★【映画評】センチュリオン(2010)Centurion

もう裸ん坊じゃない! ギリシア時代からはかなり進化したことがわかるローマのレギオン

もう裸ん坊じゃない!
ギリシア時代からはかなり進化したことがわかるローマのレギオン

ローマの消えた第九軍団(Ninth Legion)のミステリーを映画化した、日本未公開のイギリス映画。いつもながらの時代劇とファンタジーについての持論あり。

♥ でも北欧のバイキングとか見てても思うんだけど、天使みたいな顔して野蛮人というのがなんか不思議だ。
♦ それは我々が白人=文明人という図式に慣れてしまっているからで、北欧やイギリスで福祉制度やマナーが発達したのは、元が野蛮人だったからだと思ってるよ、私は。


♦ 要するにアメリカの時代劇はいつの時代だろうとなに人だろうと、みんながみんな現代アメリカ人のように考えて現代アメリカ人のように行動するんだよ。それでそもそも私がジョージ・R・R・マーティンの『氷と炎の歌』とかダン・シモンズの『イリアム』をすごいと思ったのは、登場人物の行動や心理があまりにも人間的でありながら、同時に我々現代人にとってはきわめて異質で理解しがたい部分があるってことなんだ。別の時代の別の人種というだけなのに、同じ人間とは信じられない感じで。


♥ これ確かに低予算映画なんだけど、宝くじの売り上げの大半は作り物のリアルな生首や手足、それに大量の血糊を作るのに使われたと見るね。

Director:

Neil Marshall

Writer:

Neil Marshall

♥ もう疲れたんでまた四重人格で行きます。
♦ これも録画した中にあったのだが、なんで録画したかはもちろん、どんな映画かも忘れてた。
♥ ただ、タイトルからしてなんか時代劇っぽいので、『300』を見て腐った目の保養になるかと。
♦ でもオープニングのクレジットだけ見てなんで録画したか思い出しましたね。
♥ 主演にマイケル・ファスベンダー、共演ドミニク・ウェストって、まんま『300』と同じキャスティングじゃないか!
♦ もちろん録画した時は『300』も見てないし、そんなことは知らなかったんだけど、マイケルが見たくて録画した映画。
♥ しかもイギリス映画!
♦ しかも舞台はスコットランド!
♥ もう名作決定じゃないですか。
♦ まだそこまでは‥‥
♥ 少なくともこの時点で、『300』とくらべ完全に私の映画って感じで、ひいきされるのは見えたね。

♦ 監督は『ドッグ・ソルジャー』『ディセント』のニール・マーシャル、って私はどれも見たことないが、イギリス人監督。
♥ でも調べたらこの人『ゲーム・オブ・スローンズ』の監督もしてるんじゃない! ついでにリアム・カニンガム(やっぱりGOTを見て惚れた)まで出てる!
♦ GOTはアメリカのTVドラマにしちゃやけによくできてると思ったが、やっぱりかなりイギリス人脈入ってるんだな。
♥ ていうか、GOTのキャストなんて全員イギリス人じゃないか。
♦ ヒロインは『オブリビオン』のオルガ・キュリレンコだよ。
♥ それはたいしてうれしくないが、なんか低予算イギリス映画にしちゃすごい豪華キャストじゃありませんか。
♦ 低予算なの?
♥ だって宝くじ基金で作られた映画だよ。
♦ 英国の宝くじってそんな用途に使われてるのか。偉い! さすが文化先進国。

♦ それでお話はと言うと、タイトルから想像できると思うけど古代ローマの時代。
♥ ただ、タイトルの『センチュリオン』(ラテン語ではケントゥリオン、百人隊長)というのは混乱するよ。
♦ 確かにそれ言うなら「レギオン」でしょ。それがなんで百人隊に格下げ?と思ったら、主人公のクイントゥスがセンチュリオンだというだけだった。
♥ この映画のワーキング・タイトルはズバリ“Ninth Legion”だったし、普通に「第九軍団」じゃだめだったのかな?

♦ おっと、つい話が先走ったが、これはローマの消えた第九軍団(Ninth Legion)のミステリーを題材にしている。

消えた第九軍団(Ninth Legion)のミステリー

現在のイングランドを征服したローマ帝国は、スコットランドへも兵を進めるのだが、そこでは原住民のピクト人の根強い抵抗にあって苦しんでいた。そんな中、西暦117年、ヨークの砦を出発してスコットランドへ向かった第九軍団の兵士3000名が、なんの手がかりも残さず全員謎の失踪を遂げたのは、世界史のミステリーのひとつと言われている。

♥ この映画は消えた第九軍団の謎と、兵士たちの末路を描いたもの。うわー、めっちゃおもしろそうじゃない。これはワクワクするね!
♦ じゃあここらでストーリー。言うまでもないがネタバレしまくってるよ。

西暦117年、ピクト人の捕虜となったローマの百人隊長クイントゥス・ディアス(マイケル・ファスベンダー)は殺される寸前で命からがら逃げ出して、ちょうど北へと進軍中だった第九軍団に救助され、軍団に加わる。
しかし現地人ガイドとして雇われた唖の女猟師エテイン(オルガ・キュリレンコ)の手引きで待ち伏せ襲撃に遭い、軍団は壊滅。クイントゥスを含め、7人の兵士だけが生き残る。

7人はピクト人の捕虜になったウィリルス将軍(ドミニク・ウェスト)を救出するため、ピクト人の野営地を襲う。
しかし救出作戦は失敗し、そのどさくさの中でローマ兵のひとりで名前がわからないんだけど見るからに悪そうな奴が、ピクト人の王ゴーラコン(ウルリク・トムセン)の幼い息子を殺してしまう。

ゴーラコンは翌日、エテインに将軍を殺させ、さらにローマ兵たちを探し出して一人残らず殺せと命じる。
実はエテインは幼い頃ローマ兵に両親を殺され、自分も舌を抜かれた過去を持ち、ローマに対する復讐心に燃えていたのだ。さらに猟師として鍛えた動物的な勘を持ち、獲物を追い詰めて仕留める腕にかけては並ぶものがなかった。
一転して追われる立場になったローマ人たちは、一人また一人と殺され、しまいにはばらばらになる。

その途中、クイントゥス、老兵ブリック(リアム・カニンガム)、足を怪我したボトス(デヴィッド・モリッシー)の三人は、人里離れた家に一人で住んでいる魔女と呼ばれる若い女アリアンヌ(イモージェン・プーツ)にかくまってもらう。アリアンヌはゴーラコンに魔女の烙印を押されてピクト人の村から追放されたといい、どうやらピクト人社会に恨みを持っているらしい。
クイントゥスがアリアンヌといい仲になりそうになったところで、ここへもエテインが追いすがるが、アリアンヌのおかげで三人は難を逃れ、彼女に別れを告げて逃亡を続ける。

やがて逃げることに疲れきった三人は放棄されたローマの砦で追っ手を迎え撃つ。激戦の末、ブリックは戦死するが、クイントゥスとボトスはエテインとピクト人たちを返り討ちにする。
やがて二人はようやくローマの駐屯地(ハドリアヌスの壁の建築中)にたどり着くが、途中でやはり生き延びた「悪い奴」と出会う。「悪い奴」は足手まといになった戦友を殺して逃げてきたのだが、クイントゥスに子供殺しの件を追求されると、彼を殺そうとして返り討ちにあう。さらにボトスは駐屯地の警備兵に誤って撃たれ、結局生き残ったのはクイントゥスひとりになる。
しかしこの事件はローマ帝国の名折れになると判断した高官たちは、事の顛末を歴史から抹消し、クイントゥスも消そうとするが、からくも逃れたクイントゥスは再びスコットランドへ向かい、アリアンヌの元へ身を寄せるのであった。

♦ というわけで、かんじんのミステリーについては、「(七人を除き)ピクト人に皆殺しにされた」という、いたって普通の結論に落ち着いたわけだ。
♥ 実は諸説あるんですがね。ゲルマン人が多かったので、勝手に国に逃げ帰ったとか。ドイツでその証拠が見つかったとかいうけど本当かしら?
♦ まあ何しろ2000年前の出来事なんで、伝説の尾ひれはついてるし、今さら真相なんてわかりっこない、というあたり、なんでも自由に想像できてかえって好都合なんだけど。この話も、「クイントゥスがいくらなんでも運良く生き残りすぎ」ということを除けば、実際にあってもおかしくない話だし。

♥ でも歴史ミステリーになるのかと思ったら、あんまりそういう感じじゃなかったね。かんじんのレギオンがあっという間に全滅しちゃうし。
♦ あくまでクイントゥス個人の物語という印象を受けた。だから『センチュリオン』でも間違いないんだ。
♥ むしろ狩る者と狩られる者のマンハントもの。
♦ 前に書いた『クライムダウン』がまさにそういう話だったじゃない。イギリス人ってこういうのが好きなの?
♥ あれよりはずっとおもしろいよ。

クイントゥス・ディアス(マイケル・ファスベンダー)

クイントゥス・ディアス(マイケル・ファスベンダー)

♦ 当然『300』との比較になると思うが‥‥
♥ 最初に一目見て思ったのは、ギリシアからローマの間でずいぶん文明が発達したんだなということ。なにしろ兵隊が裸んぼじゃない。ちゃんと立派な鎧を着ている。
♦ そりゃスコットランドで裸じゃ風邪ひくもん(笑)。でもこれ本当かどうか怪しいんだけど、IMDbによるとピクト人というのは裸族だったんだそうだよ。だけど、冬のスコットランドの山中でロケするのに裸じゃあんまりだから服着せたんだって。
♥ 嘘だあ! スコットランドで裸でどうやって生きていくんだよ!
♦ しかし雪の中半裸で駆けずり回ったマイケルはお気の毒。
♥ 彼だけはちゃんとこうして肉体美も見せてくれるんですね。
♦ これは嘘っぽいが、ピクト人というのは謎に包まれた民族で、実はほとんど何もわかってないのだ。
♥ あの時代のスコットランドにいたのはケルト人だと思ってましたが。
♦ ピクト人もケルト人の系列らしいんだけどね。とにかくスパルタ人なんて目じゃない野蛮人だったのは確か。
♥ それは映画見ていてもよーくわかりました。でも北欧のバイキングとか見てても思うんだけど、天使みたいな顔して野蛮人というのがなんか不思議だ。
♦ それは我々が白人=文明人という図式に慣れてしまっているからで、北欧やイギリスで福祉制度やマナーが発達したのは、元が野蛮人だったからだと思ってるよ、私は。

♦ それで『300』との比較は?
♥ やっぱりなんか似ている。これもモノクロっぽい暗い色調で。
♦ 違うでしょ! こっちはスコットランドだから当たり前なの! それもアメリカ映画じゃ出ないマットな色調はまさにイギリスだと思ったよ。
♥ でも同じ役者でもこっちのほうが断然いいよね。
♦ うん。誰ひとりとして感情移入できなかった『300』の人物が紙芝居みたいだったのに、こっちはちゃんと人間という感じがしたもの。さすがに7人全部の名前までは覚えられなかったけど。
♥ じゃあ役者評先にやっちゃうか。

♦ まずは主演のマイケル・ファスベンダー
♥ 前から聞きたいと思ってたんだけど、なんでこの人に惚れたのかよくわからないんだけど。ハンサムなのは間違いないけど、あんまりおもしろみのない美形じゃない? イギリス人ですらないし。
♦ そりゃもちろん『プロメテウス』のロボットに惚れたからよ。
♥ その『プロメテウス』のリビュー書いてないからわからないんじゃん!
♦ だから好きすぎるものは書きづらくて。とりあえず、あのねっとりした色気と、裏腹なクールさかな。
♥ この人もガラス玉の目をしてますねえ。ジョナサン・リース・マイヤーズとか、キリアン・マーフィーとか、最近の私のアイドルはこれが決め手ね。
♦ アイルランド人ってところも。
♥ そういや、それで驚いたことがあるんだけど。この人って普段見るからにゲルマン顔じゃない。ところがこういう背景に置くと、ちゃんとアイルランド人に見えるんで驚いた。これぞ血の不思議。(マイケルは独愛の混血)
♦ ローマ人なんだけど。
♥ まあ、ローマ人にも見えなくもないが、阿部寛がローマ人できるなら誰でもできるだろという話(笑)。
♦ ローマはあらゆる人種がいたからね。たぶん日本人はいないが。
♥ でも私の感じでは、やはり野に置けって感じで、アイルランドの血が開花した感じ。
♦ 私はやっぱりゲルマン的な冷たさの方が好きだけどな。だから髪も金髪の方がいい。普段はもっと貴族的に見えるのに、ここではけっこう庶民的だし。
♥ それでもハンサムに違いないですがね。
♦ イギリス映画だから本気で汚すんだけど、どんなに汚れても元の美しさは隠せない。
♥ 恐ろしいほど整ってるのよね。だからその意味、おもしろみのない男だと思うんだけど。
♦ とりあえずハンサムならなんでもいいわ。背高いし(6フィート)体もすてきだし。
♥ 『300』の筋肉男の中にいるとあんまり筋肉ついてなくて細身に見えたんだけど、やっぱりすごい筋肉だわ。
♦ あの時の筋肉がまだ残ってるんじゃない?
♥ なんだ、そりゃ?

もう裸ん坊じゃない! ギリシア時代からはかなり進化したことがわかるローマのレギオン

♦ 将軍を演じたドミニク・ウェストは?(馬に乗ってるのが将軍とクイントゥス)
♥ マイケルと並んでクレジットされてるから、もっと大事な役柄なのかと思ったら、開始早々に殺されちゃって拍子抜けした。
♦ 確かに登場シーンは少ないけど、『300』と違って重厚な演技でしたよ。
♥ 『300』では何やってた人だっけ?
♦ レナちゃんに言い寄って殺される政治家。
♥ ああ、あのいやらしい男か。なんかキャラが違いすぎて。
♦ こちらの将軍は部下の信望も厚い人格者。
♥ なんか『300』のレオニダスとキャラかぶってない?
♦ ジェラルド・バトラーよりはこの人の方が好きだな。
♥ ややこしいことに、ローマ兵の中にレオニダスっていう名前のギリシア人がいるんだよね。こっちは若造だけど。
♦ 将軍はどっちかというとさんざんな目に遭うんだけど、最後まで矜持を保って男らしく死んでいった。

リアム・カニンガム

いつも渋いリアム・カニンガム

♥ それでドミニク・ウェストが死んじゃった後、マイケルの相棒になるのがリアム・カニンガムだった。
♦ この人はマジ好きなんでこれはうれしい誤算だった。
♥ GOTのダヴォスとどう違うのかわからないんだけど。
♦ この人は存在そのものがすばらしいんで、いつもこれでかまわない。今回もほんとステキだった。うっとり‥‥。
♥ ほんとアイルランド人好きねえ。

オルガ・キュリレンコ

いろいろとすさまじいオルガ・キュリレンコ

♦ ここらでヒロインのオルガ・キュリレンコについても。
♥ ヒロインていうか敵役だけどね。これがなんと『300<スリーハンドレッド> ~帝国の進撃~』のヒロインと丸かぶり。ゴス風の目のまわり真っ黒に塗ったメイクといい、クレージーな凶暴さといい、男勝りの強さといい‥‥
♦ 生い立ちまでそっくりじゃなかった? 家族を目の前で惨殺され、自分もレイプされて捨てられたところを拾われて、キリングマシーンとして育てられたっていう。
♥ さすがに『300』意識したのかな?
♦ 他がわりとシリアスなんで、彼女だけ浮いてる感じは否めない。
♥ こういう狂犬みたいな女嫌いだし。
♦ この人はちゃんとすれば美人なのに、よくまあこんな役受けたなあ
♥ いややっぱりブスだと思う。最近のモデルとかにはありがちなタイプの魅力的なブス。やっぱり役もらえるのはこっちのタイプなんだよなあ。だから演技力はあるのかも知れないけどこれはちょっとやり過ぎだと思った。ほんとに野蛮人そのもので、元の面影まったくないんだもの。
♦ 私はGOT、じゃなかった、原作の方だけど『氷と炎の歌』読んでから、この手の女剣士には懐疑的だからなあ。それこそブリエンヌみたいな怪物でない限り、女が男以上、どころか男と互角に戦えるってのは嘘くさい。
♥ まあ、ファンタジーだからね。『300』もこれも。
♦ ファンタジーは『氷と炎の歌』のほうだって! これや『300』はいちおう史実に基づいた史劇でしょうが。

妖精みたいなイモージェン・プーツ

妖精みたいなイモージェン・プーツ

♦ というわけで、オルガは狂犬担当、ロマンス担当はアリアンヌを演じたイモージェン・プーツ(Imogen Poots)となっています。
♥ ああ、よかった! 『帝国の進撃』みたいに、オルガとマイケルが野良犬みたいにサカるんじゃなくてって本当に良かった!
♦ そこらへんが品格の問題。
♥ でもこの人すごい美人じゃない? ケルト系にはときどきいるよねー。こういう森の妖精みたいな雰囲気の人
♦ イングランド人ですけど。妖精ならやっぱり北欧じゃない?
♥ いや北欧女はもっときつい。こういうかわいらしいのはやっぱりケルト人だ。むっちゃかわいいしきれい! 絶対好み! 『ハイランダー』の奥さんに似てない? 現代じゃなくて、過去のスコットランド編のほうの?
♦ ビーティー・エドニー(Beatie Edney)ね。往年の英国の美人女優シルヴィア・シムズの娘さん。でもこの子の方がずっと美人だよ。ビーティーは最近、現在の写真見てショック受けちゃったからな。
♥ えー、ショックって?
♦ 彼女もう50過ぎてて、『ポルダーク』っていうBBCの歴史ドラマに出てるんだけど、ブクブクに太ってすっごい汚いババアになっちゃっててショックを受けたの。
♥ そうなんだ‥‥
♦ そのくせ『ハイランダー』の男たち、クリストファー・ランベールやクランシー・ブラウンは、めっちゃ渋くてかっこいい爺さんになってるんだよ。不公平だと思わない?
♥ まあ、ビーティーちゃんは金髪巻毛補正がかなり入ってたからな。
♦ だいたいなんで関係ない『ハイランダー』の話してるのよ?
♥ 同じスコットランドだからかな。あと、最近友達にDVD貸したんで、ついまた見てしまった。

♥ じゃあ、話を戻すと、イモージェン・プーツはかわいいと。
♦ でもイギリス以外じゃ絶対見かけないタイプだなあ。
♥ 女の子はこうでなくっちゃ! フワフワしてお目々がぱっちりして。なのにハリウッドじゃ、アンジェリーナ・ジョリーみたいなクチビルお化けが受けるんだから。
♦ 悪いけど、この子も30年後がわかっちゃうんで、やっぱり今の美しさは若さの勝利で、年取ったらビーティー・エドニーみたいになるよ、きっと。英国美人で長持ちするのは、もっと貴族的で背が高くてシュッとした、いつも絶賛してるヴァネッサ・レッドグレイヴ一家みたいな人たちよ。
♥ いや、もちろんそれはわかってるけど、若さの儚さゆえの美しさを惜しむんじゃないか。
♦ あと、これ時代劇だからハマってるけど、この手の子って現代の服装すると、かわいいけどそこらのスーパーとかにいそうな女の子に見える。つまり映画女優としてのオーラがないんだよ。
♥ そこがいかにも素朴な村娘っぽくていいんだよ。
♦ だからやっぱり時代劇向きだって。とりあえず、『ハイランダー』の二人の上位互換って感じの、うっとりするほどの美男美女のカップルで、私は満足だけどね。

♥ それ以外の男は?
♦ あんまり記憶にない。
♥ 何それ? 『スターシップ・トゥルーパーズ2』のリビューで、脇役まで記憶に残るのがいい映画だとか言ってなかった?
♦ べつにそれほどいい映画だとは言ってないし。
♥ そうなの?
♦ 役者はいいし、脚本も無難に書けている。だけど無名なイギリス映画には実に多いんだけど、なんか全体に地味~で、盛り上がりに欠け、淡々と話が進むの。
♥ うーん、それは確かに言えるかな。けっこう波瀾万丈の物語なんですけどね。それにしちゃ淡々としてるよね。
♦ こういうのを見るたび、私はいつもバカにしてるけど、アメリカは映画作りに関しては一日の長があるなと思うよ。ほとんど話にならないようなアホな脚本でも、それなりに見せ場を(無理やり)作るもん。
♥ それはそうかもしれないけど、時代劇とファンタジーはイギリスでしょ。それだけは譲れない。
♦ と思ってたけど、『ゲーム・オブ・スローンズ』が出ちゃったからなあ。
♥ あれなんかキャストもスタッフもほとんどイギリス人じゃない。アメリカ資本というだけ。それにBBCの時代劇はどんな映画にもひけを取らないよ。
♦ そりゃー、あれだけ金と時間かけて撮ってるんだもん。時代劇ファンはアメリカだけでなく世界中にいるし、BBCのドラマは世界中で売れるからね。

♥ じゃあ良かったところは?
♦ これもイギリスならではで、『300』には無理だと思ったのはほんとらしさかな。時代考証的に正確っていうんじゃなく(たぶんそれは予算的にも無理だし、観客も求めてない)、もっともらしいっていうことだけど。
♥ 具体的に言うと?
♦ 要するにアメリカの時代劇はいつの時代だろうとなに人だろうと、みんながみんな現代アメリカ人のように考えて現代アメリカ人のように行動するんだよ。それでそもそも私がジョージ・R・R・マーティンの『氷と炎の歌』とかダン・シモンズの『イリアム』をすごいと思ったのは、登場人物の行動や心理があまりにも人間的でありながら、同時に我々現代人にとってはきわめて異質で理解しがたい部分があるってことなんだ。別の時代の別の人種というだけなのに、同じ人間とは信じられない感じで。
♥ ふーん? でもこれってそこまでいってなくない?
♦ でも『300』よりはましだよ。特にピクト人はほんとに未開な野蛮人だったことがよくわかるし。
♥ それはそうだけど、私はむしろ主人公のクイントゥスを初めとするローマ人が現代的すぎると思って見てたけど。
♦ ローマはこの時代にしては異様なほど洗練されていたんだよ。これぐらいの誇張は許されるよ。

♦ あとは言語ね。アメリカ映画だとギリシア人だろうとペルシア人だろうと、問答無用で現代英語をしゃべるけど、この映画のピクト人は全員スコティッシュ・ゲーリックをしゃべる
♥ ローマ人は英語なのに?
♦ それぐらい勘弁してやれよ! 実はピクト語はウェールズ語にいちばん近いらしいんだけど、ここでウェールズ語にしちゃうと、「スコットランドになぜウェールズ人が?」と観客が混乱するのでゲーリックにしたんだって。
♥ おもしろいよねえ。スコットランド人にしろウェールズ人にしろ、見た目で違いなんてほとんどわからないし、英語しゃべってるぶんには普通に「イギリス人」にしか見えないんだけど、母語でしゃべると途端に異人種って感じがひしひしとする。それもこの世界の人じゃないっていうか、ファンタジーの世界から抜け出てきた人みたいな。
♦ とにかくウェールズ語は頭おかしい。響きも綴りも異質すぎて。
♥ おかしいって言うなら北欧言語も相当おかしいよ。
♦ そう考えるとやっぱり南欧の言語って洗練されてるね。フランス語とかイタリア語とか、単に聞き慣れているというだけじゃなく、進んだ文明の言語って感じがする。
♥ 私はツバ飛ばしてしゃべるドイツ語も野蛮国の言葉に思えるけどな。
♦ あ、それわかる。言語学的に日本語にいちばん近い言語は韓国語で、実際、意味を完全に排除して音だけ聞くと(これ私の特技)そっくりに聞こえるんだけど、それでも日本人からすると、韓国語っていつも怒ってるみたいというか、大戦中の大本営放送みたいに聞こえる。
♥ あー、それ言うとやぶへびですよ。というのも、西洋人の耳からすると中国語あたりはまだ人間の言語に聞こえるけど、日本語なんて完全に宇宙語だから
♦ ウェールズ語よりはましだと思うがなあ。

♥ 話を映画に戻して『300』の戦闘シーンをさんざんバカにしたんですが、こっちは?
♦ 少なくともCGより良かろ?
♥ でもこれもエフェクトでごまかしてたよ。戦闘シーンだけ目の回るような細かいカット割りで。
♦ あの編集はけっこううまいじゃない。
♥ 要所要所でやるならいいけど、全部それだから目が回って困ったよ。

♦ それよりびっくりは暴力表現よ。『300』とかそのたぐいの映画が首ちょん切ったりしたがるのはわかるの。だけどこれって地味な歴史映画だと思ってたから、この暴力表現のすさまじさに驚いた。
♥ それがいいって言ってたじゃない。いかにも野蛮人らしいところが。だいたい暴力っていうか、スプラッタでしょ。
♦ 『300』とかだと、首がスポーンと飛ぶのが普通だけど、こっちはなまくらな剣でゴリゴリ切るんだよ。
♥ 実際の動画見るとスパッと切れますけどね。
♦ それは現代の剣だか斧だかを使った場合でしょ。この時代の技術じゃ無理。
♥ リアルじゃん。
♦ そんなところまでリアルさいらない。しかも切断面とかはっきり見せるし。しかもそれが1回や2回じゃなく毎回なんだよ!
♥ これ確かに低予算映画なんだけど、宝くじの売り上げの大半は作り物のリアルな生首や手足、それに大量の血糊を作るのに使われたと見るね。
♦ なんでそこまで? みんなそんなに首チョンパ好きなのか? そんなの今や実物がYouTubeで見られるっていうのに。
♥ リアルでいいじゃん。現代の常識では考えられない古代の戦争の野蛮さや残酷さはシモンズも書いてて、すごく納得できた。
♦ でも、その一方で変にのんびりしてるところがすごい変なんだけどね。とりあえず『300』、『帝国の進撃』、これと3本立て続けに見たら、イスラム国のビデオ編集者になった気分
♥ 私はこの残酷さはいやな気分はしなかったな。グロで脅かそうという感じじゃなく、むしろ素朴な感じで、ほんとに淡々とていねいに作ってるし撮ってるから。職人さん、ご苦労様、という感じで。
♦ なんだ、そりゃー!

♥ というわけで、イギリス映画特有の、ちょっとピントのずれた、のんびりした乗りにさえなじめれば、けっこう楽しめる映画でした。
♦ 全滅する話だし、最後もひどいんだけど、後味は悪くない。ハッピーエンドだし。
♥ あれ、ハッピーエンドか? 極秘情報持った奴が仲間を殺して逃亡したんだから、今度は当然ローマ軍の追っ手がかかるし、ピクト人の王はまだ生きてるから息子の復讐をあきらめるはずがないし、アリアンヌだって追放者の身で真っ先に疑われる立場じゃない。むしろ飛んで火に入る夏の虫なんじゃない?
♦ そういう状況でもニヤリと笑って飛び込んでいくのが英国人魂なのだ。
♥ ローマ人だってば!(笑) とにかくこのあとは二人で死の逃避行で『俺たちに明日はない』になるのが十分予想できます。
♦ それはそれですてきじゃん。私、この映画なーんか気になると思ってたんだけど、ダン・シモンズの『テラー』を思い出すからなんだよね。
♥ 関係なさ過ぎ! マーティンとシモンズ引き合いに出しすぎ!
♦ だってこの二人は今私がいちばん好きな作家だし。
♥ だったら書きなさいよ。
♦ 『テラー』は書き始めたんだけど挫折してる。とりあえず詳しくはそっちで書くから今はやめておくけど、足取りがつかめないままの謎の大量失踪事件主人公が普通なら助かるはずのない絶体絶命の状況でただひとり生き残る謎めいた現地女性との関係、といった共通点が気になって。
♥ 偶然とは思いますが、そういう話が好きなのはわかった。私の印象はもうちょっとなんとかすれば、すごいおもしろい映画になったのになあという感じ。
♦ ファスベンダーだけが目的で見たけど、思いの外よかったわ。

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