★【映画評】ジョン・ウィック (2014)John Wick

 

Directors: Chad Stahelski, David Leitch (uncredited)
Writer: Derek Kolstad
Stars: Keanu Reeves, Michael Nyqvist, Alfie Allen

これは『47 Ronin』に続くキアヌの主演映画‥‥と書こうとして、念のためチェックしたら、間に『ファイティング・タイガー』という米中合作のカンフー映画!が入ってるのね。しかも初監督作かよ!!! なんだ、こりゃー? 『47 Ronin』みたいなキワモノ映画に出るだけじゃまだ足りないのか! でもよく見ると主演は中国人なので、少なくとも主演作としては『47 Ronin』 の次で間違ってはいなかった。しかしほんっとうにマジでカンフーとか好きなのか? 確かに半分中国人だけど‥‥。
とにかくこの映画はキアヌとしては久々のヒット作と言われ、すぐに続編が作られたところをみても実際に当たったんだろう。私は最初から眉にツバつけてたけどね。

キアヌの役柄は引退した殺し屋ジョン・ウィック。これだけ年取ってもまだアクションスターを演じるのはトム・クルーズ同様たいしたものだと思う反面、他にないのかという気もする。特にこの人は渋いドラマもうまいと思うので。ハリウッド版『アキラ』を年だからと言って蹴ったというけど、ハリウッドじゃ原作の子供の主人公を大人に変えて映画化するのなんて普通だし、大人げないという意味では同じだと思うけど。これならまだ『アキラ』のほうが良かったな。

お話はロシア・マフィアの親分ヴィゴ(ミカエル・ニクヴィスト)のドラ息子ヨセフ(アルフィー・アレン)に愛車を盗まれ、愛犬を殺されたジョン・ウィックが復讐に立ち上がる!というもの。

ああ~?と思うよね。「車と犬ごときで?」とロシア人たちも言ってたが、命を賭けた復讐の動機としてあまりにも軽すぎないか? いちおう犬は病気で亡くなった奥さんがプレゼントしてくれたものという言い訳は付いているが、私はてっきり奥さんを殺された復讐かと思ってたよ。なんかこの出だしからして、なんとも言えない小物臭が漂って、いやな予感がしてたんだが。
というのも、足を洗ってカタギになった殺し屋が、愛する者を殺されて再び銃を取る、というのは、古今東西腐るほどあるこの手の映画の定番だからで、その中でもいちばんバカらしい話じゃないか。動物好きとして気持ちはわかるけどね。それでも犬一匹とマフィアの組織を壊滅させるのとでは釣り合わなすぎるし、痛い人としか見えん。
そんなわけで似てる映画は星の数ほどあるんだが、中でもロシア・マフィアというところと、愛する者のためにうんぬんというところで、私の頭の中ではクロネンバーグがヴィゴ・モーテンセンを主役にして撮った『ヒストリー・オブ・バイオレンス』と『イースタン・プロミス』(リビューは「ひとりごと日記」のほうにあるので探してください。リンク張るのが面倒なので)を混ぜ合わせたみたいとしか思えず、なんかパクリみたいな気がしてくる。名前もヴィゴだし(笑)(ヴィゴも東欧系なのでこの名前)

だから、いかにもハリウッド風の「痛くない」暴力シーンなんて、暴力を芸術の域にまで高めたクロネンバーグを見たあとでは笑っちゃうだけ。殴ってるふりをしてるのが見え見えだったり、瀕死の重傷の人が元気に走り回ったり、至近距離を頭を撃たれても、死体はきれいなままで、クロネンバーグみたいに顔が吹っ飛んだりはしない。
ましてこの手の復讐談の傑作であるクリント・イーストウッドの『許されざる者』とか、無名だけど私が大好きな『キス☆キス☆バン☆バン』を思い出すと、見始めてすぐにしょうもないなあとは思ったけど、とりあえずキアヌが主役だから我慢して見た。

確かこの作品の前のオフのときだったか、ブクブクに太った写真をパパラッチされて、この人ももうだめかと思ったんだが、ここまで持ち直したことに感心する。顔だって、売りだった「永遠の若さ」にもかなり陰りは出てきたが、それでもまだこれだけハンサムだし、背高いし、美声に変わりはないし、まだまだいける。

他の役者もすごくいい。マフィアのボスを演じたミカエル・ニクヴィスト『ミレニアム』(『ドラゴン・タトゥーの女』はこれのハリウッド版リメイク)で主人公を演じたスウェーデンの人気俳優で、渋いすてきなおじさまでこっちも好み! だけどおじさまなんて言っちゃったけど、実際はキアヌとたいして年変わらんのだろうなと思っていま調べたら、今年亡くなっていた。56才なんて早すぎる! ご冥福を祈ります。でもマジでキアヌ(今年53才)と年変わらなかった! やっぱりあの人は異常だわ。
だがこの人も役者は好きなんだけど、役柄はヘボい。ジョン・ウィックに「息子の居場所を教えないと殺す」と脅されるとあっさり教えちゃうような腑抜けもいいとこのおっさんだし。

マフィアのボス役のミカエル・ニクヴィストとボンクラ息子役のアルフィー・アレン

そのバカ息子ヨセフにアルフィー・アレン。そう、『ゲーム・オブ・スローンズ』のシオン・グレイジョイである。GOTでもまさに人間のクズ(虚勢だけの卑劣な青二才)という男を演じていたが、このキャラもまるで同じ(笑)。はっきり言ってぴったりでステキ!(笑)
GOTのリビューも途中で中断している(いつもの好きすぎて書けないのパターンなので、ほとぼりが冷めるのを待っている)が、シオンはあまりにダメ男すぎ、みじめすぎて、かえって同情が湧いて好きになってしまった(笑)。アルフィー・アレン(イギリス人)のルックスもすごい好きだし。

さらに、ヴィゴからジョン・ウィック殺害を命じられる殺し屋マーカスにウィレム・デフォー。彼はジョンの親友でもある。普通なら友情を取るか非情なプロに徹するかの葛藤でで悩むところだが、脚本がアホなので、なんのためらいもなくジョンに味方し、怒ったヴィゴにあっさり殺される役。
役者は私の好みが4枚も揃ったのにねえ。これだけいい役者集めてこれはないわ。あと、ちょい役だけど、ホテルのフロントの黒人とか、「クリーナー」の爺さんとか、すごい味のあるキャラクターで良かった。他のキャストも同様。宝の持ち腐れとはこのことだ。

というわけで役者はいい。カメラとかもすごくおしゃれでいい。だめなのは脚本だけ! 最初の犬殺しだけでわかったが、クライマックスのラスボス戦はぐだぐだだし、脚本はまあ、隅から隅までだめです。
脚本を突っつき始めるときりがないからこれだけにしておくけど、ジョンが泊まっているホテルは殺し屋御用達(ここからすでに笑うところですよ)のホテルで、このホテル内の殺しは御法度なんだが、この掟を無視してジョンを襲ったマフィアの刺客は、ホテルが差し向けた殺し屋集団に殺される。どう考えてもホテルに刃向かう方がマフィアに刃向かうよりヤバい(笑)。これなら殺し屋雇うよりホテルマン雇えや(笑)。

あと、とどめになったのが、ラスト、ボロボロになったが生き延びたジョンは、薬を求めて押し入った獣医のところで、ケージに入れられた犬に勝手にリードを付けて連れ帰ってしまう! おい! おまえ自分が犬を殺されてどれだけ傷ついたか忘れたのかよ? 他人の犬を盗んで飼い主がどう思うか考えないのか?
もしかして獣医じゃなくて保護施設?とも思って、IMDbで調べたらやっぱりドッグ・シェルターと書いてあったが、それにしたって勝手に連れ出しちゃだめだろ! 日本みたいに里親にうるさく注文付けるところだったら、職業殺し屋、とばっちりで犬が殺される可能性大というだけではねられると思う(笑)。
しかもなんでこの犬なのかもわからない。犬種が同じってわけでもなく、前の犬はビーグル、こっちはピットブルだし。もしかしてこうやって毎回飼い犬が変わるシリーズなのか?

とりあえずキアヌはこれならまだイケる

いったい監督誰だ?と思って調べたら、Chad Stahelskiという聞いたこともない人。どうやら長年スタントマンやってた人の初監督作らしい。さらになぜかクレジットのない共同監督(David Leitch)がいて、この人もスタントマン? んんん? どういうこと? 脳筋ひとりじゃ映画にならなかったから、もうひとり付けたとか? バカが二人いてもバカに変わりはないと思うんですがね。
見終わって思ったのは、クロネンバーグはすっかり衰えたと思ってたし、あの二作ははっきり言ってつまらないと思ってたけど、それでも一流のフィルムメイカーの作った映画とゴミカス映画とではここまで違うのか、ということ。まあ、それでもたぶん2も見ちゃうけどね。キアヌだから。

 

キアヌ4本立て もくじ

【映画評】ディアボロス/悪魔の扉(1997)The Devil’s Advocate

★【映画評】ジョン・ウィック (2014)John Wick

【映画評】エクスポーズ 暗闇の迷宮(2015)Exposed

★★【映画評】イーライ・ロス『ノック・ノック』Knock Knock(2015)

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