【書評】カズオ・イシグロにノーベル文学賞

このブログには時事的なことは原則として書かないんだけど、いちおう私は英文学屋なんで、ひとことだけ。とりあえず英国人がノーベル文学賞取ったのはうれしいし、それが日系人(と言っても、日本人として生まれた帰化人なので、単に親の片方が日本人という日系人よりは日本寄り)なのもうれしい。ひとまずおめでとうございます。ちなみに英文学の世界ではイシグロは押しも押されぬ大作家なので、ごく順当な結果。といちおうヨイショしておいてと‥‥。

順当じゃないのは、ノーベル文学賞って完全に政治的な賞で、マイノリティーや迫害されてる人や後進国の作家には出るけど、先進国の大作家にはもう出さないんだと思っていたのでちょっと驚いた。まあ、日系人と言うだけでマイノリティーだからいいのか。

ちなみに英国人作家のノーベル賞受賞者は、『ジャングル・ブック』のラドヤード・キプリング(1907)、『フォーサイト・サーガ』のジョン・ゴールズワージー(1932)、『荒地』のT・S・エリオット(1948)(アメリカ生まれ)、哲学者のバートランド・ラッセル(1950)、政治家のウィンストン・チャーチル(1953)、『蠅の王』のウィリアム・ゴールディング(1983)、『暗い河』のV・S・ナイポール(2001)(西インド諸島生まれ)、劇作家のハロルド・ピンター(2005)、『生存者の回想』のドリス・レッシングに次ぐ10人目。

さすがにたくさんいるわな。でも明らかに文学者じゃない人がもらっているのを見てもわかるように、人選はグズグズ。英国作家なら他にもっとあげるべき人がいるでしょうという感じ。
ナイポールはやっぱり移民の子というところで政治的思惑が感じられるし、ピンターも反戦活動家だし、レッシングは彼女自身はそうじゃないが、作品内容からウーマンリブに結びつけられてるし、やっぱり近年の受賞者は完全に政治で選ばれてるね。これがあるからノーベル文学賞はまったく評価していない。

いちおう私の専門は英国現代小説なんで、この中で該当するのはゴールディング、ナイポール、レッシングあたり。ゴールディングは手放しで大好き。レッシングもSFに関係しているのでやっぱり私のジャンルだし、ネイポールも普通におもしろかった。なんだ、政治がどうのこうの言ったってそれなりにいい作家ばかりじゃないか。
その中じゃイシグロがいちばん嫌いかも(笑)。私は最初の2、3冊読んで、明らかに趣味じゃないとわかったのでそれ以降読んでないから、もしかして後の作品はいいのかもしれないから話半分に聞いてほしいけど、彼が書いた日本はまったく日本に思えなくて明らかに「外人の考えた日本」という感じで、なんかうさん臭さ全開でとても読めなかった。逆に彼が書く英国はあまりにも伝統的な英国そのもので、悪くはないけど「なぜ日本人がこれを書かなければならないのか?」という違和感があった。

要するに何が言いたいかというと、生まれは日本で両親とも日本人でも、5才かそこらからイギリスで暮らしていれば完全にイギリス人になっちゃう、血よりも環境ということ。私は日本で生まれ育ってイギリスで暮らしたことはないけど、15才ぐらいから見るもの聴くものイギリス一辺倒なので、やっぱりイギリス人になっちゃうのはしょうがないんだなと、あらためて思った。
私がノーベル賞の選考委員だったとしても、やっぱり村上春樹よりはイシグロにあげるしね(笑)。

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