【映画評】クエンティン・タランティーノ『ジャンゴ 繋がれざる者』 (2012) Django Unchained

タランティーノのこの映画は、なんか知らないがアカデミー賞やBaftaでどっちも脚本賞と助演男優賞を取ってるんだよね。と言っても、タラ公大っ嫌いな私はもう見る気がしなかったんだが、タイトルが『ジャンゴ』じゃ見ないわけにはいかなかった
理由はいつも言ってるように私が西部劇で育ったってことと、『続・荒野の用心棒』【注】でジャンゴを演じたイタリアの俳優フランコ・ネロは、私の心の恋人の夫だからという、とても一口では説明できないのでこっちを読んで欲しい理由からだ。

【注】『続・荒野の用心棒』 原題はDjango(ジャンゴ)。このダサい邦題も死ぬほど嫌い。なんの関係もないのに、黒澤明の『用心棒』のそのまた翻案の『荒野の用心棒』にあやかろうという魂胆が見え見えだから。

そのフランコ・ネロもカメオ出演してるし、タイトルが“Django Unchained”となれば、当然『ジャンゴ』のリメイクか、続編かそういうのだと思うじゃない。ところが何の関係もない。棺桶もマシンガンも出てこない。というところでまず私の好感度メーターはがくんと下がる。

主人公(ジェイミー・フォックス)が解放された黒人奴隷というのもいやだ。奴隷虐待は動かしようのない史実で、シリアスな問題なのに、タラが撮ると全部おふざけにしか見えなくて、すごい不愉快な気分になる。これについてはスパイク・リーも苦言を呈していたと思う。スピルバーグの『アミスタッド』も嫌な気分になったけど、タランティーノはその比じゃないや。

ただの農場奴隷が銃の名手だったり、白人はドイツ人のドクター(クリストフ・ヴァルツ)以外、全員狂犬みたいなキチガイだったりするご都合主義もうんざり。そういや『アミスタッド』ではイギリス人が聖人君子の扱いで変だと言ってたけど、こっちはドイツ人か。なんなんだろ?
このドクターが助演賞なんだよね。なんで? 賞やるならサミュエル・L・ジャクソンだと思ったけどな。主人(レオナルド・ディカプリオ)にすり寄る卑屈な召使いを演じて、嫌味演技爆発なのはすごいと思った。

タランティーノはさすがに気持ち悪い人間を描くとうまい。どっちもいかれてるマスター&サーバントを演じるサミュエル・L・ジャクソンとレオナルド・ディカプリオ

あと良かったのは最初に流れる主題歌だけね。と言っても、『続・荒野の用心棒』の主題歌の単なるカバーだが、あれを聞いて古くさいタイトルシークエンスを見ていたら、いやでも昔を思い出した。『グラインドハウス』で(架空の)予告編だけ良かったようなものだな。
とにかくいつものふざけたタランティーノ映画で、西部劇でも『ジャンゴ』でもなかったっす。

オリジナル『ジャンゴ』と(左)と本作のフランコ・ネロ

P.S. 映画があまりにつまらなかったので余談。フランコ・ネロはすっかり太って老けて、昔の面影はまったくないと思っていたが、さすがにスクリーンで動いているのを見るとまだかっこいいし貫禄あるし、十分若い頃の面影もあった。昔は虚無的な感じがすごいセクシーで、いい男だったんだよなー。
レッドグレイヴ家の女たちはみんな夫に恵まれないのだが、ヴァネッサはトニー・リチャードソン(バイセクシャルだった夫の男遊びにヴァネッサが耐えられなくなった)との結婚には失敗したものの、フランコとはうまく行っているみたいで何より。飛ぶ鳥落とす勢いのスター同士の結婚だったし、映画スター同士の結婚なんて長続きするためしがないのに、正直この年まで(ていうか、この年になればもう死ぬまでだな)添い遂げるとは思わなかったんだけど、フランコって誠実な人だったんだなー。

というような話は長くなるので、『レッドグレイヴ家の女たち』に追記しました。ついでに大量の追記と写真を追加して★★★に格上げしたので、すでに読んだ方もぜひどうぞ。

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