★★★【映画評】クラウド アトラス (2012) Cloud Atlas (Part2)

Part1からの続きです。そちらを先にお読みください。

エピソード(縦列)別 登場人物(横列は同一俳優) 一覧表

エピソード(縦列)別 登場人物(横列は同一俳優) 一覧表

役者について

♠ じゃあせっかくだから役者評。上のインフォグラフィックのいちばん上から順に行こう。

トム・ハンクス(Tom Hanks)

♥ 大っ嫌い
♠ なんで?
♥ 醜男なのに持ち上げられてるし、人畜無害だし、正義の味方ヅラしてるから。
♠ そのせいか、悪役を演じたエピソード1や4の彼は新鮮だったわ。
♥ しかもそれが似合うのはさすが役者というべきか、元々がごろつき顔だったというべきか。
♠ 少なくとも6のヒーローは似合わないよな。
♥ これは(私は嫌いだけど)メル・ギブソンの役柄でしょ。
♠ やっぱり『マッドマックス』かよ! とりあえず、エピソードについての評は次にやるからその時に。
♥ そうじゃなくても入れ墨いれた蛮人はメル・ギブソンだよね。『ブレイブハート』的に。
♠ おお! 確かにそうだ。生まれながらの蛮人だな、あいつは。

ハル・ベリー(Halle Berry)

♠ 彼女は黒人と白人のミックスだよね。その意味この映画にはうってつけなんだが。白人と黒人の両方を演じられるので。
♥ 実際演じて違和感ないよ。さすがに彼女に男役は無理だと思ったけど。ただ、きれいだって言われるけど私はあんまり‥‥。
♠ こういう細くて小さい女の子苦手だからね。役柄についても何か言ってよ。
♥ なんか優等生でつまんない。
♠ ジョカスタ・エアーズは悪女だろ? 結婚してるのに若い男を誘惑するんだから。
♥ あっちはゲイだし、お義理で寝ただけって感じだけどね。

ジム・ブロードベント(Jim Broadbent)

♠ とりあえずイギリス人というだけで合格だが、目玉親父
♥ ほんとに目がこぼれそうにでっかい! カヴェンディッシュの役はコミカルに見せるために目が大きく見える近眼鏡かけてるのかと思ったら、眼鏡なしでもああいう目なんだわ。
♠ コメディアンか何か?
♥ コメディも古典もなんでもやってるよ。『ナルニア』のカーク教授で、『ハリー・ポッター』のスラグホーン。
♠ なんか英国人俳優というと必ず『ハリー・ポッター』に出てるのな。
♥ かわいい爺ちゃんで好き。

ヒューゴ・ウィーヴィング(Hugo Weaving)

♥ こっちは間違いなく姉弟が連れてきたエージェント・スミス
♠ 悪魔や殺し屋役なんてもろに『Matrix』とかぶってるじゃないか!
♥ いや、髪の毛があるとあんなに印象変わるのかと、むしろ驚いた。
♠ 女装は何の驚きもなかったな。死ぬほど醜いけど。
♥ だって、すでに『プリシラ』ですでに女装は披露済みじゃん。
♠ そういえばそうだった! あんな強烈なの、なんで忘れてたんだろ?
♥ あまりに強烈すぎて、脳が本能的に拒否するからじゃない?
♠ でも結局あの「韓国人」のインパクトにすべて持って行かれた。

エピソード5の狂ったスコットランド人(ジム・スタージェス)と看護婦(ヒューゴ・ウィーヴィング)。二枚目でもこういうバカがやれる人好きだ。しかしウィーヴィングの女装の視覚的インパクトは「韓国人」に匹敵する。

エピソード5の狂ったスコットランド人(ジム・スタージェス)と看護婦(ヒューゴ・ウィーヴィング)。二枚目でもこういうバカがやれる人好きだ。しかしウィーヴィングの女装の視覚的インパクトは「韓国人」に匹敵する。

ジム・スタージェス(Jim Sturgess)

♠ この人もイギリス人なんで以下同文。
♥ ハンサムだよね。普通に二枚目。
♠ まつげ長すぎ、目がクリクリしすぎ。私の好みから言うとかわいらしすぎるな。すごく若く見えたけどもう30越えてるんだね。童顔?
♥ こういうイギリス男はもっと熟成させてから味わいたい。
♠ ユーイングはこれも優等生過ぎてちょっといやだったけど、私は現代編でパブにいた赤毛のスコットランド人が好きだ。いかにも現実にいそうな感じで。
♥ でもやっぱり「韓国人」に持って行かれると。クールなヒーローという、ちゃんとしてればおいしい役だったのになー。

ペ・ドゥナ(Bae Doo-na)

エピソード5のペ

エピソード5のペ

♠ 韓国の女優さんだけど。
♥ 菊地凛子かと思った(笑)。
♠ もうこの辺の東洋人女優は見分けが付かないわ。
♥ だから人種差別・性差別はどっちだと。
♠ でも嫌いでしょ?
♥ こういうちっちゃくて細い女は苦手なんだってば。
♠ この人背は低くないでしょう。レストランの相棒よりかなり大きかったし。
♥ でも童顔で、頭でっかちで、体が貧弱で手足がか細い幼児体型じゃない。こういうアニメ体型って生理的に受け付けない。悪いけど同じ人種どころか、同じ生物に見えない。虫か何かみたいで。
♠ 言いたい放題だな(苦笑)。
♥ でもこういう女の子が日本じゃ受けるんだよね。姉弟が気に入ったのもそのせいか? おたくだから? 性同一障害に加えてロリコンか?
♠ 確かに私もこれならまだ菊地凛子のほうがまだましだと思って見てたけど。
♥ 別に悪口言うつもりじゃないんだけど。単なる好みの問題で。痩せてる女性をバカにしているわけでもない、っていうかむしろ自虐。痩せてた頃の私はこれよりもっと細くて、自分でも気持ち悪いと思ってたから。
♠ でもエピソード1でユーイングの赤毛の奥さん演じたときはあまり違和感なかったね。
♥ 妻命のユーイングだから、画面に出てきたときは「奥さんってこんなにブスだったの!」とは驚いたけどね。
♠ それのどこが悪口じゃないんだよ!

ベン・ウィショー(Ben Whishaw)

♠ 『パフューム』の主役。だーい好き。イギリス男の若いのはこの手がいちばん好き。
♥ 素顔を見るとダニエル・ラドクリフが痩せたみたいじゃない?
♠ この人もヒゲやまつげが濃くて黒々してるからかな? でもこういうのそれこそロック・ミュージシャンにたくさんいるじゃない。あまり猿っぽくないイアン・ブラウンみたいな。
♥ まあ彼は顔じゃない。演技力で惚れたんだし。
♠ そのせいか、『パフューム』と較べると、フロビシャーはまともな人過ぎていまいちかな。
♥ ジェームズ・ダーシーとのベッドシーンは見せてくれたけどね。
♠ うん。あれは良かった。『モーリス』かと思った。
♥ ベン・ウィショーは実生活でもゲイで、同性婚してるんだよ。
♠ マジか! 誰と?
♥ 作曲家のマーク・ブラッドショウという人。写真見たけど彼氏はちょっと太めのブロンドで、二人とも若いし、なかなかかわいいカップルでしたよ。

ベン・ウィショーと彼の「妻」

ベン・ウィショー(左)と彼の「妻」

♠ ほほう。しかし意外だなー。ゲイの役は本当のゲイにはやらせないんだと思ってた
♥ なんで?
♠ 忘れたけどどっかで読んだ気がする。私は相手がモノホンのゲイだと共演者の男優がいやがるからじゃないかと思ってた。
♥ ジョディ・フォスターは『ホテル・ニューハンプシャー』でレズの役やったし、イアン・マッケランも『ゴッド・アンド・モンスター』でゲイの映画監督役やってたぞ。
♠ そうか。じゃあ私の思い過ごしかも。

♥ しかし、彼を連れてきたのは明らかにトム・ティクヴァだけど、それじゃなんでウォシャウスキー姉弟はキアヌ連れてこなかったんだ?
♠ そりゃスケジュールとかいろいろあるし‥‥
♥ キアヌならメイクいらずで韓国人だって演じられたのに。
♠ まあ、私も『47 Ronin』なんてやるぐらいだったら、こっちに出てほしかったとは思うけど。
♥ 姉弟だって使いたかったはずだと思うよ。予算とスケジュールさえ許せば。
♠ どうかな。それだとあまりに『Matrix』のイメージが強すぎてむずかしかったんじゃない?
♥ 確かにキアヌは何を演じてもキアヌだから、こういう七変化は向いてないか。
♠ そうだよ。彼は宇宙人をやろうが、お釈迦様をやろうが、日本人をやろうが、『ビルとテッド』だろうが、何を演じてもキアヌにしか見えない。

キース・デヴィッド(Keith David)

♠ ってどの人だっけ?
♥ エピソード3でヒロインを助けてくれる黒人。
♠ ああ、あれか。普通に黒人アクションスターとしか見えなかった
♥ 黒人にはこの態度!
♠ 黒人だからじゃなくてアメリカ人だから。

ジェームズ・ダーシー(James D’Arcy)

♠ この人もイギリス人で‥‥
♥ もうわかったってば! シックススミス博士をやった人ね。彼は若い頃と老人になってからを演じわけてるけど、どっちがメイクだったんだ?
♠ そりゃ老人に決まってるだろ。でも実年齢もそんなに若くない。30代後半で。
♥ 普通のハンサムだなー。でもあんまり印象に残らないタイプ。こういうかっこいいお爺さんも好きだけど。
♠ イギリス人役者が好きな理由のひとつは、「誰?」ってレベルの無名の俳優でも、みんなハンサムで背が高くて演技がうまいという、最低限私が役者に求めるものを持ってることなんだ。なんで日本やハリウッドアクターは、こんな初歩的なところをクリアできないんだろう。ていうか、そんなこともクリアしてない役者を使うんだろう?
♥ まあ、それはかなりひいき目入ってるとは思うけど、向こうはまず舞台役者として鍛えられてるからというのは言えると思う。舞台は生だから失敗きかないし、ごまかせないでしょ。背が高くないと舞台映えがしないので無理だし。

ジョウ・シュン(Zhou Xun)

♠ ジョウ・シュンは中国人で、ソンミの友達を演じた人。
♥ クローンにしちゃ似てない。
♠ 同じ人間のクローンとは言ってない。彼女はユーナ939だから、ユーナという原型の939人めのクローンってことでしょ。
♥ 同じ髪型で同じ服で同じメイクでも、明らかにペ・ドゥナより美人だなあ。まして素顔で見るとくらべものにならないぐらい美人。こっちを主役にすれば良かったのに。
♠ それより私は彼女が最後のエピソードでトム・ハンクスの妹やってたことに気付かなくて、最後のクレジットのネタバレ見てびっくりしたよ。
♥ 私も。アップにしてよくよく見ると白人じゃないというのはわかるんだけど、原始人メイクのせいもあって、最後までわからなかった。
♠ 美人ではあるけれど、ぜんぜん白人ぽい顔じゃなくて、むしろ典型的中国美人なのにね。
♥ だからますますあの韓国顔のyellowfaceがわからなくなるんだよ。

デヴィッド・ジャーシー(David Gyasi)

♥ 実はこれ見るまで黒人が2人出てることに気付かなかった。同じ人かと思ってた。
♠ 人種差別はそっちだろ!
♥ だって黒人の見分けなんて付かないよ。自分と同じ東洋人ですら見分けが付かないんだから。
♠ とりあえず、東洋人も黒人も(ハル・ベリーを数に入れなければ)2人ずつで人種に配慮したってことかね。
♥ ヒスパニックがいないし、ネイティブ・アメリカンもいないし。
♠ これでも十分がんばったんだって。
♥ それにしちゃ黒人の役柄はステレオタイプじゃないか。どっちも肉体派で。黒人のコンピュータの専門家とか出ないし。
♠ 『スパイ大作戦』や『ダイハード』には出てたぞ。それ言ったら、ソンミもか弱く従順な東洋人女性のステレオタイプだし、これは意図したものでしょう。
♥ 白人は善悪両方の役をやってたのに、黒人や東洋人には善人の役しか当てないのも作為を感じるなあ。

スーザン・サランドン(Susan Sarandon)

♥ おばさま大好き! これだけ年取ってもきれいだしかわいいわー。
♠ いやほんと。もっと汚くなってるかと思ったので驚いた。しかし白人女って年取ると妙に男装が似合うね。
♥ 人種を問わず、年を取ると性差が希薄になる&もともと白人は男顔だから。

ヒュー・グラント(Hugh Grant)

変わりすぎのヒュー・グラント

変わりすぎのヒュー・グラント。このたれ目を見ればわかるけどね。

♠ この人はいつの間にかすごい爺さまになっちゃったのでびっくりした。
♥ 確かに元々シワ顔ではあったが、あれだけの甘ったるい色男だったのにねえ。
♠ メイクのせいもあるけど、カヴェンディッシュのお兄さんとか、人食い人種の酋長とか、言われてもわからないレベル。
♥ 私はむしろ感心したなー。退屈な2枚目だと思ってたのに、こんなに演技の幅が広い人だったなんて
♠ 確かに。この路線で行ってくれるなら好きになっちゃうかも。特に人食い人種の。
♥ それはないって!
♠ そういうところもイギリス役者の良さなのよ。偉大なシェイクスピア俳優でも、頼まれればおばか役もこなすみたいなとこ。

♠ 以上12人中イギリス人5人か。まあまあかな。原作が英国小説だし、映画のヨーロッパ人はイギリス人がやるという不文律に照らすとちょっと少ないけど。
♥ それだけで映画を判断してない?
♠ イギリス人とヒューゴ・ウィーヴィングはまあいい。韓国女と中国女は我慢する。でもかんじんの「スター」がなあ。
♥ トム・ハンクスもハル・ベリーもヒュー・グラントも、ちょっと前までのスターって感じで落ち目感が否めない。予算足りなかったのかな?
♠ でもそれなら誰がいいかって言うと。
♥ キアヌ・リーヴス。
♠ だからそれはないって話になったんでしょ。私は嫌いだけど、ブラッド・ピットあたりの役柄だと思うけどなあ。特に最後のアクションシーンは、トム・ハンクスじゃ年寄りの冷や水に見えてしまって。
♥ ヒロインもできればもっときれいで知的な人が良かった。

この俳優の七変化のアイディアはやっぱりここからですよね? というわけでウォシャウスキー(兄)のビフォー&アフター。

この俳優の七変化のアイディアはやっぱりここからですよね? というわけでウォシャウスキー(兄→姉)のビフォー&アフター。

各エピソードについて

♥ 続きましては各エピソードの寸評。ただしうんと短くね。各エピソードのあらすじはPart1にあります。

エピソード1

♠ なんかすっげー普通。ウォシャウスキー姉弟らしい外連味もまったくないし。
♥ いい人が悪人にだまされて危機に陥るんだけど、助けた黒人の恩返しで助かると。まさに勧善懲悪もので、ほんとに19世紀小説を読んでるみたいだよ。こういう航海記ものって流行ってたし。
♠ それマジかもよ。
♥ 何が?
♠ 設定年代の文体や形式に合わせたっての。原作読んでないから何も言えないけどさ。
♥ そう言われてみると、未来の2つはSFだし‥‥
♠ 30年代のエピソード2は『モーリス』だし。(『モーリス』は1910年代だけど、30年代でも同性愛に対する風当たりは強かった)
♥ 3もいかにも70年代って感じするね。
♠ スリーマイル島が70年代だったからね。現代は老人問題と経済格差でばっちりじゃない。
♥ すげえ! それ誰も言ってなくない?
♠ 原作読んだ人は誰でもわかってたりして。
♥ まあその意味で話が古臭いのは許すけど、映画はもうちょっと考えてほしかったよ。トム・ハンクスの医師なんて、最初っから怪しくて毒盛ってるのは見え見えだったし。

エピソード2

ジム・ブロードベント(左)とベン・ウィショー

♠ わりとどうでもいい話だった1と較べて、こっちは重いし深刻だ。これだけで映画1本撮れるぐらいの。
♥ ここで監督の力量の違いが見えちゃったりして。
♠ 1のノリが軽かったのはウォシャウスキー姉弟のせいか? 少なくともトム・ティクヴァの演出はいかにも重厚でスタイリッシュでヨーロッパ的だね。
♥ お話は上にも書いたように『アマデウス』なんだけど。『アマデウス』x『モーリス』だな。
♠ この「若い天才と衰えた老名人」というテーマ、『パフューム』もまさにそうだったんで気になるんだけど。
♥ そういやそうだ! ダスティン・ホフマンが演じた調香師!
♠ でもどっちも原作ありなんだから、あれをパクったはずはないよね。
♥ 自然と『パフューム』とダブるから、この配役はむしろ狙ったものかも。
♠ ただ、映画だと細かい心理とかがわからないから、納得できない部分も あったな。なんで老作曲家はそこまで彼を手放したがらなかったのかとか、殺すほどのことだったのかとか。シックススミスとはあれだけいい仲で手紙ですべて 伝えてたのに、なんで彼に助けを求めることはしなかったのかとか、なんでシックススミスはもっと早く助けに来なかったのかとか。
♥ 雰囲気で察するほかないねえ、原作ものは。どうせ原作は電話帳ほどあるんだろうし。あ、この比喩もう通じないか。最近の電話帳薄いから。とりあえず同性愛は重罪だったから、バレたら社会的生命断たれるし、殺したのはわかる。
♠ あのジジイのほうは? なんかすり寄ってくるからフロビシャーは口説かれてるのかと誤解するんだけど、どうやらその気はないらしいし、奥さん寝取られてるのに、若い男を手元に置いておきたいというのがわからん。
♥ 単にフロビシャーの曲を盗みたいからでしょ。曲が書けなくなった作曲家ならありうる。
♠ 佐村河内守(注)か!
♥ 時事ネタを入れるなって言いたいが、あまりにもズバリなので(笑)。佐村河内は最初から何もやってなかったらしいけどね。
♠ フロビシャーはあのガチャ目の新垣隆さんか!
♥ やめてったら(笑)。せっかくこれはシリアスなエピソードなのに、もう笑いなしには見れない!(笑)

(注)佐村河内守(さむらごうちまもる)は 聾者の天才作曲家として売れっ子だったが、2014年、桐朋学園大学の非常勤講師、新垣隆が佐村河内の曲はすべて自分が作曲していたと告白して大スキャンダルに発展した。

これだけ ならすごいシリアスな事件なのだが、たまたまこの2人の容貌やキャラがユニークすぎたので、ネットではお笑いのネタとしてもてはやされた。

って、こういうネタに注入れるのってアホみたいだが、本当に時事ネタは後に読むと自分でもなんのことかわからないことが多いので。と思ってたが、今はインターネットがあるからなんでも検索可能なんだった。

エピソード3

♠ スパイものって感じ? 企業スパイ?
♥ 主人公のルイサ・レイにまったく感情移入できないのでつまんなかった。
♠ なんで?
♥ そもそもハル・ベリーが好みのタイプじゃないし、敏腕女性ジャーナリストが社会の巨悪をすっぱ抜く!みたいな設定も古いしクサいし。ヒロインが危機に陥ると都合良く白馬の騎士が助けに来るあたりも古くさいし。
♠ ねえ、これ純文学だろう? もしかして全部パロディーかなんか? まじめに書いてるとしたら、このエピソードはアホ過ぎない?
♥ 原作知らないからわかるわけないだろ。でもこれはティクヴァ監督にしてはアクション主体のエピソードだったね。
♠ ヨーロッパ人が真似してみたアメリカ映画って感じ。どっちの良さも殺されてるみたいな。
♥ 明らかに「アメリカっぽさ」を意識して書かれたエピソードだと思うけど、私はそれが嫌いなんで。
♠ やっぱり70年代っぽさを意識したんじゃないかなー。話のスケールはでっかいのに、妙にちゃちなところとかが70年代のスパイものを思わせる。

エピソード4

脱走劇に大興奮のジジババ4人組

脱走劇に大興奮のジジババ4人組

♥ 私はこれがいちばん好き。爺ちゃん婆ちゃんかわいい(笑)。
♠ 前とは一転して、純英国風のファース(笑劇)だわね。これも独立した映画でありそうな。
♥ なんかほっとするわねー、この世界。
♠ そりゃ現代だし、英国だし。
♥ これ以外のエピソードって、はっきり善人悪人が分かれてるじゃない。それで善人は錦の御旗みたいに正義を振りかざすのがけっこうウザい。(特に未来編) それにくらべ、この主人公のカヴェンディッシュって、けっこうこすっからい商売人で、人の死を平気で金儲けに利用してホクホクしてるし、金持ちの兄には平気でたかるし、ぜんぜんいい人じゃないにも関わらず、結果として心ならずもいいことをしてしまうというのがすごく好きだ。
♠ 同じことしか言わない痴呆症の爺さんなんて、笑わせようという意図が見え見えなんだけど、それでもつい笑ってしまう。

♥ 私は病院を脱走した老人たちがパブで追い詰められて、絶体絶命の状態から逃げ出すところに笑った。
♠ パブではみんながイングランド対スコットランドのラグビーの試合の中継を見ててちょうどスコットランドが負けたところ。でもパブの中はスコットランド・サポーターでいっぱいで、みんなピリピリしてるんだよね。そこでその痴呆っぽい爺さんがいきなりしゃんとして演説を始めて、スコットランド 人をあおって暴動起こさせるの。
♥ カヴェンディッシュは逃げ出してちゃっかり初恋の人といっしょになったらしいけど、あのならず者たちはどうしたんだよという突っ込みも。

エピソード5

ニューソウルの町

ニューソウルの町。きれいです。拡大してご覧ください。

♥ ここから未来で、ウォシャウスキー姉弟担当のSFになります。
♠ ストーリーはPart1に書いた通りなんだけど、たとえ不細工な東洋人だらけでなかったとしても、これには辛い点しか付けられない。
♥ それは私がSFマニアだから?
♠ ていうか、SFとしてヘボすぎるっていうか、古すぎるし、ステレオタイプ過ぎるし、幼稚すぎるから。
♥ まあ、『ソイレント・グリーン』ですからね。70年代SFの乗りだよね。
♠ しかもエピソード4でカヴェンディッシュが「ソイレント・グリーンは人間だぞ!」と叫んで重大なネタバレをやっちゃってる(笑)。
♥ 『ソイレント・グリーン』にされるのはいらなくなった老人だから、あのエピソードに『ソイレント・グリーン』が出てくるのは大いに納得なんだけど、こっちの落ちまでそうだとは思わなかった。まんますぎるだろ。
♠ それはたぶん原作の欠陥だが。

♠ あとさあ、SFじゃジャンヌ・ダルク的な若い女性が大義のために殉教するって話もよくあって、特に私が敬愛するダン・シモンズの『エンディミオン』という傑作があるんで‥‥
♥ 断っておくけど、『エンディミオン』(とその続編の『エンディミオンの覚醒』)は「大義のために殉教する」なんていう単純な話じゃないから。
♠ 表面的にはそうじゃないか。とにかく、あれとつい比較してしまうから、こっちはもう幼稚っぽくて見てられないレベルで。

♥ 視覚的には『ブレードランナー』を思い出したな。ニューソウルの町が『ブレードランナー』の日本化されたLAにそっくりだったし、クローンを指す「ファブリカント」という名称もレプリカント(これ自体が原作にはないリドリー・スコットの造語なのだが)のもじりみたいだし。
♠ たぶんモロ意識してるわな。そっくりそのまま『ブレードランナー』をパクったようなシーンもあったし。だけどここで視覚効果の話になるけど、『ブレードランナー』があの時代にCG抜きであれだけやったのを見ちゃうと、どうも見劣りする。
♥ そりゃー、あのボボーッと燃え上がる火と「強力わかもと」の黙示録的風景には誰も太刀打ちできませんわ。でもこれはこれで普通にきれいだなーと思って見てたけどね。

たとえネタでもこういうセンスは耐えられませんわ。ましてシリアスでこれやられてもなあ。

ソンミの働くレストラン

♠ 町はいいんだが、中へ入るとこうだからなあ
♥ たとえネタでもこういうセンスは耐えられませんわ。ましてシリアスでこれやられてもなあ。
♠ この色使い、女の子たちの制服、ロゴマーク‥‥あたま痛い。目が腐る。
♥ これが出てきた時点でもう見るのやめようと思った。
♠ やっぱり東京とかもこういうところだと思われてるんだろうなあ。
♥ 歌舞伎町のロボットレストランとか? あれはもっと派手か。
♠ でもああいうのが外人には大人気じゃない。日本人の大多数が見たことも聞いたこともないのに、変なイメージだけが先行するのがネット時代の弊害だな。
♥ 私は風俗なのかと思ったら、これってただのファストフード・レストランなのね。
♠ おさわりは自由みたいだけどね。

♠ 人間に奉仕するために作られて人権無視され性的虐待されている女性人造人間が主人公というところで、パオロ・バチガルピの『ねじまき少女』を思い出さなかった? もちろん影響されたとかいうんじゃなく、単なる偶然だけど。
♥ うん。バチガルピは非常に寡作なんだけど、どの作品も強烈な印象で、今いちばん気にしているSF作家なんだ。
♠ 『ねじまき少女』については、ちゃんとした書評書きたいから今は触れないでおくけど、タイトルからして日本おたくの萌え系の小説かと思ったの(笑)。「ねじまき少女」は日本人という設定だし。
♥ そしたらとんでもない、ハードコアな社会派小説でした。言っちゃ悪いがこれもくらべ物にならない。

♠ 他に「出典」を探すと、ソンミ451の451という番号はもちろんレイ・ブラッドベリの『華氏451度』から取ってるんだよね。
♥ 私は気付かなかったけど、ルイサ・レイのアパート番号も451なんだそうだ。全体主義と戦う話だからかな。
♠ それ言ったら全体主義と戦うレジスタンスの話というのはみんな『1984年』が原型だ。だから当然『ブラジル』も入ってる。どうも元ネタが誰でも知ってる有名作品ばっかりというか、素人臭いんだよね。
♥ 映画で原作は判断しないと言ったけど、この作家、SFには疎いのは間違いない。
♠ それは予想したけど、そこはウォシャウスキー姉弟が補ってくれるだろうと期待してたんだけどな。
♥ だってあなた、『Matrix』はSFとしちゃ破綻だらけのおちゃらけですぜ。しょせん日本アニメで育った世代に、まともなSFが書けるはずがない
♠ でも何度も巻き戻して見ないとわからないような、細かい仕込みは他にもたくさんあったはず。

♠ というわけで、町はわりときれいだったけど、それ以外のSFガジェットは苦笑ものというか、笑わせるつもりで作ってるとしか思えない。
♥ ストーリーも結末もいかにも古いし陳腐だし、はっきり言って、このエピソードは丸々割愛してほしかったわ。映画全体の汚点でしかない。
♠ さすがSFおたくはこういうのには辛いね。

エピソード6

♠ そして最終エピソードは‥‥
♥ 『マッドマックス』(笑)。さすがにひどいと思って(嘘)と書いたけど、でもやっぱり『マッドマックス』以上のものではないよね。思想的にも。
♠ テーマの問題は次でやるつもりだから、あくまでこのエピソードに限って言うと?
♥ エピソード5はそれでも恋ありアクションあり「衝撃の結末」ありの娯楽映画していたけど、こっちはなんか淡々としてるわね。文明滅亡後の日常を描く方が中心で。
♠ そういうSF大好きだし、こういう雰囲気自体は好きだけどね。ただもう言うだけ野暮な気がしてきたけど、SF的突っ込みどころはいっぱいあるな。
♥ たとえば?

♠ たとえば、わずか300年ぐらいで文明人がここまで退化するわけない、とか。そりゃ道具や機械がないのはしょうがないけど、この人たち、見かけや暮らしぶりだけじゃなく、ものの考え方まで完全に文明以前、ニューギニア高地人並みじゃない。
♥ アメリカ人だから退化も早かったんじゃない?
♠ そんなに真顔で言われると、本当みたいな気がしてくるじゃないか(笑)。
♥ ただこの点についてまじめに考察すると、科学技術が失われたのはしょうがないとしても、迷信がはびこって野蛮な土人に退行しちゃってるのは、明らかに彼らの宗教のせい。つまり「ユニオン」とソンミのせいってことになるんだよね。
♠ なるほど。せっかくクローンを解放し、圧制者を打倒したはいいが、それが産んだのは野蛮な無政府状態か。
♥ 現実にもしょっちゅうある話だよね。アフリカでもアジアでも。
♠ そう思うとなかなか含蓄がある話かも。場所がアメリカというのも、現代世界で宗教キチが多く住む文明国はアメリカだから納得できるし。
♥ 原作はそうだったかもしれないけど、たぶんウォシャウスキー姉弟はそこまで考えてないよ。

♠ あと、一部の人類は宇宙に逃れたのに、なんでこの人たちは地球に残ったのかとか。
♥ なんか言ってたかもしれないけど、このあたりになるといい加減うんざりしてちゃんと見てなかったので見逃したかも。録画ももう消しちゃったし。
♠ ハワイ以外の世界がどうなってるのかもわからないけど、これだけ見てると、ダメ人間だけ置き去りにされたんじゃないかと思ってしまう。
♥ トム・ハンクスなんか小さい村の中でさえ適応障害っぽかったからね。
♠ でも役に立つところを見せたから連れてってもらえたと。
♥ なんか勝手に話を作ってるが、主人公はハッピーエンドでいいけれど、それ以外の地球人(食人種も含めて)がどうなったのかもわからないので、なんか釈然としないラストだった。

♠ 文明崩壊後の世界というテーマで書かれたSFなら、本でも映画でも200本ぐらい思い浮かぶなあ。というぐらい手垢のついたジャンル。
♥ その中で文明の利器を保持している種族が圧倒的な覇権を握るというのも、お約束。
♠ 結局どっちもSFファンにはもう嫌気がさすぐらいありふれたテーマなんだよ。レジスタンスの物語は、現実に世界にファシズムの風が吹き荒れた時代にさんざん書かれたし、文明崩壊後の世界テーマは全面核戦争が現実の脅威だった冷戦時代に、どっとあふれたし。
♥ それを今さらこんなぬるい形で焼き直して出されても‥‥というのが正直な感想でした。
♠ なのに、国内のリビュー見ると、「SF部分が良かった」ってやつが多いんだぜ。
♥ ほんと今の奴らってまともなSF読んでないから、こんなクズがいいと思うんだな。
♠ やっぱり書評はちゃんと書かないとだめだよ。ここで文句言ってるより、まともなSFを少しでも紹介すべき。
♥ こんな誰も読んでないブログで書いたってむだでしょ。だいたい、この映画程度でむずかしすぎるって言ってる連中に今のSF読ませたってちんぷんかんぷんだろうし。
♠ 確かに大学教師やっててその辺はほぼ絶望したからなあ。

テーマについて

♥ そこで、あらためてこの映画全体のテーマは何かというと、ソンミ451のこのせりふだと思うのよ。

“Our lives are not our own. From womb to tomb, we are bound to others, past and present. And by each crime and every kindness, we birth our future.”
「私たちの命は私たちだけのものではありません。子宮から子宮へ、過去から現在へ、私たちはみんな他者とつながっています。そして私たちの未来はそれぞれの罪や優しさから生まれるのです」

♠ ちなみに、アメリカでの宣伝文句は“Everything is connected”「すべてはつながっている」というもので、やはりこのテーマを語っている。
♥ でも日本の宣伝文句は「いま、<人生の謎>が解けようとしている」というんだけどおかしいよね。
♠ 謎なんてないし、解けてねーし。詐欺みたいな文言だな。
♥ で、何が言いたかったのかというと、たぶん手塚治虫の『火の鳥』のテーマとおんなじなんだよね。
♠ だけどもちろんあのレベルには達してない。
♥ 輪廻転生というところでは楳図かずおにもあったじゃない。女が何度も転生するマンガ。
♠ 『イアラ』かな。
♥ だけど、ここにはそういうマンガにはあった深遠な哲学みたいなものはほとんど感じられない。
♠ このセリフだけど、「そうやって連綿と続く命の先には、いつかきっとすばらしい未来が!」みたいに聞こえるんだけど、実際はぜんぜんそうじゃないあたり、何が言いたいのかわからない。
♥ なにしろ地球を居住不可能なまでに破壊しちゃって、宇宙に島流しですもんね。残った奴らは『マッドマックス』だし。こんなことになるんなら、つながったって何の意味もないだろうと。むしろそんなつながり、どこかで断ち切っておいたほうが地球には優しいだろうと。
♠ 結局は『スローターハウス5』に落ち着くんじゃない? 「そういうものだ」(”So it goes.” 『スローターハウス5』に何度も出てくる決めぜりふ)ってことで。
♥ そうなのかも。これもやっぱり古いけど。

♥ やっぱり私は「つながってない」ところがいちばん気に触るな。あの彗星の形のあざとか。
♠ うん、主人公にあざがあるのはわかったが、その主人公たちに共通するものがそれしかないんだよね。
♥ なんで彗星なのかは、せめて最後に説明があると思ったんだけど、それもないし。原作読めばわかるんだろうか?

♠ あと、各エピソードの要約に「形式」として書いた伝承方式ね。それぞれの時代にいちばんポピュラーな形でつないでいくというのはすごくおもしろい。にも関わらず、伝わったからどうかなったというのが、ほとんどないんだ。
♥ かろうじてカヴェンディッシュの映画を見たソンミが、革命に関心を持つところぐらいかな。
♠ でもそのカヴェンディッシュの話ってコメディーじゃない。どう考えてもソンミの話の暗い深刻さと合わない。他はただ読みました、ってだけだし。つなぐならちゃんとつなげろよ!

♠ というわけで、意欲は認めるし、実際、意欲的な作品ではあるのだが、かんじんの出来はというと、かなり微妙、という微妙な作品になってしまった。
♥ 役者やメイクさんは(yellowfaceは除く)よくがんばったしほめてあげたい。編集もうまかった。美術やセットも本格的で良かった。
♠ 一個一個のエピソードを見ると、それぞれちゃんとした話なのに、混ぜ合わせるとかえって消化不良でちぐはぐになってしまったような気もする。
♥ それはたぶん映画だから。本ならじっくりひとつひとつ料理して、じっくり味わうこともできるけど、映画は大急ぎで片付けないとならないし。

♠ でも似たような形式の『バベル』があれだったから警戒してたけど、『バベル』よりはずっと良かったよ。
♥ そうだ! 何かに似てる気がしてたんだけどあれだったか。
♠ 他にももう一本、見ててそっくりと思った映画があるんだが忘れた。
♥ (『バベル』のリビュー(2008年9月5日)を読み返して)こりゃまたすごいクソミソだな。なぜか唐突に菊地凛子の話が出てきたと思ったら、『バベル』の記憶だったのか。
♠ あんなのもうすっかり忘れてたわ。
♥ でも『バベル』がエピソード4つなのに、こっちは6つだから、こっちのほうがさらに複雑だったのに、よくちゃんと映画に仕立てたとは思うわ。
♠ 個々のエピソードもあれよりはずーっとおもしろかったよね。
♥ 『バベル』との差は監督の差でしょ。さすがに腐ってもなんとかで。
♠ でも『バベル』のアレハンドロ・G・イニャリトゥって、今年のアカデミー賞で作品・監督・脚本賞を独り占めしたよ。『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』って作品だけど。
♥ なーんかいかにも批評家が好きそうな感じの題名。(邦題はほぼ原題の直訳)
♠ だいたい内容も想像つくな。『バベル』が無理だった私には無理そう。確かにウォシャウスキー姉弟はセンスないけど、それでもSF者というだけでも私の仲間だわ。

♠ というわけで、なんかいっぱい悪口書いちゃったみたいだけど、愛あればこその悪口なんで許してほしい。それでもこれはtour de forceだし、見応えのある映画だと思う。
♥ これだけ大風呂敷広げちゃうと、どうしてもアラが見えちゃうのよね。原作ものはよけい。
♠ がんばったんだけど、複雑すぎ、スケールが大きすぎて、力が追いつかなかったという点では『インセプション』も思い出すな。
♥ 『インセプション』よりはこっちのほうがおもしろかったよ。それでも私はこれより『47 Ronin』のほうがおもしろかったけど。
♠ 『47 Ronin』は関係ないだろ!
♥ あっちは変だけど変なりに一本筋が通ってるんだよ。これはちょっと揺らぎすぎ。彗星のあざの意味とか、ああいうのがびしっと貫ければ、『2001年』並みの名作になったかもしれないのに。
♠ でもハリウッドが量産する、いい加減なアメコミ映画とかジュブナイルものに較べれば、これは本物の芸術と言ってもいいぐらいだ。ああいうバカ映画見るぐらいなら、これを100ぺん見なさいとおすすめしたい。
♥ 私は100回も見る気しないけどね。

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