★★★【映画評】『おおかみこどもの雨と雪』 細田守監督 (2012年)

ookamikodomo1

普通の若い女性にとっては、こんなふうにだけはなりたくないと思える悪夢の世界。なのに、この監督はそれがまるで美しい話かなんかみたいに描いてるから全女性の反発を食うんでしょうな。


母親なのに変な人って、そういや『ポニョ』の宗介のお母さんもそうだったけど、男の考える理想の母親って、ああいう「いい年こいて見た目は少女みたいで非常識でちょっと頭が足りない感じ」の女なんでしょうか? 少なくとも日本のアニメ作家の理想はそうみたい。


たぶん原作者は出産・子育て経験がないのは言うに及ばず、おそらく世間知らずで家から一歩も出たことがなく、自分で生計を立てたこともない引きこもりニートで、取材すらせずに自分の妄想だけで書いたんだろうなと。


結論。これは大変ためになる映画なので、ぜひお子様に見せるといいと思います。

目次

裏切られた期待
何のために大学(しかも一橋!)まで行ったのか?
生ゴミにまで墜ちた狼男
ヒロインも(っていうかヒロインが)かなりヤバい
幻想の田舎
もうどこもかしこも変
リアリティーの存在しない世界
え、原作あるの?
間違いだらけの子育て
児童虐待の疑惑
草平と雪
結末について
やっぱりこれだけは許せない!
おまけ 作画について

『おおかみこどもの雨と雪』 細田守監督 (2012年)

受賞

  • 第45回シッチェス・カタロニア国際映画祭アニメーション部門(Gertie Award)最優秀長編作品賞
  • 第34回ヨコハマ映画祭審査員特別賞 「おおかみこどもの雨と雪」細田守監督とその制作チーム
  • 第16回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞
  • iTunes Store「Best of 2012」サントラ部門 ベストアルバム
  • 第30回ゴールデングロス賞優秀銀賞
  • 第3回ロケーションジャパン大賞 グランプリ
  • 第67回毎日映画コンクールアニメーション映画賞
  • 第36回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞
  • ワーナー・マイカル映画館大賞2012 ベスト10 邦画部門第1位
  • 第17回日本インターネット映画大賞日本映画部門 アニメ賞 監督賞
  • 第12回東京アニメアワード「アニメーションオブザイヤー」「監督賞」「脚本賞」「美術賞」「キャラクターデザイン賞」「国内劇場部門 優秀作品賞」
  • デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’12/第18回AMDアワード 総務大臣賞(大賞)
  • 第67回 日本放送映画藝術大賞 最優秀アニメーション作品賞
  • 第4回日本シアタースタッフ映画祭 グランシャリオ賞(邦画部門1位)監督賞
  • 第16回ニューヨーク国際児童映画祭長編観客賞
  • 第22回日本映画批評家大賞 アニメーション作品賞
  • 第29回イマジン・フィルム・フェスティバル(アムステルダム)グランプリ(Black Tulip 2013)
  • 第22回日プロ大賞ベストテン 第10位

(以上Wikipediaから引用)

裏切られた期待

というわけで、もう邦画やアニメは金輪際見るのをやめようと思いつつ、ついまた日本テレビ恒例の夏休みアニメを見てしまった。というのも実はこれ、前からちょっと気にしていた映画だったので。実は幼女時代の私はまさに「おおかみこども」だったというか、そういう設定だったのだ。
『もののけ姫』のリビューにもちらっと書いてるが、主としてアニメ『狼少年ケン』と『シートン動物記』の影響で(でも結果的にいちばん影響を受けたのは、少し後になるけど手塚治虫の『バンパイア』)、生まれ落ちた時からケモナーだった私の物心ついて以来最初のアイドルが狼で、近所の子を集めては毎日「狼ごっこ」に興じ、家の中を四つん這いで駆け回っては、獲物を狩るまねとかしてたのだ。外を四つん這いで走ると膝小僧をすりむくので、家の中でしかできなかったけどね。巣(に見立てた押し入れや段ボール箱)にこもって、「冬ごもりごっこ」をするのも死ぬほど好きだったな。(自分では狼のつもりだが、やっぱり少し猫入ってた)
だから「おおかみこども」と言われただけで自分のことかとはっとする。さらにスチルやトレイラーを見ると、かわいらしいおおかみこどもがじゃれあったり、雪の斜面を疾走したりしてめっちゃかわいいし楽しそうじゃない!

それで公開時にちょっと見てみたいなと思って、ちらっと2ちゃんの評判を見たら、私の意に反してクッソミソの罵倒と非難であふれてたのが、見たいと思った第二の原因。いつも言うように私は他人の映画評とは趣味が合わなすぎるので、ここでこれだけけなされてるってことは、もしかしてすごい私好みなのかもと思ったわけだ。
そのとき読んだのはどこの板だったかも覚えてないのだが、たしか女性が多いスレで、非難が集中しているのも母親の花に対してだった。田舎暮らしについてもなんかいろいろ言われていたが、私にはどっちも無縁すぎてわりとどうでもいいので、とにかく狼が見られればいいじゃんという感じで気にもしていなかった。

それで見た結論はええええええ~!!!!!
私が期待してたのとぜんっぜん違う。それだけならまだしも、ここまで適当でむちゃくちゃなアニメ、なんでこんなに評判なの? これに賞出したやつらって何考えてるの?!
いや、生まれて初めて2ちゃんねらーに心から賛同を覚えましたね。『おおかみこどもの雨と雪』アンチスレというものが2ちゃんにあって、普通この手のアンチスレっていうのは、2ちゃんねるでさえ鼻つまみ者のアホウとキチガイの巣窟なんだが、このスレのコメントにはほとんど70%ぐらい同意できる!ってだけでも、私には大ショックだ。
言いたいことは山ほどあるが、まずは順を追って、見ながら思ったことなどを。

何のために大学(しかも一橋!)まで行ったのか? 

私は現役の大学教員という職業柄、まずヒロインの花が大学生っていうところから、無意識のうちについ、自分の学生を見るような目で見てしまっていた。それでもって、こういう女子大生、確かに現実にも少なからずいるんですわ。

【蛇足】「はな」というのが名前。「お花ちゃんやーい!」って江戸時代かよ。雪はまだしも雨っていうのも子供の名前としちゃ変だし。こういう変な名前最近増えたね。
まあ、こういうのは西洋にもあるけど。筋金入りのヒッピーだった故リバー・フェニックスやホアキン・フェニックスの両親なんて、子供に「川」とか「雨」とか「夏」とか「葉」とか付けてたもんね。名字まで「不死鳥」に変えちゃうんだから、日本のキラキラネームよりすごいわ。

たとえばこういう人。
普通の家庭の普通のお嬢さんで、大学まで行かせてもらうだけの家庭環境に恵まれて、大学入れるだけの頭もあって、なのにたまたま出会ったろくでなし男に一目惚れ。なし崩しに同棲・妊娠・出産・結婚して大学もやめてしまうが、かんじんの亭主は早死に・トンズラ・DV・働かない・ただのクズ野郎などの理由で別れ、女ひとりで子供を育てることになる。
親の反対を押し切って一緒になったから親の援助も望めず、というか、意地でもひとりでなんとかしようとするが、大学中退で資格も技術も職歴もなく、幼子を抱えたシングルマザーにまともな職があるわけもなく、やむなく風俗に身を落としてその場はしのげても、年を取ってくれば行き場もなく、最悪な環境で育った子供はグレて‥‥と、卒業後の部分は私の想像だが、あり得ない話ではないし、ここまでひどくなくてもまずハッピーエンドは望めない。

これを『おおかみこども』の花に当てはめると‥‥
親がいなくて貧乏だけど、独力で一橋に入れるほどの頭と生活力があって、なのに大学で一度見かけただけの男に一目惚れして同棲・妊娠・出産。男があっさり死んじゃってからは、ひたすら子育てに四苦八苦して、子供が手を離れた後は、まだ30そこそこなのにひとり山奥の自宅にこもって、ひっそりと暮らす。

「狼ぜんぜん関係ねー!」という文句はとりあえず置いといて、こういう女性の生きかた見せられて、「まあ、すてき!」と思える女性がいたらお目にかかりたい。普通の若い女性にとっては、こんなふうにだけはなりたくないと思える悪夢の世界。なのに、この監督はそれがまるで美しい話かなんかみたいに描いてるから全女性の反発を食うんでしょうな。

まったくまだ女子大(大きな声では言えないが、聞きしに勝る低能大学)で教えてる頃だったら、これ教材としてぜひ学生に見せたかったよ。「せっかく大学入ったのに勉強もせず、男とやることばっかり考えてるとこうなるんだよ」というお手本として。このアニメならあの子たちでも理解できるし(『トトロ』以外の宮崎アニメはまず無理)、××は××なりに素直なので、こういう実例を見せればすごい納得するから。

生ゴミにまで墜ちた狼男

このアニメのトラウマシーンというか、いちばん口あんぐりのシーンは、言わずと知れた、「夫を探しに行ったらドブ川に浮いてて、ゴミ収集車に回収されてった」場面(爆笑)だが、その前から狼男の扱いひどいわな。
狼男が生ゴミとして処理されるのも当然。最初から生ゴミ並みの扱いしかされていないのである。

一般人と狼男との恋愛や、人狼ハーフの子育てには当然苦労もついて回るだろうが、普通、その苦労が描きたくて狼男ものを書く作家はいない。その苦労を補うだけのスーパーパワーを持つ、ある種の超人としての冒険や活躍(または悲劇)を描くのが普通でない? それがまさかの鬱展開。
いや、娯楽小説でもこの手の鬱展開はないではないが、なんかそれ以前の段階でおかしくなってる。何を好きこのんで、こんな話にしたんだろうなと謎に思うばかり。
早い話がこの映画によると、狼男の血を引いて得することって皆無らしいんだわ。むしろ呪いというか、それより遺伝性の病気を持った人とか、心身障害者の話と思って見たほうがしっくりくる。
愛した人に実は不治の病の持ち主だってことを打ち明けられたが、愛してるから平気。子供にもきっと遺伝するが、愛さえあればなんとかなるってんで子供作っちゃうような脳内お花畑の人だと思うとすごく納得する。
だったらそこまで行かなくても、「愛した人はアニメーターだった」とか(笑)、バンドマンだったとか(苦笑)、大学講師だったとか(苦笑)、それだけで十分だよね。狼男である必然性皆無。

とにかく狼男(&こども)の話だと思って見始めた私は、かんじんの狼男の影の薄さにあぜん。ほとんどしゃべらないし、すぐに死んじゃうからストーリー的には種付け要員以外の何者でもなく、作者としてはとりあえずヒロインにおおかみこどもを育てさせたかったのでやむなく出しただけという感じ。
だいたいこの手の作品と言えば、狼男の習性とか弱点とか長所とかをこまごま描いてリアリティを持たせるものだが、それも「満月関係なくいつでも変身できる」というそれだけ。

なんであんなところで死んでたのかさえもわからない。まさか川に落ちて溺れたとか、銀の弾で撃たれたというのは考えられないので、獲物を追うのに夢中になって、車にでもはねられたのか? それはそれで間抜けすぎてかわいそうとすら思えないが。
ちなみに、貧乏なのでときどきご飯のおかずに獲物を捕ってくるのだが、それがなぜか立派なキジ! 川にもキジの羽根が浮いてたから、このときもキジを追っていたらしい。
東京のどこにキジが! 東京と断定されてるわけじゃないが、国立に通えるんだから少なくとも東京近郊だよね。見た目も普通の住宅地だし。(免許証の住所は国分寺だった)
狼男の存在より、東京に野生のキジがいるほうがファンタジーだわ。私はてっきり動物園から盗んできたんだと思って、それが原因で一悶着あるものと思ってたんだが。

とにかく吸血鬼らと同様に、永の年月に渡って連綿と語り継がれてきた人狼テーマについて、監督も原作者も脚本家もまったく何の知識も思い入れもないんだなというのが一目で見て取れて、なんか映画開始後10分で、私はメリメリ狼に変身して、テレビを5階の窓から投げ捨てたくなる衝動と必死に戦っていた。ましてここで目の前に細田守がいたら、頭からバリバリ噛み砕いてやりたい!
狼男だけじゃなく、作り手は狼に対してもまるっきり何の関心も知識もないな。絶滅したニホンオオカミの末裔だなんて設定だけ付けてるが、本当にただ言ってみただけ。この手の動物学的な突っ込みは私の大得意なので、そっちからいじってやろうと心待ちにしていたのだが、突っ込むほどの内容もない。ほんとオオカミ関係ないんだもん。

ケモナーとしても萌え要素皆無。そもそもなんでヒロインが(狼男と知る前に)この男に一目惚れしたのかもわからないし。その辺の恋愛要素をまったく描かないのも、早くヒロインに子育ての苦労させたいからとしか。何が楽しいんだ、こんな映画作って?
そのくせ、明らかにファミリー向けの時間帯の地上波で、堂々と獣姦シーン見せるしな。(いちおうシルエットですが、セックスシーンでは男は狼の姿)
ていうか、花って状況から見て明らかに処女でしょ。初体験が獣姦ってそれでいいのか! そもそもの馴れそめも、花のほうからの強引なナンパだもんな。昔、ウーマンリブ華やかなりし時代には、「進んだ女は男なんか種付けに利用するだけよ」みたいな風潮もあったが(『ガープの世界』とか)、そういうタイプとしか思えない。

ヒロインも(っていうかヒロインが)かなりヤバい

でもそれも不思議じゃない、と思うぐらい、花というヒロインはヤバい感じの人である。
最初こそ、単に「恋愛脳」の、脳内お花畑の女子大生かと思っていたが、見ているうちにだんだんと「これはヤバい人だ」という感じがしてくる。一目でわかるタイプのキチガイではなく、じわじわと効いてくるタイプ。これは怖い。マジでホラーだ。
最初におかしいと気付いたのはいつだったか忘れたが、とにかく後の子育てのおかしさを見るまでもなく、この人、最初からおかしかった。

それが確定的になったのは、父親の葬式のエピソード。花はつらいときでもいつでも笑っているという設定で、それだけなら単によくあるポジティブで前向きな女の子というだけなのだが、調子に乗って、父親の葬式でも終始笑っていて、親戚に怒られたというエピソードを喜々として披露するあたり、どう考えても単なる「変な人」。あー、これは蛭子能収の同類だったかとバレてしまうわけ(笑)。普段は結構めそめそしてるんですけどね。人前じゃ虚勢を張ってるのかニコニコしてるんだよね。それで、「ニタニタすんな!」とか叱られてる。うーん‥‥。

そういや狼男(名前がない)との最初の出会いでも挙動不審だった。彼は偽学生で講義に出ていたのだが、講義が終わって出て行く彼に花は「待ってください! これ、出席票。書いて出さないと出席じゃなくなります」と声をかける。
「待ってください!」というセリフからして、相手をとがめる口調だろ。(使用例「待ってください! あなたが持ってった傘、私のです!」) しかも見知らぬ他人にいきなり上から目線の命令口調! 惚れた男を振り向かせたいなら、「あの、すみません。出席票出すの忘れてませんか?」ぐらいが普通だろ。
さらに出席票うんぬんも意味不明。正規の学生ならもちろん知ってることでわざわざ言うのは変で余計なお世話もいいとこだし、かといって偽学生なら出席付いたって意味がない。しかもその後のやりとりを見ると、花は相手が偽学生とは気付いてなかったようで、だったらやっぱり、よけいなお世話って言うか変な女としか見えない。
まあ、相手は相手で、「俺、ここの学生じゃない。目障りならもう来ない」とぶっきらぼうに答えるような男だからお似合いか。相手が多少トンチンカンにしろ、明らかに好意で言ってるのにこの返事はないだろう。
そういや、この男はほとんど花に優しい言葉ひとつかけない。どう考えても花だけが舞い上がってて、男はその気もないのに言い寄られて迷惑だけど、つい性欲に負けてやっちゃったとしか見えないんですが。

花がおかしいという証拠のひとつが、夫の遺影。
死んだ夫をまつる祭壇(?)が、本箱の上のガラスのコップにさした花と免許証だけっていうのがすごい。死体も犬猫以下の扱いをされていた(普通は保健所が引き取る)が、祭壇もそれに合わせたとしか。
これまで生きてきて残したのが免許証だけというのも哀れだが、いちばんの驚きは、何年かいっしょに暮らして、子供二人も作ったのに写真1枚すら撮ってないということ。本当に免許証の写真しかないらしい。
まあ、それは貧しかったからとか、写真嫌いだったからとか、理由があるかもしれないが、(吸血鬼みたいに狼男は写真に写らないというのも考えたが、免許の写真はあるからこれはない)、コップの花は言い訳できまい。
おそらくこれがこの作者なりの貧しさの表現なんだろうが、花瓶ぐらい100均でも売ってるわ! こりゃお墓は絶対アイスの棒に名前書いて立てただけだな。(金魚の墓かよ!とひとり突っ込み) こういうことに関しては非常識そのものの私でも、これはひどいと思う。

あと花のおかしなところと言えば、究極の「ぼっち」ということ。おおかみこどもを育て始めてからは、秘密保持のためというのでわからないでもないが、どうもその前から天涯孤独の身の上らしい。
両親や兄弟はいないようだが、親戚がいることはわかっているのに、どんなに困窮しても助けてくれる縁者はいないらしい。たぶん花があまりに異常だから、親類縁者からは縁を切られたんじゃないか、あるいは変人の花が勝手に縁を切ったと思う方が自然か。
さらに大学生にもなって、ひとりの友達もいないらしい。そんなバカなと言いたいが、これは最近、(どこまでが都市伝説か知らないが)ネットじゃよく言われてる話だしなあ。年を取れば誰もがぼっちになるが(子供は独立するし、縁者や友達は死んで行くし)、このぐらいの年頃って、たとえひとりになりたくてもさせてもらえないもんじゃない? (と、そのぐらいの年の頃はひとりになりたくてしょうがなかった私は思う)

そこまで世間と縁を切って、若いみそらで隠者みたいに孤立してきた花が、なぜか狼男にだけは積極的にアプローチするのも不可解だが、これはむしろ花が狼女だとしたら大いに納得が行く。世間を避けて世捨て人みたいな暮らしをしていたのは自分が狼なのを隠すためで、狼男に接近したのは同類だということを嗅ぎつけたからというわけで。でもそうじゃないので、やっぱりただの変人か。
まあ、大人の事情をばらしちゃうと、おそらく花に人間関係を持たせるとストーリーが収拾つかなくなっちゃうという、監督か脚本家の都合だろうけどね。それだけでもストーリーテラーとしてレベル低いのわかるね。

母親なのに変な人って、そういや『ポニョ』の宗介のお母さんもそうだったけど、男の考える理想の母親って、ああいう「いい年こいて見た目は少女みたいで非常識でちょっと頭が足りない感じ」の女なんでしょうか? 少なくとも日本のアニメ作家の理想はそうみたい。

幻想の田舎

誰も普通は狼男映画にリアリティーなんて求めませんけどね、なんでかこの映画はそれを追求したいらしいので、いやでも突っ込みたくなるよね。

とりあえず突っ込みどころは無数にあるが、田舎に引っ越して農業を始めた花が土と格闘しているシーンはそれなりに見所があったので、「ああ、ここまでは変なところだらけだったけど、実は作者が描きたかったのはこの部分で、ここからリアルになるんだろうな」と思って見ていたら大違いだった(苦笑)。
つまり、東京でのフワフワしたお花畑状態から、田舎の厳しい現実に触れることで正気に戻って、ヒロインがたくましく成長する、という物語かと思ったのよ。
だいたい、これだけの肉体労働を毎日やってたら、真っ黒に日焼けして髪ぼうぼう、手指は荒れて節くれ立ち、腕や足腰なんてプロレスラーみたいにたくましくなるんだろうな、と思って見ていたら、ほっそり白いままでタイトなローライズのジーンズで農作業というあたり、いくら農業にうとい私でもありえない!と思った。
私は田舎のことも農業のことも何も知らないが、同様に何も知らない若い娘(それも幼子二人連れたシングルマザー)が、簡単に自給自足できちゃうほど楽じゃないことぐらいバカでもわかる。実際、2ちゃんでもそのへんの無茶ぶりが叩かれていた。私が見てもこれだけ変なんだから、知ってる人が見たら変なんてもんじゃないだろう。

いや、こういう話にしたいなら、何もリアリティーになんかこだわる必要ないんだよ。マンガなんだし、ファンタジーなんだから、「ここに畑を作りましょう!」と言った次のシーンで青々と育ってるんでいいよ、もう。なのに、農業の苦労にしろ子育ての苦労にしろ、「大変だ大変だ」と言いながら、何ひとつ大変そうなことしてないからイラッとするわけ。農業は上記のように家庭菜園並みの簡単さでできちゃうようだし、貧乏をやたら強調するくせに働こうともしない。

そういえばこういう女っているわあ。「こんなきつい情況で、ひとりでこんなにがんばっている健気な私」をやたらアピールする人。確かにがんばってないわけじゃないんだけど、そのアピールがうるさすぎるので、手助けしてほしいのかと思うとそうじゃないんだよね。まして「それはこうしたほうが楽だよ」なんてアドバイスしたら怒る。
つまり「がんばってる私」に酔ってるだけ。好きでやってるんだからいいけど、見ていて感じのいいものじゃない。この映画の花も同じ意味で感じ悪いし、同性には嫌われる典型だと思う。

もうどこもかしこも変

もう理不尽なことはありすぎるので、アンチスレから引用させてもらうと、

143 : 見ろ!名無しがゴミのようだ! 投稿日:2012/07/23(月) 10:05:14.91 ID:u4kG/b+w
病院にも産婆さんにも頼らず本の知識のみで夫と二人で二人の子供を産む花
町中の川で発見された絶滅した日本狼と見れる巨大犬の死体を淡々とゴミ収集車で回収する作業員
5年以上わずかな貯金だけで暮らす花(年に200万円はかかるとして1000万円以上)
一度来たきりで中に入らない児童相談所
田舎暮らしの経験が無いのに田舎に溶け込む花
北の国のゴローさん以上のリフォームを一人でやってとげる花
女子高生のバイト以下の給料で車を維持し、奨学金を返還する花
12年間病院にもいかず予防接種もせずに育つ雪と雨
大雨の日に11歳の子供がいなくなったのに捜索願も出さない花

今までも脚本の粗があった監督だけど
今回のテーマは現実の社会で狼男の子供を授かった女性の子育ての苦労がテーマだろうから
このリアリティの無さはまずい

そして、物語終了後、まだ30台前半で子供二人が親離れをし、
なんの目標も無いまま田舎の一軒家に一人住む花

ここに書いてあることすべてありえない。特に「北の国のゴローさん」というのは誰だか知らないが、廃屋同然の巨大な田舎屋を「劇的ビフォーアフター」並みの手際で、子供の世話をしながらたったひとりで、しかも無一文で、易々とリフォームしてしまうのは農業以上にすごい奇跡だな。しかも、建築やリフォームの知識は何もない、本で勉強しただけの素人の女の子がだよ。
金ない金ないって言うが、正直これだけの能力があるならそっちで食ってけばいいのに(笑)。

本といえば、花は出産からリフォームから農業から子育てまで、すべて本で得た知識だけでやってのける。私は途中まで昭和30年代とかの話かなと思っていたぐらいすべてが古くさいんだが、これは現代が舞台だと聞いてのけぞった。なもの、今ならネットで調べろよ!
しかし驚いたことに、花の世界には(知人友人というものが存在しないのと同様)携帯もネットも存在しないらしい。田舎に移ってからは移動図書館で本借りて農業の勉強してるし。わけわからん! まあ、ネットの知識なんて本当の役には立たないので、本気で勉強するなら本読むしかないが、最初はまずネットで調べるだろ。それともなんか、文明の利器は使ってはいけないとかいう宗教の人?

田舎暮らしも完全に誤解しているか、それこそ脳内お花畑だけの世界だな。こっちも2ちゃんでは突っ込みが激しかった。『となりのトトロ』のところで書いたように、私も田舎とは言えない田舎だが、初めてそこで暮らした時はすごいカルチャーショックを受けたので、人ごととは思えない。私は日本の田舎が嫌いだが、2ちゃんで読む限り本当に田舎を知っている人の意見はもっと辛辣だったので、この映画が間違っていることだけは事実だ。

第一に、花が田舎に移住した意味がわからない。「人間か狼か自由に選べるように」というのが表向きの理由だが、要するに子供たちが狼だということを知られそうになり、周囲の目を恐れたからでしょう。でも人目に触れずに子育てしたいなら、都会のほうがはるかに匿名性も高いし、孤立するのは簡単だ。
そもそも近所の人目を引き、ついには児童相談所を呼ばれるはめになったのは、花が安アパートで子供らが遠吠えしたりドタドタ暴れ回るのを放置していた、つまり単にしつけがなってないからで、ちゃんとしつけして静かに暮らしてれば誰にもバレることなかったのに。
だから田舎に越した時は、てっきり本当に人里離れた山奥で、魚とかウサギとか狩って暮らすんだと思ってた(笑)。

『となりのトトロ』のところでも述べたように、日本の田舎の特徴は詮索好きとおせっかいである。都会人は隣の人間が何をしてようが、人に迷惑かけないかぎり気にかけない。しかし花が越してきたような田舎では、新入りはそれだけで監視対象になるし、夫のいない子連れの若い女なんかが引っ越してきたらほっとくわけがない
実際、すぐに好奇の目にさらされている。爺連中にはスケベな目で見られてつきまとわれ、お決まりの世話焼きおばさんも出てくるし、若いお母さんたちには「ここ若いお母さんが少ないから、仲間が増えてうれしいわ」と言われる。こんな濃密な人間関係の中で、どうやって秘密を守るつもりだったのか。ていうか、変身した子供らを見られて「犬、飼ってるの?」なんて言われるレベルだから守れてもいないんだけどね。

しかし、その秘密を守るためには、妊娠中から乳児期から、検診も受けない、受けさせない、予防注射もさせない、病気になっても医者にも連れて行かないという虐待まがいを続けてきた事実と矛盾している。あれって要するに、秘密がもれるぐらいなら、子供が死んでもかまわないってことだからね。
なのになんで田舎に来たとたん、ガードがゆるんで「ま、いっか」みたいになってしまうのか? 東京では検診も受けてないのに何も言ってこなかったってことは、おそらく出生届も出してない無戸籍児童なんだと思うが、なんで田舎では学校に通えるのか? 無戸籍だと教育も受けられないんじゃなかったっけ? そういえば、無戸籍の子供でも学校に行けるようにする法改正かなんかあったような気もするが。

とりあえず、田舎でのスタンスも都会同様に不安定で、付き合いは避けながら、都合のいいところは利用するし、なんか本気で子供を守ろうという気もないみたい。こういう挙動不審なことを続けていたら、ますます周囲の好奇心を刺激するし、それでも頑なに秘密を守ろうとすれば、「なんなの、あの人?」って感じで総スカンだし、これが現実世界なら村八分になってもおかしくないと思うのだが、まったく不都合はない。だってこの世界は花の(というか作者の)都合がいいようにできた妄想の田舎だから

リアリティーの存在しない世界

本当は上の2ちゃんのコメントすべて解析しようと思ったんだが、田舎暮らしの項だけでもこんなに長くなってしまったのでとても無理だ。じゃあ、どうしても気になるところだけ。

上に書いたようにいちばんありえないと思うのはリフォームの件だが、児童相談所や検診の件なんかは、子供を持つお母さんや子育て経験のある女性なら突っ込みどころ満載だろうなとは思う。私はまるっきり縁がないのでわからないし、今さら調べる気力もないけど、日本の児童相談所は問題もいろいろあるようだけど、あそこまで無能じゃないだろうなとは思う。

逆に私にもわかることと言ったら貧乏についてだ(苦笑)。いや、自信を持って語れるというところがなんとも情けないんだけど、実際、収入が月6万円しかなく、貯金を取り崩して暮らしてたこともある私に言わせれば、これはありえないよ、絶対に。
花の旦那って運送屋(バイト?)で、まあ、狼男という立場上、同じ所に長く勤めるのも無理だろうから、実質バイト並みしか稼げないはず。ときどき獲物を捕ってくるという役得(?)はあるものの、収入は微々たるものだろう。
それで妻と子供二人養うだけでも大変なのに、残した貯金だけ(もちろん保険なんて入ってない、ていうか、生ゴミとして回収されたんじゃ、死亡を証明することもできない)で家族が5年も暮らすなんてありえないし、さらに残ったお金でいくら田舎の廃屋とは言え、一軒家を買って、さらにその一軒家を住めるようにリフォームするなんてできっこない。しかもその後も、たとえ畑である程度は自給自足できたとしても、働きにも出ず、行政の世話にもならず、一家三人暮らしていくなんてありえない。

これに関しては2ちゃんねるでは、「いや、節約の仕方によってはできる」、「いや、無理」みたいな議論になっていたが、それ以前にそれだけ貧乏しても働いて金稼ぐという意識がみじんもない花のほうがありえない気がする。
確かに幼子を連れたシングルマザーが働くのはむずかしいが、子供が栄養失調で餓死するレベル(この貧乏はリアルなら当然そのレベルだ)ならば、それこそ風俗だろうがなんだろうが、なりふりかまわず働くと思うのだが、ほんとに死んでもいいと思ってるんだろうなとしか。
外へ働きに行くのが無理なら、日本には伝統の造花作り内職というものもあるし(笑)。どんなに安くてもないよりましだしね。しかし花のお花畑脳にはそんな選択肢はないし、なくてもちゃんと暮らせてなんとかなってしまう。もちろん現実には生活保護という選択肢もあるが、この映画では花の外部の社会は(作者があってもいいと思ったもの以外)存在しないことになってるみたいなので。

田舎に落ち着いて子供たちが大きくなって、やっと働く気にはなったらしいが、選んだ仕事は自然観察員の補助というもので、「時給は高校生のアルバイト以下だけどいいの?」と念を押される始末。
よくないだろ! 花としては子供は人間として育てるつもりだったようなので、これから大きくなればいやでも子供にお金かかるのに、一家の稼ぎ手のあんたが子供のお小遣い程度の給料でどうするの! と怒るだけむだで、もうこの頃には「ああ、ばかだからしょうがないんだな」とあきらめ気分になって見てたけど。
こういうのって、「べつに働く必要はないけど、暇でしょうがないし、社会となんらかのつながりを持っていたいし、ついでに少しは社会の役に立ってると思いたい」という専業主婦が選ぶ仕事じゃない! 実際、大学非常勤に来てる女性ってほとんどがそれだし。

でも農業で食っていくつもりかと思ったら、結局あれも趣味のガーデニングレベルだったのね。確かに田舎は働き口も少ないだろうけど、工場で汗水垂らして働くなんてのは、こういう人の頭には存在しないのね。

え、原作あるの?

いい加減あきれてきたところで、この原作がラノベだとどこかでちらっと見て、ああなるほどと納得した。

たぶん原作者は出産・子育て経験がないのは言うに及ばず、おそらく世間知らずで家から一歩も出たことがなく、自分で生計を立てたこともない引きこもりニートで、取材すらせずに自分の妄想だけで書いたんだろうなと。
もちろんこれは私の妄想で、事実かどうかは調べる気もしなかったんで調べなかったが、出産・子育て経験もなく、世間知らずの上に歩く非常識と言われる私ですら、いくらなんでもこれはないとわかるぐらいひどい話で、とてもプロが書いたとは思えないってこと。でもラノベ作家ならそれほど驚くことじゃないやと。

ところが、今回これを書くため調べて愕然。これの原作って、細田守自身が書いたノベライゼーションのことじゃん。ああ~! てことはこの監督って‥‥(上の太字部分を見る)。でも細田守って、宮崎駿亡きあと(まだいるけど)日本を代表するアニメ作家じゃなかったの???? うわわ‥‥
ちなみにラノベみたいでもあるが、2ちゃんで見た「エロゲみたい」という感想にも大いに同意。(あまりにご都合主義だってこと)

間違いだらけの子育て

というわけで、これは私が期待したような狼男映画でもなく、狼男と人間の女性のラブストーリーでもなく、狼男は単なるダシに使われただけで、実際はシングルマザーの子育て苦労話であることが明らかになった。しかしその主題である子育てそのものが、決定的におかしいのが女性に叩かれる主な原因。私は女だけど子育てに関してはニート男並みに無知だが、それでもいちおう子供を扱う職業だし、動物を育てた経験もあるので、その乏しい知識から見ても明らかにおかしい。

上に述べたように、花は子供たちが小さいうちは、狼男の秘密を守るためなら子供の命を危険にさらすことさえ厭わなかったのに、子供が成長してきて、いよいよ獣性が目覚め、ヤバい感じになってくると、あきらめてしまったようでほとんど叱りもしない。
よくいる甘いお母さんみたいに、「あらあら、だめよ」とか口だけで言うが、本気で叱らないし止めようもとしないってこと。これじゃ人間の子供もだめになるばかりか、ペットの犬のしつけにもなってない。ていうか、こんな調子でしつけもしなかったら、犬だってむだ吠えしたり、人に噛みついたりするようになって、手の付けられない癖犬になるぞ。ましてそれが狼なんだから。
少なくとも子供らが人前で勝手に変身しそうになったり、殺し合いを始めたら、飛びついて押さえ付けてでも張り倒してでも止めないとだめだろうが。なのに、この人は口で言うだけ。それで実際、弟の雨は手に負えなくなるし、優等生の雪でさえ傷害事件を起こす。

虐待の疑惑

しつけができてないばかりじゃない。明らかな虐待の疑いもある。医者に診せないというのもそうだが(しかしもちろん致命的な病気にはならない)、あまりに子供を放置しすぎ、ネグレクトと言われてもしょうがない。

ここがストーリーのキモなのだが、成長するにつれ、雪と雨は性格の違いがはっきりしてくる。積極的で気が強い雪は、障害にぶつかりながらも人間社会に適応し、学校でも優等生になる。一方、もともと引っ込み思案で不器用な雨は学校でいじめられ、不登校になり、結局、狼としての生き方を選択する。
親から見れば、姉は手のかからない良い子、弟は手の焼ける問題児なわけだが、どうやら女親というのはこういう場合、だめな子ほどかわいいと思い、気にするものらしい

これはうちがそうだったからすごくよくわかる。私は気が強くて要領が良く、学校ではつねにトップの成績で、その意味では親に苦労をかけたことがないのだが、その代わりいくら一番を取っても、大学にストレートで合格しても、何かにつけて罵倒されるばかりで親にほめられたことなんてなかった。逆に母は姉にくらべておとなしくて不器用で勉強ができない弟にはかかりきりで、つねに弟をほめたたえ、受験や就活の時なんか腫れ物に触るようだった。
もっとも私は優等生ではまったくなくて、小さい頃は病弱でむしろ親の悩みの種だったし、高校生になってからは、ひどいえこひいきと、親にかまってもらえない悔しさからグレて男と遊び回ってたけど、それでも完全放置だったんで、本当に自分はいらない子なんだと実感した。
だからいやでも雪には感情移入せずにはいられない。まあ、おかげで私はこの通りだし、弟も世間一般から見ればまともに育ったとは言いがたいから、結局こういう子育ては間違ってるんだよな。

あえてヒロインの気持ちになって考えてみれば、雨はいわば死んだ夫の代用であり、その雨が自分(人間)から離れていくのが見えるから、なんとしても引き留めたくて死に物狂いになるんだろうが、その間、やはりアイデンティティの問題で苦しんでいる雪は完全無視なんだよね。

それがいちばん如実に表れているのが、ラストのクライマックスになる大雨のシーン。
大雨注意報が出て小学校も臨時休校になり、保護者に各自学校まで迎えに来るように連絡が来る。(雨ぐらいで?という突っ込みはあえてしないでおく。まあ、山も地滑りとか鉄砲水とかあるから。でも台風でもない豪雨ぐらいで休校なんてあんまり聞いたことないけど)
花も雪を迎えに行こうとするのだが、その最中に雨がとうとう家出してしまう。あわてて雨を追いかける花は、雪のことは完全に忘れている。まあ、学校にいればとりあえずは安全とは言えるが、この非常時(?)に、他の子の親が続々迎えに来て帰っていく中、ひとり(ふたりなんだけど)体育館に残される雪は本当にかわいそう。ついいでに、保護者に学校まで引き取りに来させるほどの非常時に、子供2人の荷物が残っていて当の子供の姿が見えないのに、なにもしない先生たちも相当ひどい。とにかく露骨なまでに雨>雪なんだよね。

それ以外でも細かいところでひどい。小学生にもなって女の子なのに、一年中着たきり雀で、着替えすらないってのも正統派虐待というか、親の正気を疑うレベルだよなあ。クラスメートとの違いに雪が悩んでも最初は笑い飛ばすし。それでようやく新しいワンピースを作ってもらえるのだが、今度はそれを着たきりだし(笑)。
母の手縫いの服ってのもいかにも男のファンタジー丸出しだな。「子供の服はぜんぶ愛情込めた手作り」とかいう次元じゃないからね。だって、1枚しか作らないんだから(笑)。(まったく同じ服を複数作った可能性もないではない)
愛情あればいくらなんでも着たきり雀ってことはないから、しつこく貧乏を主張してるんだろうが、今どき服なんか作るより買う方がはるかに安いって! だいたい、その材料やミシンはどこから来たんだ?

野生に目覚めた雨が、本気で雪を攻撃するシーンも変にサディスティックで怖い。ただの姉弟げんかならともかく、狼同士の(しかも姉の方は人間としての理性を捨てきれない)ケンカなんだから、本気で止めないと雪の命が危ないと思わせるシーンなのだが、花は例によってあわあわするだけで役立たず

そういやタイトルからして、雪の方が年長なんだから、『おおかみこどもの雪と雨』となるのが普通なのに弟の名前が先に来てるってあたり、制作者の意図が丸見え。それとも制作者の男性優位主義の表れだろうか。
まあどうだっていいが、最初から最後までお花畑ファンタジーに徹すればいいものを、こういうところが変にリアルでいやらしいところが、この作品の嫌なところ。特に姉弟で差を付けて、徹底的に女の子を差別するあたりが、世の母親族(むろんかつては娘でもあった)の逆鱗に触れたんだろうな。

草平と雪

というわけで、この映画は子育て、それも実質的には母親(花)と息子(雨)の子別れの話なのだが、そちらはまるっきりリアリティのないトンデモなのに対し、皮肉なことにサブプロットである雪の話のほうが、リアルで胸を打つ話になっている。これがなかったら、バカにするだけして終わりにしようと思ったんだが、不覚にもこれにはついうるっとしてしまったので。おそらく自分の経験とダブる部分があるからだろうけど。

草平は転校生。雪は苦労してクラスにもなじみ、うまくやっていたのだが、転校してきた草平が大の苦手。草平は明らかにクラスの中でも浮いている雪の不自然さに気付き、好奇心を持って、子供らしい容赦のなさで追求し始めたからだ。
これはいじめのようにも見えるが、基本的には子供らしい好奇心のなせるわざだと思う。あと、明らかに雪がいやがってるのを見て、(好きだからいじめたくなる感じの)嗜虐心を刺激されたのかも。しかし雪にとっては恐怖でしかない。
これだけなら、思春期の男女にはありがちな、甘酸っぱくほろ苦い思い出の範疇なのだが、問題は雪が狼女で、しかも子供だからコントロールが効かないということ。とうとう、追い詰められた雪は反射的に狼に変身して草平を引っかき怪我を負わせてしまう。
このくだりは実にスリリングでよくできてるのだが、雨が狼になって雪を襲うシーン同様、か弱い女の子に対して、露骨にサディスティックな攻撃性むき出しで、執拗に追い回すところが、おそらく作者の趣味なんだろうが、女性が見ると生理的不快感を感じる部分。

さっそく双方の保護者が呼ばれ、雪は親たちと教師の前に引きずり出されて尋問される。言うまでもなく、母親の花は雪をかばうどころか、まったくなんの助けにもなってくれないのは予想通り。意外にも雪をかばったのは草平で、彼はやったのは雪ではなく「狼がやった」と主張する。
これを聞いて花は真っ青!(内心「ざまーみろ」と思わずにはいられない) しかし誰も草平の言葉は信じなくて、話し合いはうやむやになる。まあ、そんなところだろうね。自分の目で見ないかぎり、人は信じられないことは信じられないから。

その後も雪は草平を避け続けるが、なぜか彼は雪に優しい。そして例の大雨の日、雪同様迎えが来ずに学校に取り残された草平は、自分が母親に捨てられようとしていることを話し、雪の秘密は「ずっと知っていたけど誰にも言わなかった」と打ち明ける。
このほのかな恋の始まりみたいな感じもいいが、雪にとっては初めての理解者で味方ができた(花も雨も明らかに彼女の味方ではないから)と思うと感無量である。「早く大人になりたい」という雪のセリフも、虐待された子供にありがちなものだと思うと悲しいが、親に見捨てられた子供同士が身を寄せ合って、「ずっとここに隠れていよう」などと話す様子は、痛ましいけどいじらしく、感涙を誘う話になっている。

二人とも子供でいることを許されない情況に追い込まれて、でも子供だから何もできないというもどかしさがいかにも思春期そのもので、彼らの純粋さと汚れなさが痛々しい。じ~ん‥‥
私はこういうのを見ると、自分がこのぐらいの年だった頃のボーイフレンドたちを思い出して涙が止まらない。私がこういう切ない恋をしたのは本当にこのぐらいの年頃が最後だったな。あとはもう惰性だけで生きてきたようなもので。

しかしなんなの、この違いは! 上記のようにメインのプロットは引きこもりが考えた陳腐な妄想としか思えないのに、なぜかこの部分はやたら出来がよくて、だったらこっちをメインにすれば、普通に感動的な話になったのに! どこもかしこも間違いだらけの脚本だが、これが最大の間違いかも。

ここで心が通じ合った二人は、二人いっしょに家出して、結果、子供二人を同時に失うことになった花ががっくりと膝をついて、自分が間違っていたことを悟ってうちひしがれる‥‥という結末だったら、どんなにかいい話になったはずだし、私はこの映画、マジで支持したのに!
しかしアホ映画はもちろんそんな終わり方はしない。

結末について

実際の結末は、雨は追いすがる花を振り切って山に入り、狼として生きていくことになり、中学生になった雪は寄宿学校で暮らすことになる。そして一人残った花は田舎の家に隠遁者のように住み続け、どこかから聞こえる雨の遠吠えを聞いてにっこりするというもの。
中学で寄宿舎?! 日本で? ありえねー!というぐらい珍しいケースだと思うが、(そんな金がどこから出たのか?という疑問は別として)、それって花が娘を厄介払いしたのか、それとも雪が母親に見切りをつけて逃げ出したのか? 少なくとも山へ逃げた雨は、どう見ても母親から逃げたんだよね?
(小説版によると、やはり花が勧めたらしい。やっぱり厄介払いだ。ひでー!)

それでも、花の脳内のお花畑妄想の中では、死んだ夫が現れて「君はよくやってくれた」と自画自賛するんだが、現実は子育て大失敗に終わったよね。

放置して顧みることもしなかった娘は、苦しみながらも自力で更生したが、母親とは明らかに距離を置いてる。溺愛した息子はとうとう思い通りにはならず、山に逃げたってことは、人間なら家出したかグレたようなものだし。でも、花の頭の中では、息子は立派に狼として自立したことになっている。

だが、その雨との別れのシーンで、花が「でも私、あなたにまだ何もしてあげてない」というのは本音だし真実と思う。だってほんとに何もしてないもの。確かに飼い犬並みのしつけもしなかったからこうなったわけだし、人間社会になじめるような手助けも、狼として生きるための手助けもしてやってないし、
そういや、まだ幼い雨が川にはまって溺れかけた時も、命がけで川に飛び込んで助けたのは雪で、花は何もしてないんだよなあ。ほんとに母親失格としか。
それで母ちゃんが何もして教えてくれなかったものだから、狐を先生にするはめに(笑)

ああ~? まあ狼男が存在する世界だから、狐の先生でもいいようなもんだけどさ、なんでいきなり童話調?(苦笑) でもこれが本当に童話なら、虎の威を借る狐ならぬ「狼の威を借る狐」だよなあ。まだ子供のうちに手なずけておこうとしてるだけにしか見えません。だいたい狐が狼に何を教えられるわけ?

やっぱりこれだけは許せない!

というわけで、ここまでだけでも私はいい加減、花と監督と脚本家に腹が立ってイライラしながら見ていたのだが、この結末に至ってブチ切れた。

なんかハッピーエンド風に描いてるけど、これ、罪もない幼い子供を孤独死に追いやっただけだぜ!

これぞまさに動物を知らない人にありがちな発想。動物園の動物は囚われの身でかわいそうだから、檻を開けてみんな逃がしてやりましょうとか、外来種を買ってペットにしてたけど、飼いきれないから山に逃がしてあげましたとかいうたぐいの。
本来野生で、その土地で暮らしていた保護動物を野生に帰すだけでも、どれだけ苦労するか知ってるの? まあそれでも猫やアライグマみたいな生命力旺盛な動物は勝手に繁殖するけどさ、ただしそれは複数頭が同時に逃げ出した場合。
あと、飼い猫は山に放してもたくましく生きていけるが(実際、それで野良猫が増えすぎて野生動物を食い荒らして困ってるという話はよく聞く)、犬は餓死するだけだという話も聞いた。猫族は生まれついてのハンターで独居動物だけど、犬族は決定的に違うから。

なのに、雨は途中まで人間として育てられて、狼としては赤んぼ同然、狐に習ったぐらいで山で生きていけるはずがない。
よって第一に考えられる末路は餓死。でなければ食べるものがなくなって里山に降りてきて猟師に射殺されるか、良くて動物園に保護されるか。

というのも、ニホンオオカミは確かに日本に住んでいた狼だが今は絶滅している。(し、この山がニホンオオカミの生活環境に近いのかどうかもわからない)
雨はおそらく日本で最後のニホンオオカミで、孤独に死ぬことを運命づけられているのだ。こうなると、私は絶滅種の最後の生き残りを描いたドキュメンタリーのたぐいがすぐに頭に浮かんでは消えて(ゾウガメのロンサム・ジョージとか)かわいそうで泣けてしまう。
だいたいその種の最後の一頭なんて、事実上死んだも同然。繁殖できないし、生き物は次世代に遺伝子を受け渡すために存在してるんだし。ましてや狼は群れで生きる動物なのに、雨の孤独を想像しただけで泣ける。
なのに、その雨の遠吠え(本来仲間に呼びかけるためのものだが、それに答える者は誰もいない)を聞いてニコニコしている花を見ると、くびり殺してやりたくなる。単に出来が悪いだけの映画やアニメならいくらでもあるが、ここまでヘドが出そうにむかつくアニメってそうはない。

結論。これは大変ためになる映画なので、ぜひお子様に見せるといいと思います。

女の子への教訓 ー セックスするなら相手を選べ。あと避妊しろ。
男の子への教訓 ー バカ女を嫁にすると子供がいちばん苦しむ。

おまけ 作画について

せっかくびしっと終わったのにまたつい余計なことを書いてしまう。こっちは私の専門じゃないからあまり触れたくはなかったんだが、作画についても一言。最初ポスターの絵を見た時は、すごいきれいだしかわいいと思ったんだよね。トップにも置いたこれだけど。こんな抱き方じゃすぐに子供落とすだろうという突っ込みは別として。(でもこの話の花は超人だから、そんなの平気なぐらいの怪力なのかも)

ookamikodomo1でも実際、動いているのを見たらこれだった。

ookamikodomo3まあ、これぐらいのデフォルメはアニメならおかしくないけど、2ちゃんでは「カエル顔」とか書かれていて図星なので笑ってしまった。ふだんの正面顔は鼻も口もないのに、笑うと口が耳まで裂けるんだよね。おおかみこどもだから? オオカミっていうよりやっぱりカエルだよね。
あと、アニメ絵のおかしさってことではよく言われるけど、横顔だとほっぺたに穴が開いてるのも気持ち悪い。

まあそれはいいとして、私が気になったのは随所にはさまれる「イメージシーン」。主として田舎の美しさを見せるために、セリフのない風景中心のシーンがよく出てくるのだが、そのきれいな景色が実写を使ってるのだ。最初はロトスコープかと思ったけど、ロトスコープですらないただの実写。それとアニメを合成しただけ。
私は美しいと言われるジブリの背景ですら、「単に実写をトレースしただけじゃん」とバカにしてたぐらいなので、これにはあきれた。合成の質も低いし、単なる手抜きにしか見えん。

広告
カテゴリー: アニメ評, ★★★(神), 映画評 タグ: , , , パーマリンク