上目遣いとかしてみせるんだけど、あんなんじゃぜんぜんダメ。かわいそうにも見えないし、いじめ甲斐もない。というわけで証拠写真。

carrie-shower

有名な冒頭のシャワーシーン比較

♣ やっぱりデ・パルマ意識して、カメラとか演出とかパクりまくりなんだけど、素材ひとつでここまで変わるという。
♥ しかしすごい顔(笑)。
♣ 笑うなよ! ファンなんでしょ。
♥ 貞子みたい。
♣ てか、貞子って絶対キャリーをモデルにしてない?
♥ だからシシーはこういう顔を見せられるからすごいのよ。このシーンが印象的なのも女の子がいちばん見られたくない恥ずかしい場面を、みんなに見られたうえ嘲笑されるからじゃない。
♣ 確かにそこがたまらなくかわいそうで痛々しいんだけど、クロエじゃ「ふ~ん」としか思わない。
♥ だいたいこのオープニングは「セックスと血」というこの映画の本質をさりげなく象徴する大事なシーンじゃない。クロエ・モレッツから血の臭いがするかっての!

♣ それと同時にこの弱さがたまらなくセクシーなんだよね、シシーは。
♥ そういうこと。男なんか顔しか見ないバカだから、どうせクロエの方が人気あるんだろうけど、この当時のシシー・スペイセクはほんとゾクゾクするほど‥‥萌えるっていうじゃないし、魅力的っていうんでもないけど、なんかゾクゾクゾワゾワするものがあって、それがたまらんかった。
♣ その一方で、「キモ!」と思わずにもいられないという(笑)。
♥ だいたいいじめっ子なんて単細胞のバカだから、彼女のこの複雑な魅力はわからない。でもなんか辛抱たまらんからついいじめてしまうんだと思うな。
♣ そういうもんか?

♥ まあクロエは本当に若いし、シシー・スペイセクみたいな怪物と比較するだけかわいそうかも。
♣ でもそれこそ演出次第だし、最初は物足りなくても最後には豹変するのかもしれないと思って見ていたら‥‥
♥ 最後までああだったな。ただのおとなしい可愛い子というだけ。
♣ だからあの血まみれプロムのシークエンスもなんだーという感じだった。

carrie_blood♥ そもそもあれ見てて思ったけど、最初にかぶる血はCGだし、顔の血はいかにもメイクさんが筆で描きましたって感じだし、偽物過ぎてヘドが出た。
♣ シシーはあの形相もすごかったけど、長い髪が血でべっとり頭皮に張り付いたところが生理的にすごいいやで良かったのに。
♥ とにかくクロエ・モレッツがいくら怖い顔して見せたってシシーの比じゃないんだよ。
♣ 若いも若いけど、そもそもあどけない童顔だしね。せめてメイクで怖く見せる程度の努力はしてもいいのに。
♥ シシーはあの弱々しくみじめったらしい生き物が突然般若の顔になるところがすごかったのに、この映画はなーんもなし。
♣ もうこの時点でホラーとしても何にもないな。単なるアイドル映画?

♥ IMDbを見てたら、キャリー役にはリンジー・ローハンも候補に挙がってたそうよ。それも原作者のスティーブン・キングの熱烈な推薦で。
♣ スキャンダルの女王リンジーですか? いかにもキングらしい下品な好みだが、クリスにはぴったりかも。
♥ いやキャリーの役よ。キングが言うにはシシーに似てるからって。
♣ 似てない! シシーはあんなに太ましくないし、ふてぶてしくない。
♥ あえて言うなら美人のようなブスのような微妙な顔つきってところぐらいだね。でも少なくともリンジー・ローハンならもっとエロっぽい話になったはず。あと汚し甲斐もある。クロエ・モレッツじゃ清潔で人畜無害すぎて、ほんと毒にも薬にもならない感じ。『ヒューゴ』みたいなおとぎ話ならいいけど。

♣ 監督って誰なの?
♥ キンバリー・ピアース(Kimberly Pierce)。『ボーイズ・ドント・クライ』の監督・脚本の女流監督だからバカじゃないと思うんだけど。
♣ おおー! デ・パルマとつながったじゃない。『ブラック・ダリア』のヒロインがヒラリー・スワンクだし。
♥ でもこれを見るとかえってデ・パルマの偉大さがわかるだけ。
♣ 偉大っていうか、当時はけっこうバカにして笑ってたんですがね。あの無意味なスプリット・スクリーンとか、ラストのびっくりエンドとか、やり過ぎなところがいかにもB級で(笑)。
♥ 笑われたってすごいものはすごいんだ。そうでなければ、どうして『キャリー』みたいなB級ホラーが映画史に名を残すことになろうか、いやならない(反語表現)。
♣ まあデ・パルマの話は『ブラック・ダリア』のところですればいいや。

新旧母子対決

新旧母子対決

♣ しかしヒロインは比べ物にならなかったけど、それをおぎなってくれるんじゃないかとちょっと期待してたのが、キャリーの母マーガレットを演じたジュリアン・ムーア(笑)。彼女こそメイクいらずのサイコ顔だし、魔女顔だし、狂信的キリスト教徒を演じるにはこれ以上の人材は考えられないからね。
♥ いやいや、オリジナルのパイパー・ローリーだって、そんじょそこらのキチガイばばあじゃなかったすよ。これはいい勝負だね。
♣ で、この勝負の結果は‥‥?
♥ 顔だけならジュリアンの圧勝なんだよね。メイクなしでも骸骨みたいだし。パイパー・ローリーは顔は怖いんだけど、チマチマした丸顔で小柄なところがどうも迫力不足だと前から思ってたから。でもやっぱり演出力の差でお母ちゃんもオリジナルには勝てなかった。
♣ ジュリアン・ムーア好きでしょ?
♥ いや、なんで?
♣ 怖い顔のおばさん好きっていつも言ってるじゃない。
♥ それはイギリス人だけだって。こんなキモいおばさん嫌い。
♣ 何を言ってんだか(笑)。

♥ おまけに悪役もだめだよなあ、この映画は。なんでクリス(悪役の女子高生 ポーシャ・ダブルデイ)がチビのブルネットで、スー(善玉 ガブリエラ・ワイルド)が背の高いブロンドなわけ? これ逆でしょ? そのせいかいじめにも迫力がない。
♣ オリジナルでクリスを演じたナンシー・アレンは、ほんと意地悪そうな顔してたもんね。
♥ でもデ・パルマは彼女と結婚したんだよね。
♣ スー役のエイミー・アーヴィングなんかスピルバーグと結婚して玉の輿に乗ったし。すぐ別れたけど。なぜかこの映画の女子高生たちは(当然ながらシシー以外は無名の女優ばっかりだったのに)モテモテ。
♥ えー、あんなのよりシシーの方がよっぽど魅力的なのに! やっぱり男って見る目がない。
♣ 私が推測するに、あの女子高生たちの生々しい生態が男心をそそったんではないか?
♥ おまけにクリスのボーイフレンドにジョン・トラボルタだもんね。もうほんとぶっ殺されて当然という憎々しい配役(笑)。
♣ この映画は男も影が薄かった。トミーだって、オリジナルは超ダサいけどそれなりにわかりやすい王子様タイプだったのに、こっちは本当に魅力ないし。

♣ 何もかもダメダメだからきっとラストもダメだろうと思ったら、ちょっとひねってダメになってた。
♥ 例の墓の下から手がニョキッ!のシーンね。オリジナルそのままのシチュエーションでどうなるのかと思ったら、墓にヒビが入るだけ。びっくりすらしない。
♣ ていうか、オリジナルでは最後にこれがスーの見た悪夢だったというネタばらしがあるけど、この映画はそれがないってことは現実だってことでしょ? それじゃまるでキャリーがゾンビになって甦るみたいじゃない。ひどすぎ。
♥ クロエ・モレッツのファン以外にはどうでもいい映画でした。これ見るぐらいならデ・パルマ版を100回見ることをおすすめします。

広告
カテゴリー: 映画評 タグ: , , , , , , , , , パーマリンク