★【映画評】山岳遭難映画二本立て バルタザール・コルマウクル『エベレスト 3D』(2015)Everest

登山なんて大っ嫌いで、元々は単に人が悲惨な死に方するのを見るのが好き、という不謹慎な動機から見てるくせに、途中からなぜか観光登山に対する義憤に駆られ、最後はなんかディープな暗い話になる。自分で書いててもよくわけわからん。たぶん登山好きは怒るだろうけど、ある意味自分は登らないからこそ言える話だな。
同様に、映画は酷評の嵐だが、それなりにいろいろ考えさせられるという意味では収穫の多い映画だった。

なにしろ大量遭難事件と聞いていたから、この人たち全員死亡するものと思ってたのよ。そしたら、少なくとも映画で死亡確認できたのはたったの5名! 200人が死んだ八甲田山とくらべてあまりにしょぼくない、これ?

金と権力を持ったアメリカ人のためには人命も危険にさらすが、貧乏人や日本人は見殺しですか。

衛星電話で妻に最後の別れを告げるシーンもいらなかったなあ。これこそ現代ならではの技術だが、登山の良さは下界からは完全に切り離されているという孤独感だし、いつでも妻とおしゃべりできる状況ではやっぱり悲壮感がない。

富士山やエベレストみたいな聖地ぐらいは手つかずのまま残してほしい。観光客や一部のアドレナリン・ジャンキーのために美しい山が荒らされるのはまっぴらだ。

登山家が山を愛するのは自然を愛するからに違いないが、山に登るという行為自体が自然を汚す行為に他ならないし。

とりあえずこの2本の映画を見て学んだこと。

人は寒いところでは死ぬ(八甲田山)
人は高いところでは死ぬ(エベレスト)

でも同じように(足を折るとかして)身動きできず、助けも来ない状況を想定したら、私は灼熱の砂漠で死ぬよりやっぱり雪山で死にたい。


『八甲田山』がなんとなく食い足りなかったので、他にも遭難映画が見たくなって見たのがこれ。こちらはエベレスト登山史上最大の悲劇【注】だそうで、こっちの方がスケールもでかくておもしろそうだし、最新技術を駆使した映像も見応えがありそうだと思って。

【注】1996年5月に嵐のせいで8人の登山者が死亡した。そのシーズン中に合計12人が死亡したので最大と言われていたが、この記録は2014年に雪崩で16名が死亡する事故が起きて書き換えられた。

先にどうでもいい話だが、映画の邦題が『エベレスト 3D』というマヌケな題になったのは、おそらくすでに『エベレスト』という題の映画があるので区別するためだろう。山岳映画を3Dにするのはいいアイディアで、それは私もちょっと見たかった。

ところでエベレスト(Everest)山って、私は古い人間だからもちろん「エベレスト」の名前で育ったんだけど、あるときから日本では「チョモランマ」に名称が変わって、なるほどエベレスト(植民地時代のインドの長官ジョージ・エヴェレストから取られた)は英国人の名前だから、現地主義で変えたんだなと納得したのに、最近ではまたエベレストに戻ったのはどういうわけだ?
いちおうWikipediaで調べたら、中国とチベットが「チョモランマ」、ネパールが「サガルマータ」、インドが「エベレスト」を正式名称としているそうで、なんか紛争地域みたいな扱いなのかしら? 私はもちろん英国式だからいいけどね。

ついでにどうでもいい話を続けると、この映画のプロデューサーはティム・ベヴァン(だからビーヴァンじゃねーっつうの!)。うちのジョエリーの元夫ね。彼もニュージーランド人だし、主人公もニュージーランド人だし、エベレストといえばエドモンド・ヒラリーがニュージーランド人だし(ただし彼は英国隊の一員として登頂した)、ベヴァンくんが出てくるのを予想していたらやっぱりだった。

ちなみに1996年に起きたこの事件は、日本人女性がメンバーに含まれていたこともあって日本でも大きく報道された。(が、もちろん記憶力のない私はディテールは忘れてた)

メンバーが集合して山に登り始めるまでの前半が、長いとか退屈だとか言う人が多いようだが、私はこの部分はめっちゃ興奮した。
『八甲田山』と違ってパーティーの人数が少ないので、ひとりひとりの事情もわかるし、雪まみれになっていなくても同じような顔で同じ軍服で見分けが付かない『八甲田山』とくらべて、外人はやっぱりキャラが立っていて個性がはっきりしているし、真っ白な雪の上でカラフルなヤッケがきれいだし、人物を見分ける意味でも便利。何より、人の見分けが付くと、「この人たちがみんな死ぬんだー」と思ってドキドキする。

カトマンズの町を行くベック・ウェザーズ(ジョシュ・ブローリン)

麓のカトマンズの町とかも、私は一生行くことはないだろうし行くつもりもないが、そういうところが日本に居ながらにして見られるというだけでもワクワクする。
『神々の山嶺』(映画は一部だけ見た)にもカトマンズの町が出てきたが、なーぜか日本人の撮った外国って外国に見えなくて嘘くさい。こういうふうに同じ場所を映すと、その違いがはっきりする。日本映画って映画という気がしなくて、ちゃちな感じがテレビドラマっぽいんだよね。同じものを映してどうしてここまで違うんだろう?
『神々の山嶺』はレビューでも「すれ違う地元民がみんなカメラを凝視している」とか、「(当時は存在しなかった)スマホを持ってる人がちらほら映ってる」とか叩かれてたけど、それ以前の問題でやっぱり空気が違う。この映画だってあくまでアイスランド人(監督)の見たカトマンズなのに。
ベースキャンプの様子とかも丹念に描かれていて、私はもちろん本とか漫画で読んではいたけど、現在の実際の様子がよくわかって楽しかった。

だから前半は私の評価もかなり高かったんだが、いざ遭難する段になって、ええー?となった

なにしろ大量遭難事件と聞いていたから、この人たち全員死亡するものと思ってたのよ。そしたら、少なくとも映画で死亡確認できたのはたったの5名!(数えていたわけじゃないから確信はない) 200人が死んだ八甲田山とくらべてあまりにしょぼくない、これ?(不謹慎ですみません)
その死に方も、あまりにもあっけない。横見たらいなくなってたとか、動かなくなったと思ったら、そのままの姿で死んでたとか。いや、実際、滑落死とか凍死ってそういうあっけないものなんだろうけど、映画ならほら、もっと悲壮感盛り上げるとかなんとかあるでしょう? と思うのは、やたらお涙頂戴の日本の遭難ものばかり見すぎたせいだろうか?

だいたい危険そうなところはすべてグリーンバック合成なのはわかってるから、本当に役者が凍死するんじゃないかと不安になった『八甲田山』とくらべると迫力がないのはしょうがない。やっぱり技術革新は映画から確実に何かを奪っていったな。
だいたい見栄えを重視したのか、ほとんどのシーンは快晴の空の下で、確かにきれいだが、山の過酷さはまったく伝わらない。さすがに嵐のシーンは違うが、上の理由でぜんぜん怖く見えないし。

というわけで、まあ、リアルって言うのかなんて言うのか、かんじんの遭難シーンがいちばん淡々として盛り上がらないし、なんである人は助かってある人は死んだのかもよくわからない。これも実際、そういうのってわりと運のよしあしだけで決まるような気もするけど。山男同士の厚い友情とか、1本のザイルに命を賭けるとかそういうのはないのかよ?

確かにこういうのを見ちゃうときれいだなあと思うんだが‥‥

そういえばストーリーについて書いてなかった。これはエベレストで商業登山――金を出した観光客(もちろんある程度の経験と実力のある人だけだけど)を熟練した登山家が山頂へ連れて行くツアー――が一般化した時代の話で、主人公のロブ・ホール(ジェイソン・クラーク)はそういうツアー会社の主催者。
これもなあ。つまりパーティー・メンバーは技量も様々な寄せ集めの、素人ばかりの烏合の衆で、いざというときの対応もむずかしいし、事故が起きるのは当然って言うか。日本でもトムラウシ山遭難とかあったしね。(トムラウシについてはこの事故調査委員会の報告書が詳細で、なおかつすごい臨場感があって、下手なホラーより怖い。というか、私はホラーはぜんぜん怖いと思えないので、本当に怖いものが読みたいときはこういうのを読む)

つまり登山家としては、頂上を目前にしてあきらめるのも勇気のうちなのに、大金払ってる客は納得しないし、主催者側も金もらった以上説得しきれない。金払ったのに登れなかったというのは次の募集にもかかわるし。それでつい無理に強行して遭難するというパターン。
この映画でも、ロブ・ホールの最初のつまづきは、体調不良のダグ・ハンセン(ジョン・ホークス)に登頂を断念させるべきときに、「去年も参加してくれたのに直前で引き返させたし、貧乏な郵便局員が苦しい中から費用を捻出して来てるのにかわいそう」という情から、引き返す時間に間に合わないのを承知でダグに同行したこと(これは必ずしも事実ではないようである)。そのため彼を死なせ、自分も結局死ぬことになる。

ベースキャンプのロブ・ホール(ジェイソン・クラーク)

ダメじゃん! こいつリーダーとしてまったくダメじゃん! ツアー主催者としては顧客を生きて下山させるのが第一目的なのに殺しちゃってはまずいし、彼が途中で遭難したために、生きてたら助けられたはずの客も助けられなかったし、やはり体調不良で登頂をあきらめたけど、「ここで自分の帰りを待て」と命じられて素直に待ってたベック・ウェザーズ(ジョシュ・ブローリン)も死にかけるし。(くどいようだが、映画や小説はあくまで創作。ロブ・ホールの名誉のために言っておくと、この辺の事情はかなり事実と違って、事実はもっと込み入っている)

ロブが主人公なので、なんかいい人みたいに描かれてるけど、これだといちばん非難されるべきは彼でしょ。ロブとくらべると、彼のライバルにして親友のスコット・フィッシャー(ジェイク・ジレンホール)のほうがずっとまともに思えてくる。スコットも死ぬが、彼は自身の体調不良をおして顧客のためにがんばったせいで死んだのでまだしも気の毒に思える。
他に死んだのはガイドのひとりアンディ(マーティン・ヘンダーソン)と客の日本人、難波康子(森尚子)。上で「たった5人!」と書いたのはそういうこと。Wikipediaでは8人と書いてあったけど。

ここまでで私はかなり期待外れで盛り下がっていたんだけど、そのテンションが一気にどん底まで落ち込んだのは、ベック・ウェザーズのエピソード。彼はテキサス出身の医者で、いちばん最初に体調を崩した(持病のせいで目が見えなくなった)のも彼だし、年もいちばん食ってそうだし、いちばん死にそうに見えたのがベックなのだが、なぜか彼は最後まで生き延びる。というのも、彼の遭難の知らせを聞いた故郷の妻がアメリカ大統領に陳情し、アメリカ政府がネパールに圧力かけて、ヘリコプターを飛ばして救助に向かわせたから。

何このチート! ヘリが飛べるならみんな助けられたはずじゃない! ところが実際はヘリを飛ばすということ自体がありえない無謀な行為で、ネパール軍のパイロットの命を危険にさらすことだった。金と権力を持ったアメリカ人のためには人命も危険にさらすが、貧乏人や日本人は見殺しですか。(実際には映画に出てこない台湾隊の隊長もベックといっしょに救助された) でも映画だとベックは過酷な運命から生還したヒーロー扱いなんだよなあ。

というわけで、なんとも後味が悪い映画になってしまった。しかし事実はもっと後味悪くて、だいたいこういう事件の後は「戦犯捜し」がうるさくなるが、責任のなすり合いみたいになってる模様。台湾隊や同時期に登っていたIMAXの撮影隊も非難されてるし。
それも虚しい話で、山の事故なんて原則自己責任なんだから、誰が悪いわけでもないと思うが、滑落したとかクレバスに落ちたとかならともかく、難波康子なんて下山ルート上で動けなくなったんだし、難所では登山隊同士がかち合って渋滞が起きるぐらい混み合ってたんだし、大勢がそばを通っていながら、小柄な日本人女性ひとりぐらい、誰も助けてやれなかったのかとは思う。
ただ、これも聞いた話だが、エベレストでは遭難者見ても救助する義務はないんだってね。人を助けてたら自分が死ぬような状況だから。やっぱり死にたくなければ山なんか行くなってことよね。

とりあえずその辺のドロドロは置いといて映画に話を戻すと、主役級だから当然とはいえ、ロブやベックの故郷の妻とのやりとりをだらだら映す必要はまったくなかった。いや、まったくとは言わないが、こんなにいらない。たとえその妻たちが、キーラ・ナイトレイロビン・ライトと私の好みの女優であってもだめだ。
難波康子みたいなパーティーのメンバーや、ベースキャンプのスタッフを除けば、山岳映画に「銃後の妻」を出す必要はまったく認めない。せっかく山でのドラマに集中して手に汗握ってるのに、下界でのんびり暮らしている(もちろん心配で死にそうなんだが)家族が映ると緊張感が途切れるから。
同様に衛星電話で妻に最後の別れを告げるシーンもいらなかったなあ。これこそ現代ならではの技術だが、登山の良さは下界からは完全に切り離されているという孤独感だし、いつでも妻とおしゃべりできる状況ではやっぱり悲壮感がない。というわけで、山岳映画に女を出すな!というのが私の持論。そういう映画は記憶にない、というか女の出ない映画を探す方が大変だけど。

女の出ない映画」には何があるか気になったので調べてみたら、登場人物が2、3人みたいなのを除くと、有名どころでは『アラビアのロレンス』、『12人の怒れる男たち』、『大脱走』、『ランボー』、『遊星からの物体X』、『蠅の王』、『レザボア・ドッグス』、『マスター・アンド・コマンダー』とかがそうですね。なんとまあ、男臭い映画ばっかり。あとやっぱホモくさい。

そこでかんたんに役者&キャラクター評

主人公のジェイソン・クラーク(オーストラリア人)は、登山服姿だとそれなりに貫禄があったが、素顔はただのデブのおっさんだなあ。前述のようにキャラクターもあまり共感できなかったんでいまいち。
ジョシュ・ブローリンはいつも通りうざいおっさんだが、ベックというキャラクターはまさにうざいおっさんなので、その意味ではぴったりなキャスティング。
ジェイク・ジレンホールはあまり印象に残ってない。質実剛健な感じのロブ・ホールに対して、彼のキャラクターはチャラくていい加減なやつという印象だったのに、結果としては彼の方が人助けしてるし。ポスターに映ってるこの3人が主役級なんだが、このキャストは無意味に豪華だ。

結局男たちの中でいちばん印象的だし好感が持てたのはジョン・ホークス。非常に個性的な容貌で、こういう人は性格俳優として貴重。あいにくこれまで私のアンテナに引っかからなかったが、この名前は覚えておかなくちゃ。

実に味のあるジョン・ホークス

ジャーナリストのジョン・クラカワー(マイケル・ケリー)なんかは、導入部だけ見てると、典型的な「プロ集団の中にまじって足を引っ張る役の軽薄なジャーナリスト」に見えたんだが、結果はちゃっかり登頂して生還して、この事件を本に書いて成功している。なんかずるい、が事実だからしょうがない。

あと、男優ではロブ・ホールの会社のガイド(別のツアーを率いていた)役にサム・ワージントン。この人も主役級の俳優なのにこんなちょい役で。ほんとにキャストは豪華だ。だけど、全体がグズグズなので、本来救助に活躍したはずの彼も印象が薄い。

次に女優陣。まずはロブ・ホールの妻役のキーラ・ナイトレイ。なんでこんな美女がこんな醜男と!という憤慨は置いといて、やっぱり彼女はきれいだ。でもお話的には上記のようにいらなかった。
ベック・ウェザーズの故郷の妻(ヘリ飛ばせた人)にロビン・ライト。『ドラゴン・タトゥーの女』の三美魔女を並べた写真では、彼女が一番若くてきれいに見えたが、あれから4年しかたってないのに、めっきり老け込んで汚くなった。まあ、役者は役作りで化けるからわからないが。でもすでに述べた通りで、彼女もぜんぜん共感できないキャラだしなあ。

難波康子を演じた森尚子。私は初めて見るが、子供の頃にお父さんの転勤でロンドンに渡り、そのまま現地に残って女優になったという変わり種。17才で大ヒットミュージカル『ミス・サイゴン』の主役に抜擢されたというから、ものすごいサクセス・ストーリーなのに、日本じゃ無名なのはなんでか。まあ、主にイギリスの舞台やテレビに出ている人じゃ、日本人の目に触れないのは当然かも知れないが、同じ日本人でこんな人がいると思うだけでもうれしい。(いつもながら、英国で成功した人には甘い) いや、私は「イギリス英語話す日本人」というだけでもラブラブですよ。
それはともかくとして、当然英語はネイティブ並みだし、あいにくもうおばさん(46歳)だが、美人じゃないけど個性的で好感の持てる顔立ちなので、なんでハリウッドは(菊地凛子じゃなくて)もっとこういう人を使ってくれないのか。
って、要するに「外国映画」じゃ東洋人なんて刺身のつまだし、それなら若い美女の方がいい(というわりには、西洋人の東洋女に対する審美眼はおかしい)に決まってるから、せっかくのこういう宝が持ち腐れだ。イギリスじゃ人気あるみたいだからいいけど。(最近ではジョン・レノンの伝記ドラマで小野洋子を演じている)

難波康子を演じる森尚子。役が役なんですっぴんですが、ちゃんとお化粧すると垢抜けてかわいい人です。

モデルの難波康子さんという人がどういう人かはよく知らないが、少なくとも映画の森尚子は、おばさんだけどかわいくて、日本人らしい控えめなつつましさのある女性だったので、このキャラは男どもよりよっぽど好感が持てたのに!
いくら商業登山とは言え、女性で七大陸最高峰登頂者というのはすごいしね。(エベレストは登頂はしたものの下山途中で亡くなったから記録に含めないという人もいる) それが日本人女性というのは、ちょっと誇らしい。プロ登山家じゃなく、会社勤めのかたわら、休みの日にトレーニングを続けてこれだけの記録を打ち立てたのもすごい。
ちなみに彼女は早稲田の文学部出身で、私の先輩に当たるのだが、早稲田の権威も今でこそ地に落ちたものの、私より上の世代はやっぱりエリート揃いだったし、中でも数少ない女子学生は、今どきの女子大生なんか比べ物にならないスーパーウーマンが多かったが、彼女もそんなひとりだったのだろう。

しかも紅一点の女性隊員なのに死んじゃう役だから、いくらでも同情を買って感涙を絞る要素は大いにあったのに、映画がアホなので、なんの見せ場もないまま死んじゃったのはかわいそうすぎる。
キー、くやしい! 日本女性で、これだけかわいいおばさんで、女優としても長いキャリアと経験があって、しかもこの手の国際オールスター映画なんだから、ここでちょっとでも目立てばもっと注目されたかもしれないチャンスだったのに、難波康子の扱いは本当に軽い、その他大勢扱い。
当然私は最初から気にして注目していたが、セリフもほとんどなかった。最初の紹介の後は、ときどき「ヤスコ、大丈夫か」と声をかけられるぐらいで、最後は動かなくなって死んじゃうだけの役柄。見せ場がないのは全員だから、彼女だけじゃないんだけどね。もったいなさすぎる。

女性はほかにもいて、ロブ・ホール隊のベースキャンプのマネージャーにエミリー・ワトソン。彼女はイギリスのベテラン女優だからもちろん好き。いかにもイギリス女らしい、気丈でてきぱきと有能な女性を演じた。
同じベースキャンプの女医にエリザベス・デビッキ。ほんのちょい役だが、こういうクールな美女すごい好き。っていうか誰これ? マジで絶対好みなんだけど! リチャードソン姉妹を初めて見たときの衝撃を思い出す。ほんと言って彼女らより美人なぐらい。
あわてて調べたら、彼女はパリ生まれ、オーストラリア育ちのポーランド=オーストラリア人。映画出演はそんなに多くないのだが、『華麗なるギャツビー』、『コードネーム U.N.C.L.E.』なんかに出てる。あれ? ファスベンダーの『マクベス』ではマクダフ夫人を演じてたのか。ぜんぜん記憶にないんだけど。これについては、このあとマイケル・ファスベンダー特集で書くつもりだが、ビデオは消しちゃったよ!
身長190cm近い長身だし、絶対私好みなのに! と言いながら写真を集めてたら、だんだん冷めてきた。すごい美人だしスタイルもいいんだけど、やっぱり女優としてはなんかもの足りないわ。若すぎるから?とも思ったけど、シャーリーズ・セロンは若くても好きだしな。とにかく、女優はほんと粒ぞろいなんだよなあ。話がつまらないだけで。

というわけで、期待したわりには残念な映画だった。まあ、ハリウッド映画じゃないから、エンタテインメントとしておもしろくないのは想定内だったけど、あんまり事実の重みも感じなかったな。

登山ものが好きなのに矛盾しているようだが、私は個人的には富士山もエベレストも登山禁止にしていいと思う。オーストラリアがエアーズ・ロックに登るのを禁止したように。
私はそうなる前に行ったが、もちろん体力に自信ないし(現地で風邪をひいて病み上がりだった)、苦しい思いをしたくなかったので登らなかった。高さはたいしたことないが、(真冬なのに)気温40度ですもん。
それで友達が登るのを下から見ていたわけだが、せっかくの絶景の地に、観光客がありんこみたいにゾロゾロ登ってるのを見るのは、やっぱりいい眺めとは言えなかった。
だって、イギリスのストーンヘンジに観光客が登ってピースしてたらどうよ? 今はそういう不心得者が増えたので石の周辺は立ち入り禁止になったが、もちろん私はそうなる前に行って触ってきたけど。

富士山やエベレストみたいな聖地ぐらいは手つかずのまま残してほしい。観光客や一部のアドレナリン・ジャンキーのために美しい山が荒らされるのはまっぴらだ。
それを言ったら登山という行為自体が矛盾そのものだな。登山家が山を愛するのは自然を愛するからに違いないが、山に登るという行為自体が自然を汚す行為に他ならないし。山に登るやつなんて頼まれもしないのに山に入ってウンコやらゴミやら、ときによると死体までまき散らしてくるだけ。
この世界では山から記念に石ころとか高山植物とか持って帰る人が非難されてるが、じゃあ、ピッケルやらアイゼンやらハーケンやらで山をガシガシ削ったり割ったりするのはいいのかと。歩いたり登ったりしている最中に、草一本虫一匹踏みつぶしてないのかと。

それでも未踏峰に初登頂するような人はやっぱりすごいと思うし、研究者や自然保護活動のためなら許せる。でも商業登山なんて最悪で、この映画の登場人物にまったく共感がわかない第一の理由はそれだろう。
エベレストとなると、途中にいくつもキャンプが設置されていて、あらかじめシェルパの手で必要物資は全部運び上げてあって、あらかじめルートもできていて、難所には鎖やはしごもかけてあって、団体旅行さながらガイドにくっついて登るだけなんて登山とは言えない。まあ、そこまでしてもそこにいるだけで死ぬのが高山の恐ろしさで、このように事故は避けられないんだけど。

とりあえずこの2本の映画を見て学んだこと。

人は寒いところでは死ぬ(八甲田山)
人は高いところでは死ぬ(エベレスト)

特にこの、8000m以上の高所(デッドゾーンと呼ばれる)では、1分1秒でも長くいるだけで死ねるってのは恐ろしすぎる。
あと、八甲田山について調べていたら、「矛盾脱衣」(低体温症になると体が勝手に暑いと勘違いして服を脱ぎ始める現象)なんて言葉も覚えてしまった。

やっぱりすごいなあ、山は。でも同じように(足を折るとかして)身動きできず、助けも来ない状況を想定したら、私は灼熱の砂漠で死ぬよりやっぱり雪山で死にたい
だって、前者はゆっくりとじわじわ全身あぶられて死ぬか、脱水症状で死ぬかで、おそろしく時間がかかって死ぬほど苦しいけど、寒さで死ぬのは意識も早くなくなるし楽そうなんだもん。もちろんそうなるまでは苦しいに違いないが、服を脱ぎ捨てたり川に飛び込めば早く死ねるし。(どっちも『八甲田山』に出てきた死に方。見た目は悲惨だが、あの人たちの方が仲間より楽に死んでる)

ん? なんか物騒な話になってきたが、要するにそういう目に遭いたくなければ山なんか行くなってことです。私はいやだから行かないが、見てるだけならいい。というわけで今後も山岳遭難映画は見るつもり。

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