★【マンガ評】私の漫画50年史

というわけで、最近読んだ気になるマンガ(好きなのだけではない)について書こうと思うのだが、アニメについての個人史は前に書いたので、マンガ論の前史としての私のマンガ史を書いてみようと思う。

【ご注意】 などと、偉そうなことを書いていますが、他のジャンルと同じく、私の好みはきわめて極端でなおかつ偏向しているので、決して一般向けのマンガ入門みたいなんじゃありませんし、お子様に見せられるようなものじゃないのもあるので要注意です。(私はそういうのを小学校低学年から読んでるので、感覚が麻痺しちゃってます) 正直人には勧められないマンガも出てくるし。(ヤバい絵とかは貼ってません)

テレビアニメは日本初のアニメ『鉄腕アトム』が始まったときからテレビにかじりついて見ていた私だが、幼少時はマンガとの付き合いは薄かった。理由は主として金がなかったから。親は買ってくれないし、わずかな小遣いはすべて活字本を買うのに使ってしまったので。正確な金額は忘れたが、半年分の小遣いを貯めてやっと本1冊買える時代だった。これじゃマンガなんか買えるわけがない。

そこで子供時代の私にとって、マンガは学校で回し読みされる雑誌で読むか、床屋の待合室で読むものだった。女の子でも子供なんか床屋しか行かせてもらえなかった時代なので。それに学校の図書室や図書館にマンガがあるような時代でもなかった。図書館にマンガが置かれるようになるのはずっとあと。
ちょうど少年マガジン、少年サンデーが創刊された頃で(ジャンプとチャンピオンはずっとあと)、週刊誌は新鮮で垢抜けた雰囲気がいかにも新時代のマンガ誌という感じで、小学生には大人気だった。私のように買えない子も多かったので、最新刊を学校に持ってくる子はヒーローだった。それを休み時間に、みんなで顔を寄せ合ってむさぼるように読むわけ。ページをめくるのが早いとかで喧嘩になったりして。

それにくらべて床屋にあるのは古くからある月刊誌「ぼくら」とか「少年」とか「少年画報」とか。こっちも今から見ると、手塚、赤塚、藤子不二雄といったそうそうたるメンバーが執筆してたんだよね。学校で見る週刊誌はなにしろ短い休み時間に大勢で見るので、じっくり読む暇がなかったが、床屋はおそろしく待ち時間が長かったので、大量に読んだ。私のマンガのルーツはたぶんこの辺にある。あと、本を読むのがめっちゃくちゃ早くなったのもこの頃の鍛錬のおかげかも。何しろ限られた時間内に一冊でも多く読みたかったから。

それ以外には貸本屋があった。ただ私が幼いころ東京の貸本屋文化はちょうど消え去る直前で、私も貸本屋を使った記憶はほんの少ししかない。それも専門店じゃなくて、本屋や駄菓子屋が副業として少しばかり貸本を置いてた感じだった。
貸本こそ玉石混淆で、後の大御所も書いていたが、逆にエログロマンガもあって、子供にはトラウマになりそうなのがけっこうあった。(そういうのでも平気で子供に貸してたし読んでた)

そんなわけで、マンガを買う習慣がなかったものだから、意識してマンガを読むようになっても、自分でマンガを買うということはめったになくて、高校生ぐらいからはもっぱらボーイフレンドや弟の蔵書を読みあさった。おかげで彼らの好みにも左右されたし、私の読むマンガはほぼすべて少年・青年向けということになった。

実をいうと短期間だが、少女マンガを読んでた時代もある。特に高橋真琴(たかはし まこと ♂)が表紙を描いていた時代の「デラックスマーガレット」は、表紙からして汗臭くて暑苦しい少年誌(今みたいにアイドルがにっこりという時代じゃなかった)とは天地の差だった。
「週刊マーガレット」や「別冊マーガレット」とも違って、薄くて高い代わりに紙質も印刷もきれいで、本自体からいい匂いがしてきそうなぐらいおしゃれで高級感があって、表紙もごちゃごちゃ文字だらけじゃなくて画集みたいだし、読むためというより、コレクションするために買っていた。
そのわりに、マンガ自体の記憶はほとんどなくて、特に好きだった作品というのも覚えていないし、そもそも少女マンガ家の名前で覚えているのは高橋真琴の他は西谷祥子(にしたに よしこ)と水野英子(みずの ひでこ)だけだ。だから「花の24年組」とかもまったく知らない。

少女マンガといえば、月刊誌の「豪華10大ふろく」のたぐいにもハマった。こちらはマンガにはまったく興味がないので本誌はいらない。当時の私からすればおそろしく高かったし。ところがお祭りの出店に少女誌の付録だけを袋に入れて売るおっさんがいて、安いのは10円、高くても50円ぐらいで買えたので、私はそれを買いあさっていた。おそらく私の人生で、女の子っぽいものを喜んで買っていたのはこの頃(小学校低学年)だけかも。
驚いたことにこの手のマンガの付録ってまだあるらしいんだが、今だとビニールのトートバッグだのポーチだのになってるようだが、付録に関しては昔の方が絶対よかった。中味はすべて紙製品で、別冊マンガの他、お便りセットとか、絵葉書とかしおりとか、たわいもないものばかりなんだが、紙フェチで文房具フェチの私にはすごいうれしかった。ビニールやプラスチックより紙の方が絶対いいよね。
あと、今なら(私にはすべて不細工に見える)キャラクターとかアイドルの写真が付くところ、そういう安っぽいキャラ物じゃなくて、単に美しい花とかかわいい動物とかの抽象的デザインなのもおしゃれだった。

というわけで、現代の話に行く前にまずは昔の有名マンガ家と、数少ない私のお気に入りマンガ家についての寸評など。基本的に少年マンガのみ。梶原一騎とかあの辺は昔も今も関心ないので入ってない。


私を育てた漫画家たち(巨匠編)

手塚治虫

tezuka-vampire

たびたび「いちばん影響を受けた」と書いている『バンパイヤ』の狼男トッペイ。弟のチッペイがまたかわいいんだよな。

何度も言うが、私は日本初のテレビアニメ『鉄腕アトム』の第一回が始まるのをテレビの前で正座して待っていた世代である。もちろんマンガも当時は夢中になって読みまくったが、少し分別が付いてくると、かえって嫌いになった。
手塚治虫が不世出の天才であることはまったく異論がない。でも彼は多作すぎ多忙すぎた。おかげでいかにもやっつけで書き飛ばしたものがあるのは残念。(それでも並のマンガ家の傑作より上だったりするんだが)
あと、あのヒューマニズムと独特のお説教臭さがいやになった。あまりに無理やりなんで。殺しあいは良くないことだから、肉食動物も草を食べろと強要するとか(『ジャングル大帝』)(笑)。
医学博士なのにロボトミー手術の意味を知らなかったりした(『ブラックジャック』)のも、おそらく多忙すぎたからだろうが、編集者も気付かないなんて! 当時から非人道的手術として禁止されていたはずだし、ロボトミーを題材にした映画やなんかもたくさんあったのに。

それにこれは成人してから気付いたことだが、女性の描き方と扱いが無理。これは『火の鳥』のリビューに書こうと思ってたセリフなんだが、手塚の描くヒロインはまさに男性にとって理想の女性、女性から見ると骨の髄まで男にとって都合がいい女である。逆に悪女は普通の女なんだけどね。

まあ、そんなこんなで「神様」の粗が見えるようになってくると嫌になってしまったわけ。

逆にいいところは動物の絵! 彼の描く動物はとことん擬人化されてはいるが、オスもメスもものすごく色っぽくて好き。私が動物の絵だけうまくなったのは、小さいころ手塚治虫の描く動物を模写しまくったからである。
特に影響を受けた作品は、『ジャングル大帝』、『バンパイヤ』、『ビッグX』、一連のSF短編、『鉄腕アトム』や『火の鳥』はもちろんだが、今の若い人に人気があるらしい『三つ目がとおる』、『ブラックジャック』の時代にはもう卒業していたので何も思い入れがない。
あと、ロック(間久部緑郎)も永遠の悪役キャラとして忘れられない。

石森章太郎(改め石ノ森章太郎)

全盛期は手塚治虫より好きだった。男の子が手塚より美少年だし、男女とも人間は彼の方がハイカラですてきだったので。あと、ストーリーも手塚より大人な感じがした。作品はもちろん『サイボーグ009』。あと作品名は忘れたが、美少年が主人公のファンタジー連作。
手塚との差はやっぱりストーリー・テラーとしての引き出しが少ないってことかな。そのせいか晩年は『マンガ日本経済入門』とか『マンガ日本の歴史』とか描き始めてがっかりだった。『仮面ライダー』も完全にパスしたので、未だに人気があることに驚いている。

白土三平

ShiratoSanpeiKamui

『画集カムイ伝』表紙

床屋に単行本があったので、ほとんどの忍者マンガは読破した。たぶん若い頃の私にいちばん影響を与えたマンガ家。特にいちばん好きな『カムイ伝』は1冊5000円もする愛蔵版を買ってしまったぐらい。ストーリーもおもしろいが、リアルと虚構をうまくとりまぜた構成がすばらしい。
絵もすごい好きで、彼は基本的にリアリズムの漫画家だから農民とかは半端なく泥臭くて汚いんだが、男の子と女の子は本当にかわいくてセクシーだし、動物の絵を描かせたら第一人者、というだけでもケモナーの私には十分すぎる。
ちなみにカムイは(マンガの登場人物では)私の初恋の人だ。いまだかつてマンガのキャラで、これほどまでに美しく色っぽくクールでかっこいい男の子は見たことがない。しかもあの小汚い(ほめ言葉)白土ワールドで、両性具有的美しさというのもポイント高い。ここで言う両性具有とは今どきの女々しい「美少年」とはまったく別物なので間違えないように。
ただ、絵は少年漫画の時代から晩年まで劇的に変わったので、後期の荒々しい劇画調の絵はどうしてもなじめない。我慢できるのはやっぱり『カムイ伝』の終わりまで。でも本当に好きだったのは『カムイ外伝』の3巻目までだったな。上の表紙の頃がそれで、子供向けから大人向けに移り変わる中間の時代がいちばん魅力的だった。あと子供の頃は拷問シーンとか強姦シーンがリアルすぎてかなりきつかった。

子供時代の思い出といえば、『サスケ』だったか『ワタリ』だったかが、少年誌に連載されていた頃、女の子があそこ(たぶんヒダ)を蛇に噛まれて、主人公が口で毒を吸い出すという描写があって、文字通り鼻血を出すほど興奮した男の子たちが雑誌を奪い合うようにして見たり、女の子のところへ持ってきて「見ろ見ろ!」と騒いでいたこと。見せられた私は「へー、少年誌でここまで描いちゃうんだ?」と感心した。

楳図かずお

ストーリー・テラーとしては本当にすごいし、ホラーマンガ家の最高峰。私はホラーマニアなので、当然ホラーマンガは優先的に読んできたけど、人気の伊藤潤二も含めて、どれひとつおもしろくも怖くもなかった。正直、日本のホラーマンガはすべて楳図の焼き直しにしか見えない
にもかかわらず、私にはどうしてもあの絵が受け付けないのと、少女時代にトラウマ植え付けられたので今でもわりと苦手。
トラウマになったのは短編『肉面』で、皮を剥がれた顔のアップが耐えられなかった。ていうか、あれは子供に読ませていいマンガじゃないよなー。あの頃は大人向けも何も区別せず読んでたから。と言っても私は貸本屋でエログロ耐性はあったはずなんだけど、楳図かずおはなまじ絵がうまいだけに解剖学的リアルさと書き込みがすごかったのよ。
逆に当時はやっていた『へび少女』とか『猫目の少女』とかは(ヘビも猫もかわいいし怖くないので)好きだった。もちろん後の大作も好きだが、特に『神の左手悪魔の右手』悪夢の雰囲気を濃厚に再現した作品として高く評価している。打ち切りみたいな形で終わってしまったのが本当に残念だ。

水木しげる

水木しげるは昔から好きだったし、どのマンガもおもしろかった。彼も楳図かずおとよく似ていて、個性的すぎる絵と、とにかくストーリー・テリングが圧巻。絵柄なんかは少女マンガが原点の楳図より、むしろ水木のほうがグロテスクで怖いはずなんだが、子供の頃からなぜかぜんぜん抵抗なかったし、怖いとも思わなかったのは、やっぱりひょうひょうとしたユーモアがあって、天性の人柄の良さがにじみ出てるからかな。もちろん『鬼太郎』も最初期から読んでるけど、妖怪には特に関心なし。むしろ『悪魔くん』のほうが好きだった。
ちなみに美化されたアニメ版の『鬼太郎』は絶対に許さない。

赤塚不二夫

ギャグマンガの神様。彼の狂気のギャグはおもしろいときは本当にめまいがするほどおもしろかったが、露骨に手抜きな回もあったなーという印象。特にマンガの常識を覆すようなシュールな回がすごい好きだった。
好きって言うか、いちばん印象に残ってるのは『もーれつア太郎』かな。ニャロメ、ケムンパス、べしといった動物(?)キャラが好きだったので。
『おそ松くん』がアニメで復活したのには驚いたが、もちろんあんなのは死んでも認めない。

横山光輝

完全にパスしたマンガ家。もちろん『鉄人28号』のアニメは見てたしマンガも読んでたが、SFマンガはやっぱり手塚・石森にくらべると印象が薄いし、忍者ものはどうしても白土三平とくらべてしまうし、結局何を書いても二番手というイメージがぬぐえなかった。まあ結局読むチャンスがなかっただけなんだが、歴史物や原作物で成功したように、描く力はあるけどお話を作る力がないマンガ家という印象。

藤子不二雄

『ドラえもん』のおかげで国民的マンガ家になったが、あいにく『ドラえもん』が流行った頃は、私はもう子供マンガを読む年ではなくなっていたし、アニメも見なくなっていたので完全にパスしてしまった。もちろんそれ以前の『オバQ』や『パーマン』は見ていたが、(自分が子供の頃から)人畜無害な子供向けとしか思っていなかった。手塚・石森の向こうを張ってか、SFっぽいのも描いてるけどいまいちだし。

高橋留美子

『うる星やつら』は大好きだったし、ラムちゃん本当に色っぽかった。だけど、なぜか男子には一番人気らしい『めぞん一刻』が死ぬほど嫌いで見放した。あんな面倒くさい女(しかも年下の学生を手玉に取ってもてあそぶ未亡人の年増女)のどこがいいわけ? それ以来読んでないが、短編や人魚シリーズは好き。

永井豪

『ハレンチ学園』は連載時に読んでたが、自分が女だと女の裸ぐらい見ても何も思わず、幼すぎて「ふ~ん」って感じ。『デビルマン』だけはすごい好きだった。後のバイオレンスものも安っぽくて無理。

山上たつひこ

永井豪と対照的に、下品さには閉口したが『がきデカ』も大人向けも、アナーキーでおもしろかった。永井豪はアナーキーなものを頭で考えて描いてる感じだったが、こっちは天然という感じで。超の付く売れっ子だったのに、突然マンガ家を廃業して小説家に転向して驚いたが、やっぱりマンガの枠には収まりきらない人だったのかなーと思って期待していた。
ところが彼の小説の話はほとんど聞こえてこなくて、マンガ原作の仕事なんかをしているところを見るとやっぱり‥‥。その原作マンガもちょっと変なだけの普通の話だった。

いしいひさいち

ベテランのギャグマンガ家で他にひとりあげるなら彼かな。それぐらいすごい人。野球にまったく興味ない私が『がんばれ!!タブチくん!!』は愛読していたぐらい。ただ、彼のギャグはかなりとんがった毒のあるものだと思っていたので、彼が朝日新聞の連載を持った時は驚いた。まあ、新聞マンガらしいほのぼのに、ときどき得体の知れない変な話を混ぜてくるからやっぱりと思ったけど。
好きな作品は『鏡の国の戦争』(戦争ギャグすごい好きなのになんで少ないんだろ)、『地底人』。彼のミステリ・パロディも好き。

ジョージ秋山

かつてはすごい人気だったんだが、絵も話もすべて死ぬほど嫌いだった。

つのだじろう

上に同じ。


私の愛した漫画家たち

というわけで、上記のような人たちが私の子供時代~少女時代にかけての代表的漫画家なのだが、ここからは私が好きだった漫画家。言い換えると、単行本を持っているような人たち。順序はだいたい好きな順だけど、下の方は適当。ここらへんの作品論はあとでちゃんと書く(つもり)ので、ここでは紹介のみ。いつも言うように、基本的にはギャグが好きなのでギャグマンガ多め。

諸星大二郎

morohoshi-seimeinoki

いつものあれ

私にとっては神なので、もう何も言うことはない。壮大なスケール、緻密な構成、手に汗握るスリルとサスペンス、繊細な詩情、知性と教養、とぼけたユーモア、グロい怪物などなど、私にとって必要なものがすべて入っているうえ、何よりも大切なもの、センス・オブ・ワンダーに満ちあふれているので、私にとって諸星大二郎はSFマンガ家である。(私がSFと言うのは最大級のほめ言葉である。というか、そもそもデビュー作『生物都市』がSFだったけど)
彼にはすべてがある。ないものは画力だけ‥‥とか言ってはいけない。やっぱり諸星先生はあの絵でなくちゃだめなのだ。

それが証拠に、彼の短編を他のマンガ家がリメイクしたのを読んだが、同じ話をしかも紙数も3倍ぐらい使って、なんでここまでダサくてつまらないマンガにできるんだろうと思うほど、才能が違いすぎる。
ん? これは画力じゃなくてやっぱり構成やネームの才能の違いか。とりあえずあの絵も読んでいるうちに気にならなくなるぐらいすごい。って、褒め言葉になってないや。
上で「外国が舞台の漫画は読めない」なんて書いたが、私は中国が大嫌いで中国が舞台だったりするマンガは一切読めないんだが、彼の中国伝奇ものだけは大好きというぐらい好き。

あえてケチをつけるなら、日本の現代を舞台にしたホラーマンガはありきたりすぎて好きじゃないかも。あと当然ながら色気はない。皆無。
とにかくそれ以外は隅から隅まで気が狂うほど好き。百回読み返してもまだ足りない。私の中で文学に匹敵するマンガと言ったら諸星さんしかない

あと、ここまで完成度が高く、しかも完全主義者で(単行本が出るたびに大幅に手を入れている)、天才としか言いようがないマンガ家の場合、ふつうは数作で力尽きて描けなくなるか、そうでなくても極端に筆が遅くて寡作になるかのどっちかなのに、この人は大量生産とは言わないまでも、今でもずっとコンスタントに描き続けているところもすごい。どれだけ引き出し深いんだ。(実を言うと単行本の最近作2作は不満だったので、そろそろ衰えが見え始めた気もしないではないが)

吾妻ひでお

azuma-myaa1

『スクラップ学園』のミャアちゃん

今でこそ、萌えとかロリコンとかを敵視しているが、吾妻ひでおこそはその元祖である。そもそもなんで敵視してるかというと、その手のマンガの少女はちっともかわいくないし、性格もむかつくようなキャラばっかりだから。

だけどその私が見ても、吾妻ひでおの描く少女はかわいいし色っぽい、と思わせるだけでもすごい。

まあ、私にとってロリコン要素はあくまでおまけで、ギャグマンガ家の最高峰として愛してるだけですけどね。
いつも言うように私はギャグを描く方がストーリーマンガよりずっとむずかしいと思うので、ギャグマンガ家を尊敬しているのだが、ギャグこそ笑いの感性とかノリが合わないとどうしようもない。その点、吾妻ひでおぐらい私にはツボに入ったマンガ家はいない。

さらに彼は元祖不条理マンガ家でもある。(このタイトルは赤塚不二夫のものだと思う人もいるかもしれない) これまたルイス・キャロルに大きな影響を受けたせいで不条理大好きの私にはたまらない。
それでとどめに彼はSFの人である。実を言えばこの世代でSFの影響受けていない人のほうが珍しいんだけどね。宇宙とかメカとか出しておけばSFだと思ってるアホより、吾妻さんのほうがよっぽどSFマインドを持っている。

さらに!諸星大二郎は絵のほうは全滅だったが(諸星先生すみません)、吾妻ひでおは絵がかわいい。基本的に手塚治虫や藤子不二雄の系統の丸っこい絵なんだが、当時としてもすでに古いタイプの絵だったにもかかわらず、全盛期(失踪するまで)の吾妻絵は殺人的にかわいかった。女の子だけじゃなく、美少年も本気でかわいくて色っぽいし、動物は無条件でかわいいし。そのかわいい絵で狂った話やエグい話をやるのがまたいい。
ただリバイバルは無理かなあ。ギャグだけど平気でレイプとか(メイル・レイプ含む)、美少女を誘拐してどうこうするとか出てくるし。

代表作はありすぎるが、私が特に好きなのは、『不条理日記』狂乱星雲記『メチル・メタフィジーク』などのSF作品のほか、『スクラップ学園』『ぶらっとバニー』『ミニティー夜夢』あたりが気が狂うほど好きだけど、もちろん短編にも傑作がありすぎてどれとは言えない。

あと、彼は手塚治虫と同じ「同じキャラを俳優のように使い回す」システムを使ってるんだけど、その脇役キャラ、不気味、なはは、のた魚などが超強力で、もう彼らを出しておくだけでおかしい。個人的にはトカゲマニアとしては「しっぽがない」(自分の切れたしっぽを抱えて泣き顔で「しっぽがない」とだけ話すトカゲ)がいちばんかわいくて好きなんだけど。

一時はまさにカルト漫画家として熱狂的なファンがついていたし、SF界隈やロリコン界隈では崇拝されてたし、そこまでマニアックでない『オリンポスのポロン』や『ななこSOS』はアニメ化されるなど一般にもかなり受け始めていたのに、その頂点でアル中になり、失踪した経緯はみなさんご存じの通り。
理由はいろいろあるだろうし、自分でも書いてるけど、失踪前に描いてたものとか見てると、もうギリギリいっぱいで崩壊寸前な感じは伝わってきたので(それでもあの頃のマンガすごいおもしろかったんだよねえ)、失踪したときもそれほどは驚かなかった。殺人的なスケジュールと、描きたいものが描けないフラストレーションと、なまじメジャーになってしまったゆえのプレッシャーとか誹謗中傷とかいっぱいあったと思う。結局そういうものから逃れるために酒に逃げて、とうとうぶっ壊れてしまったんだろうな。

彼が戻ってきたときは奇跡だと思ったけど、このブランクはあまりにも大きすぎて、絵は同一人物とは思えないほど変わってしまったし、なんかかつての吾妻さんの抜け殻を見ているような‥‥。でもいちばん残酷なのは、彼の全盛期のことはまったく話題にならずに、彼本来の著作より『失踪日記』のほうが有名になってしまった現在はなんとも皮肉で虚しく悲しい

板橋しゅうほう

itahashi-aicity02

『アイシティ』の一場面。これは特になんでもない小さいコマで、もっとすごい画像はたくさんあるのだが、なんかもったいないから見せない。

おそらくこの中ではいちばん無名の作家だが、なんでだかわからないというぐらい100%好き。
何度も言うように私はSF至上主義者なんだが、この人は日本では数少ない本格的なSFが描ける人。悪いけどあえて名を隠すあの人とかあの人なんてまったくSFとは認めていない。
あと、ここで述べたような「なんちゃって異世界」じゃなくて、本物の異世界が描けたのも板橋さんだけだ。彼の描く異形の者の異形さもすごい。メカの絵もめちゃくちゃうまい。

圧倒的な画力、圧倒的なストーリーテリングで、なんでこの人が日本で受けないのかさっぱりわからない。べつに内容が難解とか独りよがりとかいうわけでもなくて、痛快な冒険アクション中心なのに。
正直言って、スケールも絵のうまさも大友克洋と同格だし、お話作りや余韻や深さに関しては確実にそれ以上だと思うんだが。

とは言っても、実は受けないのもわからないではないので、たぶん「アメコミ調」と言われる絵と、長編は話が壮大すぎて(というか、たぶん大人の事情で)、半端なところで打ち切られ、きちんと完結してるものがほとんどないせい。
後者はしょうがないにしても、アメコミの何が悪いんだ?と、アメコミは嫌いだがそれで育った私は思うんだが。顔はまあちょっとあれだが、筋肉の描き方がすごいし女の子の体も色っぽいし、絵は天才的にうまいと思う。

作品論は絶対長くなるので後に譲るが、『アイ・シティ』、『セブンブリッジ』、『凱羅』あたりをおさえておけば間違いない(ただしどれも「俺たちの冒険はまだこれからだ」という感じのところで終わっている)。個人的にはSF短編集『エイリアンクラッシュ』とか『Ground Maker』もすごい好き。板橋版『AKIRA』というべき『David』も。

こんな天才を黙殺する日本の漫画界なんて‥‥とぶつぶつ言いながらWikipediaをチェックしてたら、なんと彼は今では京都精華大学のマンガ学部の教授なんだそうだ。ひええー! 今回いちばんびっくりした。雑誌『月刊OUT』なんかでデビューしたから、ただのおたくかと思ってたよ。そしたら京都市立芸術大学日本画科卒業だって! 日本画科でアメコミ絵??(昔から好きな人だからたぶんそれはどこかで聞いてたはずだが忘れてた)
ふむ。まあ見る人はちゃんと見てたんだね。
突然消えたように見えたから、マジで心配してたのよ。なにしろネットなんかない時代だったから知らなかったけど、マンガだけじゃなくいろんな仕事もしてたのね。とにかく好きな人が餓死したわけじゃないことがわかって本当によかった。

大友克洋

というところでもはや何も言う必要のない御大、大友克洋。もちろんこの人もSFの人だが、画力と映画的な表現は神がかっている。ただ、ちょっと神格化されすぎかなとも思う。
『AKIRA』『童夢』は確かに超の付く傑作だが、他のは個性的だしおもしろいけど、そこまですごくはないと思うんだが。だいたい、途中から映画の方に行っちゃったので作品数も極端に少ないしね。この人が描き続けてくれていれば、と思うと本当に残念だ。
そういえば彼、吾妻ひでおと仲良かったんだよね。吾妻の漫画にレギュラー・キャラとして出てたぐらいだし。吾妻さんは諸星大二郎もリスペクトしてたみたいで、よく作中にパロディが出てくる。やっぱり私の好きな人たちって共通点あるんだな。

水野純子

mizuno-puretrance

『ピュア・トランス』の登場人物(?)たち

今ではどちらかというとキモカワ系のイラストレーターで、マンガはもうほとんど描いていないのがもったいないと思うぐらい、彼女の作品はインパクトが強かった。
特にデビュー作の『ピュア・トランス』はあの絵で本格的な近未来SFを描くという意欲作。かわいらしい記号のような絵だし、元はCDの宣伝用(?)だから、雰囲気だけのマンガかと思ったら、意外や骨太でドラマチックなストーリーに圧倒された。

お話もすばらしいが、水野さんの魅力はやっぱり女の子の絵。なぜかほとんどいつでもトップレスでお尻やおっぱい丸出しの女性キャラは、その無防備そのものの姿にも関わらず、搾取され消費される性とは対極にいる強い女性で、「強い女性フェチ」の私にはたまらない。女性作家が苦手な私だが、やっぱりこういうのは女性でないと描けないのかも。
なんかのインタビューで「プレイメイトみたいな体型の女の人が好き」と言ってたが、今どきの胸もお尻もぺちゃんこなロリコン・キャラから見ると、豊穣の女神みたいなボンキュッボンの体型がすばらしいし、しかも色っぽい。男の(特にエロ漫画家の)描く女の子って、ロリでなければ牛みたいなだらしない乳で、女から見るとまるっきり魅力を感じないが、水野さんのキャラは女が見てもドキドキするほどかわいいし色っぽい。
しかし女の子の絵は気合いが入っているのに、男性キャラはすべて2頭身で、適当な絵(に見える)なのは露骨な差別かも。

どの作品も、かなりヘヴィなテーマを扱っているんだが、ギャグ要素が強いのも好み。
これこそ完全にファンシーな見た目にだまされるが、実はものすごく考えさせられる悲劇的なエピソードが多い『ファンシージゴロ・ペル』と、童話三部作『水野純子のヘンゼル&グレーテル』、『水野純子のシンデラーラちゃん』、『人魚姫殿』も圧巻だ。短編や4コマも好きって言うか、嫌いなマンガはひとつもない。

まあそのわりに、本業のイラストの方はそれほど‥‥っていうところが私の限界で、たぶんもともと「女の子」が苦手なせい。
ただ、彼女が『アドベンチャー・タイム』のイラストを描いているのを知って、やっぱり!と。やっぱり好みが似てるんだよなあ。彼女の絵と『アドベンチャー・タイム』の絵って、もともとそんなに違いはないので雰囲気もばっちりだし。というか、『アドベンチャー・タイム』の作画している人って絶対水野さんの影響受けてると思う。

そうそう、言い忘れたが、水野さんは日本じゃ完全に無名だが、海外では高く評価されていて、ググってみても英語情報のほうが多い。あの絵が海外で受けるとはちょっと意外だったんだが、やっぱり私はガイジンかも。

ねこぢる

自殺してしまったねこぢるも私としては珍しい女流作家。ねこぢるは私にはものすごく好きだしわかる部分と、理解できない部分と、積極的に嫌いな部分があるんだけどね。でもおもしろいことは死ぬほどおもしろいし、笑えるし、リアルな「夢」を描く漫画家としては高く評価している。死後、元旦那の山野一(彼も鬼畜漫画家だったのに‥‥)が描いた続編も好き。

駕籠真太郎

エログロ漫画家だが、私は彼の描くマンガはSFだと思って読んでいる。そしてSFとしては非常にレベルが高いし、知的。身も蓋もないエロ漫画ながら、知性と教養を感じさせるのが彼のすごいところ。不条理だけど理屈っぽい理詰めの論理が多いので、私は理系っぽい人だと思っている。
私が駕籠真太郎を好きなのは、まったくマゾっ気はないのに『家畜人ヤプー』の沼正三は好きなのと似ている。性的嗜好以前、下半身以前に、脳に来るマンガ

彼自身がどこかに書いてたが、エロ漫画はエロさえ入っていれば何を描いても許されるのだそうだ。それでそこに付け込んで、めっちゃくちゃアナーキーな漫画を描いているが、私の目にはすべてSFギャグ漫画に見える。だいたい彼の描く女の子ってガリガリでまったくエロくないし。
思えば吾妻ひでおもSFを描きたくても描かせてもらえない苦しみについて書いてた。手塚の時代はともかく、70年代以降はSFは「マニア受けしかしない」というので嫌われていたのだ。その意味駕籠は頭いい。もし現代にガロみたいな雑誌があったら、そっち方面で特殊漫画家として成功したんじゃないかな。

ただ、描いてるのが猟奇エロ漫画なせいで、人目に触れないのがもったいないと思う。
唯一の非エロ漫画(で、あまりキチガイでもない)『パラノイアストリート』不条理な思考実験ギャグとして前代未聞のおもしろさだったので、ああいうのがまた読みたい。
ただ、エロもグロもリョナも平気だけど、スカトロだけはやめてください、お願いします。

吉田戦車

吉田戦車のデビューは鮮烈だった。私はもともと吾妻ひでおのファンで不条理ギャグが好きだった上、四コマも好きだし、彼の感性は吾妻さんともまったく違ってたから新鮮に読めた。ただ、今はさすがにワンパターンで飽きたかな?
いちばん好きだったのは『戦え!軍人くん』。軍隊とか戦争ってお笑いとは最も遠いところにある、でも見方を変えればそれ自体がギャグなんで、戦争をテーマにしたユーモアって最高なんだけど(最高傑作はもちろん『キャッチ=22』)、戦争ギャグって少ないな。上に述べたいしいひさいちぐらいか。しかしいしいもそうだけど、これもすべて粒ぞろいで笑える。
あとはもちろん『伝染るんです。』とそこからのスピンオフ、それと『ちくちくウニウニ』。キャラで好きなのはやっぱり「みっちゃんのママ」。

高橋葉介

初期作品『宵闇通りのブン』

今の人には信じられないだろうが、初期の高橋葉介は筆を使った独特なタッチの、日本人離れしたヨーロッパ調の華麗な絵柄で、美少年美少女の出てくるシュールでブラックなファンタジーを描いていた。当然私はすごい好きだった。

ところがしばらく離れてから見てみたら、いつのまにか絵が、というかキャラクターの顔がものすごい不細工になっていて(特に老若男女を問わず全員が下ぶくれのおたふく顔なところ)、純和風のホラー漫画家になっていた。だいたい美少女が売りだったのが、エロっぽい年増女が中心になってるのはやはり作者もお年を召したからか。この変化のほうが私にはホラーだった。

それでももちろん描ける人なので、話はおもしろいんだが今の絵はどうしても無理。好きなのは初期短編の他はライヤー教授の午後とか『腸詰め工場の少女』

とり・みき

彼は吾妻ひでおと大友克洋に大きな影響を受けた漫画家だし、ギャグはおもしろいし、絵はかわいいし小ぎれいだし、スマートだし知的だし、まさに私のタイプのはずだが、昔からどうもそのわりに今イチ乗れないという漫画家。
Wikipediaには「理数系ギャグ」とか書かれてるが、その通り、いかにも頭で計算したギャグだからだと思う。
その意味では上で理系と呼んだ駕籠真太郎も同じなのだが、駕籠はいろんな意味でぶっ飛んでるのがすごいし、キチガイの内宇宙を観察してる気分になれるのに、この人はつねに醒めたままで自分がどう見られるかを気にしている感じが嫌い。
変なたとえだけど、すごい美人なんだけど、いつでも鏡をチラチラ見て、髪一本乱れないように気を使ってる美女のような。それよりは天然の美女の方が付き合いやすいし魅力的だよね。
よってギャグもシリアスもいかにも一生懸命頭で考えましたという感じで、「どうです、おもしろいでしょう?」という態度が感じられてしまうのだ。

そもそも御大、赤塚不二夫がそうだったように、優れたギャグ漫画家には狂気が欠かせない。ここにあげたギャグ漫画家全員が狂気をはらんでいるのに、とり・みきにはそれがないのだ。うちの本棚に並んでいるのを見ると、なんか狂人の群に一般人がひとりだけ混じってオロオロしているような気がする。(すげーたとえ!)

さらにこの人もSF者で、ふつうなら私はSFと名が付くだけで大甘になるのに、とり・みきにはぜんぜんSFマインドが感じられないというのもマイナスかな。映画好きにも関わらず、私とはまったく趣味が合わないし。
そういうわけだから、すべてが平均点以上で駄作というのもないかわり、特に突出して好きなのもない。比較的好きなのは書店員の田北鑑生と共作した『DAI-HONYA』と『THE LAST BOOK MAN』。愛書家としてこのマンガには共感するので。

丸尾末広

エログロならこの人も。高畠華宵も好きなので、この手のレトロな絵も好き。(高橋葉介や昔の山田章博もこの系統) もちろん彼の描く美少年も。どっちかというと絵描きの人で、お話はそれほどおもしろいというほどでもないかな。『少女椿』は好きだったけど、あれもどこかで読んだ感じの話で、あんまりオリジナリティが感じられない。最近は江戸川乱歩なんか描いてるようだが、やっぱりお話は書けない人なのかも。

古屋兎丸

『Palepoli』でデビューしたときは神降臨だと思った。売り物の絵はいかにも美大出身らしい凝りに凝った美しい絵だが、おかげで個性がなさすぎていかにも美大崩れって感じで、それよりシュールでブラックなギャグが好きだった。こういうの描く人は(鬼畜系マンガ家みたいに)絵もグロくて汚いのが多いので、きれいな絵でこれをやるのが気に入って。
その後もずっと追いかけていたんだが、『ショートカッツ』まではすごい好きだったもののその後見離した。
今彼が描いているものは、『幻覚ピカソ』、『ライチ☆光クラブ』、『アマネ†ギムナジウム』あたりを読んだけど、確かにユニークだし個性的ではあるが、私にはまったくリアリティもないし楽しさが見出せなかった。

しりあがり寿

とにかく『真夜中の弥次さん喜多さん』には仰天した。

それまでヘタウマ絵のほのぼの脱力系ギャグを描く人だと思っていたのに(でもそれが好きだった)、いきなりのディープでヘヴィな内容に。「ヤク中を治すためにお伊勢さん参りに出かけるホモ・カップル」というふざけた設定からは想像もつかないバッド・トリップのようなマンガ
これが続編の『弥次喜多 in DEEP』『真夜中の水戸黄門』になると、それがエスカレートしてもうなんでもあり。主人公が平気な顔で屍姦とかするし!
でもエログロナンセンス大好きな私はもちろんこれがすごい好き。「夢ならではの不条理」も好きなので、これも夢の雰囲気をよく伝えているマンガだと思う。

でもこういうもの描き始めたから、「この漫画家ももうすぐ壊れるな。やっぱりギャグ漫画ってきびしいんだな」と思っていたら、あいかわらず脱力ギャグも描いてるし、『方舟』みたいなしみじみ泣かせるマンガも描けるし、しまいには朝日新聞の夕刊漫画まで描き始めるし、なんかいっぱしのアーティスト扱いだし(そういや彼も美大出)、ある意味、板橋しゅうほうが大学教授になったよりもびっくりした。

ほりのぶゆき

えー?と言われそうだが、だから私はギャグマンガが好きで、お侍さんが好きなんだってば(笑)。それで日本で唯一の時代劇ギャグが描けるほりのぶゆきが嫌いなわけがない。『子連れ狼』みたいな劇画タッチの絵で4コマを描くのもおもしろかったし。
作品は『からげんき』『江戸むらさき特急』『ちょんまげどん』あたりがすごい好き。

山田章博

彼も大正ロマン(明治含む)系の耽美絵で、とにかく絵がうまいので人気があったが、彼の初期短編が好きだった。特に色っぽい悪魔(♂)がでてくるやつとか。でも『ロードス島戦記』(日本のファンタジー)のコミカライズとか描き始めたあたりで、「ああ、仕事ないのかなあ」と思っていたが、今はイラストの人みたいね。

藤原カムイ

この人なんかもかつては今でいう「意識高い系」のインテリにもてはやされたんだが、今はドラクエの漫画なんて描いてるんだよねえ。まあ、誰でも食べていかなきゃならないからねえ。古屋兎丸もそうだけど、こういう感受性ピリピリの「少女」を描くマンガ家って、私はすごい苦手。でも彼の筆力は認めるし、ナンセンスギャグの『チョコレートパニック』とかはすごい好きだった。

立沢直也

この人も『禁ドン!』でデビューしたときはすごい興奮した。なぜかって、もうご存じのように私はグロとギャグが好きなんだが、四コマで鬼畜漫画家って初めてだったから(笑)。もちろん鬼畜なだけじゃなく(だけなのもあるが)めちゃくちゃ笑える。これなんて私は大笑いしたんだけど。

だけど、読者の反響は「キモい! やめろ!」とさんざんだったようで、(全部がこういうほのぼの?ギャグじゃなくて、血糊やはらわたまみれの作品も多かったので)、それでもこの路線で何冊か出したんだけど、その後まもなく見なくなって、今頃どうしてるのかと思ったら、居酒屋をテーマにしたグルメ漫画なんか描いてた、というのは前の記事で書いた通り。
そのくせ、Amazonで見たらこれがけっこう評判がいいのね。うーん、元が描ける人だからだろうが、本人は鬼畜な話の方が好きなんだろうに。

唐沢なをき

上のとり・みきとよく似たタイプのギャグ漫画家。つまり頭で考えすぎということ。初期のアホっぽい作風は好きでよく読んでいたのだが、だんだん醒めていやになってきた。メタ漫画とか、すべて彫刻刀で彫った『怪奇版画男』のような実験漫画とかもすごいとは思うんだが、おもしろいかと言われると‥‥。
兄の唐沢俊一とちょっと似てて、いかにも頭良さそう、いかにもおもしろい人っぽく見せているがそれほどでもない、ってところがだめかな。と、ひどいことを言うが、少なくとも兄よりははるかに才能もあるし頭もいい人だと思う。

だから作品も好きなのと嫌いなのと半々。いちばん好きなのはスプラッター・ギャグの『ホスピタル』と、鬼畜うんちく漫画の『BURAIKEN』
兄と同じくレトロ好きで(だから二人ともすごい年寄りなのかと思ってた)『二十一世紀科学小僧』みたいな古い漫画のパロディもすごいうまいと思う。

とまあ、この辺が私が単行本持ってるというか、この数十年ずっと好きだった漫画家。これでもたくさんもれてると思うが。

なんか私が好きになる漫画家って不幸になる人が多すぎるような気がする。(自殺したねこぢるや、失踪した吾妻ひでおが最たるものだけど、不幸じゃないにしても水野純子ちゃんみたいに日本じゃ受けないとか) というのも、私の好みがニッチすぎるからで、そのぶん一般受けしないってだけなんだろうけど。

このところ、いろいろ読んでそれを実感したので、やっぱりこういうマイナーだけど優れた漫画家は誰かがどこかできちんと評価してあげないでどうする!という気になったので、このあとは、比較的最近読んでおもしろかった(つまらなかったのも)作品を選んでリビューを書こうと思う。
2ちゃんねる(今は5ちゃんねるか)のマンガまとめブログとか見ても、出てる作品や作家は判で押したみたいに同じのばっかり(『ワンピース』に『ジョジョ』に『ハンターハンター』に『進撃の巨人』という感じ)で、マイナー漫画(マイナーじゃないのもあり)なんてほとんど見ないもんね。
あと、ギャグに関しては私はウェブマンガをかなり高く評価しているので、ウェブはウェブでまとめてみたいと思う。

 

カテゴリー: マンガ評, タグ: , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , パーマリンク