★【映画評】隠し砦の三悪人(1958)黒澤明監督特集4

(左から)六郎太、雪姫

(左から)三船敏郎、志村喬、上原美佐

♣ ああいう小難しい映画の後は、やっぱりこういう肩の凝らない娯楽作がいいね。
♥ そこでここはタイトルに合わせて三悪人で。
♠ 誰が悪人だ?
♣ 肩が凝らないのも当然。そもそもこれって、どう見ても芸術性と前衛性が勝ちすぎて、商業的に無理そうな『羅生門』を作らせてくれたお礼に、黒澤明が東宝に稼がせてあげるために100%エンターテインメントを目指して作った映画だもん。
♠ その両方を撮れるのが黒澤の偉大さでありまして。
♣ 『七人の侍』はその両方が融合してたからこそ不朽の名作なんだけどね、これは完全に娯楽に徹した痛快活劇
♥ こういうのはこういうのですごい好き。

♣ 『スター・ウォーズ』の原型ってことで有名だよね。
♠ ルーカスに影響与えたのは事実だけど、これだけじゃないでしょ。『七人の侍』やそれ以外の黒澤映画も入ってる。
♥ とりあえず、C3POとR2D2の凸凹コンビに、囚われのお姫様ってところだけかな?
♠ 囚われてないじゃん。そこじゃなくて、ラスト、立派な服着たお姫様に褒美をもらうところ。
♣ そこでストーリーです。

『隠し砦の三悪人』あらすじ

時は戦国時代。山名家との戦いに敗れ、城を捨てて落ちのびた秋月家の家臣の生き残りは、跡継ぎの雪姫(上原美佐)を守って隠し砦に隠れていた。お家再興のため、同盟国の早川領へ姫を逃がす計画を立てた侍大将の真壁六郎太(三船敏郎)は、軍資金を運ばせるため、一攫千金を夢見て早川から参戦し捕虜になっていた百姓の又七(藤原釜足)太平(千秋実)を金で釣って仲間にする。
身分を隠すため、唖のふりをした雪姫と木こりに変装した六郎太、又七と太平の四人は薪の中に隠した金塊を馬に積み、敵陣を突破して早川領に入ろうと試みる。
数々の危機を六郎太の機転で切り抜け、道中で泊まった旅籠では、女郎に売られようとしていた秋月出身の娘(樋口年子)を助け、仲間に加える。
途中、六郎太は宿敵にして良きライバルでもある山名家の侍大将、田所兵衛(藤田進)に捕まるが、兵衛は六郎太に一騎打ちを申し込み、それに破れて六郎太を放免してやる。
早川領に近付いたころ追っ手が迫り、又七と太平は逃げだし、残りの三人は敵に捕まってしまう。兵衛は六郎太を逃がした罪で折檻され、顔に大きな傷を負っていたが、処刑を目前にした雪姫の毅然とした態度に心動かされ、山名家を裏切って、共に早川領に逃亡する。彼らは無事逃げのび、又七と太平も城に呼び出されてほうびをもらって、めでたしめでたし。

C3POとR2D2、じゃなくて、太平(千秋実)と又七(藤原釜足)

♥ なんかあらすじにすると、ほんとたわいもない話だなあ。
♠ はいはい、それじゃどこがそんなにおもしろいのかどうぞ。
♣ まず又七と太平の凸凹コンビがとにかくおかしくて笑わせる。
♥ 初歩的だけどあの体格差だけでも笑えるよね。デブで大男の千秋実と、チビでやせっぽちの藤原釜足が並んでるだけでもおかしい。
♣ 中身はいっしょなんですけどね。二人とも見事にこすっからい百姓で。
♠ 黒澤はヒーローだけじゃなく、こういう庶民を描かせてもうまいんだよなあ。
♥ 凡庸な監督なら、こいつらがいい奴で、最後はみんなで力を合わせて‥‥となるはずだけど、そうはならないのがいいね。
♣ 最初は金に目がくらんでついてくるけど、ヤバいとなると真っ先に逃げ出す。これぞ百姓の生きる知恵って感じ。
♠ 友情ものと見せて、金がちらつくと途端に仲間割れするし(笑)。
♥ でもラストは六郎太にもらった金貨を譲り合ってるから、少しはましになったんじゃない?
♣ でも六郎太や雪姫に対する忠誠心も、ほんのわずかでも心が通い合うこともないんだよね。
♠ そりゃ、この人たち最後まで雪姫と六郎太の正体も知らないし。
♥ 正体知ったら絶対金欲しさに密告するのわかってるもんね。
♣ おかげでレイプされそうになったりしたのは誤算だろうが。

♥ 要するに善人ではないが、まったくの悪人でもないただの貧乏人。
♣ そうなるとタイトルの『隠し砦の三悪人』というのはおかしいんじゃない? 六郎太はまったく悪人じゃないし、この二人だって悪人とは言えない。
♠ えー、このタイトルについて黒澤や評論家がなんと言ってるかは知らないけど、この「悪人」というのはピカレスクの意味じゃないかと思うよ。
♣ 確かにこの百姓コンビは典型的なピカレスク・ヒーローだわね。六郎太だって目的達成のためには嘘をついたり人を殺したりしてるし。
♥ ほんと凡庸な監督なら、この二人は単なるコミック・リリーフになるはずだけど、ほとんど取るに足らない二人が何も知らずに最後まで重要な役を演じるところがおもしろいし、タイトルにも意味があると思うね。

六郎太を演じる三船敏郎

六郎太を演じる三船敏郎

♥ じゃあ、キャラクターの話のついでに六郎太を演じた三船敏郎について。
♠ 『七人の侍』や『羅生門』や三十郎ものではかっこいいけどコミカルなところやだらしないところも見せたけど、この真壁六郎太は正統派ヒーローと言っていいよね。強くて優しくて頼りがいがあって頭がいい、ひたすらかっこいい役。
♥ まこと女として生まれたからには、こういう男に守られたいね。
♣ それはいいけど、このあたりから三船もおっさん臭くなってきて、若い頃の色気は失せたかなあと思ってた。
♠ もちろんリアルタイムには見てないし、見たのも時系列順じゃないけどさ。

♥ ところが、今回見てみたらなんと、これがまたいいのよ。
♠ だから何がいいのか言いなさいって。
♥ 太腿。変装だかなんだか知らないけど、例によって胸むき出し太腿むき出しの衣装で肉体美を見せつける(笑)。
♠ そこかよ! 昔はもうちょっとまじめに映画見てたと思うが、なんか女も年取ると‥‥。
♣ 確かに言われてみれば、若い頃の三船は半裸の格好がデフォルトになってるね(笑)。
♠ しかし、『羅生門』は暑い時期の話で盗賊だから当然、『七人の侍』もキャラクター的に彼だけちゃんとした服を着てないのは当然だけど、いくら変装とは言え、一国の侍大将ともあろうものがあそこまでするか? なんというのか知らないが、足軽だってズボン的なもの履いてなかったか?
♥ それでも三船は太腿丸出しでないといけないんですよ。

♣ 普通、『隠し砦の三悪人』で太腿と言えば上原美佐の太腿なのに、この人たちは男の太腿しか見てないという(笑)
♥ だってあれだけ見せびらかされれば。
♠ ただ、「スタイルだって悪くない」なんて書いてたけど、やっぱり足は短いと思ったわ。それでもあの太腿とお尻はエロい。
♥ もう中年だってのにこのエロさ。変わってないわあ。
♠ ラストは立派な鎧装束で出てくるけど、やっぱり三船敏郎は裸ん坊のほうがぜんぜんいいよね。
♣ 『300』は(好きな役者ばかり出てくるのに)裸でバカにしてたのに、この態度の違い!
♠ だってあのブワッとした筋肉うざくない?
♥ 男性が外人女性のバスケットボールみたいなおっぱいを嫌うのと似たようなものかね?
♣ 筋肉もおっぱいも、もちろんないよりはある方がいいですけど。

♠ 太腿の話しかしてないが、もうひとつすごいと思ったのは馬術の才ね。私は昔からこの人はすごく乗れる人だとは思ってたけど、例のドキュメンタリー見てたら、野上照代が「日本でいちばんうまいのは三船さん」と言っていて、やっぱりと思った。
♣ その三船がスタントマンなしで西部劇顔負けのホーススタントを見せてくれるのも、私がこの映画を大好きな理由のひとつ。
♥ これができる人って日本映画界でひとりもいないでしょ
♠ 演技の鬼だからねえ。きっと乗馬も猛特訓したんだろうな。
♣ 具体的には、疾走する馬上で立ち上がり、太刀を頭上に振りかぶって敵兵を追い詰めるチェイスシーンと、地面に立ってる百姓娘を横を駆け抜けざまに片手で鞍の上に引き上げるところなんだけど。
♥ 西部劇じゃ見慣れたシーンだけど、日本映画で日本人がやってるのを見るとすげー!と思う。

迫力のチェイスシーン

迫力のチェイスシーン

♥ 立ち上がるのはデフォルトね。ギャロップで走る馬の背で座ってたら尻が死ぬ。
♠ でも『七人の侍』で、馬は膝で乗るもので手放しはデフォルトって書いたけど、さすがにギャロップで両手放しは怖すぎる。私なんかギャロップは野外でしか経験ないけど、馬のたてがみにしがみついてるだけで精一杯だった。
♥ 競馬の騎手はやってるよ。
♣ その状態で剣をふるって戦うという「演技をする」ことがすごいんですけどね。

♥ それより私がびっくりしたのは後者よ。あれほんとに特撮じゃないの? どーしてあんなことができるの?
♣ 解説しますと、あそこで三船が乗ってる馬って、本物の侍が乗ってた日本在来馬と違ってサラブレッドなのね。それでサラブレッドだと普通体高(背中の高さ)が170cmぐらいある。その高さまで体重50キロぐらいある女の子を片手だけで、それも通り過ぎる一瞬で引き上げるのって神業じゃない?
♠ たぶん女の子(上原美佐は乗馬をたたき込まれたと言うが、さすがにこれはスタントダブルでしょう)もタイミングを合わせてジャンプするのがコツだと思うけど、そう簡単にできるもんじゃないし、おそろしく危険な技だよね。
♥ 止まってる馬の背に(あぶみなしで)飛び乗るのだってむずかしいのに。
♣ それなら馬術部の男の子たちがやってた。女子はちょっと無理。
♥ うまく飛び乗れても、私なら確実に勢い余って向こう側に落っこちる。

♠ ただねえ、これ見て興奮したので、つい三船の出た西部劇『レッド・サン』を見ちゃったのね。YouTubeでさわりだけだけど。それでがっかりしたのは、西部劇のホーススタントのうまさ。三船は日本でいちばん乗馬がうまいと思うけど、向こうじゃエキストラのインディアンでもあれぐらいやるからねえ。
♣ 三船はいかにもがんばりましたって感じでやるじゃない。でも向こうのやつってほんと息をするように、自分の体の一部のように自然に馬を乗りこなすよね。まさに人馬一体のケンタウロスに見えてくる。
♥ バイクのハングオフを馬でやっちゃうもんな。それでもこけない。
♠ それってサーカスとかの馬の曲芸でもあるね。あと、ロデオの競技のひとつらしいけど、全速力で走ってきた馬を短時間で止める競技もびっくりするよ。ズザーッと尻餅ついてブレーキかけるんだよ。
♣ えー、ここでちょっと三船を弁護すると、彼の乗ってるのはサラブレッド、西部劇やロデオで使う馬はマスタングとかピントーとかの土着馬でしょう。ああいうのは同じ馬でも頑丈さと安定性が段違いなんだよ。私がオーストラリアで乗った馬もそうだった。サラブレッドだったら絶対足折るような体勢でもびくともしないし、絶対にこけない。
♥ サラブレッドなんて風が吹いてもこけるからなあ。

♥ しかし今気付いたけど、この人あの格好で馬乗ってるんだね。太腿すり切れないのか?
♠ 上原美佐もだよ。
♥ というのも私、高校生の時、阿蘇の草千里でミニスカで馬に乗るという無茶をやりまして、そういやあの時の格好は、この姫様とおんなじだ。それですごい気持ちよかったし、スカートは無事だったけど、鞍と擦れる太腿の部分のストッキングはボロボロになったという経験があるんだよ。伝線するってレベルじゃなく、文字通り粉々になったんで、ここまですごい摩擦なのかと驚いたわけ。
♣ 別にそれでも痛くはなかったから平気でしょ。むしろ生足の方がグリップが良くて乗りやすいんと違う?
♥ でもキュロットだって内股の部分は皮張ってあるぐらい擦れやすいところなのに。
♠ 腿毛はすり切れたでしょうな。

♠ というところで次は雪姫だ。
♥ 黒澤明は女が描けないとよく言われるし、実際、男優の魅力にくらべると、確かに彼のヒロインって魅力ないことが多いんだけど、このお姫様には心奪われました。
♠ 単に自分の好みってだけでしょ。
♥ 悪い? キリッとして、気が強そうで、気位の高そうな女の子
♣ 上原美佐はずぶの素人だったのをスカウトしてきたそうだけど、当時の女優にはこういうタイプがいなかったんでしょうね。
♥ 今で言ったらやっぱり柴咲コウのタイプ?
♠ 栗山千明かな。
♣ どっちにしろ顔と体で選んだということは明白だね。
♥ ここまで誇張したメイク(眉と目を極端につり上げたやつ)でなければ普通にすごい美人なのに。
♣ それはまあ時代劇の記号として。
♠ 三船とくらべても背は決して高くない(155cmぐらい?)のに、すらっと伸びた手足が美しいね。

♣ ほんとスタイルだけ見ると今どきの若い子みたいね。
♠ なんで昔の人はかっこ悪いと決めつける?
♣ だって他の女優さん見るとものすごくスタイル悪いじゃない。『生きる』の小田切みきなんて悲惨な体型だし、当時としては大きい方でスタイルいいと言われた京マチ子もかっこ悪いと思ったし。
♥ だいたい昔はポッチャリ型が好まれたのに、この子はほっそりしてるからじゃない?
♠ 私はこの年で今どきの大学生の誰より足長いよ。黒澤は明治男であの長身だよ。
♣ それもそうか。個人差ってこと?
♥ 私が思うに、昔はすごいノッポもいればチビもいる、すごい美人もいればブスもいるって感じで個性的だったけど、今の日本人は平均化されて、ほんとに可も不可もない判で押したような量産型が増えたように思う。
♠ 映画的にはそれはほんとにつまらんね。

これがその寝姿

これがその寝姿

♥ で、上原美佐の太腿ですが(笑)。
♣ そればっか!
♠ あの寝てるシーンは本当色っぽいと思う。無防備なのに挑発的で、思わずレイプしたくなる気持ちもわかる。
♥ でもあの百姓娘が体張って阻止するんだよね。
♣ あの子、雪姫に助けてもらったのにほとんど何も言わないので、なんなの?って思ってたんだけど、ちゃんと恩義は感じてたんだな。
♠ 最後敵に捕まった時も、「雪姫は私です」と言い張って姫を助けようとするところに泣いた。
♥ 百姓娘を演じた樋口年子がまたいいんだわ。雪姫とちょうど正反対の泥臭く垢抜けない感じがかわいくて、かえってそそる。百姓娘らしい不器用さと頑固さがいいし。

♥ ところで太腿と言えば、IMDbのフォーラム覗いたら、「なんでプリンセスがショートパンツ履いてるのか?」という議論が盛り上がってたんだけど(笑)。
♣ それは私も思った。いくら変装でもあの時代にホットパンツってありだったんかな?と思って。
♠ 確かに西洋では胸はとことん強調してギリギリまで見せるのに、足は絶対にタブーだから、向こうの人が驚くのはわかる。日本は逆に胸は隠すけど足はわりとオッケーな文化だからね。女子高生(これは今も私が高校生の時も同じだった)見ればわかるけど。
♣ でも黒澤明って時代考証にファナティックな監督じゃない。あの時代にあれってあり? 百姓娘でも田植えの時とか、裾まくりぐらいはするけど、あんなパンツははいてなかったような?
♠ 男装なのかな? 六郎太も同じ格好じゃないか。
♥ そっちも謎だと思われてる模様。
♠ なんにせよ、お姫様が家臣の前で胸や太腿ちらつかせるってのはないな。
♥ っていうか、あれって忍者映画やマンガに出てくるエロい「くのいち」のスタイルだし。
♣ 単に黒澤明が足フェチというだけなんでは?(笑)
♥ 上だって相当ヤバいよ。やけに胸のふくらみを強調した、ピッチピチのノースリーブのボディコン着物! あんな着物あるかー!
♠ 娯楽作となると、とことんお客を楽しませることに徹底する黒澤さん。監督の鑑じゃありませんか。

あらためてじっくり太腿をご覧ください。

あらためてじっくり太腿をご覧ください。志村喬の視線が心なしかいやらしい。

♠ 六郎太と変な恋愛関係がないところも気に入った。
♥ そりゃそうだよ。相手は一国のお姫様だよ。
♠ これがディズニーなら二人は最後に必ず結婚するよ。
♣ ていうか、結婚はしなくても恋人同士じゃなくちゃそもそも助けない。
♠ ディズニー・プリンセスはみんなビッチと。でもある意味恋愛関係以上だな。だって、雪姫逃がすために自分の16才の妹生贄にしたんだから。(落城したとき、六郎太は妹を雪姫の身代わりに立てて、その隙に姫を逃がしたが、妹は処刑される)
♣ いきなりあれはけっこう来ましたね。画面には出ないけど。
♥ 『ゲーム・オブ・スローンズ』見てるから別にそれぐらいじゃ驚かないが、娯楽活劇でそれ言うかなーとは思った。
♣ それに対する雪姫の反応はちょっとトンチンカンで(六郎太に向かって怒ってる)、やっぱり世間を知らない子供なんだなと。
♥ それを言ったら捕まって殺されるって時に、「(いろいろ体験できて)おもしろかった」とか言ってるのもバカ殿ならぬバカ姫っぽくてかわいい。
♣ だってまだ16才だよ!
♠ まあGOTのお姫様は実の兄を見殺しだからな。妹を見殺しぐらいなんでもない。

♣ 犠牲になったのは六郎太の妹だけじゃないよ。隠し砦に籠もってた「じい」(志村喬)や「ばあや」や他の人たちも、雪姫を逃がす時間稼ぎのためにあそこで全員玉砕したわけでしょ。
♥ それが忠臣ってものですから。封建制度の社会なら当然
♠ それで思い出したけど、これってコメディー部分をカットしてもっとダークでシリアスにすれば、日本版GOTになるね。ああー、黒澤明が不老不死でなかったのが悔やまれるわ。
♥ なんだ、そりゃ?
♣ ほんと。あの人にはもっともっと長生きしてもっといろんな映画作ってほしかった。
♠ ただ長生きだけじゃだめなんだよ。カラーになってからの黒澤はもう燃えかすだったから、この頃のまま年取ってれば‥‥
♥ あー、だめになった黒澤の話はまたあとのほうでするから今は言うな。

♠ でも素人の上原美枝を起用したことでデメリットもあった。確かにお顔はきれいだが、役者としてはものすごいダイコンなんだわ(笑)。
♥ そこをなんとかできなかったのかよー! 監督として!
♣ 唖設定にしたのはせめてもの配慮か。
♠ とにかくせりふ回しがどうにもならないんだわ。ひっくり返った金切り声で叫ぶだけで。あれ、演技指導ってしなかったのかよ?
♣ だいたいこの時代の映画は舞台っぽいオーバーな演技がデフォなんだけど、それにしても他の人たちはわりと普通にしゃべってるのに、彼女だけ異常だよね。
♥ 声だけ幼児だから、だだっ子がキーキー言ってるみたい。
♣ さっきのフォーラムでも、「お姫様はなんでいつも叫んでるんだ?」とか、あの声が気に触るから嫌いって人が多かった。外人は特に日本人より高い声を嫌うから、よけい耳障りに聞こえるかも。
♥ アニメ声が嫌われるのもそれ。
♣ 声に力が入らないから裏声になっちゃうんだと思うけど、ほんと黙ってくれてたほうがいい。
♠ 叱りつけるような高飛車なしゃべり方は高貴な生まれを強調するためだったんだろうけど、そんなのうまい女優なら普通にしゃべってもわかるしね。とにかく素人丸出し。
♥ さすがの黒澤も太腿に目がくらんだか(笑)。
♣ それは言える。雪姫嫌いって言ってる外人たちも「だが太腿はいい」ってやつばっかりだから(笑)。

♥ 上原美佐はこれでスターの仲間入りをしたんだけど、このあと数本の映画に出た後、「やっぱり自分には向いてない」と言って早めに引退してしまった。
♠ まあこの演技じゃやむを得ないわな。でも自分でわかってるだけいい。
♣ この何十年後かに黒澤や藤原釜足たちと座談会やってるのを見たけど、上品な奥さまになってたよ。
♥ 美人だっただけになあ。もったいなかった。

♥ あとあの棒っきれね。
♠ あれも海外のフォーラムじゃ謎扱いされてた。なんでいつも棒振り回してるのかと。
♣ 日本人だって謎だわ。
♠ 海外じゃ、「剣の代わりだろう」なんていうトンチンカンな推測もされてたけど。
♥ お姫様は剣なんか振り回さないって! いや、稽古ぐらいは受けてるだろうし、いざとなったらするだろうけど、ここはお姫様ってばれたらまずい状況なんだから。
♣ ただ父親に世継ぎとして男の子のように育てられたという話はあったよね。
♥ 『リボンの騎士』? 『ベルサイユのバラ』?
♠ 確かに時代を先取りしてたなあ。そういうとこ、黒澤はほんとすごいんだが。
♣ でも棒振り回す意味はわからない。
♥ 最初、錫(聖徳太子が手に持ってるあれ)のつもりかしらと思ったんだけど。
♠ だから戦国のお姫様は錫なんか持ってないって!
♥ わかった! あれは鞭のつもりなんだよ。乗馬が大好きという設定だし、棒鞭持ってたし。
♠ 鞭だな、うん。
♣ それでも馬に乗ってもいないのに、なんで鞭を振り回しているのかという疑問が残るけど。
♠ ただ個人的に、棒持って下郎どもをペシペシひっぱたいて回るのは気持ちよさそうだとは思った。
♣ 黒澤さんってもしかしてそういう趣味も‥‥
♥ 少なくともこれもディズニー・プリンセスはやらないなあ。

♣ あの立ち姿(つねに大股開いて仁王立ち)や座り方(いつでも大股開いてあぐら)も、男として育てられたという背景を表現したつもりなんだろうね。
♠ あれもやりすぎて滑稽だったな。
♥ そこまでしないと男女平等を表現できなかった悲しい時代の残滓と思えばいいよ。

♠ 田所兵衛(藤田進)は?
♥ うーん、甘過ぎ。っていうか、六郎太のこと好きすぎ。とても敵の大将とは思えない。
♣ やっぱり娯楽映画のせいか、こういうところはかなりご都合主義に逃げたよね。
♥ 彼もきっと太腿に悩殺されたんだよ。
♠ どっちの?

♠ とりあえずこの映画は外人は吹き替えで見たほうがいいかも。上原美佐のあの声は萎える。
♣ そう言えば『羅生門』のリビューで、三船敏郎が「あっはっは!」と笑うのが変だし気持ち悪いと書いてる日本人がいて‥‥。
♥ 確かに字の通り「あっはっは!」って言うんだよ(笑)。
♠ 他の映画でもそうだよ。こういうのが日本の芝居のお約束だったんだが。
♣ でも今の人が見れば確かに違和感おぼえるだろうなあと思った。同じ日本人が見てもそうなんだから、外人はもっと違和感すごいだろうと。
♥ じゃあ、日本語も吹き替えにしろと?
♣ 違う違う。日本語は英語などの言語とくらべて言葉の変遷が激しすぎて(話し言葉が特に)、こういう後世に残るものを作る人は大変だなあと思っただけ。
♥ そういえば2ちゃんねるの『生きる』スレで、トヨの「まったく、ギョだわ」と言う言い回しがいじられていた(笑)。
♣ トヨなんて、まさにあの当時の「今どきの女の子」だから、そういうしゃべり方になるんだろうけど、ああいう若者言葉とか俗語って、後から見ると痛いよね。
♠ でも変わらないことをよしとするヨーロッパと違って、日本にはそういう時代のズレや古くささを楽しむ文化もあるからなあ。
♥ ヨーロッパは本当に変わらないからそれができる。日本は明治維新と敗戦という2回の社会的動乱のおかげで、同じままでいたいと思ってもできなかったから。
♣ でも変わりすぎだよ。シェイクスピアの英語だって今聞いても(ある程度)理解できるのに、わずか50年でこれだけ古びちゃうのって。
♠ 古い新しいならまだいいが、要するに日本語がどんどん崩壊してるだけだからな。バカガキの話すグズグズの日本語聞いてると、これが将来デフォになるのかとぞっとする。
♥ と言いつつ、これ読めばわかるだろうけど、そういう奴らと毎日付き合ってるおかげでその口調が移ってしまう教師の悲しさ。
♠ 私は昔からこうだ!
♣ 今はネットの影響は受けてるかも。
♠ 学生の影響なんて受けてない!

♣ そしてこれも黒澤映画のトレードマークと言える、大胆な音楽とダンスシーン。もちろんあの火祭りのことなんだけど。
♠ 一行は祭りに使う薪を運ぶ村人たちを見て、これにまぎれて進もうと加わるんだけど、実は祭りの会場にも追っ手の見張りがいて、やむなく薪(金塊入り)を燃やして自分たちも踊りの輪に加わるはめになる。金は翌朝燃え跡から掘り出すんだけど。
♣ ここまで行くとほとんどミュージカルと言ってもいいような。
♠ これもさー、『七人の侍』の田植え歌ぐらいまではいいなと思ってたんだけど、ここまで行くともうぜんぜん日本の農民の祭りには見えないよな。ダンスの振り付けにしろ。
♥ 土人の踊り(笑)。
♠ ほんとそういう感じで、なんか日本とは別のパラレルワールドに迷い込んだような。『羅生門』の「ボレロ」も同じ印象だったけど、あれは確かにパラレルワールドみたいなもんだからいいんだ。山の中に入っていくこと自体が異界への入り口ともとれるし。でもこれはやり過ぎな印象。
♣ まあ楽しかったけどね。特にお姫様は楽しそうなのに、百姓コンビは(金が燃えちゃったと思って)泣きべそかきながら踊るところとか。

♥ これ見ててふと思ったんだけど、もしかして北野武の『座頭市』のタップダンスって黒澤へのオマージュ?
♠ としか思えないね。まあ、あそこまで非現実的だとどうでもいい気がするけど。黒澤オマージュというより、ボリウッド・オマージュだな。
♣ それにあっちは本編終了後のボーナストラックみたいなものだし。でもこっちはちゃんと物語に組み込まれているぶん、微妙に違和感が。
♥ 実はこういう和洋折衷の音楽好きなんですけどね。あと着物で踊るダンスも。

♥ というわけでやっぱりおもしろかったー!
♣ これの国内でのリメイクがあるらしいんだけどね。
♠ あーあーあー、聞こえない!
♥ 2008年の『隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS』ってやつ?
♣ とにかくあの肥臭い間抜け面がよかった百姓二人(+お姫様)を、全員アイドルが演じるってところでうんざりだよ。スチルを見ても、六郎太役の阿部寛も小ぎれいすぎオカマっぽすぎるが、他3人はどこからどう見てもホストにしか見えないし。(姫は男装という設定なので同じホスト頭)
♠ おまけに百姓のひとりとお姫様が恋に落ちるってなんだ、そりゃ? ありえねー!
♣ もちろん国内でも非難ごうごうで、映画も大コケしたからどうでもいいです。
♥ アイドルがこの国の映画文化を滅ぼしたってのがよくわかるね。
♠ 映画だけならいいけど、こいつら国を滅ぼすぞ。アイドルとキモオタは男も女も全員打ち首でいい。

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