【映画評】ディアボロス/悪魔の扉(1997)The Devil’s Advocate

これは古いけどなんでか見逃していた映画。最愛のキアヌの主演作だから普通なら見逃すはずないんだが、なんでか勝手にもう見たと勘違いしていた。おそらくビデオを借りたのに時間がなくて見られなかったか、録画したのに見るのを忘れていたものと思われる。ストーリーも知っていると思っていたが、なんかの法廷映画と記憶がまざっていたみたいで思っていたのとぜんぜん違った。
なんでそれを今頃発掘したかというと、最近キアヌじゃなくてシャーリーズ・セロンに首ったけで、ご存じのように私は大女フェチなので、こんな印象的な女優さん見たら絶対記憶しているはずなのになぜか記憶がない。もしかしてまだ見てないんじゃないか?と気付いたので見てみたらやっぱり未見でした。

お話は『ローズマリーの赤ちゃん』(若い夫婦がニューヨークの豪華アパートに引っ越してくるという発端がそっくりだし、最初は親切な隣人たちと思えた人たちが実は悪魔の手先で、妻が夫に不安を訴えても相手にされないところとか、赤ちゃんがほしい若妻が悪魔に××されるというあたりもそっくり)+『コンスタンティン』(そもそもキアヌが主演の悪魔の話だし、キアヌが悪魔の裏をかくために××するというラストがそっくり)という感じで、他にも似たストーリーは腐るほどあるし、よくあるB級ホラーだと思ってた。まあそれでもキアヌとシャーリーズのラブシーンが見られて、ついでに悪魔も見られれば上等だと思って。

あらすじ(当然のようにネタバレあり)

さすがに古い映画なので若々しい。めがねキアヌもいいわ。

フロリダに住む若き弁護士ケヴィン・ロマックス(Keanu Reeves)は負け知らずで有名な敏腕弁護士。ケヴィンはジョン・ミルトン(Al Pacino)が経営するニューヨークの大手事務所にスカウトされ、妻のメアリ=アン(Charlize Theron)とともに、ミルトンが所有する豪華アパートに入居する。

ケヴィンは初仕事となる不気味なヴードゥー魔術師の事件を勝訴に持ち込んでミルトンの信頼を勝ち取り、次はミルトンの得意先の大物不動産業者カレン(Craig T. Nelson)が妻子を惨殺したとされる事件の弁護を任される。
その間、メアリ=アンはひとりで新居の内装や隣人たち(社宅のようなものなのでみんなミルトンの社員の妻)との付き合いに忙殺されるが、慣れない環境で悪戦苦闘する中、徐々に神経をむしばまれていく。しかし仕事に夢中のケヴィンは妻の訴えにまともに耳を貸さない。とうとう、隣人たちが皆悪魔だとか、ミルトンに強姦されたという異常な幻覚を見て泣き叫ぶメアリ=アンは精神病院に収容される。

その間、ケヴィンの身辺でも気味の悪い事件が相次ぐ。ケヴィンの出世をねたんで彼に食ってかかった同僚のエディ(Jeffrey Jones)がホームレスに殺される事件が起きるが、どうやらエディはミルトンが実は悪のシンジケートの親玉だということを告発しようとしていたらしい。またそれをケヴィンに打ち明けた司法局の男も直後に事故で死ぬ。
ケヴィンはまた、彼が弁護を引き受けて無罪にしてやったペドファイルの小学校教師が、子供を殺して捕まったことを知る。カレンも彼に嘘を付いており、実際に妻子を殺したばかりか、ただひとり生き残った義理の娘に良からぬ感情を抱いているらしい。
ケヴィンは病院にメアリ=アンを見舞いに行くが、彼女は彼の目の前で喉を掻き切って自殺する。さらにケヴィンの母親アリス(Judith Ivey)は、実はケヴィンはミルトンの子で、若かったアリスはミルトンに強姦されたのだという衝撃の告白をする。

ずっと自分がミルトンの手のひらで踊らされていたことを知ったケヴィンは、ミルトンのアパートで彼と対決する。ケヴィンはミルトンを撃つが、銃弾はなんの効果もなく、ミルトンはケヴィンが秘かに欲望を抱いていた会社の同僚クリスタベラ(Connie Nielsen)が実はケヴィンの異母姉であることを打ち明け、ケヴィンとクリスタベラに子供を作らせ、さらに彼ら家族で世界を支配しようという計画を話す。
ケヴィンはその計画に乗ったように見せかけるが、クリスタベラがケヴィンを迎え入れようとしたその瞬間、銃で自分の頭を撃ち抜く。激怒したミルトンは人間の姿をかなぐり捨てるが、その真の姿はケヴィンの顔をした天使である。
ここで突然時間が巻き戻され、場面は冒頭の小学校教師の裁判のシーンに戻る。ケヴィンは経歴を台無しにするのもかまわず、弁護を放棄してメアリ=アンとともに裁判所を出る。そこへひとりの記者が追いすがり、「良心ある弁護士」の記事を書きたいので取材に応じてほしいと頼む。ケヴィンは初め断ったが、すぐにこの記者を利用すればまだ勝ち目があると思い直して承諾する。夫婦が去ると記者の顔はミルトンに変わり、「虚栄か‥‥俺のいちばんのお気に入りの罪だ」とつぶやくところで終わり。

なんかあらすじだけ読むとつまらなそうとしか思わないかも。実際、私も最初の40分ぐらいはかなり退屈した。理由は最大の目的だったシャーリーズ・セロンが思ったほど魅力的じゃなかったこと。

イチャイチャするのはいいが、そのヘアスタイルはないでしょう、奥様

劇中でアル・パチーノにも言われてたが、この髪型はないだろう!というチリチリのおばさんパーマ! なんか顔も今よりふっくらしてたし、あのクールなシャーリーズがこれ?って感じ。でもこれが役作りだってわかるのは、いきなり髪を切り、パーマもやめて、黒く染めて(劇中では染めるのをやめて)から。
なるほどあの垢抜けない髪型は単に田舎の(私にはアメリカ全体が壮大な田舎なんだが)垢抜けない主婦を表していただけか。あと、この夫婦がやたら軽いノリでベタベタいちゃついてるのもイライラさせられた。でもだんだん悪魔が正体を現してくるとわかるのだが、これって要するに後半との落差を際立たせるための演出だったのね。
メアリ=アンのダサさと鈍くささにイライラしたけど、華やかな都会暮らしになじめず神経すり減らすという設定上、彼女が最初からおしゃれで颯爽としていたらおかしいし。まあ、夫のキアヌの方はいつも通りおしゃれで颯爽しているからよけい落差が気になったんだが。
そのキアヌはいつも通りのダークスーツにタイ‥‥と思ったが、よく見ると最初の方では明るい色のスーツしか着てなかったのに、だんだんスーツの色が濃くなって、最後は黒いスーツになるという仕掛けもあって手が込んでる。
彼がメガネをかけてる映画は数えるほどしかないんだが、いかにも知的に見えてメガネも似合うわー。

幻覚を見るメアリ=アン

しかし、魅力がないなんて書いちゃったが、この映画でいちばん輝いていたのはシャーリーズ・セロンである。とりわけ、後半の正気を失っていくあたりの演技は鬼気迫るものがある。大胆なセックスシーンもこなしたし、狂う場面では傷だらけの体でフル・フロンタル・ヌードも披露。
顔は今の方がきれいになったと思うが、さすがに若かったせいか体は非の打ち所なくきれいだわー!(写真載せようと思ったが、すべてモロ出しで仁王立ちなんで、まずいかと思ってやめた) 体はこの人がいちばん好き。うちの人たち(Redgrave一族のこと)はみんなおっぱいないから。なんていうかハリウッド女優にありがちな人工的な感じ(おっぱいボイーン、お尻キュッて感じ)がなく、モデル出身なのに決して細くはなくてがっしりして、お肉もほどほどについてる――つまり普通の人っぽい体型なのに、すっごいスタイルよく見えるのは本当に死ぬほどプロポーションがいいからだな。

モデル出身ということでつい軽く見ちゃうが、この人は『モンスター』みたいなのもできるだけあって、真の演技派なんだよな。ここでも半狂乱で涙と鼻水にまみれた狂い顔を見せてくれる。これだけの美人なのにスッピンのブス顔をさらすことを厭わないのはえらいと思う。いや、逆にこれだけの美人だから何見られても平気だとも言えるか。それってつまり顔も体もパーフェクトってことじゃん!

それにくらべ、キアヌはいつも通りのキアヌ、としか言いようのない相変わらずのでくのぼう演技。彼はこれでいい。でくのぼうだけど、なんでかそれがかっこいいから。ただ、さすがにこの頃は若かった。さしものキアヌもいささかトウが立ってきた最近の顔を見慣れていたから、やっぱりきれいなキアヌを見るとドキドキする。
でもその二人の赤裸々なセックスシーンだからよけい興奮するかというとそうでもないんだな。なんか好きな人同士だと、かえって見てはいけないものを見てしまったような気がして。そういや(相手役のキャリー=アン・モスが死ぬほど好きだったにも関わらず)『マトリックス』のラブシーンもうんざりしたっけ。

そういやシャーリーズとキアヌって、一時付き合っているという噂もあったんだよね。残念ながら噂だけだったけど。本当ならこういう人たちにいっしょになってほしかった。キアヌも私的にはパーフェクト・ガイなんで、この二人の子供ならどんなにか!と思ったから。

とりあえずこの二人はいい。脇役もみんないい。許せないのはアル・パチーノだけ!

なんでかこの人、人気あるんだよねえ。レビューでもパチーノがいいとみんな言ってるし。でも私はだめ。この手のアクターズ・スタジオ系のハリウッド役者は全部だめ。とにかく芝居が大仰で、臭すぎるし、うざすぎて。
パチーノも『ゴッドファーザー』シリーズはまだ初々しくて良かった。というか『狼たちの午後』までの作品はどれも良かったし、『クルージング』『スカーフェイス』はあまりにぶっ飛んでる役柄だったので許した。でもその後はずっと敬して遠ざけてきたというのは、ジャック・ニコルソンとか、ダスティン・ホフマンとかのあの系統の役者と同じ。
なんでだろうねえ。英国役者は年取るとみんな枯れてすごい味が出てくるのに、ハリウッド役者は猛烈に臭くなるのは。やっぱりアクターズ・スタジオが悪いんだと思うが。

それでここでもあの濃さと下品さとうっとうしさは全開。うざい、ひたすらうざくて、早く悪魔祓いしてくれ!と叫びたくなるぐらい。
だいたい名前がジョン・ミルトン(『失楽園』の作者)ってことは、こいつルシファーでしょうが! こんな不細工な堕天使があってたまるか! もちろん悪魔は何にでも化けられるので、最後キアヌの顔になったってことは、あれが「素顔」なのか? だったらなんでよりによってあんな不細工なチビのジジイに化けてるのか。もうどうでもいいけど。
というわけで、「悪魔が魅力的だからおもしろい」という世評と逆に、私は悪魔がうざすぎて耐えられないという理由で評価を下げたい。

ケヴィンは生徒にいたずらしたとして告訴された小学校教師を弁護していたとき、教師が明らかに小児性愛者であることに嫌悪を抱きながらも、自分の不敗記録を優先して教師を無罪にしてしまう。これが彼の最大の悪徳=vanityである。そこをミルトンにつけ込まれたわけだが、でも最後の最後で自殺という形で「父」に背いたにもかかわらず、結局、「リプレイ」でもミルトンの罠にはまってしまう。
この映画のストーリーが、おもしろいんだけどなんだか物足りなく感じるのって、このケヴィンのふがいなさにある。まあ、相手が悪魔じゃ人間に勝ち目があるはずがないんだが。その意味れっきとしたB級映画の『コンスタンティン』は最後にまんまと悪魔を出し抜くというカタルシスがあったので、妙に気持ちが良かった。

というわけで、見所がないわけじゃないし、ていねいに作られたいい映画だとは思うけど、私の映画じゃないかなって感じ。
監督のテイラー・ハックフォード(アメリカ人)は私の好きな英国女優ヘレン・ミレンの夫で、これまでの監督作を見ると、『愛と青春の旅だち』、『カリブの熱い夜』、『ホワイトナイツ』など、しっかりした作品ばかり作ってる人だから才能はあるんだろうが、やっぱりぜんぜん私のジャンルじゃないから、気に入らなくても当然だったかも。

 

キアヌ4本立て もくじ

【映画評】ディアボロス/悪魔の扉(1997)The Devil’s Advocate

★【映画評】ジョン・ウィック (2014)John Wick

【映画評】エクスポーズ 暗闇の迷宮(2015)Exposed

★★【映画評】イーライ・ロス『ノック・ノック』Knock Knock(2015)

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