★【マンガ評】ながいけん『第三世界の長井』(2009-2019)

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人は何故、人たり得ているのか。
人間社会とは何なのか。
神は存在するのか。
真実など、この世にあるのか――
ながいけんが紡ぐ新世界。
現実と虚構が複雑に交錯する「万物の真理」の世界をあなたも旅してみませんか?

――オフィシャル・サイトの「作品紹介」より
(ただしこれはあんまり真に受けない方がいい)

というわけで、漫画リビューの最初には『ゴールデン・カムイ』が来ると思ったでしょ。残念でした。私がそんな月並みなことをするわけないじゃない。もちろん『ゴールデン・カムイ』は大好きなので、完結したら何か書きたいけど。

そこで記念すべき漫画リビューの第1弾は(前にもますむらひろしとか『てるみな』とか書いてるのを忘れてる)、崩壊する現実がテーマの不条理ギャグ漫画。なんで知ったのか思い出せないんだが、たぶんAmazonのおすすめに出てきたんだと思う。やるじゃん、Amazon。

神聖モテモテ王国

ながいけんという人は、これの前は少年サンデーで『神聖モテモテ王国』というギャグ漫画を描いていた人。
『神聖モテモテ王国』というのは、「ファーザー」と名乗る自称宇宙人のパンツ一丁のおっさんと、やけに老けた15歳の坊主頭にメガネの少年「オンナスキー」が、あの手この手で不可能なナンパに明け暮れる話(笑)。ハイテンションなファーザーに、ひたすら冷静なオンナスキーが突っ込みを入れるのがパターン。

さすがに私にはこれは‥‥と思ったが、ちょっとだけ読んでみたら、確かに『第三世界の長井』がこの延長線上にあるのはわかるわ、というぐらいわけのわからない支離滅裂の不条理ギャグパロディ満載なところや、途中で変な歌詞の歌が流れるところは同じだし。この主人公の二人が『第三世界の長井』にもゲスト出演しているし。

しかし『モテモテ』はさすがに無理だったが、こちらはなぜかツボにはまってしまった。ただ、これこそ本当に読者を選ぶ漫画で、受ける人にはとことん受けるが、わからない人には何がおもしろいのかさっぱりというやつなんで、あまりこのリビューを真に受けないように。

崩壊する現実と不条理ギャグ

まずいきなり今風のファッションの少年と、アイドルみたいな格好をして巨大なマイクを持った少女が、路上で(なぜか後ろ向きで顔を合わせずに)立ち話をしているが、なんの説明もないので、この二人がどういう関係でどういう状況なのかさっぱりわからない。なんでかヒーロー(高校生)に会うことになってるらしいが、この二人は敵同士らしく、少年は少女を「とんでもねえ悪魔」とまで呼んでいる。

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なぜかうちの環境ではクリックで画像拡大ができないんだが、右クリックで「画像を開く」(Chrome)「画像だけを表示」(Firefox)で大きい画像が開きます。

それで喫茶店へ行くとそのヒーロー(これがタイトルの長井)が現れるのだが、それがこの人

nagai03デッサンがメチャクチャ狂った、子供が殴り書きしたみたいな容姿で、しかもそれがすべてコピペ(同じ絵の使い回し)で、変な訛りのある日本語で意味不明なことをしゃべる、自称アメリカ人。

おわり」とか書いてあるが、これは漫画の冒頭部なのでもちろんまだ終わりじゃない。彼に劣らずヘンテコな「博士」(40歳無職、職歴なし。イカ占いの第一人者。頭の上に大きなツノが生えていて、自分のことをワイと言う。この人もコピー)も登場して説明してくれるのだが、どうやらもうすぐ宇宙人が地球を侵略に来て、人類はほとんど滅びる、長井はその宇宙人に対抗する人類唯一の希望らしい。

博士の言葉通り、すぐに宇宙人は次々現れるのだが、みんな単にコスプレした一般人みたいで、ほとんどバトルにもならず、ヒーローが泣いて逃げ帰ったり、宇宙人が警察に不審者として連行されたりする

これだけならほぼ『モテモテ』と同路線で、笑えはするがそれほどおもしろくもないんだが、このマンガがおかしいのは、そこじゃない。

上に引用した作品紹介もなかなか壮大だが、Wikipediaには「ものごとの意味や関連性が歪み、すべてが不条理と化すことによって崩壊しつつある(らしい)世界を舞台に、その世界の「主人公」である青年・長井と、彼に注目する謎の少年の二人を中心に展開される、メタフィクションの性格を持った不条理SF」と、やけに偉そうなことが書いてあるが、本当にそうなのか? ただのおバカギャグマンガじゃないのか?

実はその中間、つまり脱力するほどくだらないギャグマンガと、超シリアスなメタフィクションの間を、絶えずフラフラと揺れ動いているところがこの漫画の魅力で、頭がヘンになりそうな漫画が好きな人にはおすすめ。

神でいることに疲れた男

長井とその周辺はどうせむちゃくちゃなので考えても無意味だからいいが、謎なのはこのキャップをかぶった少年。すべてに対して距離を置き、何を見てもニヒルな態度を崩さず、アホなギャグにいちいち冷静な突っ込みを入れる役、というのは『モテモテ』の主人公の少年と似ているが、こっちのほうがはるかにニヒルで厭世的。

彼はどうやらこの少女(音那という名前)と、なんらかの敵対関係、もしくはライバル関係にあるらしいのだが、見たところ(音那じゃなくて彼の方が)単なるツンデレにも見える。
彼は長井を監視し観察する任務を帯びているらしく、定期的にいかにも政府の要人っぽい3人の背広の男のところに報告に行くのだが、男たちはこんな子供に敬語を使う。

ずっと「何者なんだ、こいつは?」と思いながら見ていたんだが、それは長井の「お前は誰デスカ?」という短刀直入な質問で明らかになる。

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これは長井じゃなくても驚くわ

というわけで彼は引退した神らしい。狭いアパートに住んでインスタントラーメン食ってるんだけどね。と言うと『聖☆おにいさん』みたいに聞こえるが、彼はキリストとか仏陀なんてもんじゃなく、この世界の創造主らしい。
彼がいつもかぶっている帽子の目玉はちょっと「ホルスの目」に似てるから、エジプトの神かな?とも思ったのだが、べつにそうじゃないみたいね。

今は自分でもなんだかわからないものになっているが、その気になれば空も飛べるし、千里眼の持ち主で遠くの出来事を見通せるし、一瞬で海底にテレポートできるし、やっぱり神の力は持っているみたい。
ちなみに名前はショウ、または大神、または大神ショウが本名らしいのだが、本人はその名で呼ばれることを嫌って、I・O(アイ・オー)と呼ばせている。人によってはゴッドメンシュ(ドイツ語で神人)とも。

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まあ、神なら確かにそうでしょうな。でもダンゴ食いながら言うな!

音那もまた神らしい。二人が(空の上で)争っているのを見て、政府の人間が「神同士でやりあってる!」と言ってたから。

世界の終わりと謎のアンカー

いろいろと情報を総合すると、どうやらI・Oはこの世の終わりだか、人類滅亡だかが避けられないことを知って、「やーめた」とばかりに神の座を放棄したのだが、そのあとを継いだ音那は日本政府の力も借りてなんとかそれを阻止しようとして奮闘しているところらしい。だけど、彼女のやり方が気に入らないI・Oは、彼女が作戦内容を何も教えてくれない不満と、この世界への未練もあって、対立している(というかすねている)という感じか。
長井みたいな変なのに地球の運命を託すはめになったのは、音那の失策らしい。
ちなみに地球とか人類とか言っても、話はすべて狭い町内で進行する。

なんで長井があんなに変になってしまったかというと、彼のキャラクターがおかしな「アンカー」(エクリチュール・アンカーまたはEアンカーとも呼ばれる)によって、たえず書き換えられているからだ。(元はまともな人間だったらしい)
アンカーは作中では「単純に言うと望みを叶える力」と説明されているが、マンガの中に出てくるアンカーは、昔の2ちゃんねるのアンカー(しばしば安価と書かれる)そのものだ。今の時代にちょっと古いなと思ったが、連載開始は2009年だからまさにこういうのが流行っていたころ。

どういうのかというと、掲示板でやる一種の言葉遊びで、みんなでひとつの物語を作ったり、マンガの設定を書いたりする。その際、スレ主が「20番は主人公の名前」というように指定する。するとみんなが勝手な(なるべく受けを狙ってふざけた)名前を書き込むのだが、偶然レス番号が20番となった人のアイディアが採用される。こうやって、主人公の職業とか、弱点とか、苦手なものとかを作っていくと、支離滅裂な人物が生まれておもしろいというわけ。
ちなみに作中では、「例えて言うなら…映画の設定や脚本をスポンサーの息子が無理やり書き換えちゃった様なもんですか。スポンサーにゃ逆らえないから…監督もその歪んだ設定やら脚本で、できるだけまともな映画をでっち上げなきゃならない」とわかりやすいたとえで説明されている。

それとまったく同じアンカーが、手紙の形でI・Oの元に届く。アンカーはたとえばこんな感じ。かっこの中はアンカーを投稿した者のハンドルネーム。ハンドルネームがあるっていうあたり、2ちゃんねる以前の感じにも似てる。パソ通か?
でも実際に、永井と博士はこのアンカー通りのキャラなんだよね。(アンカーはこの後も続々と増えていき、ますますカオスになっていく)nagai05

いったい誰がアンカーを出しているのかはわからないが、これは本来音那がコントロールしなくてはならなかったのに、彼女はその制御を失ってしまったらしい。
人類滅亡の危機に2ちゃんの安価で対抗する! なんかこれって最悪のシナリオで、I・Oが神様やめたくなる気持ちもわかるような気がする。

ちなみにこの若いメガネは橋元カンジというのだが、興奮するとこういう意味不明の専門用語っぽいもので話すようになり、言ってることがわからないという点では長井以上でおかしい。ギャグマンガでこういうキャラって初めて見たので新鮮。

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「長井のあとここに来るとギャップがきついんだよ」とI・Oも言ってるが、読者もきつい。

ところで現実って何?

とりあえず、この調子で長井と同じぐらいアホな宇宙人が対戦するドタバタ・ギャグが続いていくのかと思ったら、だんだん笑えなくなってくる。最初はヘボかった宇宙人も、徐々に攻撃力がエスカレートして、飛んでるヘリは落とすし、アメリカの原潜は沈めるし、とうとう本物の「邪神」まで現れる。
この邪神、Wikipediaでは「旧支配者(クトゥルー神話)めいた姿」と書いてあるけど、これはクトゥルー様じゃなくて、「空飛ぶスパゲッティ・モンスターだぞ。ただ触手がスパゲッティじゃなくてイカゲソだったから、やっぱりクトゥルー入ってるけど。

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これが空飛ぶイカゲソ・モンスター

それと同時に、最後の方ではだんだんギャグが減って、やけにシリアスな内省が増えてくる。
世界がどんどん異常なものになってきているのに、みんなが気付かない理由を神経学の失認にたとえたり、盲点を引き合いに出して哲学論議になったり。盲点は見えないはずだが、脳がその抜けた部分を勝手に補完して見せているので、みんな盲点の存在に気付かない → 目に見える現実は脳が作り出した幻影に過ぎない、といった具合に。

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それはいいが、読者はまだ何がなんだかさっぱりわからないことに変わりはない。I・Oもまた、自分が誰なのかというアイデンティティの問題に苦しむ。

世界はもう破綻してる。
それを嘘で隠してる。
みんなで嘘に乗る。
そこで生きるために…
きっとそれが正しい。
なのになんで俺だけ違うんだ。
俺はここに生きる仕様じゃない。
けど行くとこなんてない…
(I・Oの独白)

そしてI・Oはアンカーを送ってくるのは誰かという問題を考え始める。彼もアンカーは作れるが、これほど明確に言語化されたものではなく、「もっとあやふやでなんとなくしかわからない」。そこで彼は自分と音那の他にも「本当の神」がいるんではと思い始める。

そのころ彼は地球を一周する「境界線」の存在に気付く。(単に道路に引かれた白線にしか見えないし、人々は普通にその上を歩いている) それは未知との境界らしいのだが、自暴自棄になったI・Oは「もういいよ。世界も俺もだ。どうにでもなれ」と言って、線をまたぐと、その場で倒れて死ぬ

というところで単行本4巻は終わり。どうなったのか気になりすぎて、雑誌連載をチェックするはめになった。するとなんと! (ここから下は単行本未発売部分のネタバレになりますので要注意!!! 普通は絶対こういうことやらないんだけどやむなく)

 

 

 

これが世界の終わり方?

I・Oは一度死んだのだが、さすがに神だけあって1週間後に復活する。蘇生後しばらくは混乱していたが、目覚めたところは同じ壊れた世界だった。一時は絶望に囚われていたI・Oだが、蘇生後は何か吹っ切れた様子で、これまであえて追求しなかった手紙の差出人、もしくは「本当の神」を突き止めることを心に誓う。

そこに新たな宇宙人として長井のそっくりさんが現れバタバタしている最中に、「残念ですがここまでです」という作者の言葉で唐突に終わり。

打ち切りかよ!!! 

話の途中どころか、会話の途中だったのに! まあ、途中で終わるから打ち切りっていうんだけど、せめて最終回ぐらい、なんとかしてほしかった。

まあ考えてみればそれ以前に、このマンガがメジャー誌で10年も連載続いた方が不思議なんだが。これが今年の1月のこと。
しかし10年も連載していたのに、単行本にしてたったの4巻?と思っていたが、雑誌を読んだら1回が5ページとか6ページなのね。しかも月刊誌で! この作者なに食べて生きてるんだ!

残された謎

おかげで多くの謎が解明されないまま。というか、解明された謎なんてひとつもないし、解明する気があったのかどうかもあやしいし、不条理ものは種明かしされても虚しいので、むしろこういう終わり方が正しいとも思うけど。

とりあえず、この雑誌連載の扉(単行本ではカットされているので、これまでもそういうのがあったのかどうかは知らない)の文句がなんかヒントっぽい。

4巻が終わったあとの扉にはこんな文句が。

「この物語は全てI・Oが観ている幻覚に過ぎない…とする」
「幻覚って何?」
「幻覚とは実在しないものを感じる事」
「じゃあ実在って何?」
「…………」←今ここ。

え? これってすべてI・Oが見てた夢ってこと? そういうのは好きだけどちょっと意外だなあ。
その後のエピソードの扉はこんな感じ。

「全てを認識可能な主人公の物語」
「世界の真実が観え、アンカーと呼称される人類に未知の力も観え」
「果てには世界の終わりまで観えてしまう」

うーん、これはすでに作中で描かれていたことだなあ。ということは前のあれも事実なの?? いや、不条理だからって夢とか幻覚ですませるのって安易すぎるでしょ。たぶんあれは嘘だけど。
でもこれってタイトルは長井だけど、やっぱりI・Oの話だったのね。はっきり主人公と書かれてるし。確かに彼がいちばん複雑で魅力的だし。

いちばん気になるのは、アンカーの手紙を送ってくる本物の神とやら。というと、I・Oと音那は本物の神じゃないってことか? だったらなんで空飛んだりするんだ?
それにこの手のマンガで本物の神と言ったら、それはもう作者以外にないじゃない。アンカー考えてるのも作者なんだし。ただ、それを言っちゃったら本当に終わってしまうと思うんだが、出すまでに終わっちゃったな。

ありえたかもしれない結末の予想

とりあえず私の貧しい想像力の範囲で、ありえたかもしれない結末を予想してみると‥‥

  • すべては「I・Oが見ている幻覚」だったが、I・Oは神でもなんでもないただの人間だった。
  • すべては「I・Oが見ている幻覚」だったが、I・Oはやっぱり本当に神だった。
  • 宇宙人が来襲するが、長井たちがそれを撃退し、現実は正常に戻る。長井たちも元のまともな人間に戻ってめでたしめでたし。
  • 宇宙人の来襲で人類滅亡。
  • 宇宙人が来る前に現実が完全に崩壊して何が何だかわからなくなって終了。
  • ギャグ漫画らしく、このままあいかわらずドタバタが続いていく。

うーん、どれもありうる気がするし、どう終わってもおもしろいと思うが、できたら私には想像も付かないような終わり方がいいなあ。

音那って何者なの?

I・Oと音那の関係と、音那が何を考え、何をもくろんでいるかもわからずじまいだった。I・Oの推理では、現実が崩壊し始めたのは人間が増えすぎたからで、音那は人類の半分を抹殺しようとしているんじゃないかということだったが、なんか根拠薄弱で陰謀論みたいで、私は違うと思う。
音那がなんでアイドルみたいな格好をしているかも謎のままだったな。I・Oはそのことにいらついてるみたいだったから、単なるいやがらせかもしれない。しかし明らかにI・Oの片割れみたいな存在なのに、音那のことは本当に何一つ明らかになっていないのはなぜだろう? 彼女は悪魔だってのは本当だろうか?

これが音那についてのI・Oの独白だが、これ読んでもさっぱりわかんない。

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対極にいる存在というと、やっぱり神と悪魔っていうのが頭に浮かぶが、むしろ音那より、長井側のキャラクターだが、博士の娘のこの子のほうが悪魔っぽいんだが。他のキャラクターが見るからにバカっぽいのに、この子はシリアス寄りだし。

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なんかやけにかっこいいセリフを吐くうるるちゃん

個人的にちょっと気になったのはI・Oとカンジの関係。ビジネスだけの付き合いかと思ったら、I・Oの部屋で酒飲んだりしたりしてるし、そこではタメ口をきいている。単に仲良しなだけなのかもしれないが。あの小委員会のメンバーではじいちゃん(名前がない)ともずいぶん仲よさそうだったな。神様って孤独だから、やめて仲間ができてうれしかったのかな

名前の謎

名前と言えば、神だからか名前がわざとぼかされているのが不思議だ。I・Oの本名は大神ショウらしいのだが、なんでそれを嫌ってI・Oと呼ばせているのか? 音那が彼をショウと呼んだら激怒していたが、なんでなのか?(まあ神の名を気安く呼ぶのはタブーですけどね)
だったらI・Oは何の略なのか? 明らかにイニシャルだよね。大神は合ってるが、ショウじゃ違うしな。Iって何の略なんだろう? とやきもきさせるのが目的に決まってるんだが。

音那のことを、他のみんなは「ねな」と呼ぶのに、I・Oだけは「おとな」と呼ぶのはなんでだろう? (上のアンカーの見開きがそれ。会話の中でもI・Oと他人とでは呼び名が違う) これも単なる嫌がらせのような気もするが。自分がファーストネームで呼ばれるのが頭来るので、仕返しに間違った読みで呼んでいるみたいな。

とりあえず、私は大神ショウと聞いて、真っ先に「狼少(年)?」と思ったのだが、ほんとにそうなんだろうか? 世界が滅びると言い出したのは彼みたいだし、だったらそれは嘘ってこと?

第三世界と境界

タイトルの第三世界とは何なのか? 私はてっきり普通のThird World(発展途上国)のことかと思っていたが、第三巻の表紙には英題がついていて「Nagai in the Tertiary World」になっている。第三世界じゃなくて「三番目の世界」? それってどういうこと?
これに関しては作品の随所にそれっぽいメッセージがあって、何かを暗示しているらしいが、わからないまま。案外これまで世界を二つ滅ぼしていてこれが三個めとかね。

あの「境界」がなんだったのかも、なんの手がかりもなくてわからない。これも常識的に考えて世界と世界の境界線だろう。第三世界と第四世界とかの。でも、I・Oが目覚めた場所は元と同じ世界だったし、そもそもそれをまたぐと死ぬのはなぜ????

かと思うと、第四巻の表紙では副題っぽく「For All Stories in the World」(世界のすべての物語のために)と書いてあってますますわけがわからん。わざとわけわからなくしてるのはわかるんだけど、見てるとなんかわかるような気がしてきていやでも考えさせるのが憎い。
あと4巻の表紙、登場する変な人たちが町を大行進しているんだが、これまではいちばん大きく描かれていたI・Oの姿が見えない。と思ったら、小さい後ろ姿で去って行くのがI・Oらしいんだが、この絵も意味深だなあ。

作画について

最後に作画。こういう絵がすごい好きで、それもハマった原因。ちょっと大友克洋っぽいと思っていたが、Wikipediaにも同じことが書いてあった。書き込みを減らした白っぽい大友って感じかね。こんなふざけたマンガといっしょにするな!と怒られるかもしれないけど、大友だって初期短編とか相当狂ったギャグを描いてたし。

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こういうアクションシーン(?)を見ると大友っぽいなと思う。でも女の子は大友よりかわいい。

それでもともと大友の絵がすごい好きなので。それにギャグマンガだから、あそこまで書き込まず、力の抜けたゆるい感じの絵が、かえってすごく気持ちいい、なんというか見てると癒される絵だわ。
シンプルな線でカッチリとまとまった感じが好きだし、もちろんI・Oの顔や雰囲気が好き。(もちろん長井らは除く。ちなみに、変人たちの絵はだいたいすべて他のマンガのパロディです)

結論

結論たってこんな中途半端なところで何を書けと? まあ、完全に憶測でしかないが、この手のメタ漫画だと、やっぱり本当の神は作者という落ち以外考えられない。漫画だと作者が出演するのはざらにあるし。そして、主人公の長井は作者の名前を付けられている‥‥というところで、落ちは見えてた気がするんだが。でもこんな半端なところで終わったんじゃ本当に何も言えない。

私も打ち切り漫画は数多く見てきたけど、ここまで唐突な終わり方をした漫画って初めて。しかもこれだけ多くの謎をぶん投げたままで。ここまでひどいと、これもシナリオのうちなんじゃ?と勘ぐりたくなるぐらい。

『神聖モテモテ王国』もたびたび中断してはまた再開するというのを繰り返していたようなので、そういう癖の人なのか? だったらこれも再開の可能性も。とにかくこれからクライマックスに向かうという感じの時に終わっちゃったので、ウェブでも個人ブログでもいいから続けて欲しいよ。寄付するから!

というわけで、とてもじゃないが人には勧められないし、どこがおもしろいのかわからない人には絶対わからないマンガだが、私はなんか好きだ。

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