★★★【映画評】47 Ronin(2013)

47-Ronin1史上最大のトンデモ映画になるはずだった(?)ハリウッド版忠臣蔵。当然木っ端みじんに論破してやるつもりで見始めたのだが、なぜか大絶賛に終わったそのわけは? 他にも、菊地凛子がハリウッドでもてるわけ、日本人英語の話、ミヒャエル・エンデとの驚きの一致、など話題満載!

最初はいちいち突っ込み入れながら見ることになるだろうと思ってたのね。でも無理。ストーリー以前にすみからすみまでぜんぶ間違ってるから。1ミリも合ってないし、1ミクロンも日本じゃないし、1ナノメートルも忠臣蔵じゃない。

こうやって見るときれいだけど、映画見ている時は衝撃のあまり、きれいと感じる余裕もなかった(笑)。ただ、カットが変わる毎に「ええ-!」という衝撃画像ばっかりだったので、飽きる暇はなかったとは言える。

翻案ちゅうレベルじゃないんですけど。イマジネーションの洪水で。

♥ 日本が好きな映画通は、それこそ黒澤や小津を見て目が肥えちゃってるからなあ。そうでない一般人にはニンジャ・サムライのイメージぐらいしかないだろうし。
♠ だから、まさにそういう層を取り込もうとしたんだと思うよ。ところが集団自殺で全員死んでアンハッピーエンディングじゃ、アメリカの観客は逃げるでしょうよ。

Director:

Carl Rinsch

Writers:

Chris Morgan (screenplay), Hossein Amini (screenplay), 2 more credits

テレビドラマ『将軍 SHOGUN』の話

♠ 言っちゃ悪いけど、この映画は話のネタにっていうか、思い切りバカにして笑わせてもらうのが目的で見た。いちおうキアヌ主演ということで、制作中から気にしてたし、封切り前からいろいろとアレな噂は聞いてたので。
♥ 『将軍 Shogun』)みたいなものかと思った。
♠ 『Shogun』は日本じゃ超不評だったんだけどアメリカじゃ大ヒット。例によって非国民の私は毎週すごい楽しみにして見ていた

※ 『将軍 SHOGUN』 ウィリアム・アダムス(日本名三浦按針)をモデルにしたイギリス人が江戸時代の日本であれこれする連続テレビドラマ。ジェームズ・クラベルの小説が原作。

♠ あれは笑ったなー。勘違いだらけの日本を、三船敏郎(徳川家康に相当する役)や島田陽子といったそうそうたる役者が大まじめに演じてるのがおかしくて。爆笑コメディーだと思ってた。
♥ 話は普通におもしろいんだけど、小道具とか日本の生活習慣が何もかも変で笑えるのよね。
♠ でもウィリアム・アダムスの人生って日本に漂着する前だけ取っても、波瀾万丈の大冒険だよね。日本に来てからも、マンガみたいにあり得ない人生だし。誰かこれをまじめな歴史映画にしてくれないかな。本国の人にでも。
♥ 大航海時代のイギリスならざらにあった話だとは思うけど、実際アダムズほど出世した人はいないし、当時の日本がヨーロッパから見ればまさに秘境だったからね。

忠臣蔵の話

♠ というわけで、この映画の原案は『忠臣蔵』。なぜか四十七士に日英混血のカイという男がまじっていたという設定で、それがキアヌ・リーブスなわけ。
♥ 忠臣蔵なのは名前と討ち入りと切腹だけだなあ。あとは全部オリジナル・ストーリーと言っていい。
♠ とか偉そうに言ってる私自身が忠臣蔵を知らなかったりするので、いわば私というガイジンから見た『47 Ronin』はどうだったかを語るのもおもしろかろうと。
♥ 知ってるもん! 私だって浅野内匠頭、吉良上野介、大石内蔵助の名前と「殿中でござる!」ぐらいは知ってるもん。
♠ 私の忠臣蔵の知識なんて、そのパロディーのマンガから得たものだけじゃないか。浅野と吉良が宇宙人で、宇宙船の中で「船中でござる!」とか言ってるたぐいの(笑)。
♥ それに毎年暮れになると討ち入りする人たちだってことも知ってるぞ。
♠ すいません。私はヨーロッパのことならたいていなんでも知ってるが、日本の歴史や文化には本当に疎いので。
♥ でもその方がおもしろいので、今回はわざと忠臣蔵については何も調べずに書きました。だから誤解や勘違いがあるかもしれないけど、それもまた一興ということで。
♠ 歌舞伎はおろか、忠臣蔵の映画もドラマも一度も見たことないもんなー。
♥ 「おおいしくらのすけ」という人が出てるのは知ってたが、字がわからないので今調べたんだけど、大石内蔵助なんて変な字書くことも知らなかった。「おおいしうちくらのすけ」じゃないのけ?
♠ それを言ったら浅野内匠頭にも読まない内が入ってる。この謎の「内」はなんなんだよ?
♥ それどころか、忠臣蔵ってもしかして「忠臣・蔵(のすけ)」ってこと?と今思った。
♠ え、そうじゃないの?
♥ 日本通の外人のほうがまだよく知ってるわな。

邦題の話

♥ しかしこの邦題ってなぜか原題のままなのね。『四十七士』でも『四十七人の浪人』でも『47ローニン』ですらない。
♠ 『四十七人の浪人』って『七人の小人』みたいだな。
♥ 私は『七人の侍』のつもりで書いたんだけど。
♠ たぶん、『Shogun』に倣ったんだと思うよ。たぶん映画会社も最初からあれみたいなトンデモ映画のつもりで配給している。
♥ そういや、これはどーでも映画じゃないんだ。
♠ トンデモ映画の一種ではあるが、どうでもいいとは言えないからな。

なんか間違い探しみたい

なんか間違い探しみたいだが、この鎧武者が四十七士。ちなみにここは浅野の屋敷。

あらすじ

♠ まずはストーリー。天狗に育てられた日英混血の少年‥‥
♥ ぷっ!
♠ まだ笑うところじゃない。天狗に育てられた日英混血の少年カイ(キアヌ・リーブス)は、天狗のもとから逃げ出したところを浅野内匠頭(田中泯)に拾われた。家臣の中には混血ということで彼を嫌う者もいたが、浅野の一人娘ミカ(柴咲コウ)は秘かに彼に思いを寄せていた。しかし浅野のライバルの吉良(浅野忠信)は、妖しげな妖術を使う女ミヅキ(菊地凛子)にそそのかされ、妖術を用いて浅野を陥れ切腹させる。吉良はミカを妻に迎えようとするが、それを阻止し、主君の仇を討つため、大石内蔵助(真田広之)率いる47人のローニンが立ち上がる。

これは『アバター』風のカイ

これは『アバター』風のカイ

時代考証の話

♠ あー、もうどこから突っ込んでいいやら!
♥ 最初はいちいち突っ込み入れながら見ることになるだろうと思ってたのね。でも無理。ストーリー以前にすみからすみまでぜんぶ間違ってるから。着物が違うし、髪型が違うし、家が違うし、城が違うし、寺も違うし、墓も違うし、風景まで違うし、小道具のたぐいもぜんぶ違う。1ミリも合ってないし、1ミクロンも日本じゃないし、1ナノメートルも忠臣蔵じゃない。
♠ これが日本の忠臣蔵と思わず、どこかはわからない不思議な東洋の国の不思議なお話と思えば、逆になんの違和感もないよね。私が架空の東洋ファンタジー作れと言われれば、やっぱりこんな感じになるだろうし。
♥ まさに「浪人 in Wonderland」だよ。
♠ 『Shogun』はそれでもまだちゃんと作ろうという意思はあったのに。
♥ なのに変だからおかしかったわけで、これは最初からあえて考証無視のファンタジーを撮ろうとしてるじゃん。何もおかしいことないよ。

♠ と思えるようになってきたのは、この世界観に慣れてきた45分過ぎぐらいからで、それまではやっぱり笑ったけどね。何にいちばん笑ったっけ?
♥ あまりに変すぎて、むしろ些細なことが気になってしまった。浅野の目張りとか。お爺さんがアイライン入れてると、オカマじじいみたいに見えるんで、アップになるたび吹き出してしまって。髪型も後ろはポニーテール、前はおかっぱの前髪だけ引っ詰めた、独創的すぎる髪型だし。
♠ 私は歯の生えた兜に笑ったなあ。確かに日本の兜はヒゲが付いてたり髪の毛が付いてたり、かなり奇抜なデザインが多いが、入れ歯が付いた兜というのはユニーク(笑)。
♥ ミカ(この名前も現代的過ぎて笑う)のハイネックの着物とか。あれなんだ? エリザベスカラーのつもりか? あと、天守閣が乱立する城とか(笑)。『パイレーツ・オブ・カリビアン』と化した出島とか(笑)。
♠ 私が見てもこれだけおかしいんだから、歴史通の日本人が見たらおかしいなんてもんじゃないだろうな。

♥ だから日本じゃないんだってば! これ見ておかしいと言うのは『ロード・オブ・ザ・リングス』見て、時代考証がおかしいというレベル。
♠ いや、原作者のトールキンは中世の専門家で、そういう設定には異常にこだわってたじゃん。ピーター・ジャクソンの映画だって十分オーセンティックだよ。
♥ トールキンまでは認めるけど、映画になったら時代物はトンデモ・ワンダーランドだよ。私たちがすげー!と思って見ている『ゲーム・オブ・スローンズ』だって、西洋人から見れば同じぐらいトンデモに違いない。
♠ あれはまだ西洋人が作ってるんだからましでしょ。例えるとすれば、これは日本人が書いた西洋歴史物のマンガやアニメと同列。
♥ 最近のマンガは時代考証はかなりしっかりしてると思うが。
♠ 絵的にはね。資料見ればいいから。そっちじゃなくて目に見えない部分(言葉とかものの考え方とか)がトンデモなんだよ。だいたいマンガの英語が全部変な時点で察しろよ。
♥ それ言ったらハリウッドの歴史物だって全部そうだよ。大昔の外国人が、現代アメリカ人みたいな考え方やしゃべり方するもん。
♠ それ言ったら絶対に歴史物は撮れないな。誰ひとり、実際に見てきた人はいないんだから、想像で作るしかない。
♥ でも何度も言うけど、これわかってやってるからね。
♠ オリジナルの『忠臣蔵』自体、私はよく知らないけど、歌舞伎とかになった時点で史実はめちゃくちゃに歪曲されてるはずだからなあ。
♥ そうに決まってるわよ。オリジナルが武士道ファンタジーなんだから、映画ならこれぐらいの翻案はあってもいい。
♠ 翻案ちゅうレベルじゃないんですけど。イマジネーションの洪水で。
♥ それってかっこいいじゃないか。

主要キャラクターの衣装。衣装はやっぱり日本風LOTRという感じがした。マネキンの身長と体型は、ちゃんと着る役者に合わせてあるんだな。左から、カイ、大石、ミカ、吉良。

衣装の話

♥ それでちょっと引っかかることがあるんだけど。中でもいちばん異常な、この衣装をデザインしたのは誰だろうと思って調べたら、ペニー・ローズ(Penny Rose)とあったんだけど。
♠ なんかなつかしい名前。
♥ イギリスの衣装デザイナーで、昔からやってる人だよね。なんで気にしてたんだっけ?
♠ Duran Duranの映画の衣装作った人じゃなかった?
♥ 私がいちばんDuranに入れあげてた頃? どんだけ年寄りなんだよ!?
♠ まだ現役だったんだ。とりあえず、彼女はものすごいベテランのデザイナーで、最近では『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズとかを手がけている。
♥ とりあえず、こういうフリーダムな創作衣装が得意な人なのはわかった。
♠ 出島がカリブ海になってたのはそのせいか!
♥ そういうふざけたのばかりじゃなく、古くは『アナザー・カントリー』とか、『Pink Floyd The Wall 』とか、私にとって重要な映画もやってるよ。
♠ すばらしい経歴だと思いますけど、この仕事はむしろ経歴の汚点になるんでは?
♥ いや、創作衣装としてはおもしろかったし、物量もすごかった。圧倒された。だいたいファッション・ショーで見るようなハイファッションなんて、こんなものじゃなく奇抜だし。ファッションはアートなんだよ、わかる?
♠ ふーん? 私はやっぱり侍は黒澤映画みたいなほうがかっこいいと思うけどな。
♥ 少なくともオリジナルだし、お金かかってそうだし、自分が着るのはいやだけど、見てるぶんにはおもしろかった。

信じようと信じまいと、これが出島です

信じようと信じまいと、これがこの映画の出島です。拡大して見てほしい。

美術の話

♠ 衣装をほめるなら美術もほめなくちゃ。プロダクション・デザイナー(映画の時代考証における、装飾、大道具、小道具、ファッションに至るまで、全体の美術プランを作る人)はヤン・ロールフス(Jan Roelfs)。
♥ 知らないなあ、と思って調べたら、ピーター・グリーナウェイの『コックと泥棒、その妻と愛人』のプロダクション・デザイナーじゃないか!
♠ まさか! すげー! グリーナウェイ映画はどれも美術が圧倒されるほどすごいんだけど、中でもいちばんやり過ぎなぐらいすごかったのが『コックと泥棒』なんだ。あれを作った人ならこれぐらいやって当然。
♥ てことはグリーナウェイも西洋人から見るとトンデモなの?
♠ あの映像見て普通と思うか? 異常だろう? 異常すぎて異次元だから、すげーっ!ってなるんだろ?
♥ 確かにすごいし、絵を見ているだけで「うわー!」とは思うが、私の美的感性からいうと、どっちもやり過ぎだなあ。
♠ 大事なのはセンス・オブ・ワンダーなんだよ、わかる?
♥ 人のまねするな。そういや、グリーナウェイは『枕草子』撮ってたっけ。
♠ あれに較べればこっちのほうがまだ本物の日本らしいよ!
♥ うーん、いい勝負かも。
♠ それにここに載せたスチル、日本かどうかは別として、どれも美しいのは認めるでしょ?
♥ こうやって見るときれいだけど、映画見ている時は衝撃のあまり、きれいと感じる余裕もなかった(笑)。ただ、カットが変わる毎に「ええ-!」という衝撃画像ばっかりだったので、飽きる暇はなかったとは言える。
♠ だってきれいじゃない。小道具なんかも、凝りに凝ってて、美術見てるだけで飽きない。

ここが日本じゃないことだけは断言できます

ここが日本じゃないことだけは自信を持って断言できます

♥ いや、凝ってるのは認めるし、ある種の芸術性も認めるけど、私はやっぱりこの中国っぽさ(韓国っぽさ?)が引っかかるよ。私が西洋大好きで東洋嫌いなのも、元はといえば東洋の音楽と美術が身の毛がよだつほど嫌いだからで、その中では日本美術はまだ好きと言える部分もあるんだけど、あのキンキラキンの極彩色とか、仏教を連想させるものはすべて受け付けない。
♠ 連想させるどころか、山には巨大な石仏が刻まれてるし(笑)。やっぱり山中の寺院というとアンコールワットとかを想像しちゃうんだろうな、向こうの人は。
♥ ただ、この仏像を西洋風の彫像に変えれば、上の写真なんかやっぱり『LOTR』ぽいね。
♠ だから仏像さえなければこういう景色好きでしょうが! スコットランドっぽいし。
♥ ここまでぶっ飛んでればもうなんでもいいという気分になるね。

♠ Andrew Leungという人が描いた、この映画のためのコンセプト・アートを見たんだけど、そっちはもっとオーセンティックな日本風で、それはそれですごいきれいだったよ。でも実際の映画はもっと狂ったものになってたけど。
♥ 絵はきれいだけど、これも狂ってるという点では変わらないんでは? 振り袖軍団が弓引いたりしてるし(笑)。
♠ やっぱり日本人だと、そういうディテールが気になって現実に引き戻されちゃうな。そこはあれだが、でも映像は見応えがあった。この衣装と美術見るだけのためにお金払ってもいいレベルだよ。だいたいペニー・ローズとヤン・ロールフスの名前が出てきた時点で、これは私の映画かも知れないと思えてきた。
♥ えーと、‥‥もしかして私ってこの映画好きなの?

美しいが、これが日本じゃないのは絶対だ

美しいが、ここも日本じゃないのは絶対確かだ。アイスランドあたり?

吹き替えの話

♠ いきなり結論に飛びつくな。次は役者陣について。
♥ プロの役者ってすごいなあと思いました。あの中にいて吹き出しもせずにまじめな顔して演技できるなんて(笑)。
♠ それを言うな。ところでこの映画、テレビなんで日本語吹き替えで見たんだけど‥‥
♥ まったくなんなの、この洋画を吹き替えにする風潮って。
(異例ですが、吹き替え洋画についてのこのグチは長くなりすぎたので別の記事にすることにしてカットしました)

♠ ところが、IMDbによると、日本人俳優たちが自然に演技できるように、最初は日本語で撮って、あとから英語を当てたんだって。
♥ はあ? すると吹き替えのほうが本来の姿ってこと? それだと口が合わなくて変じゃない?
♠ だいたい、テレビ版じゃどこまで日本語でどこまで英語なのかわかりゃしない! 聞いた話じゃ日本語英語まじりの映画だっていうんだけど。
♥ YouTubeでチェックしたら、日本人も英語だったよ。今はフル・ムービーはすぐ削除されちゃうので見れなかったけど。
♠ たぶん、ベルトルッチの『ラストエンペラー』みたいな感じだと思う。そういや、『ラストエンペラー』にも似てるわ。特に将軍が登場するシーンは。
♥ あれも中国人が見たら爆笑ものなんだろうなあ。私にはぜんぜんわからないから、そういうものかと思って見てたけど。
♠ だったら、むしろ吹き替えで見て正解じゃないか? えんえん日本人英語聞かされてたら(仕事を思い出して)頭痛くなりそう。ほとんどの出演者が日本人なんだし。
♥ 見た感じはそんなに違和感なかったよ。この映画、そもそもあんまりセリフないし。だいたい日本人が流暢な英語しゃべったら「異国情緒」がないし。インタビューなんかもたどたどしいけどみんな英語で答えていて好感が持てたけどな。
♥ 私はキアヌの日本語が聞きたかったな。あの声でカタコト日本語しゃべったらセクシーそう。

日本人俳優の話

♠ でもこの日本人キャストもトンデモ映画になる一因だと思った。どうせ出てくるのは、アイドルだかなんだかの、ぶっさいくでちんちくりんでバカそうなお坊ちゃんお嬢ちゃんだろうと思って。
♥ なんで忠臣蔵でそうなるんだよ!(笑) いちおう大石主税を演じた赤西仁はジャニーズ系みたいだけど。
♠ そしたら役者が意外とまともっていうか、むしろ良くてびっくりした。
♥ それじゃ個別に。

天狗のもとへ赴くキアヌと真田

天狗のもとへ赴くキアヌと真田

真田広之

♥ ぜんぜん邦画やドラマ見ない私だけど真田広之は知ってるよ。けっこう洋画にも出てるから。
♠ 若いころはぜんぜんだったんだけど、年取ったらいい男になったね。
♥ いい役者だとは思ってたけど、顔はべつに、と思ってたよ。だけど今回、地下牢に1年幽閉されてヒゲぼうぼう、髪ぼうぼうになった姿を見たらステキじゃん!
♠ ずっとこのままでいてほしかったよ。日本人はとかくのっぺりした顔でメリハリがないので、ヒゲがあるだけでぐっと顔が引き締まる。昔の人は正しかった。
♥ 少なくとも時代劇では日本人は全員ヒゲ生やしていてほしい。あと、キアヌはヒゲを生やさないでほしい。
♠ ただ惜しむらくはチビ(170cm)なのがなあ。キアヌ(186cm)がでかいので、彼と並ぶとホビットに見える(笑)。
♥ なんでもいいよ。とりあえず日本側の主役がいい男でほっとした。田中泯が浮きまくっていたけど、彼は髪型も着物も普通で変にいじられてなかったし。
♠ でもこの映画、事実上この人が主役だよね。
♥ その話はあとでキアヌのところでやるから。
♠ さらに元アクションスターだから、アクションもこなせて、まさにこの映画にうってつけだな。

浅野忠信

♠ 続いては吉良だけど、吉良が浅野というややこしいことに(笑)。
♥ この人は知らない。この人はいかにも日本人らしい腫れぼったい一重まぶたの細い目で、ルックスはいまいち。
♠ と思ったら、実は彼はクォーターでおじいさんが北欧系アメリカ人。Wikiによると、お母さんは「忠信の母はナバホ系のアメリカ・インディアンで元農民の血統と思い込んでおり、忠信自身もそれを30年以上信じていたが、番組製作時の調査でそれが間違いと判明。ウィラードの弟ゴードンは『父ジェイコブはオランダ人、母エラベルはノルウェー人で、共に北欧の家系である』と証言した」(Wikipedia)という、わけのわからない血筋(笑)。
♥ うそ! だってどこからどう見ても日本人じゃない。真田広之のほうが彫りの深い縄文顔だし。
♠ 血統なんて見た目じゃわからないよ。純日本人の私がいつも外人扱い(日本人だけじゃなく外人にも)されるし。特になぜか年取ってからそういうことが増えた。いきなり英語で話しかけられたり、街頭セールスなんか自分から話しかけてきたくせに、人の顔のぞき込んで「なんだ外人かよ」とか吐き捨てて行っちゃうし。私は純日本人だ! 顔だってどう見たって日本人だろうが!
♥ 西洋かぶれだと顔までそうなるのがすごいね。
♠ 違うだろ! まあ、血の不思議と言ったら、キアヌーがその最たるものなんで、もう何を見ても驚かないけど。
♥ でも驚くわ。今もYouTube見てたら、白人のYouTuberがどう見ても「日本軍の少年兵士」顔の男の子連れてるから、この子誰だろう?と思ってたら息子だって! 親父はめっちゃ濃い顔なのに!

♠ 血統はともかく、まず吉良が若いってことにびっくりして、それからなんか気の弱そうな顔つきなんで、悪役には向かないかなと思った。
♥ 実際、そんなに悪い人には見えなかったよ。あれはキツネにたぶらかされてただけで。キツネに憑かれた人はみんな人格変わってるじゃん。それなら吉良も本当はいい人だったという設定なんだと思った。
♠ そうなのかな? 実際、浅野を殺した以外はそんなに悪いことしてないみたいな。ミカにも優しいし。
♥ 「父の喪に服すために1年待って」と言われたら、素直に1年待つしね。本当の悪役なら「良いではないか、良いではないか」「あ~れ~!」で着物むしり取らなくちゃだめだよね(笑)。
♠ なんでいきなり日本の時代劇になるんだよ(笑)。だいたい日本のことは何も知らないと言いながら、なんでくだらない時代劇にそんなに詳しいんだよ(笑)。あれは将軍の命令だからでしょう。
♥ 旅芸人の芸を見ているときの屈託のない笑顔とか、見るからにいい人っぽかったじゃない。吉良と浅野、どっちも悪い人間じゃなかったので、よけい悲劇なんだと解釈したよ。
♠ そうなのかなあ?

柴咲コウ

♠ じゃあ次は女優だ。柴咲コウは?
♥ ヒデと交際を噂された人だよね。
♠ なんでそんなの知ってるの!?
♥ サッカー関係の記事だけは、ついゴシップみたいなのまで見てしまうので。私はむしろゲイじゃなかったのか!とショックだったので覚えてた。
♠ あれは否定されてなかった? だいたい噂だけなら、ヒデはいろんな女性と噂が立ってるよ。ただ、その顔ぶれを見ると、いかにも海外のパーティーとかで連れて歩くのに見栄えのするアクセサリーみたいな女性ばっかりなんで、絶対煙幕だと思ってるけど。
♥ あんたも詳しいじゃないさ!
♠ だいたい私がゲイじゃないかと疑った人は、たいてい後からそうだったことがわかるからね。まあヒデはどうでもいいけど、それよりキアヌは早くどっちなのかはっきりしてほしいわ!
♥ キアヌもよく女性との噂が立つじゃない。
♠ だからそれがヒデと同じで、見るからに煙幕臭いんだよ。「彼女とはいい友達だ」みたいな弁明も含めてね。でもはっきりしないのがイライラする~!

♥ ぜんぜん柴咲コウの話してない(笑)。
♠ だからえ~、悪くないんじゃない? キリッとした気の強そうなところが好みだわ。
♥ きれいなのは事実だしね。でもしばらく見てると飽きてくる。なんか普通すぎて。
♠ これは清く美しいお姫様役だからこれでいいんじゃない?
♥ でもやっぱりなんか日本の女優って食い足りない。男優はけっこう好きな人もいるんだけど。逆に西洋の役者は最近女優ばっかり目が行って、男優が食い足りない。

ミヅキとミカのからみ(うそ)

ミヅキとミカ

♥ カイとミカのラブストーリー部分も『LOTR』っぽいと思ったな。
♠ アラゴルンとアルウェン
♥ うん。身分違いどころか種を越えた禁断の愛
♠ カイは人間だってば!
♥ いろんな意味で人間離れしてるじゃないか。男の方は生まれ故郷から引き離されて、幼いころからいっしょに育った幼なじみというところも似てる。
♠ でも『LOTR』はハッピーエンドだったけど、こっちは悲恋ものだよ。
♥ カイが殉死したのと同じように、アルウェンだって永遠の命と自分の種族を捨てたんだから、一種の悲劇だよ。私は悲恋も、そもそもラブストーリーも嫌いだからどっちでもいいがね。エロいシーンひとつないし。

菊地凛子

♠ だから菊地凛子がもてるのか(笑)。
♥ ほんとにハリウッドは菊地凛子が好きなんだよね。参考までにIMDbで見つけた“Most Popular People Born In Japan”というランキング見て。どうやって算出したのかわからないけど、IMDbの巨大データベースを使ってるんだから、ある程度海外での日本人俳優(監督も入ってる)の知名度がわかると思う。ただしこれは「日本で生まれた」映画人のランキングなので、とりあえず日本人以外は除外した。あと、タムリン・トミタとかケイリー=ヒロユキ・タガワみたいに、アメリカでずっと活動してる人も除いた。そしたらトップ20はこんな順位に。(数字はIMDbでの順位)

1. 菊地凛子
3. 宮崎駿
5. 渡辺謙
6. 真田広之
8. 高倉健
9. 黒澤明
17. 栗山千明
18. 浅野忠信
21. 岡本多緒
22. 小雪
24. 三池崇史
27. 柴咲コウ
28. 北野武
29. 高畑勲
30. 小野洋子
33. 藤原竜也
34. 小山田真
35. 千葉真一
36. 佐藤健
38. 田村英里子

♠ 何これ? 黒澤明が入ってるのに三船敏郎が入ってない時点で、こんなもの信じられるか。
♥ あー、確かにそれは変だねえ。なんかのミスでもれちゃったとしか。しかし、菊地凛子の知名度は圧倒的でしょ。
♠ つーかこの映画の出演者みんな入ってるじゃん! ケイリー=ヒロユキ・タガワは向こうが本拠だから外したけど、彼も入ってたし。ということは最近ハリウッド映画に出演した人のリストじゃん。おそらく検索数か何かじゃないの?
♥ でも実際、アメリカの映画ファンにとっての日本人の知名度ってこんなもんじゃない? しかも2位にはSamaire Armstrongとかいう聞いたこともない女優が出てくるのが、いかに日本人が無名かの証拠で情けない気持ちに。
♠ で、何が言いたいの?
♥ だからなんで菊地凛子ばかりがもてるのかって話。

♠ はっきり言ってわからないと思ってた。顔も体もキャラクターも、なんかキモいし、うっとうしくて、彼女が出てると聞いただけで「うへー」って感じ。
♥ ところがこの映画見てて、ちょっとわかる気もしてきた。
♠ うん。とにかく存在感だけはあるよね。柴咲コウは確かにきれいなんだけど、その存在感が薄い。
♥ 柴咲コウって日本だとどっちかというと肉食系のイメージじゃない。それがハリウッド映画の中だと、典型的な影が薄い日本女性に見えるんだよね。
♠ それにくらべ菊地凛子は肉食系そのもの。あ、映画の中のイメージだけで言ってますからね。本人がどんな人かなんて知らないから。
♥ ハリウッドで美人女優がもてない理由はすでに『ブラック・ダリア』でも書いたけど、要するにオーラがなきゃならないと。美人だけなら掃いて捨てるほどいるんで。まして日本の美人なんて、極端なこと言わせてもらえば、外人の目からはみんな同じに見える。実際誰も似たような同じような顔だし。
♠ 確かに私もアイドルとかはまったく見分けがつかんな。柴咲コウも単体で見てるときれいだなとは思うけど、他の日本の若手女優の写真と混ぜて、どれだ?と言われてもわからない。
♥ それならぜんぜん違う菊地凛子に目が行くのはわかるんだ。
♠ わかるってだけで、好きとは言ってませんがね。
♥ あと、記者会見で並んだ写真を見て初めて気付いたけど、この人背が高いのね。浅野忠信と同じぐらいあるように見えたけど。
♠ まさか! 浅野忠信は179cm、菊地凛子は165cmだぞ、公称では。まあ、ハイヒール履けば女はそれぐらいになるかもしれないけど。
♥ それにくらべると柴咲コウは子供みたいに見えた。彼女は公称160なんだけど、5センチの違いなんてものじゃないぞ。
♠ 押し出しの違いじゃないですかね(笑)。
♥ とりあえず、この頭身でロングヘアはないわー。首もなくって猪首みたいに見えるし。不思議よね。日本にいるぶんにはすごい美女に見えるのに、キアヌみたいなのと並ぶとブスに見えてしまう。
♠ この写真はちょっとかわいそうだな。髪型もドレスも化粧もなんか古くさくて、60年代の女優かと思ってしまう。
♥ 『キイハンター』に出てそうな(笑)。
♠ それだ!

キャストの集合写真。

キャストの集合写真。左から菊地凛子、浅野忠信、真田広之、キアヌ、柴咲コウ

♥ 菊地凛子に話を戻すと、役柄もこれは妖婦っていうか、淫婦っていうか、魔性の女だし。
♠ 個人的には魔性の女はもうちょっと美人であってほしいが、はまり役ではあったね。あの下品で性悪な感じは彼女にぴったり。
♥ それに妙にエロい。顔見ると嫌悪を催すんだけど体はそんなにスタイル良くないのに変にエロいし、爛れた色気がある。
♠ 東洋の色気ではまったくないけどね。だいたい彼女の正体はなんなの? 最初はよくあるキツネが化けたやつかと思ったら、蜘蛛にもなるし竜にもなるし。
♥ 死ぬと人間に戻ったから、本体は人間? 変身能力のある魔女ってことじゃない?
♠ でもどんな姿でもオッドアイ(左右で色の違う目)は変わらないんだよね。
♥ あれは凶眼だよねえ。日本のおたくの間じゃオッドアイはかわいいことになってるらしいけど、猫ならかわいいけど、人間だったらキモいだろうと思ってたが、やっぱりキモかった。
♠ キモいけど、神秘性があってミヅキにはぴったりだったよ。とりあえず、モンスターとしてもこの映画の雰囲気にもぴったりフィットしていた。

赤西仁

♠ 続いては大石の息子主税を演じた赤西仁。この人はジャニーズだからたぶん一番の汚点と思ってたんだが。
♥ わりと好感が持てたよ。気になるのは海苔を貼り付けたみたいな眉毛だけで(笑)。
♠ あれ描いてるよね、まさかナチュラルにあんなまっすぐな黒々した眉毛の人いないよね?(笑)
♥ でも眉毛を除けば確かにハンサムだし、キャラクター的にも(純真な若侍)にぴったりだと思った。ナヨナヨしたホスト顔じゃなかっただけまし。

その他キャストについて

♠ とりあえずキャスティングをほめたい。とにかくこの映画に好感が持てた第3の理由(衣装と美術もあれでいいことにして)は、英語映画だからと言って、英語ができて東洋人ぽい顔してるだけの、中国・韓国人、または二世のアメリカ人役者を使わず、ちゃんとした日本人俳優を使ったこと
♥ 中国・韓国系使った方が意思の疎通も楽だし、安上がりだし、制作側としてはいいことずくめなのにね。日本の有名俳優たって、上のランキング見ればわかるように、世界じゃ誰も知らないし、お客呼べないし。
♠ まあその理由で、長らくハリウッドじゃ中国人が日本人を演じてたんだけどね。少しは情勢変わってきた?
♥ 変わらない。日本人キャストで海外で客を呼べるのなんて、昔は三船、今は渡辺謙ぐらいだし、英語マスターして海外に打って出ようなんて役者は有名俳優ではまず皆無だし。
♠ 音楽といっしょか。なまじ国内市場が充実してるだけに、外へ出て行くモチベーションも圧力もないという。
♥ それを思うと、若手でもちゃんと英語しゃべるサッカー選手がすごくえらく見える。
♠ それは日本サッカーがそれだけ遅れてることの証明なんだけどね。中国人・韓国人が英語うまいのも同じ理由。

♥ ていうか、教えていて痛感するけど、日本人が英語上達しないのはカタカナの存在のせいだと思うよ。中国人・韓国人は正しい発音聞かせればすぐに真似して発音できるけど、日本人はいくらだめだと言っても執拗にカタカナに置き換えようとする。
♠ それもあるけど、最大の原因は日本人特有の、なんて言ったらいいのかわからないが、変な遠慮と引っ込み思案なところだよ。絶対にspeak upしない。
♥ それじゃ、そもそも日本人は役者に向いてないって感じだが。
♠ それも英語教えてて実感するなあ。今は日芸でも教えてるんで、演劇クラスがあるんだよね。それでそのクラスだけまるで人種が違うとしか思えない(笑)。
♥ そうそう(笑)。他の学科はいくら励ましてもお通夜みたいに静かで、みんな下向いたままボソボソしゃべるのに、演劇はとにかく声がでかくてしゃべりまくる。英語になるとやっぱり元気がなくなるけれど。
♠ 真田広之って日芸の映画科出身だよ。
♥ マジで?! 私、今年は映画科も教えてるよ。あの中から将来のスターが育つと思うとうれしいな。
♠ 私、教師になって初めて教えたのも早稲田の演劇専攻だったんだけど、小劇場とか盛んな時代で人気学科だったし、あの頃は年も近かったせいもあって、まるで仲間みたいにワイワイやって楽しかったなー。ところが普通クラスの学生と言ったら‥‥
♥ つまり、そういう人――図々しくて出しゃばりで声がでかくて物怖じしないという、日本人的感性とは正反対の人でないと役者はつとまらないってこと。ところで私、もしかして進むべき道間違えてない?
♠ それはいつも思う。
♥ 中国人・韓国人は比較的そういう人が多いから英語にも役者にも向いてるのかも。(もちろん、西洋人も中韓も例外はいっぱいあります。一般論で言ってます)

♥ 話がまたそれちゃったけど、キャスティングも良かったと。
♠ 私は間違いなく先天性相貌失認で、特にみんな同じ黒髪黒い目、ついでに無個性な東洋人は顔見てもまず見分けられない。学生の顔も1年間毎週見てても覚えられないし。だからこの映画を見る前も、主役以外はおそらく誰も見分けが付かないだろうと思ってたんだけど、けっこう見分けがついて驚いたっていうか、それだけ脇役も個性的で良かった。
♥ そりゃあれだけ奇抜な服着て奇抜な髪型してれば私だってわかる(笑)。学生もあれだけ個性的ならいいのに。
♠ (苦笑して)それもあるけどさ、だけど、47人もいれば、全部まとめてその他大勢で片付けられそうなものを、しかもハリウッドの観客にはまるでどうでもいい日本人役者を、(もちろん47人全員じゃないが)それなりに心を込めてキャラクター作ってくれたのはうれしいと思わない?
♥ 誰がいたっけ?
♠ あのデブとかさ。
♥ あれはコミックリリーフで笑わせて、死ぬところで涙を誘おうという意図が露骨すぎたなあ。黒澤明と較べると、演出がヘボい。
♠ なんでこんなB級映画を黒澤と較べるよ?! そりゃいくらなんでもこの監督がかわいそうだろう!
♥ ごめん。日本映画というとほぼ黒澤しか見てないんで。日本人が出てるとつい。
♠ そういう極端なのはやめて普通に見れば、笑えるし泣けるじゃないか。あと、最初はカイを敵視していたけど、後に悔い改めて謝る藩士とかも良かった。
♥ これもステレオタイプだけどね。

キアヌ・リーブス

♠ というところでやっと主役の登場だ。
♥ 断っておくけど、日本での通例表記がキアヌだからそう書いてるけど、正しくはキアヌーだし私はそう読んでるからね。
♠ ていうか、キアヌを外人が読めばいやでもキアヌーになるという。ええい! めんどくさい! 原語で書いてた頃のほうが良かった!
♥ でも日本語英語まじり文は読みにくいからやめたの。

♥ それでキアヌだけど、どうも最初は出演を渋ってたみたいね。
♠ そりゃ普通、こんな映画、企画を聞いただけで逃げるよ。日本が舞台で出演者みんな日本人なんて、それだけでヒットするわけがないし、話もアホっぽいし。
♥ でも一方で、日英混血のヒーローを演じられるスターなんて、キアヌ以外にいるはずもないし。(キアヌは中英混血) 見方によっては東洋人にも見える人、ってだけでもいないな。
♠ でも監督に会ったり、脚本を読んだら、良かったので出演したのか?
♥ キアヌはあんまり作品選ばない人だからじゃない?
♠ 実写版『アキラ』は「年を取り過ぎたから」と言って断ったのに?
♥ そういや、あれどうなったの? ぜんぜん噂を聞かないけど。
♠ 制作中止になったりまた再開したり、なんか難航してるみたいだから流れるかも。
♥ そう聞いて世界中の大友ファンが胸をなで下ろす様子が目に浮かぶわ。私もだけど。

♠ まあ、『アキラ』もあれだけど、キアヌにこんな役やらせて怒らないの?
♥ 見る前はきっと怒ると思ってたんだよ。だけど、見たら別に腹も立たなかった。寡黙でクールなアクション・ヒーローって、キアヌがいつもやってる役じゃない。『マトリックス』でも、『コンスタンティン』でも。
♠ 私はやっぱり彼はスーツにタイじゃないとなー。
♥ 私も彼のひげ面と長髪はちょっと嫌なんだけど、それでもかっこいいものはかっこいいよ。
♠ あと、こういう小汚いなりをしているせいかもしれないけど、さすがの不老人キアヌも五十路に差しかかって衰えが見えてきたかなーとも思った。
♥ そう言えばこれの直前だっけ? すごい太ってブヨブヨになってたじゃない。あれ見てこの人ももう終わりだと思ったんだけど。
♠ さすが役者っていうか、本番に合わせてまたきっちり痩せてきたね。自分の意思で簡単に太ったり痩せたりする、あれだけはほんとにすごいと思うわ。
♥ でも太るまでは本当に20代と変わらなかったのに、あれからちょっとくたびれた感じになっちゃった。まあ、年取るってのはそういうことだからしょうがないけど。
♠ 普通、男優は年取ってもかえって味が出るもんだが、キアヌみたいに人間離れした若さで売ってた男はこの先どうなるのか想像がつかないわ。彼は骨格美人だし、いい体してるから、老けてもそんなに汚くはならないとは思うけど。

♠ でも今回ちょっと驚いた発見。彼って東洋人(混血の設定だけど)演じても違和感ない。
♥ そりゃそうでしょ。実際にユーレイジャン(ヨーロッパ人とアジア人の混血)なんだから。
♠ でも普通「白人」役ばっかりで、東洋の血を意識させることなかったじゃん。もしかして、これってキアヌが初めて東洋人を演じた映画じゃない?
♥ 『リトル・ブッダ』があった。
♠ あれはインド人じゃないか! インド人はコーカソイドだぞ。でもがっちり目張り入れて化粧するとそれっぽく見えなくもなかったけど。
♥ 確かにそれはちょっと不思議かも。彼が日本人に見えるからじゃなくて、これまでそういう役がなかったことが。
♠ 今これまでのキアヌの写真を見てるんだけどさ、場合によって完全に白人に見えるときと東洋人に見えるときがあるんだよね。こういう人ってあんまり見たことがない。ハーフって普通どっちかに寄るんだけど。
♥ でも目だけは東洋人なんだなと、兜かぶった場面見て思った。目だけだと一瞬誰かわからなくて、てっきり赤西仁かと思っちゃった。
♠ 体型や顔の輪郭は完全に白人なんだけどね。とにかく東洋の血がなかったら、この魅力はなかった。東洋と西洋のいいところ取りした稀有な例。
♥ なのにお父さんは本当にブッサイクなデブってところが血の不思議よね。
♠ ほんとに日本人とのハーフなら良かったのに。中国人ってところが玉に瑕。
♥ でも一般的に言って、中国人の方が日本人より美形の宝庫だと思うよ。整ってる人は恐ろしいほど整ってるし。あと、すごい足長で長身の人もけっこういるのが日本人との決定的な差。おそらく多民族国家でいろいろ混ざってるからだと思うが。
♠ いやー、血の神秘だね。

♥ というわけで日本人キャストに混じってもぜんぜん違和感なかった。
♠ でもやっぱり違うってところと、異常な長身(と見える)のおかげで、この世のものならぬ雰囲気があって良い。
♥ だけど、キャラクター設定としては、天狗に武術を習ったから強いだけで、別に超自然的ヒーローじゃなかったのね。
♠ 源義経かよ(笑)。いや、私もちょっと驚いたのは、どうせハリウッド映画だから、偉大な白人様が未開な東洋人を導く話かと思ってたの。ところが実際は‥‥
♥ リーダーどころか人間以下の扱い。奴隷に売り飛ばされるし。
♠ 最後はやっと認めてもらえたけど、それにしたってやっと同列になれたというだけだよね。四十七士のひとりってことで。
♥ それで死んじゃうんだもんね。なんか不憫すぎる。
♠ めちゃくちゃ萌えるじゃない、こういう設定って!
♥ たしかに。惜しいなあ。これでヒゲなしで、あんなひどい髪型でさえなければ‥‥
♠ 私が見ていて思い出したのは、『猿の惑星』のチャールトン・ヘストンなんだが‥‥
♥ 人種差別はどっちだよ! 日本人を猿扱いして!
♠ いや、でもあの映画のチャールトン・ヘストンがなんであんなにセクシーだったかというと、あんなにハンサムでガタイのいい男性が、猿風情に見下されて家畜同然に引きずり回されるところで‥‥ズズッ(涎)。
♥ やっぱりそういう目で見てる!

♥ あと、キアヌの少年時代を演じた役者(ダニエル・バーバー)がキアヌそっくりですごくなかった?
♠ うん、あれはかなりの美少年だった。東洋系じゃないみたいだったけど。
♥ そこでキアヌとダニエルの比較画像を作ってみました。
♠ おお! よくやった!

キアヌの若い頃と、若いカイを演じたダニエル・バーバー

キアヌの若い頃と、若いカイを演じたダニエル・バーバー

♠ ほんとだ。そっくり!
♥ 映画ではメイキャップやなんかでもっとそっくりなんだけどね。パーツはよく似てるけど、キアヌのほうが断然すてき。
♠ むしろ東洋人の血がどういう風に作用しているかよくわかるね。
♥ 中国人(特にあの不細工なおっさん)の血が入って美しくなるというのが信じられなかったけど、これ見るとよくわかるわ。
♠ 上で書いたように、本当に目だけ見ると日本人と言っても不思議がないんだよね。釣り目のほうがかっこいいというのは意外な感じがするが事実なんだなー。
♥ 今、レッドグレイヴ・ファミリーについて書いてるところで、ついでに興味を持ってキアヌのファミリーも調べてみたんだけどおもしろいね。
♠ お母さんはイギリス人で美人なんだっけ?
♥ 若い頃は美人だったかもしれないけど‥‥。じゃあ、この際、キアヌの産みの親はこういう人たち。

キアヌのご両親、サミュエルとパトリシア

キアヌのご両親、サミュエルとパトリシア

♠ うげー! なんだ、このバケモノたち!
♥ 人の親に対してなんちゅう言いぐさじゃ。
♠ ゲホッ、ゲホッ‥‥上に書いたように、今、レッドグレイヴ家のことを調べてて、若くても老いても美しい人たちの写真しか見てなかったから、このダメージはけっこうでかいわ。
♥ ネットにはなかったけど、お母さんの若いころの写真は見たことがあって、それは確かに美人だった。だけど今はなんか整形臭いっていうか、不自然に子供みたいな顔になって、服装もピンクのミニドレスとかで、チャラチャラして下品だし、気色の悪いババアって感じ。
♠ おまえこそ人の親に対してむちゃくちゃ言うな。しかしお父さんも純粋な中国人じゃないでしょ? むしろラオスの炭鉱労働者というか‥‥知らないけど。
♥ 絶対東南アジア入ってるよね。とにかくまったく両親の面影ないんだわ。私はこういう親子の写真見るのが好きで集めてるけど、どんな親子も必ず相似点があるのに。
♠ ほんとに血つながってるのかよ? 仮に私がキアヌの伝記映画のキャスティング・ディレクターで、部下がキアヌの両親役として、こんな写真持ってきたら、ふざけんなって言うな。
♥ イメージ違いすぎるでしょ。そもそもユーレイジャンと言ったって、私がイメージするキアヌのご両親って、お父さんが英国白人で、貴族的なハンサム。お母さんは平たい顔でもいいから、長い髪で物静かな東洋人という感じ。何から何まで間違ってるよ、この両親は。
♠ 親にダメ出しされても困ると思うが。
♥ だいたい妹もブスだしね。キアヌが受精した時だけ万にひとつの奇跡が起きたのね。
♠ いや、痩せればあの子はかなりかわいいし、もっときれいだと思うがデブだからなあ。とにかく家族のいいとこだけ全部巻き上げて作ったみたいなのがキアヌなんだな。
♥ 両親とも背が高いところだけは確かに遺伝だなと思うけど。

脚本について

♠ それでとにかくハリウッドの描く日本というと勘違い大会だから、それは当然のように予想していた。それで美術や衣装やキャラクター設定があれだから、やっぱりと思ってた。だけど、基本的な精神っていうのか、根本的なテーマの部分では、むしろ忠臣蔵を忠実になぞっているのにも驚いた。
♥ テーマというと、主君に対する忠誠心ってところ?
♠ うん。しかもここでは大石とカイの二人がそれぞれの理由で忠義立てするから、むしろオリジナルよりそれが強調されているぐらい。

♥ あと、あのラストにも驚かなかった? 私はてっきりハリウッド流ハッピーエンドになると思ったよ。
♠ それは私も思った。なにしろ原作にはいないカイというヒーローがいるんだから、彼が八面六臂の活躍をしてみんなを救うのかと
♥ 救っちゃったら、テーマが台無しなんだよ。それだと将軍に楯突いて謀反を起こす話になっちゃうから。
♠ それぐらい映画じゃ普通にやるじゃん。
♥ それはなくても、私は絶対主税は生かすと思ってた。まだ子供だし、あれで父子がともに自害するんじゃお母さんかわいそうすぎだし。「浅野家復興のためには、誰かが姫に力を貸して差し上げねばならん」と言ってこっそり逃がすんだとばかり。
♠ そういう理由で逃がすならむしろカイの役どころでしょう?
♥ それだと『隠し砦の三悪人』になるな。
♠ カイはお姫様と恋仲なわけで、愛し合うカップルは絶対助かるというのもハリウッド映画のお約束だし。
♥ ところが実際は史実通り全員切腹して殉死。関係ないはずのカイまで。
♠ よくこの結末が企画会議を通ったと思うよ。だって、切腹を美化するのは日本人だけで、キリスト教徒にはむしろ罪でしょうが。西洋人には自殺の美学なんてぜーーーったいわからない。大石だって妻を捨てて息子を道連れに自殺するなんて、西洋的な倫理観に明らかに反してるし、特に家族を重視するアメリカ人には極悪人に見えるはず。
♥ 私もあのラストシーン見ると、ジム・ジョーンズの人民寺院(ガイアナで、教祖のジョーンズに煽動された信者全員が集団自殺した事件)とか思い出して、ちょっといやな気分になったよ。
♠ だからあんたはなに人だよ?という突っ込みは別として、やっぱり西洋人が思い浮かべる集団自殺ってあれだよな。
♥ そう思うとなんかすごい映画かも。
♠ なんと脚本までいい、と言っていいのかどうか知らないが、すごいと。予想と違いすぎる!

SFXについて

♠ で、今度はSFXをほめる。
♥ ちょっと! なんかべたぼめじゃない。こんな映画好いてると思われたら恥ずかしい。
♠ 何が悪い? グリーナウェイが良くてこれはだめって差別じゃない?
♥ 驚いたことにSFXもよくできてるんだよね。主にCGのことだけど。
♠ そういやこの手の荒唐無稽時代劇って最近日本でもよく作られてるんだけど、(予告編しか見てないが)どれも絵やCGが安っぽくて恥ずかしくて見てられないじゃん。だからこれもそのたぐいだと思ってたの。
♥ そしたら冒頭から驚かされた。あのたたり神だけど。

♠ たたり神なんて言うとまるっきり宮崎駿の世界(笑)。
♥ ていうか、暴走する獣神を馬と弓矢で追うって、まるっきり『もののけ姫』のオープニングじゃないか。
♠ そのせいか『もののけ姫』と『ロード・オブ・ザ・リング』のミックスだなんて言われてる。
♥ それは言えてるかも。っていうか、そう言うとすごい傑作みたいに聞こえる!
♠ それであの最初のモンスターはなんだったんだ? 資料が何もないからわからないんだけど。
♥ あれはミヅキが浅野を苦しめるために送り込んだモンスターなんじゃない? キツネに化けたミヅキが一部始終を見てたし。
♠ コンセプト・アートを見ると、麒麟みたいなキメラだよね。
♥ ちょっとヤックルにも似てる。
♠ あれがめちゃくちゃ迫力あってかっこよかった。それ以外のクリーチャーはカイが出島で戦うトロルみたいなのと‥‥
♥ これが『LOTR』。
♠ 確かにそっくりだった。

天狗のアップ

天狗のアップ

♠ でも私がいちばん好きなのは天狗
♥ へー、なんで?
♠ この話の天狗というのは、もちろん日本の天狗とも違って、山奥でなんか独自の自然宗教を信仰する僧侶みたいな感じなの。
♥ あの辺は私、『アバター』みたいだと思った。
♠ だから人間でもないけど、獣でもない、不思議な中間的存在。それで体は人間で、顔だけが鳥顔。
♥ やっぱりカラス天狗とかのイメージで、鳥人の一種と考えてるのかな?
♠ これはメイクなのかCGなのかわからないけど、普通の人間の顔で目だけが猛禽類の目なんだよ。この目がなんかすごいリアルで、確かに猛禽の目をしてるんだな。人間をベースにしたクリーチャーは、たいていなんでも猿に見えるのに、これは目だけですぐに鳥とわかるのがすごいと思った。
♥ 鼻孔がくちばし(鼻)の付け根に付いているあたりも芸が細かいと思った。
♠ おかげで天狗の神秘性と知性がよく出てましたな。

♥ そういえば、天狗の住む森でまた『LOTR』を思い出した。
♠ なんで?
♥ 見た目はぜんぜん違うんだけど、アラゴルンが死者の道を行く場面を思わせて。
♠ ふーん?
♥ あれはアラゴルンが王となるための試練だったんだけど、ここでも大石が天狗の試練を受けるでしょう。
♠ ここでは剣を抜いてはだめと言われてたんだよね。だから仲間たちが殺されても(幻覚)剣を抜かなかったので、助けてもらえた。
♥ まあファンタジーではよくある試練だけど、なんか雰囲気が似てるんだよなあ。

龍のコンセプト・アート

龍のコンセプト・アート

♠ あとは菊地凛子が最後に変身する竜か。
♥ ミヅキっていう役名があるんだよ。
♠ 菊地凛子にしか見えなくて(笑)。
♥ 今度は『ネバーエンディング・ストーリー』(笑)。
♠ あんなにかっこわるくない!
♥ だって、毛がフサフサした白龍と言うと、どうしてもファルコンを思い出してしまって。
♠ 実はこれに関しても不思議な偶然の一致があるんだ。

原作者のミヒャエル・エンデの希望では、監督は黒澤明に任せ、撮影はヨーロッパ、役者は皆ドイツ人で揃える、異世界の姫君である「幼ごころの君」役の女優だけは日本の白装束を着た少女であるべきという内容だったと言われている。重要な役回りの強大な竜「ファルコン」については、可愛らしいドラゴンではなく、中国の伝説の龍のような神秘的な存在にすべきと考えていたらしい。(Wikipedia 『ネバーエンディング・ストーリー』)

♥ えええ~? これってマジ?
♠ ところが、契約のときポカをやらかしたみたいで、結局エンデは映画には一言も口出しできず、ファルコンも子犬みたいな可愛らしいドラゴンになってしまった。
♥ でもこれって、黒澤明は死んじゃったからしょうがないけど、まんまエンデが希望してた通りの龍じゃない!
♠ おまけにこの龍が出てくるクライマックスでは柴咲コウは婚礼衣装の白い着物を着てるんだよね。
♥ それは考えすぎだと思うけど、少なくともファルコンよりはぜんぜんいいわ。でも伝統的な龍ともかなり違うよね。
♠ でもドラゴンじゃなくて明らかに龍でしょう。ファルコンよりも『千と千尋』のハクが入ってるような気がするけど。
♥ ここまでにミヅキが変身したキツネや蜘蛛の要素も入ってる。あと手足がなくて完全に蛇体なのね。しっぽのヒラヒラはミヅキの着物を表しているらしいけど魚っぽいし。
♠ とにかくこれだけ質の高いクリーチャーが見られれば私は満足。動きもすごくいいのよ。

♥ 天狗の戦いやミヅキの変身で見せた、着物が水中生物のようにヒラヒラ舞うエフェクトもおもしろかった。
♠ というわけでなんとCGもけっこう凝ってるのだ。『ダレン・シャン』で蜘蛛のCGがヘボすぎると書いたけど、蜘蛛だけとってもこっちの方が百倍いいわ。

アクションについて

♥ それ言ったらアクションも良かったでしょ。東洋ということで、むやみにワイヤで宙を舞うカンフーアクションが中心かと思ったら(私はあれが大嫌い)、しっかり腰の入ったチャンバラやってくれたし。
♠ 血の出ないほうのチャンバラだけどね。むしろ様式美として良かったね。
♥ キアヌも太ったし年取ったし、もうアクションは無理かなと思ったけど、なかなかまだキレキレじゃありませんか。
♠ そりゃあれだけ特殊効果を使ってれば。一方の日本人たちは正統派の殺陣を見せるし。
♥ 大石さん、強すぎ(笑)。あんなに強ければ47人もいらないのに。

♠ でも日本を舞台にしたハリウッド映画なのに忍者が出ないのはおかしいなあと思って見ていたんだけど‥‥
♥ そしたらラストのクライマックスではキアヌを初めとする数人がちゃんと忍者装束で登場。
♠ あれは芝居の黒子のつもりなんじゃ?
♥ だから黒子と忍者とイスラム過激派を混ぜ合わせたみたいな格好で、やたらかっこよかったよ。これはやっぱりキアヌじゃないと。これが青い目の白人じゃ興ざめだわ。
♠ で、ちゃんと忍者らしい動きして、忍術(超自然的じゃないほうの)も見せるし。なんかうれしくなっちゃった。
♥ なんかもう東洋趣味で入れられるものは全部入れましたって感じよね。
♠ ゲイシャ(菊地凛子の衣装や所作が花魁そっくり)、ニンジャカブキ(クライマックスで旅芸人に身をやつして吉良の屋敷に潜入した赤穂藩士が演じるのが、拡大解釈された歌舞伎)。あと足りないのはフジヤマぐらいか。
♥ 惜しいな。旅の風景に富士山入れておけばよかったのに。
♠ あと見るからに造花ですという桜(笑)。
♥ そこがB級臭さの所以なんだけど、ここまでやれば天晴れとしか(笑)。

悪役について

♠ そう言えば吉良とミヅキ以外の悪役の話してなかったな。吉良が飼ってるあのグレガー・クレゲインは何者なのよ?
♥ 勝手に名前付けるな(笑)。ちなみにグレガーというのは『ゲーム・オブ・スローンズ』の悪役のひとりで、バカ強い巨人の騎士です。
♠ もちろん鎧の中身は日本人じゃないだろうが、190近いキアヌが小人に見えるから軽く2メートルを超えている。
♥ 中身はどんな人なんだろうとワクワクしていたのに、とうとう素顔は見せなかったね。
♠ だって日本人という設定なんだから顔見せたら嘘がバレるだろう。
♥ それでその巨大鎧武者が着ている鎧兜も、禍々しくてかっこいいのよね。
♠ ダース・ベーダーみたい(笑)とつい思ってしまうが‥‥
♥ それはルーカスが『七人の侍』の野武士の兜をパクったからでしょ! こっちが本家だ!
♠ 冗談だってば。私が日本のものを西洋よりいいと思うことってあまりないんだけど、鎧兜は西洋の騎士に勝ってると思う。少なくともデザイン的には。『ゲーム・オブ・スローンズ』みたいな騎士ものばかり見ていると、かえって日本の良さを再認識した。
♥ かと言って普通の洋画で鎧武者出したらギャグだし、やっぱりこういう映画でしか使えないキャラクターだから良かったわ。

♥ じゃあ、カイが出島で戦うトロルは?
♠ あれはトロルじゃん。恥ずかしいほど『LOTR』のトロルそのまんま。なんで長崎にトロルがいるのかは知らんけど。
♥ そういや山のてっぺんにトロル(のように見える怪物)を彫った彫刻があったけど、あれ見て私はまた『LOTR』の石になったトロルを思い出したよ。
♠ もしかしてわざとなのか? それともそれだけ『LOTR』の影響力が大きすぎたのか。
♥ ちなみに『ホビット』は3本ちゃんと揃って、ディスクも買ってからじっくりやるつもりなので、もう少し待ってね。

♠ それよりあのドクロ・ボーイはなんなのよ? ポスターじゃでっかくメインキャスト風の扱いだったのに、出てきたのは出島のシーンだけで、誰なのかもわからない。
♥ それもほんの一瞬、大石に目配せするだけの登場だよね。どうも知り合いみたいだから、私は最初てっきりキアヌの変装なのかと思ったよ。
♠ それはない。スキンヘッドだし。
♥ それで脱出を助けてくれるのかと思ったら、それっきり一度も登場しないし。誰なんだよ、おまえ?
♠ おそらく最初は重要な役だったのが、何らかの理由ですべてカットされたんじゃないの?
♥ それにしちゃポスターには残ってる理由がわからない。トレイラーにも出てたし。そもそもなんの役だったんだ? 明らかに日本人じゃないし。
♠ 知るかよ。

すばらしい! 黒澤映画みたい!

すばらしい! ここだけ見ると黒澤映画みたい!

馬の話

♥ 他に私がこの映画見ていいと思ったのは、馬がいっぱい出てたから。
♠ 馬さえ見られればいいのかよ! 『戦火の馬』をボロクソ書いたあとでこんなのをほめたら、いくらケモナーを自称していても頭おかしいと思われるぞ
♥ だって『戦火の馬』はじっさい馬好きから見るとひどいし、これは良かったんだもの。
♠ 『戦火の馬』のリビューに「馬の出てこない時代劇はヘボい」なんて書いてたけど、それだとこの映画はいい時代劇になるという道理(笑)。
♥ いいじゃん! 普通に考えて忠臣蔵に馬なんてほとんど必要ないと思うところだけど、ここではなぜか馬が大活躍! なにせ47人いるから数も多いし(もちろん全員は画面に映らないが)、アクションもすばらしいし、いい馬ばっかりでもう見てるだけでうっとり。
♠ 確かにオープニングのたたり神だけでも、カッと血が熱くなった。馬に乗ってのハンティングはいいなー。
♥ あれハンティングなんすか? でもまじめな話、なんで馬に乗せたんでしょうね? なにしろ原作は江戸市中のお話なんで、馬に乗ってるイメージってないんだけど。
♠ そのほうがかっこいいから。
♥ 事実だけに‥‥やっぱりサムライは騎馬であってほしいよね。
♠ でもヘボ映画に馬が出てこないのは、予算がかかりすぎるからなのに、必要もない馬にこれだけ金をかけられるってことは‥‥

赤字の話

♥ 低予算かと思ったら、なんかお金湯水のごとく使ってませんか? 馬もそうだけど、出島のシーンなんてほんの10分かそこらなのに、ここだけぜんぜん日本とは別の世界だから、これだけのためにセットも衣装も全部作って、エキストラも大量に使って。
♠ CGもそうだけど、美術も衣装もどこを見てもめちゃくちゃ絢爛豪華だしね。
♥ ヤン・ロールフス使った時点で、お金かかるのは避けられなかったけど。これで映画会社は赤字出さなかったのかしら?
♠ うん。普通こういうB級映画はSFXにお金かけるぶん、無名俳優使ってギャラを抑えるんだけど、キアヌのギャラはハンパなく高いと思う。それにいくら円安でも日本からこれだけ大勢役者呼んで安くできるはずないし。エキストラや馬の数だってハンパない。
♥ そう思って、「47 ronin budget」でググったら、正確な費用はわからないけど、ユニバーサル・スタジオの屋台骨が傾くほどの大赤字で、『13ウォーリアーズ』に次ぐ、史上2番目に多い赤字を出したんだそうだ。
♠ おおー!(笑) すげー金かかってると見えたのは事実だったんだ。逆に言えば、金さえかければどんなヘボい映画もこれぐらいは見られるようになるという証明かもしれないけど。
♥ 少なくともスタッフは一流を雇えるからね。あとは監督のセンスの問題なんだけど。

監督の話

♠ そういや監督の話が出なかった。監督はカール・リンシュというイギリス人なんだけど、劇場映画はこれしか撮ってないし、この後も撮ってない。完全な一発屋っぽいね。
♥ ほとんどやり逃げっぽいですな。金使わせてもらえたのを幸い、好き放題にやりたいことだけやって逃げたな。
♠ こういう映画はそうでなくちゃ撮れないけどね。
♥ うらやましいなあ。私も一度でいいからそういう贅沢してみたい。
♠ 確かに撮ってる時は楽しかっただろうな。そう思うと、これって監督の道楽映画に思えてきた。

♠ 上の赤字額をちょっと訂正。史上2番目というのは制作時の費用の話で、インフレや貨幣価値の変動を考慮に入れると、史上20番目の赤字だそうだ。(The biggest box office booms and busts since 1982
♥ わー、この表おもしろいな。ワーストは『ジョン・カーター』、2位は『ウォーター・ワールド』か。どっちもひどいとは聞いてたが。
♠ こうなると、「金さえかければどんなヘボい映画もこれぐらいは見られるようになる」とは言えないことがわかるな。いくらなんでも『ジョン・カーター』がこれよりいいとは思えない。
♥ だってこれは赤字額のランキングだもん。それだけコケ方がひどかったということでしょう。
♠ いや、やっぱりこの監督はなんらかの才能はあるよ。ただのバカ映画じゃなかった。ある種のスタイルはあった。
♥ まあ、実際、同じページの黒字ランキング見ても、上位はさんざん私が酷評したクソ映画ばっかりだけどね。『E.T.』を筆頭に。受けたかどうかは作品の質には関係ないね。
♠ スピルバーグとルーカスばっかりじゃないか!

♥ でもこれも大コケしたことも事実だよ。案の定、批評家のリビューはクソミソで、入りもひどかったらしい。これは日本でもだからしょうがないけど。
♠ なんで! 最近はファンタジー超大作は受ける傾向にあるよね? これなんかファンタジー超大作に必要な要素はぜんぶ入ってるのに。華麗なCG、モンスター、かっこいいヒーローに美女、アクション、絢爛豪華な美術や衣装も。なんでこれがヒットしなかったんだろう?
♥ 日本だから?
♠ それしか考えられないな。推測するに、日本人が見なかった理由は(ヘンテコな)日本が舞台だから。西洋人が見なかった理由は日本が舞台だから。なんかもう企画時点で失敗するのは目に見えてたのに。
♥ 逆に日本が好きな映画通は、それこそ黒澤や小津を見て目が肥えちゃってるからなあ。そうでない一般人にはニンジャ・サムライのイメージぐらいしかないだろうし。
♠ だから、まさにそういう層を取り込もうとしたんだと思うよ。ところが集団自殺で全員死んでアンハッピーエンディングじゃ、アメリカの観客は逃げるでしょうよ。
♥ まあねえ。私は異世界ファンタジーとしてはよくできてると思うけどねえ。
♠ 同じ異世界ファンタジーでも大ヒットした『アバター』なんか、リビューに書いたように破綻しまくったトンデモ映画だったのに。

音楽の話

♠ じゃあそろそろまとめたいんだけど‥‥
♥ まだ音楽の話してない。
♠ 音楽? あんまり印象に残ってないな。他の部分ぐらい異常だったらいやでも覚えてるはずだけど。
♥ つまり音楽はまともだったんだよ。すごいと思わない?
♠ 確かに他が全部変だから‥‥
♥ そういう意味じゃないって! 日本というと必ず流れるあの変な中国音楽使ってなかったということ!
♠ ああ、あれか。あのチントンシャンっていう。でも邦楽も聞こえては来なかったぞ。
♥ 私は「あれれ? 音楽があれじゃない」と気付いた時点から注意して聞いてたんだけど、サントラはごく普通のオーケストラ音楽だった。
♠ それがどうかしたか?
♥ 旅芸人のふりして「カブキ」をやるシーンでもずっとそうだったんだよ。
♠ えー、ぜんぜん気付かなかった。
♥ それでその西洋風の音楽に合わせて踊るんだけど、それがまったく違和感ないの。
♠ あの踊りもわりとまともな日本舞踊に見えた。
♥ 真田広之は日舞もやってるもん。
♠ そうなんだ。きれいだと思ったよ、あのシーンは。
♥ 最近、邦楽アーティストと洋楽のバンドの共演とか、邦楽アーティストによる洋楽のカバーとかがよくあって、私はYouTubeで見てけっこう気に入ってるんだ。だからこの映画の音楽もセンスいいと思った。
♠ なんだよ、結局ぜんぶいいんじゃん。
♥ 上にも書いたように、私が東洋(正確に言うと東アジア、もっと正確に言うと中韓日)を嫌うのは、音楽のセンスに付いていけないからなんだけど、こういうハイブリッドならいけるかもしれない。

まとめ

♥ IMDbのリビューを少しだけ読んだけど、やっぱり外人にはわからなかったみたいね。IMDbに書き込むような人は、それなりに知的だし映画通だと思うんだけど。絵的にはいろいろ突っ込みどころあるけど、脚本はよく書けてると私は思ったのに、人物の造形が浅いとか、話がだめだと言ってるのはやっぱりいろいろ通じてないような気がする。
♠ あえて文句を言うなら、お姫様やミヅキはステレオタイプでつまらないと思うよ。でもしょせんは冒険活劇じゃん。そんなのに繊細な人物描写を求められてもな。
♥ カイも大石も深みのある人物じゃないか。でもやっぱり普通の外人にとってはキチガイにしか見えないのかも。
♠ ほめてる人はやっぱり美術やCGをほめてるね。
♥ だいたい『もののけ姫』とか『千と千尋の神隠し』が好きなタイプの外人(私のことだ)は気に入ると思う。
♠ 笑ったのは、これは日本も海外も共通なんだけど、「思ったほどひどくなかった」とか「思ってたより良かった」と書いてる人が多いこと。どれだけひどいと思ってたんだよ。
♥ 自分もそうなくせに。

♠ でもYouTubeでキアヌのインタビューを見たら、この映画のプロモーションのためのインタビューなんで、映画のあらすじを説明しているんだけど、赤穂の城のことを「これはぼくの理解ではキャメロット城みたいなもので‥‥」と。
♥ なるほど!とむしろ私は感心したよ。日本の侍は西洋に置き換えれば騎士だし、その騎士の集団が主君の元に集うといえば、やっぱり円卓の騎士ってことになるんだなと。
♠ なんか違う! それにミヅキのことは「悪い魔女」だって(笑)。
♥ 私たちがあれ見て思い浮かべるのはやっぱり「妖魔」とか「妖怪」のたぐいだからなあ。
♠ やっぱり西洋人に理解しろというのは無理かな、と思った。
♥ それにしちゃ作り手の側はちゃんとわかったうえでデフォルメしてる感じが、むしろえらいと思ったよ。でも一般人ならそんなものでしょ。キアヌは一般人じゃないけど、あんまり賢くないし。
♠ さらっとひどいこと言うなよ。そこまで深い理解は求めないし、知らんでもいいとは思うけど。
♥ 逆に日常系のアニメのおかげで、おたくは知らんでもいいようなくだらない日本の習慣とか知ってるからな。

♠ 要するにアメリカで受ける日本というのは『キル・ビル』みたいなのだけなのよ。しょせん日本好きのアメリカ人なんて、バカかおたくだけだから。
♥ 悲しいですな。今の日本に黒澤明級の監督がいたら、この予算与えて、本物の「日本映画」を見せてやりたかった。
♠ いま日本で作ってる時代劇って、これにも劣るバカ映画が多数だから、むしろ見られたくないかも。
♥ 黒澤・小津の時代には世界をリードしていた日本映画がここまで落ちぶれるとはね。
♠ ちょうど日本で邦画が売れるようになったのと歩調を揃えてるような気がする。くだらない映画でもバカが見て元が取れるから。

♠ どうなんだろ? 最近じゃ日本映画より中国映画とか韓国映画のほうが受けてるような気がするんだけど。
♥ それは日本での話じゃない? やっぱりアメリカじゃだめでしょ。カルチャーギャップが大きすぎるし、そもそも東洋人が主役というだけで誰も見ない。
♠ インド映画なんかも国内じゃすごい隆盛を誇ってるんだけど、外じゃバカにされるだけだしなあ。その意味、黒澤はほんとすごかったね。
♥ しかも、芸術系のマイナーな外国映画が映画祭で賞とって認められることはよくあるけど、黒澤は純然たる娯楽映画でハリウッドに衝撃を与えたからね。
♠ その意味じゃ私は嫌いだけど北野武もすごいとは思うよ。
♥ あれに続く監督がいないからなあ。日本は役者はけっこういいのがいるけど、監督とか脚本がどうしようもないわ。
♠ 結局日本のもので海外で受けるのは、アニメと和製ホラーだけか。
♥ それどっちも私が完全にパスしてるものだから。理由はすでに述べたので省略するけど。それより、最近日本人が主役で話題になったアメリカ映画と言えば、『ベイマックス』
♠ アメコミじゃねーか! しかも宿敵ディズニー。
♥ あの主人公のキャラはけっこうかわいいと思ったよ。ぜんぜん日本人には見えないけどね
♠ それ突っ込む奴が日本にひとりもいないのが不思議でしょうがない。まあ、日本のアニメの日本人はもっと日本人には見えないけどね。

♥ というわけで、まさかの大絶賛になってしまって、自分でも動揺してます(笑)。
♠ こうしてみると、美術、衣装、CG、アクション、脚本、音楽、演技と、どれも悪いところなんてない、むしろ標準を上回ってるんだな。
♥ 私は髪型にだけは文句を言いたいが。
♠ ほんとの話、『47 Ronin』は過小評価されすぎ。何度も見たいとは思わないけど、一度は見て損のない映画だよ。特に美術や衣装やアクションやCGに興味のある人は見ておくべき。
♥ 私なんかこれ見たせいでかえって忠臣蔵に興味がわいて、ちゃんとした忠臣蔵映画見たくなっちゃったよ。
♠ どうせブルーレイの中古価格は暴落するから、そしたら買おっと。
♥ マジかよ!
♠ だってオーディオ・コメンタリーやメイキングが見たいんだもん。特に監督やデザイナーの意図がどうしても知りたい。

♥ それなら『ラスト・サムライ』も見ないとね。あえて避けてるようだけど。
♠ だってトム・クルーズのツラ見たくないんだもん。でも知識として見ておかないとだめかなあ。それより私は『13ウォーリアーズ』が見たくなったぞ。これより金かけてこれよりひどい赤字って、どれだけすごいのか。さっきのオールタイム・ワースト・ランキングでも、『ジョン・カーター』と『ウォーター・ワールド』に次ぐ3位に入ってたし。
♥ それはすごい。どんな映画なの?
♠ 1000年前の北欧が舞台で、12人のバイキングと1人のアラブ人が魔物を退治する話だって。
♥ 意味わかんねー!
♠ しかもそのアラブ人がアントニオ・バンデラス。監督はジョン・マクティアナン。
♥ トンデモ映画の臭いがプンプンする!
♠ でも『ロード・オブ・ザ・リング』や『七人の侍』や『もののけ姫』を思わせるとも書かれてるよ。
♥ これとおんなじじゃないか! タイトルまで似てるが。えー、どうしよう! 私はバイキングもアラブ人も好きだし、それは見たいかも。
♠ 原作がマイケル・クライトンというところだけが地雷な感じがして恐ろしいのだが、もしテレビでやったら絶対見よう。

広告
カテゴリー: ★★★(神), 映画評 タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , パーマリンク