【映画評】どーでも映画劇場 アイアン・スカイ(2012)Iron Sky

iron_skyUFOはナチの秘密兵器だというトンデモ説があったが、まるでそれをそのまま映画にしたような話。ていうかそれも元ネタのひとつだろう。ただ、そのトンデモ説によると、ナチの秘密基地は南極にあるはずだったが、ここではそれが月の裏側。
それでそのナチの残党が地球に攻めてくるんだけど、それを迎え撃った地球の連合軍(というか勝手に参戦した寄せ集め軍)が同士討ちを始めて地球が滅亡する話。

Director:

Timo Vuorensola

Writers:

Jarmo Puskala (original concept), Johanna Sinisalo (based on a story by), 2 more credits

「『スター・トレック』のパロディ作品『スターレック 皇帝の侵略』で世界中のSFファンにその名を知らしめた(知らねーよ)フィンランドの奇才ティモ・ヴオレンソラ監督」(allcinema)が、ファンから資金を集めて作ったという、もうバカ映画になるべくしてなったバカ映画。

いやそれ以前にフィンランド/ドイツ/オーストラリアと、ユーモアのセンスなんてみじんもなさそうな3国が共同制作というだけで、コメディとしては惨憺たるものになるのは予想できる。
ドイツ人は世界一ユーモアがわからない人種として有名だし、オーストラリア人は笑わせる気だけは十分だが、それがずれまくってるし(だからオーストラリア人がまじめに映画を作るとすごくおかしかったりする)、フィンランドに何がある? サウナとバイキングとヘビメタしかない国じゃないか!
ほんと、たまに非アングロサクソン映画(英米映画以外ってこと)を見ると、いかにアングロサクソンが天性のコメディアンでユーモアの天才かがよくわかる。ので、いつもながらの英国愛国者の私は、ギャグが滑ったり外したりするのをバカにして大笑いしながら見られるのでこういう映画はけっこう好き。
それにしても、こういう素人同然のマニアが作った映画らしく、パロディ(映画パロディや、政治パロディ、SFパロディなど)満載で、ネタをこなすだけで2時間。私の見たのはディレクターズカット、ならぬディクテイターズ・カット(独裁者カット)で、これだけクソ長い時間かけても、詰め込みすぎて時間が足りなくてあっぷあっぷなところは、アホだが微笑ましい。

しかしこのネタ、全部わかる人は日本にはいるまいな。私だって全部なんてわからないけど。でもキューブリックの『博士の異常な愛情』『2001年』、あと、『ヒトラー 〜最期の12日間〜 』のパロディは誰でも一目でわかるよね。私なんか『ヒトラー』は見てもいなかったのに(その後見た)、あのシーンだけは大量のパロディをYouTubeで見せられたせいで暗記するほど覚えちゃったもの。

日本人には理解しにくい理由のひとつは、ナチねたがたぶん通じないせい。元同盟国のせいか、日本じゃナチがそれほどタブーになってないから、ナチが出てくるだけで笑えるというのがわからないだろう。(かつての私の学生なんか「ユダヤ人がナチスを虐殺した」と平気で試験で書くレベルだったし)
それどころか、日本人のユーザーリビューを見ると、「これじゃアメリカが悪役にしか見えない」とか、「アメリカがナチ並みの悪として描かれている」みたいなピントの狂ったリビューがあるのにも笑った。ヨーロッパ人がこの手の映画を撮るなら、悪の帝王はアメリカに決まってるじゃないか! なにしろナチは現実にはもう滅びたから笑い飛ばすこともできるが、アメリカはまだあるからな。
最近のアメリカ映画じゃ悪の枢軸はイスラムで決まりのようだが、非アメリカ人(ただし日本のような属国を除く)からは自分らがそれと同等に見られていることはどう思ってるんだろ? そういや日本でも‥‥ああ、この話はシリアスになるから別の所でやろう。

その悪の権化、アメリカ大統領はサラ・ペイリン(共和党 元アラスカ州知事)扮する、おっと間違い、ステファニー・ポール扮するサラ・ペイリン。と、白々しく間違えそうになるぐらいそっくりなのは確かに笑った。聞いたことない女優さんだが、もしかしてそっくり芸人かなんかかも。
しかしサラ・ペイリン、ほんとに嫌われてるなあ。(アメリカ極右のアイドルとして華々しく登場したサラ・ペイリンだが、その後数々のスキャンダルや失言で、実は頭空っぽのアホ女だということがバレて失脚した)
なにしろ低予算だから、役者も無名の人ばっかりだが、ヒロインのユリア・ディーツェはかわいくてエロいし、対照的に彼女の元婚約者役のゲッツ・オットーは、誰もが思い描く通りの冷酷非情なゲルマン人で笑えるし、私がドイツ人役者と聞いて真っ先に思い浮かべるウド・キアも総統役で健在なところを見せて、役者はなかなかいい。っていうか、糞の役にも立たないくせにギャラばっかり高いハリウッドの人気俳優がいかに役立たずかがよくわかる。

ナチがツェッペリン型宇宙船で攻めてくるというのはなかなかかわいいが、本物のナチのヒロインを地球でネオナチにぶつけて笑いを取るのはベタ過ぎ。
ところで日本の宇宙戦艦がヤマトじゃなかったことにがっかりした日本人は多いだろう。監督は映画おたく、SFおたくではあったが、アニメおたくじゃなかったか。
というように、小ネタにいちいち突っ込みを入れていくときりがないのでやめるが、音楽がライバッハとか、ツボを押さえているあたり、熱烈なファンがつくのもわかるような気がする。
ただ、そのユーモアセンスが30度ぐらい横にずれてるのが、ダサく見える原因。これが180度ずれちゃうとかえっておもしろくなるのにね。

一方、美術は民間から出資を募ったとは思えないほど豪華。特に月のナチ基地は、30年代SFそのままのレトロなメカが泣かせる。私はいつもトップの写真には宣伝用ポスターを使うのに、B級感あふれるポスターより、かっこよすぎるスチルを使ってしまったのもそのせい。
こういう写真って、マイナー映画だと探すのにも苦労するのに、この映画はマイナーにも関わらず、かっこよくて大きな写真がネットにあふれてるのも、そういうメカフェチ、ミリタリー・フェチの心をそそるからだろう。

iron_sky2それに、これは大きな声では言えないが、ナチのデザインは軍服にしろ、スヴァスティカにしろ、デザイン的にめっちゃハイセンスでかっこいいからね。ナチの制服のデザインをしていたヒューゴ・ボスなんか、今でもトップクラスのメンズ・ブランドだし、黒革フェチ・軍服フェチの私は大好きだったりする。
あのデザインとレトロメカとの組み合わせが、なんともかっこいいのだ。かっこいいでしょ? 話はバカだけどね。

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