★★【映画評】スターシップ・トゥルーパーズ2(2003)Starship Troopers 2: Hero of the Federation

starship_troopers2-0「バカ映画のパート2というだけで振り向きもされないかわいそうな映画」に捧げる愛の賛歌
できれば先に『スターシップ・トゥルーパーズ3』を読んでください。
人気ないせいか、スチルがほとんど見つからなかったのでDVDからの取り込み画像を使ってます。そのため画像が暗くて見づらいです。画像をクリックしてオリジナルサイズでご覧ください。(見たくもないかもしれませんが) よく見えないけどグロいモンスターの画像ありです。

Starship Troopers 2: Hero of the Federation (2004)

Director:

Phil Tippett

Writer:

Edward Neumeier

というわけで、がっかりもいいところの『スターシップ・トゥルーパーズ3』だったが、こちらの2は見た当時もDVD買うぐらい好きだったが、3に不満のあまり見返したら、以前にも増して感激したので、その全力リビュー行きます。
だいたい、3とは最初のプロパガンダ・シーンからして違いすぎる。人類の快進撃をうたう威勢のいいプロパガンダ・フィルムの(硫黄島のやつにそっくりな)連邦旗が、打って変わって現実の血まみれでボロボロの旗に変わって、負け戦の戦場を映し出すあたりの演出は実に手堅い。ここでバグが人間を真っ二つに切断するシーンも1へのオマージュか。

戦争の理想(プロパガンダ)と現実 プロパガンダでは青空の元、敵を一網打尽に吹っ飛ばす爆撃機 一方現実では真っ暗闇で敵に囲まれての攻囲戦 最初の数分で映像だけで理想と現実の違いを目に焼き付ける

戦争の嘘(プロパガンダ)と現実
プロパガンダでは明るい青空の元、敵を一網打尽に吹っ飛ばす爆撃機
一方現実では真っ暗闇で、敵に囲まれての孤立無援の攻囲戦
最初の数分で映像だけで嘘と現実の違いを目に焼き付ける

上の写真を見てもらうだけでわかると思うが、理屈抜きでいきなり「戦争の現実」を見せつけられるこのシーンはすばらしい。

敗走し、逃げ道も塞がれた中隊の生き残りが、命からがら、放棄された前哨基地に逃げ込む。この基地が初めて見えるシーン、地面の死体と夜空を切り裂く稲妻という、さながらホラー映画でドラキュラの城が最初に映るシーンにそっくりで、後の展開が予想できる。
しかし建物はボロボロで扉もちゃんと閉まらないし、動力もなく、無線機も壊され、救助を呼ぶこともできない。こういう孤立した情況で敵に囲まれた籠城戦って大好き! この出だしはゾンビ映画の定番だな。
オリジナルは(かなり不利な状況とはいえ)明るい白昼や宇宙での戦闘で、人もワラワラ大勢いて開放的な感じだったのに、いきなり真っ暗な(磁気嵐が荒れ狂っているという設定で昼間でも暗い)世界で、少人数の孤立した人々のドラマになるから、いったい何が起きるのかとワクワクする。

その基地の中で彼らはゴミの焼却炉の中に閉じ込められていたダックスを発見する。彼は戦争の英雄だったが、上官を殺した罪でここに閉じ込められたまま置き去りにされたらしい。最初はダックスを警戒して敵視する兵士たちだったが、あわや全滅というところでダックスのおかげでバグの襲来を退けたことから仲間と見なされる。
そこへ死んだと思われていた将軍が、彼を助けてくれたという2人の兵士グリフペック、それに意識不明の女性兵士ソーダと共に戻ってくる。
ところが、この3人は新手の寄生バグに取り憑かれた敵のスパイだった。このバグは人間の口から入って脳内に寄生し、人間そっくりに振る舞うことができる。やがて成長すると、頭から出て子供を産み、また新たな人間に寄生する。
3人はあの手この手で生き残った隊員たちにバグを仕込み、誰にも気付かれないまま勢力を広げていく‥‥

この手の映画では一人また一人と殺されていくのが定石だが、殺され役にどれだけ感情移入ができるかがポイント

その点この映画は、まだ観客にはわけのわからないまま、いちばん最初に死ぬ名前のあるキャラクターである日本人(日系人? 国際連邦をうたっているが、やっぱりどう見てもアメリカ軍なんで)コウベの死の場面ですら、ていねいに描かれていたので好感を持った。
コウベはすくんで動けなくなった役立たずの新兵オターを助けようとして、バグに胸を刺されるのだが、基地に運び込まれてもまだ息があり、痛みのあまり泣き叫ぶのを、戦友のトアが抱きかかえて、もの悲しい歌をうたってやるあたりにじーんとした。この短いシーンだけでも、オター、コウベ、トアの三人の関係や性格がわかるしね。
ていうか、最初からバグに憑依されている三人と、ラストシーンの軍曹を除き、この映画の兵隊さんはみんないい人。登場人物が全員嫌な奴か変な奴で、全員まとめてバグの餌にしてやりたくなる『スターシップ・トゥルーパーズ3』のあとで見ると、涙が出るほどいい人たちだし、いい映画だという気になる。

戦争映画というのはだいたいにおいて登場人物が多い上、同じ髪型で同じ服で、同じぐらいの年格好の男ばかり。しかも泥やなんかで顔は真っ黒でヘルメットをかぶっているため、誰が誰だかわからないという難点があるのだが、ここまで人物が見分けられるということは、ひとりひとりの人物像がちゃんと作ってあるのだ。
エンド・クレジットの中で、主要キャストが動画付きで紹介されるのだが(それで私はこういう紹介が大好き。LOTRとかがそうだったね)、そこで紹介される兵士たちがなんと13人。その13人がひとりひとり個性があり、ちゃんと見分けがつくだけでもすごい。
それでそういう人たちが殺されたり取り憑かれたりするのを見ていると、よけいかわいそうで怖いわけ。本当にいい人ばっかりなので、憑依された後の豹変ぶりもこわい。それじゃ、この際だから、キャラクターについても簡単に。(ややこしいので階級は省略)

シェファード将軍(エド・ローター)はハゲで顔は怖いが、退却の際、兵士たちを先に逃がして自分は残るあたりでもう、立派な人なんだとわかる。だから生還した時の兵士たちの喜びようもひとしお。だいたい戦争映画じゃ、軍の高官というとクズ率が異常に高いので、この人の善良さは異常。ただし顔が怖いので、憑依されてからの怖さも格別。

コウベ(ブライアン・ティー)はきりっとした顔つきの東洋人で、名前は日本人らしくないが、日本生まれの日韓混血。出番は短いが、オターを助けて死ぬ当たり、仲間思いの人だったんだなと思う。トアの悲しみようを見てもそれがわかる。

そのオター(サイ・カーター)はまだ子供じみた若造で、おそらくはこれが初の戦闘。仲間の足手まといになるだけのキャラだが、父親のようなダックスに優しくかつきびしく諭されて、成長しかけたところでバグの餌食に。でも根があれだからか、モンスターとしても不器用なのが笑える。

トア(ドリュー・パウエル)は唯一のデブで、これも足手まといになるタイプかと思ったが、ちゃんと使えるデブ。コウベとのエピソードでいい人感全開。

サンディー(サンドリン・ホルト)はごく普通の女の子という感じで、ホートン(ジェイソン=シェーン・スコット)と恋人同士だったのだが、ソーダに彼を奪われ(と彼女は思っているが、実はもちろんバグに憑依されただけ)、その失意を慰めてくれたグリフの手管にはまってまんまと餌食となる。はたから見てる連中からすると、「スワッピングか?」というややこしい四角関係なんだが、かわいそうで笑えない。
この子は憑依前はおとなしそうな感じだったのに、バグの乗り物になったとたん、ケラケラ笑うキチガイ女みたいになっちゃうのがまたかわいそう。あと、死ぬ場面もかわいそう。逃げてきたダックスとサハラは、サンディーが小さな子供のような声で子守歌を歌っているのを見るのだが、彼女が抱いていたのは手榴弾だったのだ。
さすがにブリック(ビリー・ブラウン)になると、唯一の黒人というぐらいしか覚えてないや(笑)。

ここまではわりとどうでもいい役。ここからが重要な役だがそれでも多い。

バグの手先3人組。奥がグリフ、手前がペック、女がソーダ。

バグの手先3人組。奥がグリフ、手前がペック、女がソーダ。

まずはバグの手先の三人組。
グリフ(エド・クイン)は三人の中の親分格でいちばん残酷そう。
ペック(J・P・マヌー)は工兵だが、おどおどした小男で吃音の持ち主と、やたらキャラが立っている。その技能と見るからに人畜無害な外見から、中隊の仲間にも真っ先に受け入れられたが、バグに取り憑かれる前はおそらく本当にいい人だったんだろうなあと思うと、いかにもかわいそう。モンスターになってもいちばんひどい扱いを受けるのも、いじめとしか。
金髪グラマーのソーダ(ケリー・カールソン)は、とてもわかりやすいお色気要員。その色気と体で隊員に迫っては仲間にしていくのだが、ダックスにだけは色仕掛けがきかなくて、代わりに(精力が余ってるらしいからという理由で)腕立て伏せ200回とかやらされてるのがおかしい。ていうか、虫でも腕立て伏せやるのかよ(笑)。

ダックス(いい体!)に言い寄るソーダ

ダックス(いい体!)に言い寄るソーダ

将軍から暫定的に指揮を任されたサイキック将校ディル(ローレンス・モノソン)は、メガネをかけた腰抜けで、いわゆる「ダメな上官」の典型かと思っていた。
サイキックについても見てない人には説明が必要か。この世界はテレパシーとか未来予知のような超能力が実用化された世界で、当然その能力がある人は軍隊でも重用されるわけ。ただ、戦闘要員じゃないのに地位は高いから、他の兵士からは浮いていて、嫌われたりバカにされている感じ。
四角四面で規則を振りかざすディルはダックスともすぐに衝突して、悪役なのかと思ったら、ラスト近くにダックスに告白する。サイキックである彼は絶望的な未来を予見してしまい(それはダックスの未来だったのだが)、それを誰にも言えない孤独と恐怖に苛まれていたのだと。それを聞いたダックスは彼を許し、彼に向かって(上官と認めたしるしに)敬礼すると、ディルもダックスに(古参兵に対する敬意をこめて)敬礼するシーンは美しくも感動的だ。

ディルとヒロインのサハラ

ディルとヒロインのサハラ

同様に、ダックス(リチャード・バージ)の秘密も明かされる。彼は模範的な戦場の英雄だったのだが、部下を犬死にさせる作戦に反対して、上官を殺してしまったのだという。(ついでに上官は銃を持っていたが、ダックスは素手だった)
それ以来なのかそれ以前からなのか、彼は軍隊に懐疑的になっているようだ。英雄とか栄光(glory)という言葉を毛嫌いし、誰かがそれを口にすると、「栄光とは何か知りたかったら彼女に聞け!」と言って、血まみれの女性兵士の死体を指さす。

演じるリチャード・バージはなんでこんなかっこいい人が(世界的には)無名俳優なんだろうと思わせるほどの、いかにも男らしくりりしくたくましいヒーローにふさわしい容姿。ちょうどショーン・コネリーとジョージ・クルーニーを足して2で割ったような感じ。こういうタイプのヒーローって、最近の映画じゃあまり見かけないだけに感動した。
ほとんどの出演作がテレビで、テレビドラマ専業みたいね。(もちろんドラマの俳優は映画とくらべると格が低い) でもクルーニーだって長年テレビ俳優だったわけだし、スターへの座をつかめるかどうかなんてほんと運だけだと実感させられた。

かっこいいダックス

かっこいいダックス

ダックスに較べるとやや影の薄いヒロインがサハラ(コリーン・ポーチ)。彼女に関してはあまり私生活とか性格がわかる描写が少なく、ただ気丈なしっかり者という印象しかない。サハラは一連の事件を通じてダックスと親交を深めるが、恋愛関係は存在しないのは言うまでもない。(妊娠してるから恋人は他にいるのか? なんかその辺聞き逃したかもしれん)
彼女が重要な役を果たすのは、バグから乗っ取り計画を読み取るところだけだからねえ。実は彼女は専門家ほどじゃないがサイキック能力の持ち主で、その能力が妊娠で一時的に高まっていたという理由。(誰の子かは言及がなかったように思う) ダックスが危険人物ではないのを知ったのもこの能力のせい。
演じるコリーン・ポーチはこれもドラマに少し出ていただけの無名女優。(その後も無名なまま) アンジェリーナ・ジョリーをブスにした感じのキツい顔立ちで、スタイルがいいわけでもないし、私の好みではないが、女兵士としてはこれで十分。

葉巻の吸い口を歯で食いちぎってペッと吐き出すレイク。かっこよすぎ!

葉巻の吸い口を歯で食いちぎってペッと吐き出すレイク。かっこよすぎ!

で、私がこの映画の中でいちばん気に入ったのが、実はレイク軍曹(ブレンダ・ストロング)。いつものやつですが、『エイリアン』のリプリー(シガニー・ウィーヴァー)に惚れて以来、こういう背の高い、男勝りのおばさんに弱いんだ。しかもストーリーも『エイリアン』そっくりとなれば、いやでも感情移入せずには見られないが、その期待に十分すぎるほど応えてくれたのが、この映画を好きになった最大の原因かも。
いや、ほんと絵になるおばさんなんだわ。男たちと十分肩を並べる長身(182cm)で、それに見合ったたくましい体つき。引っ詰めに結った髪。(この時点で髪型がひどすぎたリプリーよりまし) それでぶっとい葉巻をくわえて(意味深)スパスパやるんだから、たいていの男はひるむはず。もちろんディルみたいな腑抜け野郎は上官とも思ってない。

しかし、さすがの女丈夫もバグには勝てない‥‥と思ったんだわ。兵士たちは次々とバグの犠牲になり、バグにとっては最大の敵のダックスも捕まって、また焼却炉に戻されてしまう。この情況で生き残ったのはレイクとサハラの女二人なのだが、レイクは男たちに無理やり床に押しつけられ、バグを飲まされてしまう。(このシーンはどう見てもレイプだけど、バグの寄生自体が脳のレイプなので
これでレイクも一巻の終わりと見えたのだが、気を失って倒れていたはずのレイクがいつのまにか消えている。それに気付いたサンディーが探し回ると、太腿に注射器をブスブス刺した状態で仁王立ちするレイクの姿が。注射器の中身はアドレナリンで、バグに脳を支配されて自分を失う前の気付け薬代わりなんだろう。
その状態で鬼神のごとく暴れ回り、バグの親玉のグリフなんか肉切り包丁でめった刺しにしたあげく、首をちょん切り、その口からバグが這い出てきたところで電子レンジにぶち込んで爆発させてしまう。これがほんとの女の武器(笑)。台所での立ち回りといったらやっぱりこれだよね。

討ち取ったグリフの首(バグが出てくるところ)を高々と掲げるレイク。 グロに見えますが、寄生バグのグロさはこんなもんじゃありません。それよりレイクの表情の方が怖い。

討ち取ったグリフの首(バグが出てくるところ)を高々と掲げるレイク。
グロに見えますが、寄生バグのグロさはこんなもんじゃありません。それよりレイクの表情の方が怖い。

この頃ダックスは縛り上げられ目隠しをされた状態で、バグといっしょに閉じ込められるという絶体絶命の情況なんだが、いきなりドアが開いてレイクが現れ、銃床でバグを叩きつぶす。そのまま虚ろな表情で“The Bugs are inside.”と言うから、ダックスが“Inside the perimeter?”と訊くと、“No, sir. Inside me.”と悲しそうに言って、とめる間もなく自分の頭を撃ち抜く。
ああー! リプリーとおんなじだー! これに惚れずにいられるかってぐらい最高のシーン。他のキャラクターは全員寄生されたらそれっきりなのに、ここまで抵抗するって超人過ぎる。これはダックス以上のヒーローだよね。間接的にではあるが、彼女の犠牲のおかげでバグの計画がわかったんだし、そもそもレイクがダックスを助けなかったら人類は滅亡してたかもしれないんだし。
自分で自分の頭を吹っ飛ばして倒れたレイクの、飛び散った脳みその中から、バグの幼虫がぬら~と出てくるのだが、それにサハラが触れることによって心を読んで(これもかなり勇気ある行動。あんなグロい虫に触れるなんて!)、彼らの最終目的を知るのだ。それは将軍に寄生して救助を呼び、軍の上層部を乗っ取ることだった。

ラスト近く、サハラはバグに憑依された将軍に追われて屋上へ逃げるが、すでに救助のヘリが近付いていた。あわやというところで、ダックスは将軍に化けたバグを射殺、サハラをヘリに乗せて真相を伝えることを命じて、自分は押し寄せるバグ軍団のただ中に残る。

Dax' last stand ダックスの最後の戦い

Dax’ last stand
ダックスの最後の戦い。この写真では見えないが、地表には地平線まで埋め尽くすバグの群れ。

この終わり方自体、私はロメロのゾンビものを思い出してしまって感無量なのだが、ダックスがサハラの懇願にも関わらず、ヘリに乗ることを拒否した理由はなんだろう?(二人が乗り込める余地や時間は十分あった) 彼が残ってバグ軍団(視界全体を覆い尽くすレベルの数がいた。それがワサワサ塔に登ってくるところ)を少しでも押し返すことで、サハラが無事脱出するチャンスを増やすっていうのもひとつあるだろう。
でも「俺は人殺しだ」というのが彼の言い分で、もちろん、生きて帰れば死刑なのがわかっているのだ。そうでなくても人を殺した(将軍ではなく元の上官ね)ダックスは自分が許されない罪を犯したUnforgivenであることをわかっていて、地球に戻って役にも立たない処刑を待つよりは、1匹でも多くのバグを道連れにして死ぬつもりだったのだろう。
そのダックスの最後の戦いが神話化され、彼が何より嫌っていた英雄として奉られてしまうのが、この映画の最大の皮肉でやりきれないところ。それでも彼は本物の英雄として描かれており、これは浅薄な反戦映画ではない。
『スターシップ・トゥルーパーズ3』のいやなところってそこかも。英雄どころか陳腐でクズな奴らばっかり出しておいて、「ほーら、戦争っていやですね」と言ってるみたいな感じ。

そしてラスト、たったひとり生き残ったサハラは、どうやら退役して子供を産んだらしく、赤ん坊を抱えて徴兵事務所の戸口に立っている。中で上映されているのは英雄ダックスを讃えるフィルムだ。これはわざわざ見に来たわけではなく、たまたま通りかかったらこれが見えたので、なつかしさのあまり目が離せなくなってしまった、というところだろう。
ここまでの戦場はずっと真っ暗な夜の世界だったので、このシーンの陽光あふれる明るい静けさがあまりにも印象的だ。サハラも軍隊時代の面影はなく、きれいに化粧して子供を抱えて幸せそうだ。
ここで彼女に気付いた徴兵担当の軍曹が近寄ってくる。「かわいい赤ちゃんだ」と子供を覗き込む軍曹に、サハラはニコニコ笑っているのだが、それに続く彼のセリフ、“Hurry up, spud. We need fresh meat for the grinder.”「早く大きくなれよ、ちびすけ。挽肉機に放り込む新しい肉はいくらあっても足りないんだ」を聞いて真っ青になり、足早にその場を去る。ここで徴兵事務所にかけられたダックスの大きな垂れ幕がアップになりthe end。

「かわいい赤ちゃんですね」 「え? ちょっと待って! 何それ?」

「かわいい赤ちゃんですね」
「え? ちょっと待って! 何それ?」

いやー、気が利いてるわ。反戦とかそんなことはおくびにも出さず、れっきとした戦争の英雄を描いておきながら、その貴い犠牲を足で踏みにじるような場面を見せる。どんな反戦映画より痛烈に、もちろんヴァーホーヴェンの下品な映画より格調高く、こういうのがB級映画の続編で作れちゃうなんて。

なんかきっちり結論も出て終わっちゃったが、最後にSFXをほめる。もちろん監督のティペットはこっちが本業であり、見る前は、たとえ話はグズグズでも最低限モンスターを見る楽しみがあると思っていた。
と言っても、ヴァーホーヴェンのオリジナルの時点で、フィル・ティペットという名前はすでに終わった人、とまでは言わないが、かなり古い感じだったんだけどね。もちろん『スター・ウォーズ』に始まって、数々の名作を手がけてきた大ベテランなんだけど、彼が最も尊敬する映画人がレイ・ハリーハウゼンっていうぐらいで、ストップ・モーション・アニメの監督という印象しかなかったから。
そしたらちゃんと時代に合わせてCGも手がけてるばかりか、バグの動きも思いのほか若々しくて良かったんで、見直したわけ。若々しいってのはえげつなくてグロいってことだけど(笑)。

とりあえずいつも言うように私はモンスター大好き! グロくて怖くて強いほど好き。それで世の中でいちばんグロくて怖いものは虫なので、虫のモンスターがいちばん好き、かというとそうでもなかった(笑)。
なんか欧米人がいちばん怖い虫はクモらしくて、このバグもクモをモチーフにしているらしいんだが、私的には昆虫を食ってくれるクモはわりと好きな部類。顔もかわいいし、飛ばないし、そんなに怖くないのがいまいちなんだわ。なのに、虫系のモンスターというと、洋画ではたいていクモかサソリ系で、私はどっちもかっこいいとは思うが、あんまり怖いという気はしない。
逆に日本人はゴキブリがいちばん嫌いっていう人が多いが、甲虫はまだピカピカツルツルしていて清潔感があるので、それほどいやじゃない。(もちろんゴキブリでも見たら逃げるけど) ゴキブリが主役のホラーっていうと、『ザ・ネスト』と『ミミック』か。マンガじゃ『テラフォーマーズ』とか。やっぱりゴキブリ愛されてるな。
でも私が死ぬほど怖いヤスデとかヒヨケムシとか毛虫をモチーフにしたモンスターってあまりいないな。かっこわるいからか?

とりあえず、このシリーズのバグ(いろんな種類がいるが、いちばん出番の多いウォリアー・バグのことです)も、動きとかウジャウジャ感はいいが、単体でデザインとしてみた場合はあまり感心しなかった。なにより生物に見えないのが痛い。全身足みたいなもんなんだが、メカメカしすぎていて、おまけに色が黄黒だから、まるでなんかの建築機械みたいに見える。

ウォリアー・バグ

ウォリアー・バグ

映画のバグは動きが速すぎて満足な静止画が撮れなかったので、これは向こうでオークションに出されたウォリアー・バグ。(だから台座に載ってる)
バグのこれだけ鮮明な画像は初めて見るわ。やっぱりクモと言うよりウデムシっぽいね。個人的にはこの大アゴのデザインが嫌い。昆虫のアゴは横に開くのに、これは縦だからなんかアゴっていうよりは足に見えたし。だいたい口はどこなんだと思ってたが、これで見るとちゃんとアゴの付け根に口があるんだね。やっぱりこんな口でものが食べられるとは思えないけど。
ていうか、その口のすぐ横に人間みたいな目もあるのを今にして初めて知った。やっぱりけっこうキモいかも。

これはウォリアーバグだけど、他にもいろんな昆虫をモチーフに、次々新種が生まれてくるのがバグの特徴。ブレインバグみたいにすっげーキモい(しワイセツな)のもいる。

そんなわけで、この2にもたいして期待したわけではなかった。最初の方のバグは1より動きがなめらかになっていて感心したけど。しかし、この寄生バグを見た時は開いたあごがガクンと落ちて戻らなくなりました。

グロいよー! これは間違いなく、これまで映画で見たモンスターの中でいちばんグロい。これ全身がちゃんと写った写真とかデザイン画がないので口で説明するね。(あまりにも印象的なシーンなので、当然Imgurあたりにいくらもgif画像があるだろうと思ったのだがなかった。『スクリーム』なんかたくさんあったのに、やはり知名度が違いすぎるからか)

まずは基地に潜入した寄生虫3人組なんだけど、少し前からペックの姿だけが見えなくなる。実はペックはいつのまにかゾンビみたいにボロボロになっていて、グリフが引っ張ると腕や足がポロポロもげるほどモロくなってる。ここでグリフにボロ人形みたいに扱われるペックがかわいそうでつい同情してしまう。
そして、犠牲者を前にして、グリフはおもむろにペックの頭をわしっとつかむと、頭蓋をメリメリと引き裂いて中身を露出させる。そこから現れたのは丸まった黒い虫なのだが、グリフが外に引っ張り出すとガバッと足を広げる。この姿がカブトガニの裏側って感じで、無数の足がワシャワシャ‥‥
これだけでも十分気色悪いんだが、カメラが下にパンして全身を映し出すと、いやー! 丸っこい頭というか胸の下にはビローンと細長い胴体が続いていて、そのまた下に太った腹がくっついていて、そこにも無数の足がワシャワシャ。昆虫が気持ち悪いのは体が頭・胸・腹の3つにはっきり分かれていることだと思うのだが、それをもっと気持ち悪くした感じ。さらにその腹を踏みつけられると、腹の中からは無数の子供がワシャワシャワシャと這い出てくるあたりがもう限界。おえええ-!(ワシャワシャが苦手らしい。そういや、上で苦手な虫としてあげてるのも足がたくさんある奴ばっかりだ)

こんなんが頭の中に入ってるんですよ! キモー! これは殺すしかない。戦争するしかないですわ。

成虫の全身が映るシーンがないのでこれで勘弁。 この足が全部ワシャワシャと動き、この下にまだだらーんと長い胴体と膨らんだ腹部が続く。 これが頭の中に入ってるんですよ! キモー! これは殺すしかない。戦争するしかないですわ。

成虫の全身が映るシーンがないのでこれで勘弁。
この足が全部ワシャワシャと動き、この下にまだだらーんと長い胴体と膨らんだ腹部が続く。

やっぱりなー、虫は小さいから気持ち悪いってのは本当だな。ウォリアーバグなんてぜんぜん気持ち悪くないのはやはり大きすぎるからだろう。とにかくこのシーンのショックがすごすぎて、そのあとの生首の口から這い出してくるバグとか、レイクのつぶれた頭から這い出してくる幼虫(カブトムシの幼虫そっくり)なんて、なんとも思わなくなった。
とりあえず、このグロさは昔のロブ・ボッティン(『遊星からの物体X』)を思わせる。でもフィル・ティペットってこういうグロいの撮る感じの人じゃなかったんで驚いた。そういえば、この二人は『ロボコップ』で組んでるね。『ロボコップ』もけっこうグロかったけど、あれはボッティンだと思ってたが‥‥

とりあえず、これが本職なんだからSFXがいいのはあたりまえ。もっと驚いたのは初監督作なのに重厚な演出を見せてくれたことだ。もちろんこれがB級モンスター映画だってことはティペットも自分で言ってる。まあ早い話がパート2に過ぎないし、そもそも脚本も『エイリアン』や『物体X』のパクリだし。
でも本当の老練な職人が撮るとB級モンスター映画もこれだけ味のある映画になるんだな。
DVDにはメイキングもついていて、撮影風景も見られたが、年にもかかわらずエネルギッシュで(ハゲチャビンだからすごい年のように見えるけど、この頃まだ53才だった)、俳優相手にも体を張った演技指導で、ものすごい熱い人なので驚いた。これは役者冥利に尽きますわ。若い俳優たちともすごく和気藹々とした雰囲気で、低予算の小品だけど、スタッフは作ってて楽しいだろうなあと思うのは、私がいつもロメロの映画を見て思うのと同じだ。根っこはいっしょかも。

というわけで楽しかった! 大好き! 『エイリアン』や『物体X』は私にとっては神に等しい映画だが、それに(まねっこという点に目をつぶれば)引けを取らないおもしろさだ。少なくともここでのブレンダ・ストロングはシガニー・ウィーヴァーに匹敵するし、リチャード・バージはカート・ラッセルより断然かっこいいしヒロイックだ。役者だけなら負けてないかも。
なのにバカ映画のパート2というだけで振り向きもされないかわいそうな映画だけど、寄生ホラー好き、モンスター好きの人には絶対おすすめ。

広告
カテゴリー: ★★(特選), 映画評 タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , パーマリンク