【映画評】ラスト サムライ(2003)The Last Samurai

last_samurai_1♣ なんかもう今さらな映画ですみません。
♠ これを見なくちゃと思ったのは、『47 Ronin』をべたぼめしちゃった手前、あれのマジメ版(だと思っていた)この映画を見ないわけにはいかなくなってしまっただけ。
♣ あと、渡辺謙と真田広之が出てるのでやっぱり見たかったというだけ。

♣ 逆に見たくなかった理由は‥‥
♠ トム・クルーズ(笑)。
♣ マジ嫌いなんですってば。それが最近立て続けに彼の映画見たせいで、なんか免疫ができちゃって(笑)。
♠ あと、白人様が蛮族の文化に触れて、それに魅せられてしまい、彼らのために戦うっていう小説や映画は、それこそ大昔から山ほどあるからさ。『七人の侍』で書いたように実は時代劇やお侍さんが好きな私は、侍を汚されたくなかったから。
♣ ちなみに例によって、予備知識ゼロで見たので、どういう話かも知らなかった。

ラストサムライ
The Last Samurai
監督 エドワード・ズウィック
脚本 ジョン・ローガン
エドワード・ズウィック
マーシャル・ハースコビッツ
原案 ジョン・ローガン

配役

♠ 『将軍 Shogun』や『47 Ronin』以前の話だけど、ハリウッド映画における侍というと思い出すのは、三船敏郎がチャールズ・ブロンソンやアラン・ドロンと共演した『レッド・サン』(1971)。テレンス・ヤング監督にオールスター・キャストで大々的に宣伝されたけど、私は国辱ものだと思っていた。
♣ だから今ちょっと調べたら、日本で意外と評判がいいのでびっくりしたよ。
♠ 何がいやって、紋付き袴の侍が西部劇の中を歩いているだけで恥ずかしくて死にそう。この映画のトム・クルーズのスチルを見て、それと同じような感じがしたので。
♣ ちょうどあれの裏返しの話みたいね。でも少なくとも『47 Ronin』よりはまともな話だろうと思っていたんだが、見てびっくりだったのは‥‥。

♠ これって明治時代の話なのかよ!? 明治の日本で鎧武者が忍者軍団と戦うのかよ!
♣ あの格好だから、てっきり戦国時代(15~16世紀)、少なくとも『将軍 Shogun』の時代(17世紀)の話だとばっかり思ってた!
♠ 実際、17世紀ならこんなふうに思われていても不思議はないが、今の時代に日本てそこまで遅れた国だと思われてんのかよ!
♣ しかも渡辺謙演じる主人公の勝元盛次のモデルが西郷さんだと知って、すべてのやる気がへろへろと抜け落ちました。
♠ あとは終始ヘラヘラしながら見たので、ある意味楽だったけどね。

♠ しかしこれはひどい。『47 Ronin』なんか最初から「たたり神」が暴れてるし、そもそもの初めっから現実の日本を描く気は毛頭なく、ドラゴンやモンスターが跳梁するファンタジーだってことがはっきりしていたからいいが、こっちは一見まともな歴史劇風に作ってるから、よけいたちが悪い。
♣ いちおう作り手は「わかってやってるんだからね!」という言い訳はしているが‥‥
♠ 真田広之なんか、撮影中も日本人から見ておかしいところはずいぶん指摘して直させたって言ってたけど、直してこれなのかよ?という衝撃。
♣ 元はどれだけひどかったかわかるね。

♠ とにかくアタマっから風景がぜんぜん日本に見えなくておかしいから、ロケ地はどこだろう?とクレジットの最後までじっくり見たんだけど書いてなくて、IMDb読んだらニュージーランドだって!
♣ なんか富士山が変だと思ってたら、これ、ニュージーランドのタラナキ山。確かに富士山によく似てるが、ニュージーランドでロケしたのは、タラナキ山が富士山に似てるからだって、本末転倒してない?
♠ まあ、日本で時代劇撮るのはだんだんむずしくなってるからねえ。富士山が見えるところでいいロケ地がなかったんだろ。そういや、勝元の村が妙にホビット庄してて(苦笑)変だとは思ってたんだ。
♣ これもニュージーランドで撮ったから? ニュージーランドは大好きだし、トールキン映画のロケーションとしては、もうニュージーランド以外考えられないけど、だからってそこで侍映画撮ってほしくない。
♠ 日頃私がロケ地にとことんこだわるのも、景色だけじゃなく空気も映画では大事な要素だからなのに。
♣ 最初の森だけでも日本の森じゃないってことは一目でわかるよね。
♠ ていうか、森の木の違いなんてふだん気にしたこともないんだが、ここまで違うのかと自分でも驚いた。

くどいようですが、これでも明治の日本です。

くどいようですが、これでも明治の日本です。

♠ それでもまあ、こういう映画なんだからしょうがない。『47 Ronin』が受け入れられたんだからこれもイケるはずと思って見たんだよ。
♣ なのにくどいけど『47 Ronin』はあれだけ楽しめたのに、これはさっぱり。
♠ 理由はいろいろあるけど、理不尽すぎる! っていうか、ファンタジーでモンスターが人間と共存しているのはまったく理不尽じゃないが、こういう話で理屈に合わないのはやっぱり気になる。
♣ たとえば?
♠ たとえば、勝元が敵のトム・クルーズを助ける理由がどこにもない。しかも目の前で義弟を殺されたのを見て決めたんだぜ。
♣ 本人が冗談めかして言ってる(冗談のつもりだよね? マジじゃないよね?)ように、「英会話の練習相手がほしかった」から(笑)としか思えない。
♠ しかも、その捕虜を馬小屋につないでおくんじゃなくて、未亡人になった(小さい子供が二人いる)妹の家に住まわせるって、何考えてるの? (おたかさんとオルグレン両方に対する)いやがらせかよ?
♣ たかもいちおう文句は言うんだが、まるでどうでもいいことみたいにあしらわれるんだよね。彼女が夫の仇を討つとか、オルグレンが妹や子供に危害を加えるとかいうことは考えられないおとぎ話の世界なんだね。
♠ 一方のオルグレンは命令とはいえインディアンの村を全滅させたことで心に傷を負っている男で、この上こんなトラウマ与えたら本当におかしくなっちゃうんじゃないかと思ったら、ちゃっかり癒されて、ついでにたかといい雰囲気になってめでたしめでたし!

♣ いやめでたしじゃないでしょ。とにかくオルグレンが村に居着く中盤までは、てっきり『七人の侍』になるんだと思ってた。つまり、侍と百姓を西洋人と日本人に置き換えて、オルグレンが現代風の戦術を侍たちに教えて村を防衛する話かと。
♠ わざわざこんなところまで西洋人を連れてきて歓待してるってことは、勝元には何か目的があるとしか思えないもんね。
♣ ところがかんじんのオルグレンは教えるどころか、逆に侍たちに剣術や武士道を教わって感心しているありさま
♠ おまえ、何しにわざわざ日本まで来たんだよ?

♠ クロスカルチャーものというのは昔からあるジャンルで、『レッド・サン』では、肩肘張った三船と、いかにもアメリカンでいい加減なブロンソンの、まったく正反対で相容れないコンビがおもしろかった。
♣ それでもだんだんお互いを理解すると尊敬し合うようになるというのがバディーものの常套。
♠ だけどここのトム・クルーズは何を見ても目をキラッキラさせて夢中になってるんだから、そんなカルチャーギャップなんて存在しない。
♣ このトム・クルーズの態度って完全に観光客の目線なんだよ。絶対に19世紀の日本を訪れたアメリカ人の感覚じゃない。日本かぶれ、侍かぶれの現代アメリカ人が初めて本物を見てうっとりしてる感じ。

♠ そう思えばオルグレンが侍側についた理由はわからないでもないけど、勝元が天皇に忠誠を誓いながら、官軍と戦って死ぬことを望む理由は映画だけではさっぱりわからない。結局『300』だったとしか(笑)。
♣ いや、これ冗談じゃないよ。ちゃんとテルモピュライの戦いの話が引き合いに出されるから。それとカスター将軍の最後が。
♠ どっちもアホな指揮官のせいで部隊が絶滅した話じゃないか!
♣ その意味、合ってるけどね。

かっこいい真田広之

かっこいい真田広之

♣ まあ、そういう観光客目線で描かれているから、幸いというかなんというか、日本や侍は思いきり美化されていますけどね。
♠ そして侍たちは本当にかっこいい。特に渡辺謙と真田広之のかっこよさがあったから、文句言いながらも最後まで見てしまった。
♣ 特に真田は『47 Ronin』よりかっこよかった。『七人の侍』のあの剣豪みたいな感じで。
♠ 『七人の侍』は宮口精二があんまり強そうじゃなかったからなあ。それにくらべ真田さんはほんと強そうだし。
♣ やっぱり基本ができてる人は違うね。
♠ やせっぽちで小さいのが玉に瑕なんだが。
♣ でも実際の侍ってあんなもんだったんじゃない?
♠ 外人のサムライ観っていうと、そればっかり言われるのがムカついてさ。「確かに強いけど平均身長150cmだったんでしょう?」みたいな。
♣ おまえらだって中世の平均身長はそんなもんだろうが。

♠ だからでっかい渡辺謙が、トム・クルーズを見下ろす感じがすごい気分良くて、それがこの映画のいちばんの見所(笑)。
♣ 確かにハリウッド映画でこういう構図(日本人が白人を見下ろす)ってあまりなかったね。サムライ映画といえば黒澤明で、その黒澤があんなにでかいのに。
♠ でもさ、トム・クルーズのことさんざんバカにしてたけれど、もしかして偉いかもしれないと思い始めたよ。こんなチビ、ゲフン、恵まれない体格なのに、悪びれずに堂々と「かっこいい男」だけを演じ続ける根性は立派かも。
♣ 「演じようとしている」だけで、かっこいいとは言ってないけどね。意外と着物が似合うのも、チビで短足だからか?
♠ いやー、快感だね。もともとクルーズが嫌いで渡辺謙が好きな私は特に。
♣ 身長差だけじゃなく、顔も渡辺謙のほうが小さいんだよ! 頭でっかちだなと思ってたけど、本当だったんだ。
♠ ところで本日の発見。渡辺謙ってリアム・カニンガムに似てる! よく見ると顔の造作がそっくり。いつもながら、日本人と西洋人でも本当に似た人っているんだな。
♣ 私の好みがブレてないのもよくわかるね。

馬にまたがる謙さんとクルーズ。どちらがかっこいいかは言うまでもない。

馬にまたがる謙さんとクルーズ。どちらがかっこいいかは言うまでもない。

♣ で、かんじんの戦は?
♠ 登場シーンは実にかっこよかったんだがねえ。
♣ この時代背景に鎧武者だから、てっきり戦国時代の亡霊が怒って現れたのかと。
♠ もうそういう話にしちゃえばよかったのに。
♣ なのにできたものは『300』ですからね。
♠ 西部おたくの勝元はカスター将軍のファンらしいけど、オルグレンは「あいつはカスだ」と一蹴。
♣ いや、レオニダスも同じぐらいカスなんだけど。

♠ あとこれは『戦火の馬』でも書いたけど、大砲に馬で突っ込むのはやめろ!
♣ せっかくの騎馬軍団なのに、すぐに降りて戦うし。そりゃ現実はそうだったのかもしれないけど。
♠ もう迫力ある騎馬戦ができるような役者もいないしなあ。ああ、三船敏郎が恋しい(涙)。
♣ アップのシーンはほとんどが偽馬だしね。

♣ でもこういう総員玉砕ものって泣かせる話のはずなのに、まるで泣けなかった。
♠ これも『300』も、ちなみに『47 Ronin』でも泣きはしなかったけどね。
♣ 『七人の侍』なんか涙で画面が何度も見えなくなるのに。
♠ だから黒澤明とくらべてやるなよ! それはいくらなんでもむごすぎるよ。

♠ あとなんかいさぎよくないんだよね。
♣ 死んだかと思ったら生きててグダグダしゃべり続ける。
♠ 日本人ならきれいさっぱり散らんかい!
♣ なんかもう飽きたし、盛り上がらないから終わりにしましょう。結論としては?
♠ ふつー。時間の無駄とは思わないから、見ても損はないけど、人に勧められるような映画じゃないなー。渡辺謙と真田広之のファンだけが見るべき。

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