下書き【映画評】マイケル・アプテッド『ナルニア国物語第3章:アスラン王と魔法の島』 (2010) The Chronicles of Narnia: The Voyage of the Dawn Treader

※ 更新が突然途絶える最大の理由は、シリーズものを書いてる最中に飽きてきたり、写真を探すのが面倒くさくなって、他のを書き始めるからだというのがわかったので、そういうときは流れを止めないために、未完成の状態でもアップして次に行くことにしました。タイトルに「下書き」とある記事は後ほど完成させます。

♥ まず邦題から突っ込む。『アスラン王と魔法の島』ってのはなんだ? ここまではほぼ翻訳書のままで来てたのに、なんでこんな題に?
♣ アスラン王様じゃないし、いや確かに作中でも王とは言われてるけど。
♥ 「海の向こうの国の皇帝の息子」だから皇太子じゃないの?
♣ でもその国ってつまり天国だし、そこの皇帝って神様だし、神の子ってことでキリストのメタファーだし
♥ というよりほとんどアスラン関係ない話だし。
♣ 翻訳書に倣って『朝びらき丸 東の海へ』じゃだめだったのかね。
♥ あの邦題は私もちょっと疑問だったけどね。Dawn Treaderを朝びらき丸と訳したのは名訳だけど、「東の海へ」というのがなんか収まりが悪くて、普通に『朝びらき丸の冒険』とか『朝びらき丸の航海』じゃいけなかったのかと。

♣ で、この映画もベン・バーンズとスキャンダー・ケインズ(と日本では言ってるが、ケインズかキーンズかわからないし、名前は絶対スカンダー)見たさに見ただけで何も期待してなかったんだけど。
♥ むしろ原作は不思議な生きものとか不思議な場所がいっぱい出てきて、最高におもしろいエピソードだけに、これを汚されるのかと思って頭が重かった。
♣ でも見始めて「なんか違う!」と思ったんだよね。
♥ うん。あの独特なチープな作り物感がない。いや、決して豪華ともオーセンティックとも言わないが、それなりにちゃんと見られるというだけでも驚いた。
♣ それでなんか変だと思ってクレジットを見たら、監督がマイケル・アプテッドに変わってるので、そのせいかと思ったんだけど‥‥
♥ よくよく見たら配給がディズニーじゃなくて20世紀フォックスに変わってる!
♣ ディズニー映画じゃないだけで、これだけちゃんとした映画に見えるのかよ!
♥ まさかそれだけじゃないと思うけど、私はぜんぜん知らなかった(どうせ最初のロゴ部分なんて見ないし)のに一発で気付くほどの違いってなんなの? なんでここまでヘボいのにディズニーとか好きな人がいるの?

♣ で、なんでここでディズニーが離れたのか調べたら、『カスピアン王子の角笛』の収益がひどかったので捨てたのをフォックスが拾ったということみたいです。
♥ まあ、あれなら客入らないのは当然だと思うけど。
♣ そこで気になったので3作の興行収入を比較してみました。
♥ ちなみに、興行収入というのは映画館で観客が払ったチケット代の総売上のことで、純利益ではないし、ディスクなどの売り上げも含まれない。ここから宣伝費や映画館への報酬を差し引いたものが配給収入。だいたい、興行収入が予算の倍ぐらいになれば元が取れる感じ。

ライオンと魔女
予算 $180 million
興行収入 $745 million

カスピアン王子
予算 $225 million
興行収入 $419.7 million

アスラン王
予算 $155 million
興行収入 $415.7 million

♣ それほどひどい赤字ってわけでもないと思うけど。予算にも届かない映画いっぱいあるし。
♥ ディズニー的には許されない数字なんでしょ。
♣ それより1作目がこんなに人入ったのが驚きだわ。
♥ そりゃ世界的な名作だから誰でも期待しちゃったんでしょ。それがひどかったからもう見ないという人が増えて、『カスピアン王子』は予算は増えてるのに、儲けはガクッと落ち込んだ。
♣ それで今作では、予算は激減したのにまた持ち直してるじゃないか。
♥ どう考えてもディズニーが悪い。まあ、あまり安っぽく見えなかったのは、今回は城とかが出なくて、ほぼ船と島だけの話だったせいもあるか。

♣ ちなみにアンドルー・アダムソンはニュージーランドの新鋭だったけど、マイケル・アプテッドはイギリスのベテラン監督
♥ 有名だけど私にはあまり興味ない映画ばっかり撮ってる印象だったけど。
♣ それで映像はきれいだったからかなり期待しちゃったんだ。なにしろ今回はドラゴンになるユースタスとか、リーピチープと世界の果てとか、涙なしでは見られない見せ場がたくさんあるし、魔法の島も不思議な話ばっかりでおもしろいし。
♥ 私はあれが2時間で収まるのかと心配だったよ。当然島のいくつかは省かれちゃうんじゃないかと思って。

♣ ストーリーはと言うと、ナルニアに平和を取り戻した後、ミラースによって海の彼方に追放された7人の貴族を探しに、カスピアンが朝びらき丸で航海に出る。するとそこへエドマンドとルーシーの兄妹と、従兄弟のユースタスが現れて行動を共にするというもの。
♥ 見始めてすぐカスピアンが男臭くなって、前にも増してかっこよくなってるのにびっくり。
♣ モデルかよ!と思うぐらいの美貌。逆にきれいすぎて浮いてない?
♥ とにかく清潔感のある顔立ちなので、長髪振り乱していても爽やかに見えるのがすごい。

♥ あとユースタスを演じたウィル・ポールター(Will Poulter)があまりに憎たらしい顔つきなのでびっくり。
♣ これはそうでなくちゃならないって言うか、憎まれ役だからもちろんいいんだけど、彼どっちかというと典型的ないじめっ子顔じゃない? ユースタスというキャラは大口は叩くけど弱虫なんだけど。
♥ いいんだよ。この子は本当に子供だから、憎まれ口叩いてもいざとなるとシクシク泣いたりするところがかえって情けなくていじらしくてよかった。
♣ よくまあこんなの見つけてきたと思うぐらい、みじんもかわいげのない憎らしいガキ
♥ だからそれで合ってるんだってば。原作のユースタスぐらい憎らしい子供、『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョフリーが出てくるまで他に見たことないというレベルのクソガキなんで。
♣ 最初は憎たらしいほど、改心後の変貌で泣けるからいいね。ただ、(もし予定されている次作『銀の椅子』が撮られるとしたら)この子が次の主役になるってのはちょっとモヤモヤするけど。
♥ BBC版のユースタスはけっこう美少年だったからね。あれはあれで顔はいいけど性格悪いと思えばあってたけど。
♣ この子はむしろ大人になって悪役として重宝されそう。それぐらいの凶悪顔。

♥ そんなわけで、船がローン・アイランド(翻訳でなんと訳してたか忘れた)へ到着したあたりまではご機嫌で見ていたのだ。
♣ でもここで奴隷商人をこらしめたあたりからおかしいと思い始める。
♥ なんでも奴隷として売られた人々は「いけにえ」にされると言うんだよね。しかも彼らをさらっていくのはただの青い霧。なんじゃ、こりゃー?!!!!!!
♣ なんか島探訪だけでは足らなくなったらしくて、すべての貴族を見つけて7本の剣を集めると‥‥
♥ 願いがひとつかなうんですね。
♣ ドラゴンボールじゃないし(笑)。なんだか知らないけどその7本の剣を例のテーブルに置くとダーク・アイランドの霧が晴れて悪が滅びるらしいです。
♥ わけわかんねーよ!

♣ それで子供たちが出会う試練もすべて青い霧による誘惑なんだそうだ。ユースタスのドラゴンも、エドマンド(原作ではカスピアン)の金の泉も、ルーシーの魔法の書も。
♥ 結局、何もかも悪との戦いってことで結びつけようというわけか。
♣ 原作では危険な目にもあうけれど、むしろ楽しい冒険の旅で、今回は別に白い魔女とかミラースみたいな悪の手先なんて出てこないのにね。それで何でもバトルにしなきゃならないため、最後はラスボスのシーサーペント(それもすごくグロいやつ)と戦う。
♥ またそれかよ! こんなんナルニアじゃないよ。ディズニーよりひどい。っていうか、これナルニア原作うたうべきじゃない
(二人ともショックのあまりしばらく声が出ない)

♥ ハア、マイケル・アプテッドってもう少しまともな監督かと思ったよ。
♣ 金のために引き受けたんでしょ。
♥ この映画は呪われてる。記憶から抹消するつもりだからもう思い出させないで。

♣ いろいろ愚痴言うつもりだったんだけど、全貌を知ってしまったら、言うだけ虚しくなってきた。ユースタス=ドラゴンが事実上の主役なのに、ドラゴンになってもすぐに元に戻っちゃうとか。
♥ あー、もういい。話したくもない。

♣ でもあのラストも違うと思わなかった? 世界の果ての海やアスランの国が見えるところ。アスランの国って日本で言う常世(とこよ)、キリスト教徒の天国英国人からしたらアヴァロン北欧のヴァルハラ指輪物語のアマンノルド(Skyrim)にとってのソヴンガルドなんで‥‥
♠ その民族にとっての約束の地ということか。常世はなんか違うような気もするが。
♣ だって、理想郷で、神仙の住まうところだよ。だからとにかくもっともっとすごい、この世のものならぬ場所を想像していたのに、ただのビーチ‥‥
♠ あれはまだアスランの国じゃないって。その手前。
♣ それにしたって、これまで私、いろんな風に想像してたけど、こんな情けない場所と思ったことない。

♥ だから言うな。せっかくの想像が崩れる。
♣ リーピチープとの別れなんて、BBC版のあのものすごい着ぐるみだって私は号泣したのに‥‥
♥ というのも、上で挙げたような場所、どれも理想郷ではあるけれどあの世なんだよね。それでリーピチープがそこへ行くっていう決意をしたってことは‥‥
♣ まあ、いくらものいうけものが長生きだと言ってもしょせんネズミだしさ。おそらくリープは死期が近いことを覚悟して航海に出たんだなと。だからこれって単なる別れよりもっと悲しい場面なのに、この‥‥
♥ 言うなって! こんな映画は存在しない。私はこんなの見なかったんだ。
♣ せっかくベンとスカンダーはあんなに色っぽかったのにね。
♥ 見てない見てない‥‥私は何も見てない。

♣ なんかもう記憶削除してるので、しょうがないから原作の話でもしようか。普通なら第4章になるはずだった『銀のいす』もすごい好きだったんだよねえ。今度はユースタスと友達のジルが、幼いときにさらわれたカスピアンの息子リリアン王子を助けに旅に出る話なんだけど。二人の案内人となる「泥足にがえもん」が最高にキャラが立ってておもしろいし、リリアンは美少年だし(だってこの眉目秀麗なカスピアンと星の乙女との子供だよ)、その美少年を洗脳して我が物にするというのはワクワクするし。
♥ どうやら第4章の制作が暗礁に乗り上げてるみたいなのを心から天に感謝するよ、私は。
♣ ほんとに4作目は作られないの? IMDbを見ると監督も決まってるようだけど。
♥ 『ジュマンジ』のジョー・ジョンストンか。またまたいかにもやる気なさそうなのを選んだな。とにかく何の続報もないし、お蔵入りでしょ。ユースタスだってほとんど大人になっちゃってるし。
♣ もし撮るとしても主役更迭だろうなあ。ウィル・ポールターはヒーローの顔じゃないし。

♣ でも5作目の『馬と少年』も好きでしょ。馬好きにとってはバイブルと言っていい話だし、舞台となるカロールメンは私の好きなアラブ世界そのものだし、貴種流離譚大好きでしょ?
♥ 子供の頃に誘拐された王子とアラブのお姫様とのラブストーリーだしね。
♣ かっこいい王子様がいっぱい出てきて美少年要素濃いめなのもこのシリーズの好きなところ。
♥ だから期待してたのに! 『魔術師のおい』『さいごの戦い』は宗教臭が強すぎてあまり好きじゃないな。
♣ ちなみに『魔術師のおい』がナルニアの創造神話、『さいごの戦い』はハルマゲドンの話です。

♣ そう言えばナルニアの特徴と言えるのが、この宗教臭というかお説教臭さなんだけど、映画じゃはっきりキリスト教を示唆する要素はどれもとっぱらってあったね。キリストの受難そのもののアスランの殉死はもちろん、『朝びらき丸』のラスト、子羊(キリストの象徴)の姿で現れるところとか。
♥ それはべつにいいと思う。ナルニアで気に入らないところがあるとすれば、このお説教臭さだし。
♣ それは子供のための童話だし、しょうがないのでは?
♥ 普通アスランみたいな存在は、主人公たちが危機に陥ると助けにきてくれるものなのに、こいつ助けてもくれないくせに、いちいちお説教かますから嫌い。たぶんこの物語全体の中でいちばん嫌いなのがアスランだし(笑)。
♣ だから『さいごの戦い』がいちばん納得いかないよね。天国(物語ではアスランの国だが、実質はキリスト教の最後の審判のメタファー)への門のところで、入れる者と入れない者を選別するのは残酷な場面だと思ったし、善人でもアスランを信じなかった者は天国には行けるけど天国でも不幸だったり。
♥ 兄弟の中でスーザンだけが天国へ行けないのもむごすぎる。それというのも童心を失っておしゃれやなんかにうつつを抜かすようになったというだけの理由で。
♣ でもそれ以外の3人は鉄道事故で死んでるわけで、ハッピーエンドどころの話じゃないし。
♥ それでも物語としては圧倒的なおもしろさと感動に満ちあふれてるけどね。

♥ だから映画の悪い後味を消すため、原作読み直そうと思ってKindleで買っちゃったよ。
♣ ペーパーバックも翻訳も全巻持ってるじゃん。
♥ ペーパーは紙が茶色くなっちゃって読みにくいしさ、だいたい私の目ではもう洋書はきつい。でもKindleなら読みやすいし。それに著作権切れの本はKindleだと無料になっていることが多いので、もしかしたらナルニアもそうなってるかもと思って。
♣ おかげでシャーロック・ホームズもルイス・キャロルも全巻無料で揃えました。高い金出して洋書買ってた時代が信じられない!
♥ そしたらただじゃなかったんだけどいくらしたと思う? 7冊コンプリートの、カラー挿絵入りの版が300円だよ!
♣ これの翻訳は1万円以上したのに!
♥ 本や映画やマンガに湯水のように金を使ってきた身としましては、今の時代は恵まれすぎてて許せないと思うぐらい。今生まれてたら私は一財産残せたよ、マジで。
♣ と言いながら、まだ高い本やブルーレイを買ってるけどね。
♥ このシリーズもボックスセットが出たらブルーレイ買うつもりだし。
♣ これだけ悪口言っといて買うの?!
♥ だってこんなに美しいベン・バーンズとスカンダーの映像が見られるのはここだけなんだよ。どうせ人気なくて二束三文でたたき売られるし。
♣ というわけで今回は本当にやる気も出ないので、ぐだぐだだけどこれで終わりです。

この項未完

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