【マンガ評】のおまけ Kindleと電子書籍と漫画村のはなし

大学教師という職業柄、および生来のコレクター体質のため、うちの本の量はヤバいことになっている
ただ、断っておくと私は決して本コレクターじゃないし、マンガコレクターでもない。なまじ本のことには詳しいし、反面教師がまわり中にいたから、本を集めるには鉄筋の専用書庫付きの家を建てられるぐらいの資力がないと無理、ということはわかってたので。

だからセーブはしてたのだが、それでも本はつい増えてしまうし、特にマンションに引っ越してからは床が抜ける心配がないというだけで、かなり気がゆるんで本が増えてしまった。どのぐらいのペースで増えるかというと、まあだいたい1日1冊ペースで読んでたから年に365冊ですか。それで古本屋に行くと5冊とか10冊とか買うから、売ったぶんを差し引いても年に500冊ぐらい増える。それを40年ぐらい続けてたわけだから(笑)。

こういう蔵書家の気持ちって本当にわからない人はわからないらしい。図書館で借りればいいじゃない、というのはよく言われたし、一度読んだら古本屋に持っていくという人はけっこういる。だけど、私が本を買うのはどっちかというと保存用。研究者だった頃は資料として集めなきゃという使命に駆られていたし(だから同じ作家とか、同じジャンルの本は根こそぎ買って読むのも本が増えた原因)、そうじゃなくても同じ本を定期的に10回も20回も読み返すんで、いちいち図書館なんて通ってられないし、図書館だってつねに本を処分しないとやっていられないから、いつまでもあるとは限らない。

それでまあ、もう読まないと思った本は途中で段ボール10箱単位で古本屋に売り払ったりはしていたが焼け石に水で、今は足の踏み場もない状態。私はこれに加えてCDとレコードとDVDがあるから。
ただ、足を悪くしてからは笑い事じゃなくなってきた。今の私では本の詰まった段ボールの移動だけで命がけ。これはなんとかしなくちゃ死ぬ。比喩じゃなく死ぬ。
禁煙と同じで、こういうのは買う量を減らそうとしてもむだ。きっぱりやめるしかないので、今は原則本は買わない。ことにして、年に20冊ぐらいまで減らした。

そうこうするうち、電子書籍が登場したが、私はほとんど興味はなかった。というのも、私が読みたいような本はほとんど電子化されていなかったから。外国小説とかSFなんて元がニッチなジャンルだからねえ。あと、形がないものはサービス終了したら電子のモクズにしかならないのが怖かった。

それとは別に、自炊という手もあった。これは自分で本をスキャンして電子化するというもの。こちらはかなり心を惹かれたときもあった。手間がかかりすぎるのが難点だったが、今だとすごい安い値段で自炊してくれるサービスもあるし。
ここでネックになったのは、自炊した本は失われるということ。ページをバラバラにしないとできないからね。もともとかさばる本をなくすためのものなんだが、本を切り刻んで殺すという事実を前にすると、どうしてもできなかった。(古本屋に売れば、廃棄される可能性もあるが、少なくとも見ないで済むわけだし)
なんと私はコレクターじゃないが、愛書家であったことがわかった。

そのうち、かつては専用端末でしか読めなかったKindleがスマホでもパソコンでもダウンロードして読めるようになったのと、もういくらなんでもAmazonはつぶれないだろうというめどがたったので、今は徐々にKindleに切り替え中
だけど、さすがに持ってる本を捨ててまでKindleに買い換える気はないので、新刊だけ。それに活字本はやっぱりまだ切り替えの決心が付かないのでマンガと洋書だけ

でもマンガは本当に助かる。とにかくマンガは1作品が長すぎかさばりすぎて、欲しいと思っても本当に買いたくても買えない状況だったので。あと、マンガは元が大きいのに単行本サイズになると小さすぎて、私の目ではネームがろくに読めない。ネームの中のふりがななんて絶対に読めないので、ネットで見るまで『デスノート』の主人公は「つき」という人だと思ってたぐらいだ(笑)。その点、拡大できるKindleは(やっぱり読みにくいけど)助かる。

同じ理由で洋書はもうすべてKindleにすることにした。(というのはあくまで原則で、本当に好きなものは両方買っちゃうんだけど)
理由は字が小さすぎるのと、特にペーパーバックは紙質や装丁がお粗末で時間がたつとバラバラになっちゃうから。洋書のハードカバーは限定だしものすごく高いのに、ペーパーより大きくて読みやすいし、保ちがいいというそれだけのために買ってたぐらいだ。

ただ漫画に関していうとKindleってなんか読みづらいね。読めないってほどじゃないけど、私がふだん使ってる画像閲覧ソフトにくらべると読みづらく感じる。かといってスマホのあの小さい画面じゃもっと読みづらいだろうし、おかげで専用端末買う気も起きないんだが。

というわけで今はかなりKindleにお世話になってるんだけど、最大の問題は値段!!! 日本の電子書籍は絶対に高すぎる!

原料費も印刷代も輸送費も倉庫代もかからないのに、紙の本より数十円しか安くないなんて正気? いつかどっかでこれに対する出版社側の反論を読んだんだが、電子化にお金がかかるとか言ってた。だって今は原稿から電子入稿なのに、どこにそんなに金がかかるんだ?
参考までに海外の価格はというと、今ちょっと見たら、“A Song of Ice and Fire”の1巻目(翻訳だと2分冊だか3分冊だったから相当分厚い)が(Amazon Japanの価格で)ペーパーバック1731円、Kindle版330円だった。ちなみにもともと少部数しか刷らないからもう売ってないが、ハードカバーは4000-5000円ね。これぐらいが常識的に考えて適正価格でしょ。
私が洋書はKindleにしたのも最大の理由は圧倒的に安いから。これなら紙版と両方買う気にもなるわけ。

本ですらこうだから、マンガの場合はもっと深刻。500円のマンガでも20巻揃えたら1万円。子供に気楽に買える値段じゃないし、サラリーマンでもマンガに1万円はちょっと考えちゃうよね。私ぐらい貧乏だと大いに悩む。
もちろん描く方はそれ以上に身を粉にして死ぬほど苦労して描いているのはよくわかってる。それより出版社のほうの企業努力でなんとかならんのかってこと。現実に海外はあれだけ安く出せてるんだし。
考えたら日本のものはCDでもブルーレイでも、輸入品に比べてキチガイじみた値段がついてたから同じ構造か。これも理由を聞くと取り次ぎがどうのこうのという言い訳を聞いたことがあるが、だったら出版社が直販できる電子書籍には当てはまらないよね?
あと、日本には再販価格ってやつがあるからというのも聞いたけど、電子版にもあるのかしら? でもKindle本は安売りしてるから関係ないよね? 調べればわかるけど調べる気力もないや。

こういうことがあるから、先日ネット(のみならず社会も)を賑わした海賊版マンガサイト「漫画村」問題みたいなのが出てくるんだと思う。もちろん漫画村がやってたことは違法そのものだけど、正直、あの手のサイトは昔からいくらもあるし、今でもたくさんある。それがなんで漫画村だけ大問題に発展したかというと、SNSのせいだと言われてる。
ああいう裏サイト(?)にアクセスするのはかつては一部の人だけだったのが、SNSで拡散された結果小中学生や一般人が一斉に押し寄せたからだと。それって元からそれだけ不満がくすぶっていたのが、一気に表に出てきたということじゃないかな。

この問題については私は素人だし、何が正しいのかよくわからないが、Huffpostに載ってた記事「『海賊版サイトは潰すのではなく競争して勝つべき』 漫画『やれたかも委員会』の作者、吉田貴司さんは訴える」の意見に賛成だ。

違法サイトつぶすより、合法で誰もが安く買えるようにするのが先でしょ。値段半額にすれば倍売れるってものじゃないだろうけど、間口を広げればそれだけ新規客も増えるだろうし。今でも売れてないのに、これ以上間口狭めてどうする。
早い話が今回漫画村に殺到した人たちなんて、普段あんまりマンガを読まない買わない層だと思うよ。子供らを見ていると、マジでマンガを読まない子が増えているので驚いているもん。でももしかしたらそれでマンガの魅力に目覚めてファンになった人もいるかもしれない。
私はよく知らないんだが、映画と音楽のジャンルでは、定額見放題・聞き放題でビジネス成立してるそうなのに、マンガや本でできないはずがない。
上の記事で吉田貴司という人が言っているように、いつまでもガラパゴスやってるとAmazonみたいな外資においしいところ全部持ってかれると思う。現実に、映画やゲームでは高すぎるソフトの値段のせいで顧客を確実にひとり(私)失ってるしね(笑)。

それでも電子書籍という選択肢ができたのは本当にありがたい。こないだもAmazonで板橋しゅうほうの作品が定価の80%オフとかなってたので一気買いしたし。ん? でもこれみんなコミックスで持ってるし、そっちを処分する気はまったくないんで、よく考えてみたら、出ていく金が増えただけで、本を減らすという役には少しも立ってないような‥‥

そうなんだよね。禁煙して喫煙の良さに気付いたように、紙の本を買うのをやめたら、改めて活字本の良さに気付いた。今の電子本は表紙や帯もすべて複製してくれてるけど、ただの写真だもんなあ。特に漫画の単行本は、装丁や表紙デザインや紙質に凝ったものが多く、手触りだけでも好き!というのもあるのに、そういう楽しみはすべて奪われる。
禁を破るのが怖いから本屋へ行くことも自制してたのだが、こないだもうこらえきれなくなって本屋に入ったら、宝の山なんで気絶しそうになった。そうそう、この手触りが、匂いが~、ってもうほとんどフェチの世界だが、自分がどんなに本を愛していたかを思い出して、泣きたくなった。
この差を埋めるにはもう値段を安くするぐらいじゃ許せない。DVDの特典映像(それ目当てに買い直したものがけっこうある)とかCDのボーナストラック(そのために同じCD10枚とか買ってたし)みたいに、電子書籍だけの書き下ろしとか未発表作品とか付けてくれなきゃいやだ。

そうそう、値段と言えば、たぶん本が売れなくなってるせいだろうが、活字本の高騰にも驚いた。いや、専門書とかは昔から1万円とかするから驚かないが、ハヤカワSF文庫(ハヤカワだけじゃなく、翻訳小説はだいたいそうです)が1冊2000円、しかもこれは原書を分割してるから、上下巻で合わせて4000円とか、いったいどういう読者を想定してるんだろう? 銀背ならともかく文庫だよ! 文庫!
私は洋書でも読めるからいいが、これじゃ若い人は海外SF読めないし、ますます日本人のSF離れが進むんだろうな、と暗い気分になる。
和書はそこまで高くないだろうけど、それでも安くはないだろうし、これじゃあ大学生が本読まないのも当然のような気がしてきた。図書館へ行く人も減ってるし、こういう時代だからこそ、出版文化や作家を守るには、上に書いたようなドラスティックな手段が必要なのでは?

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