【映画評】椿三十郎(1962)黒澤明監督特集11

kurosawa-sanjuro1♣ 続いては『用心棒』の続編『椿三十郎』です。
♥ 完全な続編というわけでもないんだけどね、こっちはいちおう山本周五郎の原作(「日日平安」)があるから。
♣ なんでも原作は地味すぎるんで、むりやりキャラクターを入れ替えて『用心棒』の続編にしたみたいね。
♥ しかし山本周五郎好きだね。『赤ひげ』『どですかでん』と3本も撮ってる。
♣ 私は大嫌いなんだけど‥‥。
♥ 山本周五郎とドストエフスキーとシェイクスピアの接点ってなんだ? よくわからない趣味。

スタッフ

キャスト

 

♣ という口調でおわかりのように、この映画あんまり好きじゃないんだよね。
♥ 主人公は同じでも『用心棒』とはくらべものにならないっしょ。『用心棒』はすみからすみまでカチッとまとまった脚本だったけど、この脚本はなんかグズグズなのは、やっぱり無理やりお話を変えたせいか。

♥ だいたいあの「金魚のフン」がくっついてるから、三十郎がろくに動けないんだもん。
♣ あの若侍たちがいつも足を引っ張るしね。
♥ まあ、あれはギャグでやってるんだと思うけど。三十郎の言いつけを聞かないで二度失敗したから、今度はちゃんと椿の花が流れてくるまで待つんだと言って、三十郎が最大のピンチなのに動かない(笑)。
♣ あれは笑った。しかも隣にいるのに。
♥ でも9人もいる必要あったの? 若大将青大将以外は、ただぞろぞろくっついて歩いてるだけのような気がしたけど。

三船敏郎、田中邦衛、加山雄三

三船敏郎、田中邦衛、加山雄三

♥ というわけで、東宝期待の新人加山雄三田中邦衛が出てるんですが。
♣ 私は若大将シリーズはけっこう見てるんだよね(笑)。東宝の怪獣映画は欠かさず親に連れて行かれたし、併映がいつも若大将だったから。
♥ アイドルを準主役に抜擢したわけだよね。
♣ でもあの人たちはちゃんと芝居はできるんだね。
♥ そこが今どきのアイドルとの違い。
♣ で、若大将はどう思った?
♥ だから芝居は意外としっかりしてると。
♣ そうじゃなくて、子供の頃にリアルタイムで見た加山雄三をどう思ったかってこと。
♥ みごとなまでに何も。あの年頃は映画見ても、怪獣と馬以外は目に入らなかったし。
♣ 今と同じじゃないか! 三つ子の魂百までとはよく言ったもんだ。今でもモンスターと馬の映画は、人間のドラマの所は早送りして見ている(笑)。
♥ 最後の方は私は中学生になっていて、弟の付き合いで行ってただけだけど、それでも東宝映画は怪獣以外関心なかったな。洋画には熱中してたけど。
♣ 黒澤明が怪獣映画撮ってれば良かったのにね(爆笑)。
♥ いやー、東宝とはマジでこれだけ長い付き合いなんだから、ゴジラの一本ぐらい撮ってあげればよかったのに。

『用心棒』とはイメチェンのサラリーマン仲代達矢

『用心棒』とはイメチェンのサラリーマン仲代達矢

♥ それで仇役がまたも仲代達矢ってのはどういうことなんだろ?
♣ よほど気に入ってたとしか。ただ、わざとキャラクターはぜんぜん変えてあって‥‥。
♥ マフラーした侍よりはこっちのほうがましだ。こっちは普通に血も涙もない悪人という感じで。
♣ 別に悪人ではなくない? 上司が悪人というだけで、彼は職務を果たしてるだけでしょ?
♥ 確かにキャラ的には『用心棒』ほど印象に残らない、つまりこれも敵がしょぼい。
♣ 志村喬清水将夫もそれほど悪そうには見えないし。
♥ たかがヤクザ相手の『用心棒』より、確実に相手はスケールアップしてるはずなのに。
♣ エキストラの数が増えただけって印象。あと、三十郎の殺陣で斬られる人が増えた。

♥ 殺陣はかっこいいんだけどさ、スピードが速すぎてあっという間に終わっちゃってつまんない。
♣ 黒澤監督は従来のダンスの振り付けみたいな殺陣がいやで、リアリティーを追求したそうなんだけど‥‥。
♥ あれが!?
♣ ああ、その話はあとで。とりあえず、あれ以外の殺陣はいいでしょ。
♥ 私はダンスみたいな殺陣もわりと好きなんだけど。代わりに印象に残るのは若侍たちがちょこまか走り回ってるところばかりで。
♣ ねえ、あの走り方ってなんなの? 時代劇だとたいていそうだけど、腰を落としてすり足の変な走り方
♥ 袴はいてるとああなっちゃうんじゃないの? そうか、昔の三船敏郎があんな激しいアクションができたのは、ふんどし一丁だったからか。

♥ あと、うっとおしいのは城代家老・睦田(伊藤雄之助)の奥方(入江たか子)と娘(団令子)。
♣ 今で言う「天然」の母子なんだよね。
♥ 親父もだよ。一家そろって天然家族
♣ それで、育ちが良くて善良で、ぽーっとしてるようだけど、実は頭が切れて肝っ玉も据わっている‥‥
♥ ‥‥という設定なのはわかってるんだよ。だけど、演技や脚本に説得力がなくて、ただ単にうっとうしい連中になっちゃってる。
♣ よくあるパターンなんだけどね。か弱い女性と思わせておいて、「あら、ごめんあそばせ」で悪い奴らに一杯食わせるみたいなの。でもそういうシーンがなくて、若侍も含めてみんな三十郎におんぶにだっこだから、善玉は全員ただのお荷物で、うっとうしい連中ってことになっちゃう。
♥ 馬面の伊藤雄之助に「馬の方が丸顔」とかいうギャグ言わせる意味あんの?
♣ それ言ったら『用心棒』の「おチャケだよ」みたいなオヤジギャグも、そこらのオヤジ連中に何度聞かされたかわからない。
♥ なんかこのあたりから加齢臭が漂うようになってきたんだな。

♣ でも小林桂樹には笑ったでしょ。
♥ うん。彼は捕虜で、押し入れに閉じ込められていたはずなのに、いつの間にか勝手に出たり入ったりしてるのがおかしい。
♣ 話し終わると自分から押し入れに戻ってくし。
♥ それで悪人をやっつけてみんなが小躍りしている時は、いっしょになって喜んでるのがかわいい。
♣ いつのまにか加山雄三と手を取り合って踊ってて、気付いた加山雄三がゲッという顔するので笑った。

ラストのあれを貼ろうかと思ったが、さすがにかわいそうなのでかっこいい三船を

ラストのあれを貼ろうかと思ったが、さすがにかわいそうなのでかっこいい三十郎を

♥ 結局これって完全にコメディーなんだよね。コメディーとして見ればそこそこ笑えるし悪くないんじゃない?
♣ じゃあ、ラストのあれもギャグのつもりなんかい!
♥ というわけで、否応なしに触れずにはいられないラストのあれだ。悪い奴らは三十郎の活躍で一網打尽になるんだけど、仲代達矢だけが逃げ出して、この土地を去ろうとしている三十郎の前に立ちふさがる。それで見守る若侍たちの目の前で一騎打ちになるんだけど‥‥
♣ その前に長ーい間合いがあるんだよね。
♥ それで動いたと思った瞬間、ブッシャー!!!
♣ 別に血が出るのはいいんだけどさ、あんなホースみたいな散水(笑)。しかも斬ったところと違うところから血出てない?
♥ これも今の感覚だとギャグだよね、絶対。
♣ 公開当時、見た人はどう思ったのかが気になる。今だからギャグにしかならないけど。
♥ だって、ここまでほとんどコメディーだったのに、最後(文字通りの)スプラッタというのは、かえってひどすぎない?
♣ う~ん。これさえなけりゃ、そこそこいい映画だったのに。
♥ 『用心棒』も仲代達矢の変な死に方さえなけりゃと思ったよ。だからまたやった!と思っただけ。
♣ これもテレビシリーズかなんかで何十本とある『三十郎』シリーズのうちの一話と考えればぜんぜん悪くないけど、劇場映画、それも黒澤映画と思うと中味が薄すぎるわ。
♠ な~んか、この辺からちょっとずつ黒澤が壊れてきた感じがあったよね。

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