【映画評】ジャスティン・カーゼル『マクベス』(2015)Macbeth

前に予告を見てちょっと期待していた、マイケル・ファスベンダー版『マクベス』を見た。
なにしろ、マクベスにマイケル・ファスベンダー、マクベス夫人にマリオン・コティヤール、ダンカンにデヴィッド・シューリス、マクダフにショーン・ハリスと、(わたし的には)かなりの豪華キャスト。
予告で見た感じじゃ絵もすごいきれいだったし、一目でわかるスコットランドの風景にうっとり。(原作もスコットランドの話)
話はマクベスだから、まあ新鮮味はないが、悪いはずないし。しかも今の時代にマクベスを撮るからには、何かしらおもしろい新趣向があるかと、かなり期待していた。ま、何はなくても私としては、とりあえずきれいな景色の中できれいな男が動いているのを見るだけでもOKです。

と、(わたし的には)失敗するはずのない映画だったんだが、見てがっかり。

参考 ★【映画評】蜘蛛巣城(1957)黒澤明監督特集5

がっかりの最大の理由は、冒頭10分ぐらいは確かに夢のように美しいスコットランド風景がたっぷり見られるんだが、そのあとはほとんど室内シーンで、舞台劇そのものの地味な作りだったこと。まあ、元がそうだから原作に忠実に撮ろうと思えば当然なんですけどね。
でも最近、イギリス(関連)映画で期待させられた映画はこれが多いなあ。私としてはもう景色だけ映しててくれてもいいんですがね(笑)。

全体的に、原作に忠実な淡々とした作り。セリフも原作のままで、すごいオーソドックスな『マクベス』だった。したがって、当然ながら手に汗握る合戦シーンもちょっとだけ、殺人シーンもかんじんなところは一切見せない。だから格調高くはあるが、べつにおもしろくない。これならポランスキー版のほうがおもしろかったな。
なんか名台詞の朗読劇とイメージシーンが交互に出てくるのを見せられてる感じ。そのセリフもねえ。マイケルだってマリオンだってべつに下手な役者じゃないんだが、かといって本物の舞台俳優みたいにせりふ回しだけでうならせるみたいなことができるわけじゃないし、なまじシェイクスピアなんかやらせると、(これまでマクベスを演じてきた幾多の名優と比較してしまって)下手くそに聞こえてくる。舞台俳優は朗々と力強いせりふ回しが売り物なのに、この二人はどっちかというとささやき声だし。(もちろんマイケルに惚れた理由のひとつがこのセクシーなアクセントなんだけど)

さんざん文句は言ったが、黒澤明の『蜘蛛の巣城』のほうがはるかに優れた翻案だったし、役者の力量もぜんぜん上だったってことがこれ見るとわかっちゃうね。実際、リビューでも黒澤を引き合いに出して、比べ物にならないと言ってるのが多いし。(マイケルは黒澤の大ファンだそうです)

Skyrimの一場面みたいな合戦シーン

えー、本来の目的であるマイケルは普通に格好良かったです。それ以上でもそれ以下でもない。ただ、同じマクベスでも黒澤明『蜘蛛の巣城』(1957)の三船敏郎とか、ロマン・ポランスキー版『マクベス』(1971)のジョン・フィンチの堂々たる威厳とハンサムさにくらべちゃうと、わりと普通の人に見えてしまう。整ってるけどインパクトのある顔立ちじゃないし、何よりマクベスに必要な眼力が足りなすぎる。要するにミスキャストだと思う。

それはマリオン・コティヤールにも言える。確かに気品があるしきれいな人だけど、人がマクベス夫人に求めるものってそういうんじゃないよね。何よりぜんぜん怖く見えないで、なんか弱々しく見えるところが致命的。
『蜘蛛の巣城』のリビューで「確かに悪女だけど哀れな女でもある」と書いたけど、哀れっぽいだけに見えちゃって。もしかしてそういう新解釈なのかもしれないけど。
マリオンは監督の指示(マクベス夫人がフランス人だっていい)でフランス語訛りまるだしなのも引っかかる。

役者でいちばんよかったのはやっぱりデヴィッド・シューリス。彼のダンカン王はいい人過ぎて泣けた。

それよりあのウォー・ペイントとか、衣装(Skyrimのレザーアーマーそっくり)のせいで、私にはSkyrimそっくり(ときどき『ブレイブハート』)に見えてしまって、やっぱりSkyrimはスコットランドだよなと思った。
あとどうでもいいけど、私はRPGではたいてい二刀流使いなんだが、Skyrimの二刀流のアニメーションはなんか嘘くさいと思ってたんだが、この映画のマクベスの戦闘スタイルがまさにあれで、やっぱりあれってリアルだったんだと感心。ていうか、衣装も振り付けも丸ごとSkyrimをパクったんじゃあるまいな?
なんか『蜘蛛の巣城』のときも『ゲーム・オブ・スローンズ』と比較してあれこれ言ってたが(笑)。

三魔女が子供魔女をまじえた四魔女になってたり、なんかちまちま原作を改変してあるんだが、あんまり意味があるようには見えなかった。
というわけで良心的ではあるが、凡庸な『マクベス』としか言いようがない。まあ、オーストラリアのどこの誰かも知らない無名監督と、黒澤やポランスキーのような巨匠と比較する方がおかしいんだが。〈とかなんとか言ってたがー‥‥というのは次の記事参照〉
監督のジャスティン・カーゼルはオーストラリア人。そう言えば(こっちもかなり楽しみにしている)『アサシンズ・クリード』の主役がまたマイケルとマリオンで、完全にかぶってると思ってたんだが、あれもこの監督だったのね。ゲームの映画化はコケると決まってるんだが、さてどうなりますか。

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