【映画評】どーでも映画劇場 300 <スリーハンドレッド>(2007)”300″

スパルタ戦士の大胸筋祭り しかしずっと見てると昆虫かなんかに見えてくる

スパルタ戦士の大胸筋祭り
しかしこればっかりずっと見てると昆虫かなんかに見えてくる

とどめにあのスローモーションと止め絵。実写なのに出来の悪いアニメでも見ているようだ。

もちろん役者はそれぞれルックスだけは魅力的なんだが、脚本とか演出が学芸会、もっと正確に言うと紙芝居レベルなんで、演技する余地もない。

だいたいこの300人というのは単なる先遣部隊で、なのにそれに王様が加わって、玉砕攻撃しかける意味がまったくわからない。さすが脳みそまで筋肉でできてるだけあって、あんまり頭良さそうには見えない。

かんじんのスパルタ軍があんまり強そうにも見えないのも難点。だってスパルタの戦術であるファランクス(重装歩兵による密集陣形)ってどう見てもカメノコで(笑)。いや、盾の間から槍がニョキニョキ生えてるからカメというよりはウニか。

まあ、私としてはいい男の裸がたっぷり見られたということで満足しなきゃいけないんだろうが、パンツ一丁のコスプレ筋肉男の学芸会を見せられてもね。

実は(出てる役者が好きな人ばっかりなせいで)けっこう筋肉楽しみにしていたくせにこの言われよう。その原因は?

【関連作品】
【映画評】どーでも映画劇場 インモータルズ――神々の戦い(2011)Immortals

Director:

Zack Snyder

Writers:

Zack Snyder (screenplay), Kurt Johnstad (screenplay), Frank Miller (graphic novel)

もちろんさんざん宣伝とかしてたからこの映画については知っていたが、いかにもアホそうなんで公開時はまったく見る気になれなかった。理由はすでに書いた通り「青筋立てた脳筋男祭り。ただしかんじんの戦闘シーンはすべてCG」っていうのが予告編だけ見てもわかったから。

なのに今さらこの映画が見たくなった理由は、

1.ダン・シモンズの『イリアム』、『オリュンポス』2部作を読んで、古代ギリシアの戦士たち(と神々)に興味と愛着がわいた。だけど小説では彼らが動いているのは見れないので、どうしてもそれっぽい「絵」が見たかった

2.ハリウッドの時代劇はたいていそうだが、時代がかった重みがあるように見せるために英国人俳優(アイルランドとオーストラリアもあり)をよく使う。よって私の好きな役者がたくさん出ている。特にこれは『プロメテウス』で一目惚れしたマイケル・ファスベンダーの映画デビュー作だと知ってどうしても見たくなった。あと、『ゲーム・オブ・スローンズ』のサーセイ、レナ・ヘディや、LOTRのファラミアさん、デヴィッド・ウェナムも出てるし。

3.元祖だし、いくらなんでも『インモータルズ』よりはましなんじゃないかという期待。

ところがほんとにどうでもいい映画だったので、結論も簡潔に。

1.動きゃーいいってもんじゃない。小説家と読者の想像力と創造力をバカにしちゃいけないね。シモンズのあれのどこがかっこよかったかって、突拍子もないファンタジーなのに、リアルだしオーセンティックだったからで、それにくらべてこちらはオーセンティシティなんて薬にしたくともない。時代考証無視のヘンテコな衣装、重力無視のヘンテコな動き。とどめにあのスローモーションと止め絵。実写なのに出来の悪いアニメでも見ているようだ。(実際、アクションシーンはほとんどCGだからアニメなんだけど)
もちろん原作がマンガだから、フランク・ミラーの絵の感じを出したかったのはわかる。だけど、古代ギリシアでこれをやってくれるなというだけ。私は時代劇には品格を求めるので。

2.いい役者を出せばいいってもんじゃない。『タイタンの戦い』がいい役者にかなり救われてたのを見て、それならこっちもイケるかと思ったんだが。もちろん役者はそれぞれルックスだけは魅力的なんだが、脚本とか演出が学芸会、もっと正確に言うと紙芝居レベルなんで、演技する余地もない。

レオニダスと妻子

妻子に最後の別れを告げるレオニダス。奥さんより胸でかいような気がする。

これだけじゃかわいそうだから、かんたんに役者評を述べると、主役のスパルタ王レオニダスを演じたジェラルド・バトラー(Gerard Butler  グラスゴー生まれのスコットランド人)は、こんなひげもじゃでなければ普通にハンサムだしかっこいいんだが、垢抜けない感じはヒース・レジャーが老けた感じ。大胸筋の勝利

その王妃ゴルゴを演じたレナ・ヘディ(Lena Headey バミューダ諸島生まれのイングランド人)。話が話だから女の出番はないだろうと思っていたが、夫の出征後の陰謀劇をくっつけたのは、彼女に出番を与えるためとしか。それもいかにも取って付けたようであっさり解決しちゃうけど。
『ゲーム・オブ・スローンズ』同様、お色気面でもがんばってるが、いかんせんもう若くないし、おっぱいないし、あいかわらず美人だが裸を見せるのは無理があると思う。まあGOTのあれには期待してますがね。あれはもはや若くも美しくもない体を見られる屈辱感がいいんで。ふふふ‥‥。

期待の星、マイケル・ファスベンダー(Michael Fassbender ドイツ生まれ、アイルランド育ちのドイツ/アイルランドのハーフ)は若くて血気盛んな兵士    ステリオスを演じた。だが、残念ながら彼はみすぼらしいしょぼしょぼの長髪で登場して、ルックス面ではかなりがっかり。さすがにスタイルはいいし、裸は見応えがあったが、若手扱いのわりにはこのときすでに30で、もうそんなに若くはなかった。

なんかかわいいデヴィッド・ウェナム

なんかかわいいデヴィッド・ウェナム

むしろルックス面で儲けた感じなのが、ディリオス役のデヴィッド・ウェナム(David Wenham  オーストラリア人)。この人、素顔を見るとかなり変な顔なんだが、LOTRでも繊細で純情なファラミアを演じてなぜか美青年の印象がある。それがここでも乱れた金髪がなぜかかわいく、とことん時代劇が似合う顔なんだなあ。彼は伝令としてスパルタに送り返されたせいで、300人の中でただ一人生き残り、よって語り手も勤めるというやけにおいしい役。

変わり果てたアンドルー・ティアナン こうやって見るとまるきり(LOTRの)ゴラムですね

変わり果てた(けどいちばん見応えのあった)アンドルー・ティアナン
こうやって見るとまるきり(LOTRの)ゴラムですね

せむし男エフィアルテスを演じたアンドルー・ティアナン(Andrew Tiernan イングランド人)はデレク・ジャーマンの『エドワードⅡ』(1991)で「美青年」ガヴェストンを演じた人だ。なつかしいな。元々変な顔だったが、『エドワードⅡ』ではそこがかえってセクシーだったのに、今やフリークか。(もちろんメイクです! 若い頃は少なくともデヴィッド・ウェナムぐらいはハンサムだったし)
と言っても、演技的に唯一見所があったのはこの人だけどね。アンドルーが演じるエフィアルテスは、レオニダスと共に戦うことを願ったのだが障害を理由に拒否され、ペルシア軍に寝返った裏切り者で、いちばんというか唯一、陰影のある役だし。

ペルシア王クセルクセスを演じたのはロドリゴ・サントロ(ブラジル人)。素顔はいかにもなラテン系やさ男だが、映画ではクレオパトラみたいなどぎついメイクでオカマの王様みたいだった。

なんかもうすごい

なんかもうすごいクセルクセスの勇姿

他にもイギリス人がいっぱい出てるが、印象に残ったのはこんなところ。セロンを演じたドミニク・ウエストや隊長とその息子もいたがもういいや。
(どうでもいいが、これのパンフレットはちゃんと英語わかる人が監修したらしく、Wenhamはウェンハムじゃなくてウェナムになってるし、Andrewはアンドリューじゃなくてアンドルーになってる)

3.なんと驚いたことに、『インモータルズ』よりはましどころか、あれ以下だった。『インモータルズ』のほうがまだ筋らしい筋があったし。

ご存じのようにいちおう史実である「テルモピュライの戦い」を描いているのだが、スパルタ軍300人でペルシアの大軍を迎え撃ったというのは、何かよほどの大義名分かやむを得ぬ事情があったんだと思っていた
ところが実際は大事なお祭りがあったからというアホな理由(これは史実)。それに300人というのはスパルタ軍だけの話で、ギリシア諸国の軍勢も入れると7000人ぐらいはいたらしい。なのに映画だけ見てると、スパルタ人300人に対し、ギリシア人は30人ぐらいに見える。
それに対するペルシア軍はヘロドトスの『歴史』によると200万人だそうだが、これはもちろん誇張が入っていて、実際は数十万人だったらしい。それにしたってすごい差ですけどね。
こういうのを聞くと、ToME(ゲーム)の紹介(ひとりごと日記の2009年4月25日)の中で書いたことを思い出さずにはいられない。

このゲーム(ToME)をやっていると、また『指輪物語』を読んだり映画を見たくなると書いたが、実際またDVDを見返して、またハマってしまった。でも気になることがひとつだけ。原作では、ここいちばんの大きな合戦で、善の側の小規模な軍隊が、数も力もはるかに上回る敵の大軍勢に、真正面から切り込んで行くじゃない。ヘルムズ・ディープの戦いとか、ペレンノールの決戦とか、ブラック・ゲートでの戦いもそうだ。もちろんお話としてはその方が悲壮感があってドラマチックでおもしろいのはわかるが、現実問題としてあれじゃカミカゼ突撃同然の自殺行為だよね。少なくともToMEじゃ、あっという間に全滅して、1秒後にはお墓を見ることになる
おかげでToMEをやるようになってから、映画を見るたび、「あーっ、だめだ、そんな戦法じゃ勝てない!」と叫ぶ癖がついてしまった。原作よりゲームのほうがリアリスティックなんだね。

それで結果はもちろん玉砕である。単なる蛮勇。戦力差のわりにはがんばって持ちこたえたから歴史に残っているだけで。
だいたいこの300人というのは単なる先遣部隊で、なのにそれに王様が加わって、玉砕攻撃しかける意味がまったくわからない。さすが脳みそまで筋肉でできてるだけあって、あんまり頭良さそうには見えない。

あと、かんじんのスパルタ軍があんまり強そうにも見えないのも難点。だってスパルタの戦術であるファランクス(重装歩兵による密集陣形)ってどう見てもカメノコで(笑)。いや、盾の間から槍がニョキニョキ生えてるからカメというよりはウニか。そのかっこうでのそのそ進むんで、絵的にはかっこ悪いことこの上ない。これも映画としては致命的だなあ。
私はいつも言うように騎馬戦がいちばん好きだし、騎兵がいちばん強いと信じてるので、ここでもファランクスが騎兵を撃退するシーンがあるが、どうしても納得できない。
馬を知らない人はただの草食動物だと思ってるだろうが、あれだけ桁違いにでかい動物がどれだけ強いかご存じない。噛まれただけで手の骨砕けるし、軽く頭で小突かれただけで肋骨折れる。ましてや蹴られたり踏まれたら内臓破裂でアウト。
防御力のほうも同様。よくYouTubeで牛や鹿が車に衝突するビデオが上がってるが、車は大破してるのに、動物は平気で走り去ることがよくあるでしょ。あれぐらい頑丈。(馬がモロいと思われてるのはサラブレッドの印象のせいだが、サラブレッドは競馬に使うだけのために人工的に改良された奇形だってことをお忘れなく) まあそれでも鉄砲には勝てなくて、だから滅びたんだけどね。
まして馬が全速で突進してきたら、(馬と騎手も死ぬかもしれないが)カメノコの5人や6人はあっけなく死ぬし、馬を300頭ぐらい揃えるのは造作もないことだし。

というわけで戦闘シーンは見るものなし。『インモータルズ』と同様、血糊はぜんぶCGで、しかも液体にすら見えない。これも意図的なんだろうが、それこそマンガの血をCGで表現したみたいな感じで、インクが飛び散った飛沫みたいなのが空中にパッとひらめくだけ。
トレードマークのスローモーションも、これが本当に肉弾戦の迫力を見せるためならうざいけど我慢するが、単なるダンスの振り付けをみせるだけだしな。ペキンパーは大好きだったけど、これははっきり言ってダサいとしか思わない。そして戦闘シーン以外はというと青筋立てた筋肉男が演説してるだけで、ほんとに何も見るものがない。

となればあとは、これもトレードマークのあの映像――コントラストを強調したセピア調の画面をきれいと思うかどうかが好き嫌いの分かれ目だろう。私はまったくダメ。どう見てもマンガかゲームの画面を見ているようでリアリティーゼロ。
だいたい『シン・シティ』ならばいつも夜でもおかしくないが、ここって陽光あふれるギリシアでしょう? なのに昼でも真っ暗ってのはなんで? 空にはいつも暗雲が立ちこめてるし、スコットランドかと思うじゃないか。『シン・シティ』は一種の映像表現としてなんの違和感も覚えなかったが、スパルタだとめっちゃ違和感。
見ているうちにこれは手抜きなんじゃないかという気がしてきた。ディテールが見えないように真っ暗にして、シルエットでごまかしてるんじゃないかと。私は時代劇は衣装やセットを見ているだけでも楽しめるので、これをちゃんとお金かけてまともな実写で見せてくれたらまだ感動もしただろうけど、こんな安っぽい絵でごまかされるか。上にも書いたが紙芝居とか、インドネシア(だっけ?)の影絵劇を見ているようで、大人の鑑賞に耐えるものじゃない。

まあこれはほんと好みの問題で、私は『47 Ronin』みたいな史実完全無視のアホ映画でも、「絵がきれい」という一点だけで愛しちゃうから。しかしひとつ確実に言えるのは(『47 Ronin』の)ヤン・ロールフスは本物のアーティストだけど、フランク・ミラーは言っちゃ悪いがただのマンガ家だってこと
でも好みって千差万別だからね。『ロード・オブ・ザ・リング』を「最後まで見れない」という人もいるんだから。ありえない! 私はあれは最初の10分だけ見ようと思って見始めると、いやでも三部作すべて見て、ついでにボーナストラックまで見ないと治まらないもの。

まあ、私としてはいい男の裸がたっぷり見られたということで満足しなきゃいけないんだろうが、パンツ一丁のコスプレ筋肉男の学芸会を見せられてもね。考えたら筋肉もそれほど好きじゃないし(笑)。だいたい、いかにも頭の悪い、バカな男が好きそうな映画ってのがどうも。
と、いつになく、じゃなくていつも以上にリビューが辛いのは、おそらく私が良質な西洋時代劇を見すぎたせい。ほんとこんなの見るならGOT(『ゲーム・オブ・スローンズ』)を見るか、BBCの歴史ドラマ見てるほうが1億倍楽しいしお勉強になる。

おまけ

300 <スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~(2014)300 : Rise of an Empire

実は『300』と間違えて、こっちのほうを先に録画してしまっていた。録画がなければこんなの見るつもりなかったのだが。
この続編もフランク・ミラー原作だが、監督のザック・スナイダーは制作にまわり、ノーム・ムーロという人が監督している。

しかし表題の300人はもう死んじゃったのに、どうやって続編作るんだ?と思ったら、同じ時系列の中でアテナイ軍とペルシア軍の海戦に焦点を当てている。
とりあえず、こっちのほうが道具立ても華やかだし、多少は戦略らしきものもあるし、映画としては見応えがあるのは確か。あと、続編だからいちおうスタイルは踏襲しているが、ザック・スナイダーの個性が消えた分、普通の映画に近付いたおかげで見やすくなっている。
ただ、役者が知らない人ばっかりになった結果、いかにも小物感は否めない。主役のサリヴァン・ステイプルトン(オーストラリア人)もいかにもぱっとしないし。
むしろ主人公は前作に引き続いて登場のペルシア王クセルクセス(ブラジル人)と、その黒幕アルテミシア(エヴァ・グリーン フランス人)。特にアルテミシアは男勝りの女船長として大活躍なんだが、(本来きれいな人なのに)エヴァ・グリーンはゴスメイクにゴスルックで、時代錯誤もそうだが、あまりにステレオタイプな悪女でうんざり。主人公も彼女と平気でセックスしちゃうあたりでうんざり。頭の悪さは見事に継承しているな。これならまだ最後全員死んでくれる『300』のほうがさっぱりしてよかったと思えてくる。

それで二本続けて見ての感想は、『300』はパンツ一丁男の筋肉を見せるのが主眼の映画、『帝国の進撃』は飛ぶ首や血しぶきを見せるのが目的のスプラッタ映画という印象。確かに血の量は格段に増えた。でもやっぱり止めてみせるので、ペンキ缶ぶちまけたみたいっていうか、アクション・ペインティングでもやってるようにしか見えません。

P.S. あまりに不満だったので、浅野忠信がチンギス・ハンに扮した『モンゴル』や、角川映画の『天と地と』なんか見てしまったよ。と言ってもどっちもYouTubeで最後の合戦シーンだけ。こういう映画はここだけ見ればいいんで。(もちろん黒澤の『乱』でもいいよ)
はあ~、やっぱり騎馬戦はかっこいいのお。あとCG使わない本物の人間が演じる合戦シーンはいいのお。映画はやっぱりこうでなくちゃ。
ところで『天と地を』を見ていたら、「諏訪神軍」なんてものが出てきた。神主がかつぐ神輿の上で、巫女が太鼓叩いてるの。あっさり鉄砲隊にやられてたけど(笑)。たぶんこんなの史実にない嘘っこだと思うが、見たら『300』のペルシア軍を思い出した。土人かよ!

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