★★【映画評】レニー・アブラハムソン『フランク』(2014)Frank

(少なくとも「私のジャンル」の映画ってことで、中味はほとんど雑談みたいなものだし、映画もたいしたことないので、忙しい人のためにまとめを先に付けました)

『フランク』がダメな理由

  • フランク・サイドボトムを使う意味がない。
  • マイケル・ファスベンダーを使う意味がない。
  • 音楽映画なのに音楽がクソである。
  • 主人公が非常に痛い奴であるばかりか、どうしようもないろくでなしである。
  • バンドも全員がヤバい人たちで感情移入のしようがない。
  • ブラックだけど軽くてポップでおしゃれなイギリス映画の乗りを期待したら、陰気くさくてメソメソした映画だった。

(ここから普通のリビュー)

♣ もうハードディスクがいっぱいになりそうなのに、ちっとも映画評書いてないというので、これは対談でやることになりました。それで時間もないので手短に行くけど、この映画は毎度おなじみBFIの宝くじ映画。詳細は『トライアングル』(傑作。絶対読むこと!)のリビューに。

♠ でも録画したのはマイケル・ファスベンダー主演だったから。
♣ あとバンド映画というのもポイント高かった。英国のバンド映画というだけで私は300%増しなので。
♠ というわけで三拍子揃った映画がおもしろくないわけない! と思うじゃない。
♣ だから今まで取っておいたんだよね。だいたい私は封切り年と関係なく、二度と見なそうな映画から(早く消してHDの空き作るために)見ていくんで、逆に「保存版」になりそうな映画は最後まで取っておく。

フランク・サイドボトムについて

♠ ところが‥‥
♣ あー、ちょっとその前に予備知識。「フランク」というのは、マンチェスター出身のコメディアン、クリス・シーヴィー(Chris Sievey 1955–2010)が作り出した架空のキャラ「フランク・サイドボトム」(Frank Sidebottom)のことで、頭に変なかぶりものをしているのが特徴。80年代に人気があって、テレビショーとかも持ってたらしいんだけど、知ってた?
♠ 正直、英国情報は音楽と映画だけで手一杯なんで、テレビまではチェックしてなかったんだよね。もちろんフランク・サイドボトムのことは知ってたけど、どんな芸かも知らなかったし、中の人のことなんてまったく知らなかった。
♣ そもそも音楽芸人だってことも知らなかったよね。
♠ でもそんな知識、知ってても無意味なんだよ。というのもこの映画は現実の「フランク」とはなんの関係もない創作だから。

♣ そうなのよ! まずこれでガクッときた。つまりフランクが実在したら‥‥というifもの?
♠ そういうんでもない。ただ単に同じマスクをかぶって同じ名前の赤の他人、というだけみたい。参考までにYouTubeで本物のフランクをちょっと見てみたけど、コメディアンにありがちな横柄で攻撃的なキャラでマシンガントークする人で、映画のオドオドした対人恐怖症っぽいフランクとはまるっきり正反対のキャラだった。
♣ 創作キャラを、なんでわざわざぜんぜん違うようにキャラ付けして映画にするのかがまずわからない。本物のフランクやクリス・シーヴィーのファンが見ても変な気分になるんじゃない?

♠ ちなみにこれがオリジナルのフランク。
♣ あれ? そっくりだと思ってたけど、顔がずいぶん違う。クリス・シーヴィーのは目にハイライトが入ってるのに、マイケルのは猫目で虚ろな目だし、シーヴィーのは口もタラコ唇だし、眉毛も濃いし。だいたい映画版のほうがよくできている。
♠ そりゃまあ映画はプロの小道具の人が作ってますからね。
♣ だいたい映画のほうが少しだけハンサムになっている。これやっぱりマイケルに似せたのかな?
♠ 知らねーよ!

マックス・ヘッドルームとマット・フリューワーの思い出

♠ だいたい同時代のイギリスの、同じような創作キャラとしては私は「マックス・ヘッドルーム」のファンなんだけど、あ、テレビシリーズじゃなくて、その誕生篇のフィーチャー・フィルムのほうね。でも今あのキャラがマックス・ヘッドルームを名乗って、ぜんぜん別の話始めたら怒るぜ。
♣ そういえばマット・フリューワー(Matt Frewer マックスの中の人)ってマイケル・ファスベンダーとよく似てた。最初にマイケルを見たときから、誰かに似てるとずっと思ってたんだけど、あの人だったか! ちなみにこれがマット。

『マックス・ヘッドルーム』のマット・フリューワー

♣ マイケルに似てるでしょ。昔のテレビ映画だからこんな写真しかなかったけど。
♠ だいたいマイケル・ファスベンダーって特徴のない美男だからいろんな人に似てるといわれるんだけど。でもマットもハンサムだったよね。長身(190cm)、がっちりした男らしいあご、大きな青い目という絵に描いたようなハンサムで、そこは似てるかも。
♣ かぶりものをかぶって架空のキャラを演じたところも似てるよ。
♠ ちなみにみんなマックス・ヘッドルームをCGキャラだと思ってたんだけど、実はマスクをかぶりメイクをしたマット・フリューワーが演じていた。
♣ 元々テレビの人で映画にあまり出ないので知らなかったけど、その後すごいハンサムなおじさんになって、今はすごいハンサムなお爺さんになってる!
♠ ハゲたけどね。これはマイケルも確実に‥‥

♠ いっそマイケル主演でマックス・ヘッドルームの話にしてくれればまだ見られたのに。せっかく顔も似てるんだし。
♣ そう言ってもフランク・サイドボトムなんですが(笑)。
♠ とにかく悲しいことだけど、マイケルの30年後がどうなるか見えちゃったね。つるっぱげ(笑)。
♣ それは今でも予測できるから避けようがないと思うけど、関係ないんだからマックス・ヘッドルームの話はやめてもらえませんか?
♠ だって、こっちもフランク・サイドボトムとなんの関係もないじゃん。

『フランク』 あらすじ

♠ とりあえず二度と見ないと思う映画なので、ちゃんとしたあらすじを書いておこう。後から思い出す必要があっても、ネットにはどうせろくなあらすじもないから。
♣ これは英愛合作映画だけど、監督レニー・アブラハムソン(エイブラハムソンだと思う Lenny Abrahamson)はアイルランド人、主演男優二人はアイルランド人、舞台も半分がアイルランドなので、ほとんどアイルランド映画って感じ。ちなみに脚本書いたジョン・ロンソン(Jon Ronson)は実際にフランクのバンドで演奏したことがある人だそうだ。
♠ でも別人じゃん。
♣ バンドに誘われる経緯はほぼ実話だそうだよ。主人公の名前がJonなのも(名字は違う)彼の分身ってことでしょ。
♠ でも完全創作だから、そこらへんは気にする必要ないと思う。

ジョン(Domhnall Gleeson)はしがない英国のサラリーマンだが、ミュージシャンになるのが夢で、いつも頭の中で曲を作っている。
彼はある日、近所の海岸で入水自殺しようとしている男を見る。男は前衛バンド「Soronprfbs」のキーボーディストで、それを見ていたバンドのマネージャーのドン(Scoot McNairy)と話したのがきっかけで、ジョンは代理のキーボーディストとしてその晩のライブに参加することが決まる。
行ってみるとバンドのメンバーはジョンに対して冷ややかだったが、リーダーでボーカリストのフランク(Michael Fassbender)だけは親切だった。ライブは成功に見えたが、途中でテルミン(楽器)が壊れてクララ(Maggie Gyllenhaal)が怒ってステージを降りてしまう。

Soronprfbs(発音できん)の演奏風景

その後ジョンはドンからアイルランドで仕事があると誘われて付いていくのだが、一夜限りのギグだと思ったら、実はアルバム・レコーディングのための合宿だった。これでは仕事を首になってしまうが、ジョンはプロのミュージシャンになるという夢に賭けてとどまる。
フランクのかぶり物には最初ジョンも驚いたが、どうやら彼は何かの精神障害のせいでこの頭が外せないらしく、医師の証明書を見せて、入国管理もこのままで通ってしまう。フランクはひとりの時も寝るときも風呂に入るときでさえ頭を取らないので、誰もフランクの素顔を知らない。(ついでに頭と顔が洗えないので臭い)

ここでもジョンはバンドメンバーには悪意を持って迎えられ、仲間はずれだったが、フランクとドンだけは比較的親身に接してくれた。ドンは自分も元はキーボード・プレイヤーだったのだが、才能のなさに気付いてマネージャーに転向したのだと言う。ドンは暗にジョンも同じだと言っているようだが、ジョンは逆に発奮してこのバンドでビッグになってやろうと考える。この間、ジョンは仲間たち同様にフランクとその才能を崇拝するようになる。

彼らが借りている山中の別荘にドイツ人の家族連れがやってくる。実は金がなくなってドンが借り賃を払えなくなり、所有者が別の人に貸してしまったのだ。ここはジョンが金を払い、フランクが家族を説得して帰らせることで丸く収まる。

ある日、ドンは首を吊って自殺する。この時、彼はフランクの頭を付けていたので、みんなはフランクが自殺したと思ってパニックになる。
フランク同様心の病を患っていたドンはとうとう限界に達してしまったようだ。彼らはドンの遺体をボートに乗せ火を付けて火葬にする。二番目のキーボーディストも自殺未遂を起こしたし、どうもこのバンドのキーボードは呪われているようだ。

この合宿の間、ジョンはバンドのみんなに隠れて、合宿風景をYouTubeやツイッターに上げていた。それが一部の人々の目に止まり、彼らはSouth by Southwest(SXSW テキサスで開かれる音楽フェスティバル)に招かれる。
メンバーはこの勝手な行動にみな怒り、SXSWへの参加にも否定的だった。ジョンはこの合宿を通じてバンドに受け入れられたと言っていたが、大金を払ってバンドの窮地を救った後も相変わらず嫌われていたようだ。

しかしフランクはYouTubeの再生回数を見て、自分の音楽が大勢に支持されていると思って感動し、テキサス行きを決める。長年無名バンドで実験音楽をやっていたフランクには、自分たちを知っている人、自分の音楽を好きな人がこれだけいるというのが新鮮だったらしい。
ここで彼が表明した「これからは人に好かれる音楽をやる」という決意も、バンドの反発と動揺に拍車をかける。彼らはジョンがフランクをだまして、自分のいいように操ろうとしていると非難する。攻撃の最先鋒に立ったクララなどは「テキサスで何かあったら殺す」とジョンを脅すほどだ。

テキサスに着いて、彼らはドンの遺灰を砂漠に撒くが、実はギタリストのバラク(Francois Civil)が間違えたせいで、缶に入っていたのは遺灰ではなく粉末ナッツだった。
会場のテキサス州オースティンに着いてみると、フランクは徐々に自分たちがそれほど人気者というわけではなく、明らかに場違いだということに気付き始め、パニックに陥る。クララはそれを心配して、出演をやめさせようとするのだが、ジョンは取り合わず、彼らの持ち歌をなんとか「人に好かれる」ようにアレンジし直そうとする。

コンサートの前の晩、クララとフランクがホテルからいなくなる。探しに行くとパニック状態のフランクが路地裏にうずくまり、クララがなんとかなだめようとしていた。ジョンはクララを無視してギグをやるようにフランクを説得するが、クララはジョンの足をナイフで刺して警察に連行される。ホテルへ戻ると、バラクとドラマーのナナ(Carla Azar)はジョンを責め、バンドを辞めると言い出す。
それでもジョンはアクースティック・ギター1本で、フランクと二人きりのステージに立つが、なんとフランクは「女装」して現れる。そこでジョンはギターを弾きながら自作曲を歌い始めるが、あまりにひどい演奏に、フランクはとうとう耐えきれずに倒れてしまい、「おまえの音楽はクソだ」とだけ言って気を失う。

翌日止まっていたモーテルで、かんしゃくを起こしたジョンはフランクの頭を取ろうとする。パニックを起こしたフランクは道路に飛び出して車にはねられ、ジョンが追いついたときはバラバラになったはりぼての頭だけを残して消えていた。直後にジョンも別の車にはねられ入院する。

退院後、ジョンはフランクを捜し回るが、彼の顔も本名も住所も知らないので警察も取り合ってくれない。
そのころジョンは場末のバーでクララ、ナナ、バラクの3人が演奏しているのを見つける。
ツイッターでフランクの消息を尋ねたところ、彼の居場所を知っているという人から連絡があった。場所はフランクの故郷であるカンザス州ブラフだった。

行ってみるとそこはフランクの両親の家で、今では両親と一緒に素顔で暮らしているフランクがいた。おそらくマスクが外せないのは、顔に何か恐ろしい奇形があるのだろうという予想に反して、彼は普通の男で、ただ、長年マスクをかぶっていたせいか頭の周囲にひどい傷と禿げがある。
両親の話ではフランクは幼少時から心の病を抱えていて、父親が作ってやったマスクが手放せなくなってしまったのだそうだ。フランクは今では落ち着いた様子だったが、もう音楽は作れなくなったという。

ジョンはフランクに謝り、彼を他の3人が働いているバーに連れて行く。もちろん彼らは最初フランクが誰か気付かなかったが、フランクは彼らの演奏に合わせて自然に歌い出す。ジョンはひとりでバーを出て行く。

音楽について

♣ なんかこれだけ読むとちょっといい話に思えるかも知れないんだけど。
♠ 何がヤバいって彼らの演奏する音楽なんだよな。
♣ 実験音楽っていうから、てっきりノイズ/インダストリアル系だと思ってた。それなら私もそれなりに好きなんで。
♠ ところが実際は、モンド・ミュージックの系統だよね。ロックですらないし。
♣ えーと、モンドっていうのはなんと説明したらいいのか。美術で言うアウトサイダー・アートみたいなもので‥‥
♠ 実際、この連中全員アウトサイダーだし。
♣ 病的な音痴の歌手とか、ピアノが一切弾けないピアニストとか、そういう人たちって一定の需要があるみたいで、ちゃんとレコードも出ているの。それを思い出した。
♠ そもそもテルミンなんか入ってるバンドは絶対に信用しちゃいけなかったのだ。
♣ ていうかテルミンっていつの時代だよ! 現代の話じゃなかったの?

♣ そもそもジョンの「音楽」もヤバかったもんね。
♠ 赤い服の女性とすれ違うと、「♪赤い服着た女の子~ ♪でも変なバッグ~」とか、見たものをそのまま調子っ外れの歌にしてるだけなんだよね。
♣ いちおうジョンは音楽の才能ないという設定らしいしさ、これはまだ単なるギャグだと思って笑ってみてたんだけど‥‥
♠ でもフランクの「音楽」もまったく同じやんけ! クッションのほつれた糸の歌とか(笑)。
♣ とにかく見たものをそのまま読み上げるだけなんだよね。ラップとかにすらなってない。
♠ どの時代の音楽でもあり得ないし、これでアルバム出すとかまずありえねーよ!
♣ そもそもこんな無名バンドがアルバム制作のために外国で合宿する金持ってるのも不思議だし。
♠ メンバーの誰かが金持ちだったんじゃない?
♣ まず「バンド映画」だと思ったところからして間違いでしたね。音楽映画ですらない。音楽なんてまったくできない人たちの話なんだから。

コメディとしての『フランク』

♠ だからそれをいっそギャグとしてやるぶんには問題なかったんだよ。実際途中まではギャグだと思ってたからけっこう笑ったし。
♣ かなりヤバい感じの笑いですけどね。なにせこの人たち全員アレだから。
♠ でもそういうブラックユーモアの映画なんだと思ってた。ところがドンが自殺したあたりから、どんどんどんどん暗くなる一方で、
♣ それでもフランクの正体がわかるあたりで、なんかどんでん返しがあるものとばかり思ってたよ。そしたら単に不幸な病気の人だったというだけで。
♠ だからなんなんだ! 何をどうしろというんじゃい!!!

♣ とまあ、そんなわけで、絶対夢中になると思って見始めたんだけど‥‥
♠ 実際最初は夢中だったよ。久しぶりに見るイギリス映画(アイルランド映画?)だし、のっけからのあの空気と色にぼーっとなるほど感動して見てたのよ。
♣ ドーナル・グリーソンかわいいし。
♠ うん、お父さん(Brendan Gleeson)は何せあれだけど、お父さんとは似ても似つかない、いい男なんだよね。その辺は『レヴェナント』のリビュー(まだアップロードしてません)に書いたから省略。
♣ でもこのぐらいの年頃のイギリス人(アイルランド人)はやっぱりこういうバンドっぽいかっこしてるのがいちばんかわいいよね。ほんと、アイルランド人は外れがないわー。マイケルもジョナサン(リース・マイヤーズ)もアイルランド人だし。

かわいいドーナル・グリーソン

♣ だから最初はうっとりして見てたんだけど。ギグが始まるまでは‥‥。
♠ 始まったらアゴが外れた。いや、下手でも音楽にもなってなくてもいいんだよ。ストーリー的な必然があれば。
♣ そもそもこの映画はフランクの話でしょ。見た目はアレだし、中味もアレだけど、実はすごい才能のある人という設定なんでしょ。だったらほんの一瞬でもいいから彼のすごいところを見せてよ。
♠ なのにやってる音楽もアレな人のアレだからなあ。あれで一気に萎えた。

♠ でもそこで気を取り直してこれはブラック・コメディなんだと思った。そう思えば、なんの才能もないただの◯◯◯◯を、それ以上に才能のない奴らが神格化してすごいすごいと言ってるのは、現実にもありそうな皮肉な情況だし。(伏せ字だらけだけど、本当にそういう人たちの話なんでやむを得ず)
♣ 単にドタバタ・コメディの要素もあるよ。そもそもフランク自身がめちゃくちゃ変だし。そういう異物が入り込んできたときの他の人たちの反応のおかしさとか。
♠ 前がよく見えないから、しょっちゅう柱にぶつかったり、シャワー浴びてるときも頭にはビニール袋をかぶってたり(笑)。
♣ それでもなお、裸を見せることにこだわるファスベンダーさん(笑)。

♠ SNSに対する認識が遅れてるのも笑った。今どきYouTubeで10万再生ぐらい、なんでもないのに、フランクはものすごい人気なんだと思い込んでしまう。
♣ 実際は、変な格好した連中が変なことやってるから見に来てただけなのに。ライブを見に来てくれるやつなんかどうせ誰もいないのに。
♠ そういったギャップからくる笑いがもっとあってもよかったな。特にアメリカ行ってからは。
♣ フランクがアメリカ人だという設定にものけぞったんだけど。
♠ それがなんでイギリスでバンドやってるんだ?
♣ もうどうでもいいですけどね。
♠ ちなみに前から見たい見たいと言っていたマイケルが流暢なドイツ語を話すシーンもちょびっと見られます。

バンドものとしての『フランク』

アイルランドで録音中のフランクとバンド。ところでフランクの服がいつもおっさん臭いのは意図的なんだろうか?

 

♠ それでコメディだと思ってる間もそれなりに楽しく見れたんだけど、上記のようにドンが自殺したあたり(ちょうど真ん中へん)から笑えない話になってくる
♣ ひとつのバンドで自殺者3人(うち2人、前のキーボーディストとフランクは未遂)って、いくらなんでも多すぎるわ。呪われてるというか、やめたほうがいいんじゃないかと思えるレベル。
♠ 単にフランクの周囲にはそういう人間ばっかり集まってるという見方もできる。

♠ こういうバンドものだと、結末はどうあれ、途中まではある程度サクセス・ストーリーにするもんだけど、ここではSXSW出演がそうなのかと思ったら、それも惨憺たる大失敗に終わって、最後は場末のバーのハコバンというのがなんともね。
♣ 彼らにとってはそのほうがよかったんじゃない? 誰にも知られず好きな音楽やってるほうが。

♠ 実際そうなんだけど。結局この話って、いろいろとアレな人たちがそれでも仲良く楽しくやっていたところに、ぜんぜん無理解な部外者が無理やり割り込んで、そのためすべてがめちゃくちゃになって死ぬ思いをしたってことだろ?
♣ 主人公のジョンが完全によけいなことしかしない! 彼のおかげでフランクはめちゃくちゃになって死ぬ寸前まで行くし、バンドはバラバラになるし。
♠ しかも音楽の才能あるならまだしもフランクも卒倒するほどのセンスのなさだし。
♣ そのくせいっぱしに売れようとか考えてるし。痛いやつとしか言いようがない。
♠ ほんとどうしようもないやつだな。でもそれをいっそコメディにしてしまう手もあるのに、雰囲気はめちゃくちゃ陰湿で救いがないんだよね。しかも脚本書いた奴がモデルなんでしょ、これ? どういう性癖だ?
♣ (ドーネルの)顔はかわいいのにねえ。

♣ しかしバンドの連中が最初から蛇蝎のごとくジョンを嫌うのって、初めは理不尽だと思って見ていたけど、こういうことになるのを知ってたとしたら当然だね。
♠ でも知るはずないからそこも脚本がおかしいんだよ。新入りのジョンとメンバーが反目するのってこれもバンドものの定石だけど、普通は最初は反目したけど何かをきっかけに認められるとか、和解するとかの展開になるもんじゃない。
♣ なのに最初から最後までひたすら憎まれ罵倒されるだけ。最後は刺されるし。踏んだり蹴ったりとはこのことだ。
♠ まあ、彼のほうもバンドを踏みつけにしているからねえ。

役者について

♣ それにさ、バンドメンバーは一見変人ばかりに見えても、知り合ってみるとそれなりに魅力のある人々だと言うことがわかる、というのも定石でしょ。
♠ メンバーも最後まで、というか知れば知るほど嫌な奴らのままでしたね。中でもいちばんうっとうしいクララ(Maggie Gyllenhaal)!
♣ この人、名前でわかるように、ジェイク・ジレンホールのお姉さんなんだけど、弟同様すごいブスで、おまけにヒステリーのメンヘラ女という、なんの取り柄もない役。
♠ 性格最悪な上にブスって何もいいとこないじゃん! もう見てるだけで不愉快。
♣ でもいちおうフランクのことは愛してるんだよね?
♠ この映画に恋愛要素の入りこむ余地あると思う?
♣ まあ、ないな。

♠ あと、あのフランス語しかしゃべらないギタリスト(François Civil)も、ただただ悪意しか感じられないすごい嫌なやつだったよね。
♣ そりゃフランス人ですから。
♠ なんなんだよ、このバンド?
♣ ドラマー(Carla Azar)はほぼ空気だし、ドンも何考えてるんだかよくわからないままに死んじゃうし。
♠ あのドラマーだけは本物のミュージシャン。Autoluxというバンドでドラム叩いてる。
♣ そうなの? おもしろい顔だから彼女こそ女優に間違いないと思ったのに!
♠ 女優の経験はこの映画1本だけだよ。
♣ ふーん? それで何もしゃべらないのか。なんか彼女がいちばんまともそうに見えたのに。いや、しゃべらないからまともに見えただけか。

エンディングについて

♣ フランクの正体がわかったあとのあの両親の話、必要? あれでフランクは気の毒な精神病患者にされてしまい、同情を買うような演出としか見えなかったけど。
♠ まあ本人も最初から病気を隠しもしなかったけどね。診断書を振りかざしたりして。

最後でようやく素顔を見せるフランクだが‥‥

♣ マスクを脱いだフランクも気の毒なだけでつまらない人間だったし。
♠ 期待していたようなカリスマでもなければ道化でもなかった。なんとも中途半端。

♣ そういえば主役のマイケルの話をしてない。
♠ 主役ったって、終始あの頭付けたままだし。
♣ 彼、こういう変な、と言って悪ければ実験的な小品にも好んで出てるしね。要するにただのプリティ・フェイスじゃないよというか、顔を出さなくてもどこまでできるかということを証明したかったんだと思うが
♠ これならべつにマイケルでなくても良かったよなあ。
♣ べつに演技力がいるような役でもないしね。いや、あれを素顔で演じたら、相当屈折したキャラだしおもしろかったかもしれないけど、終始あれかぶっているのではバカにしか見えないし。
♠ たいしてセリフがあるわけでもないし、スタントダブルでも良かったよな。
♣ むしろマイケル・ファスベンダーがやるから気持ち悪い面も。だって頭はあれなのに、服脱ぐと絶対そこらの素人には見えないムキムキ・ボディじゃない(笑)。あのアンバランスは気味悪いだけだった。
♠ フランクはひ弱な引きこもり(の一種)なのに、体だけはスーパーヒーロー体型(笑)。

まとめ

♠ というわけで、英国(アイルランド)のバンド映画で私がここまで乗れなかったのって新記録と言っていいんじゃない?
♣ この前見たバンド映画ってなんだっけ?
♠  『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』。あれなんかのたうち回って喜んだのに!
♣ だってあっちは原作ブライアン・オールディス(英国のSF作家)だよ! モノが違いすぎる!
♠ いや、オールディスの原作はただのグロ・ホラーで、なのに、映画は感動の傑作だったんだよ! でも考えてみたら、あれだって身障者を売り物にしたバンド映画だよね。男二人が美形なところもいっしょなのに、なんでこんなに違うんだ!
♣ 音楽。『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』は兄弟が本当に演奏して歌ってたけど、素人なのにすごいうまかったし良かったから。
♠ やっぱり音楽がすべてだねえ。これは音楽映画ですらないけど。
♣ そういえばあの一卵性双生児の兄弟、ルークとハリーのトレッダウェイ兄弟だけど、デビュー作があんな色物だったからあれで消えるかと思っていたら、なんと二人とも映画俳優として成功して、いっぱい映画に出てるんだよ。私もいくつか見たけどすごく良かった。
♠ マジかよ! お顔がきれいなだけじゃなく演技も音楽もできるなんて。
♣ 『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』の兄弟の演技は鬼気迫るものがありましたよ。今見るとまだ完全に子供だったのにあそこまでやるって、やっぱり普通じゃないよ。
♠ そうか。最近の英国映画界の男優の充実ぶりは目を疑うほどだな。どっちを向いてもいい男ばかりで目移りがする。
♣ これならマイケルが禿げても平気だね。
♠ いやなことを言うなよ。

♠ あ、そういえば音楽の話で言い忘れたけど、マイケルの歌聴いてて、彼、声が(あくまで声だけだが)ジム・モリソンに似ているのに気が付いた。
♣ うそー! ジムはもっと低音じゃなかった?
♠ 私もそう思ってたけど、そういえば時代が時代だからジムの肉声なんか聞いたことなかったわ。それにマイケルも声がセクシーだと思ったから惚れたんじゃない。
♣ そのせいか、フランクのバンドを「ドアーズみたい」とか書いてるアホもいるね。
♠ 違う! それは絶対に違うが、声が似てるのは確かだ。

♣ はー、なんか乗らないし、そろそろまとめましょ。
♠ ちなみに監督のレニー・エイブラハムソンは前述のようにアイルランド人で、まだ書いてないけど『ルーム』(2015年)を撮った人。
♣ あれか! あれすごい良かったじゃない! アメリカ映画にしちゃ雰囲気がぜんぜん違うと思ってたけど、アイルランド映画だったのか!
♠ 加愛英米映画だよ。その話はまたあとでするとして、かなり実力ある人には違いないね。あっちはいっぱい賞撮ってるし。
♣ ふ~ん? でもこの映画はなんかボタンを掛け違えてるというか、何から何までずれてる感じ
♠ 「実在の」フランク・サイドボトムのことはこの際、完全に忘れて、ブラックコメディにすればすごいおもしろい映画になっただろうに、それをお涙頂戴の身障者映画にしちゃってる
♣ たぶん作った本人はコメディのつもりだと思いますがね。
♠ だからそれが完全に滑ってるから痛々しいんだよ。
♣ あー、でも『ルーム』の監督と言われてなんか納得いった。なんというか、あの虚しさとか救われない感じは似ている。
♠ でもあれは社会派問題作でしょ。同じことをコメディでやるなよ!

♣ 最初のほうの乗りから見ると、私がイギリスの若者映画の特徴だと言った、ブラックだけどポップでかわいくておしゃれな軽い乗りのコメディかと思ったんだんだがなあ。
♠ ブラックだけどポップでもおしゃれでも軽くもない、なんか薄汚い気の滅入る映画だった。今のセリフで思い出したけど、『デッド・ベイビーズ』みたいなグロテスクな話だって、英国映画っておしゃれでかわいかったのに。
♣ というわけでこれはハズレでした。おしまい!

おまけミーハー

♣ なんかつまんなかったから最後にかわいいドーナルとかっこいいマイケルの写真でも貼っとこ。

♠ ドーナルってマイケルより背高いんだ!
♣ そうですね。185cmなんだけど。マイケルは公称183cmだけど、私はちょっとサバ読んでると思ってる。たぶん180ぐらい。
♠ サバっていうか6フィート(=183cm)のほうが聞こえがいいから、多少足りなくても6フィートっていう人多いよ。
♣ ドーナルってお父さんのブレンダン・グリーソンとはまったく似てないんだけど、身長だけは受け継いだね。
♠ それってつまりいいところはすべて受け継いだってことじゃない(笑)。あと赤毛も完全に遺伝だ。
♣ そう言えば、この映画のロケの写真で、マイケルがブレンダンにおでこすりすりされてる写真があって、なんで?って思ったんだけど。


♠ ブレンダンはたぶん息子の撮影を見学に来たんだろうけど。
♣ そういや『アサシン・クリード』でマイケルはブレンダンの息子役をやったんだよね。
♠ それでか! 「もうひとりの息子よ!」というわけで。
♣ アイルランドの絆もあるしね。やっぱりアイルランドはいいわ。この映画は嫌いだけど。

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