★★【映画評】クライヴ・バーカーに捧げる苦痛の神殿 ポール・アンダーソン『イベント・ホライゾン』 (1997)Event Horizon

『イベント・ホライゾン』トレーラー。このトレーラーには特に怖いものは映ってません。むしろこの模型とセットの美しさを見てもらいたかったので。

【閲覧注意】

これはホラー映画です。もちろん映画用の作り物ですが、それにあんまりグロいのは除きましたが、それでも血やグロい死体の写真あります。美女も出るけどね
あと、グロにしろ美女にしろ個人的フェティシズムの話(クライヴ・バーカーとジョエリー・リチャードソンに対する偏愛の)が中心なので、一般の映画ファン向けではないかもしれません。

もう20年も前の映画だが、なんでこの映画を見落としていたのかわからない。なにしろ主演がサム・ニールとローレンス・フィッシュバーン、主演女優が「私の」ジョエリー・リチャードソン理由はこちらに)という(私的には)豪華キャストの宇宙SF映画っていうだけで、見る価値十分だし。
たぶん、仕事が忙しすぎて死んでたか、逆に他に楽しいことがありすぎて映画どころじゃなかったかで、しばらく映画から遠ざかっていた時期の映画なんだろう。
気の多い私は映画にしろ音楽にしろこういうことがよくある。そのわりにゲームしてないときと本読んでないときは一度もないんだが。
とりあえず、見つけただけでもラッキー!と思って見始めた。まあSF映画っていうだけで何も期待しないけどね(笑)。それでもSFというだけで見てしまう悲しいサガ。

《というわけで最初は例によって何も知らずに見始めたんだが、てっきりくだらないB級SFに違いないと思ってたので、バカにしてちゃんと見てなかった。
このリビューはあくまでその初見のときのものだが、見終わって確かにB級には違いないけど、なかなかのカルト映画と知り、もう一度見直したときの感想はかっこの中と文末にまとめて書いておいた。
★★なのはこういう風に構成がちゃんとしていないからで、そうじゃなければ堂々の★★★だったんだけど

お話は近未来、18名の乗員を乗せたまま突然消息を絶ち、7年のあいだ行方不明となっていた最新鋭の深宇宙探査船イベント・ホライズン号(*)が突然海王星軌道上に現れ、アメリカ航空宇宙軍のルイス&クラーク号がその調査に派遣される。
もうこの出だしからして『エイリアン』ですね。

*和訳の「ホライゾン」はどうにもムズムズして気持ち悪いのでこっちで。だって「プリゾン」とか言わねーだろうが。

イベント・ホライズンに遭遇する前のルイス&クラーク号のクルーたち。こういうのを見ると私はいやでも『エイリアン』を連想してしまうが、私にとっては非常に居心地のいいなごめる空間。

まずオープニングの「2015年、月に恒久的宇宙基地が建造される」で泣いた。はい、わずか20年前はまだそういうふうに思われてたんだよね。2010年ぐらいにはとっくに宇宙時代が到来していると。現実の2001年を迎えたときも、映画とのあまりの落差に泣いたけど。
予言じゃないんだからSFと現実にズレが生じるのは当然だが、それにしてもコンピュータ(&携帯)の爆発的速度の進化とくらべ、宇宙開発の遅れはもう手遅れに思えるぐらい。

という愚痴は置いといて、映画はのっけからやっすいなあと思っていた。ストーリーもビジュアルも。1968年公開の『2001年』とくらべてもまだ安っぽくない? ここは『2001』、ここは『エイリアン』(1979)、ここは『ソラリス』(1972)みたいに、元ネタの有名宇宙映画で見たようなシーンの連続で、B級映画感いっぱい。
これはお話も適当にあっちこっちから寄せ集めたパクリになるんだろうなと思って、ジョエリーがアップになると凝視するほかは、横目で適当に流しながら見ていた。
《ここに名前を挙げた3本の映画って宇宙SF映画のベスト3じゃないか。それに似てるってだけでもパクリだろうがなんだろうがすごい。実際、冒頭の宇宙船の特撮はかなり見応えがある》

そうやってまったく気乗りせずに見てたんだが、ハッとなったのはイベント・ホライズンから回収したビデオを再生したところ。ほんの一瞬しか映らないし、荒れた画像なんでよくわからないが、阿鼻叫喚の中、クルーが血まみれで殺し合ってる。そして最後は船長が自らの目玉をえぐり出して両手のひらに載せて差し出している場面で終わる。

これがそのショットだが、映画では一瞬しか映らない

ほおー? それじゃ『物体X』路線のグログロ・ホラーか。でもなんだかシュールすぎて、怖いというよりおもしろい。
実はそういうのが三度のご飯より好きな私はここでぐいっと身を乗り出して、あとはけっこうまじめに見た。しかし『物体X』は荒唐無稽なモンスターだったけど、これはドキッとなるびっくり系と、生理的にオエッとなるタイプの生々しいグロだな。

B級映画なのはほんとなので長々引っ張ってもしょうがないから単刀直入に結論を言うと、最後は『ヘルレイザー』だった。宇宙関係ねー!
『イベント・ホライズン』(事象の地平線)というソソるタイトルから、ブラックホールがからんでくるんだろうと思っていたが、いちおう超光速飛行にブラックホールを使ってるような話は出たものの、SF要素は皆無、要するに「事象の地平線」に穴を開けた結果、地獄の釜の蓋を開けてしまいました、それでそこにあったのは「クライブ・バーカーの地獄」でしたというお話。

クライブ・バーカー(Clive Barker イギリスのホラー作家・画家・映画監督)についてもいずれきちんとまとめなくちゃな。彼は私の崇拝する神々のひとりで、あえて言うなら苦痛の神。苦痛と拷問とSMの美学を神の領域まで高めた人。あいにく彼の作る映画はB級映画なんだが、画家でもあるだけあって美術センスは(病んではいるが)群を抜いている。
その中でいちばん一般受けした作品が『ヘルレイザー』だから名前を出しただけで、彼のセンスはあらゆる作品に共通している。
ちなみに私がいちばん好きなのは、小説はデビュー作の短編集『血の本』、映画はデヴィッド・クロネンバーグがシリアルキラーを演じ、バーカーらしい百鬼夜行がすばらしかった『ミディアン』、アート系はフィギュアだが「Clive Barker’s Tortured Souls」というシリーズが造形作品では最も美しく最も恐ろしい。解説終わり。

登場人物一覧

写真左上から、ウィア、ミラー、スミス、クーパー、
ピーターズ、ジャスティン、スターク、D.J.

ルイス&クラーク号乗組員

ウィア(イベント・ホライズン号の設計者)サム・ニール(Sam Neill)
ミラー(船長)ローレンス・フィッシュバーン(Laurence Fishburne)
スターク(副船長)ジョエリー・リチャードソン(Joely Richardson)
ピーターズ(メディック)キャスリーン・クインラン(Kathleen Quinlan)
ジャスティン(エンジニア)ジャック・ノーズワージー(Jack Noseworthy)
クーパー(エンジニア)リチャード・T・ジョーンズ(Richard T. Jones)
D.J.(メディック)ジェイソン・アイザックス(Jason Isaacs)
スミス(操縦士)ショーン・パートウィー(Sean Pertwee)

死人

ジョン・キルバック(イベント・ホライズン号船長)ピーター・マリンカー(Peter Marinker)
クレア(ウィアの死んだ妻)ホリー・チャント(Holley Chant)

話はちょっと『ソラリス』っぽく始まる。イベント・ホライズン号の設計者ウィア(サム・ニール)は亡くなった妻の幻影を見る。彼女は仕事に夢中の夫にネグレクトされたことを恨み、風呂で手首を切って自殺したらしいんだが、最初の方のロマンチックな夫婦愛のイメージは、グロい血まみれ死体で帳消しに。
しかし(幻覚だが)愛する妻が目の前で手首を切って自殺するのを見せられたウィアが、妻に取りすがって謝るところは、(サム・ニールの演技力とも相まって)なんとも恐ろしいけど悲しい。

ウィアと浴槽で手首を切る妻。これは実はウィアの幻覚で、妻が死んだとき、ウィアはもちろんその場にいない。

同様に船長のミラー(ローレンス・フィッシュバーン)は目の前で焼死するのを見殺しにするしかなかった部下の幻影(歩いたりしゃべったりする焼死体)につきまとわれているし、ジョエリー以外唯一の女性乗組員であるピーターズ(キャスリーン・クインラン)は、なぜかはわからないが子供の幻影につきまとわれている。
《彼女はシングルマザーで、任務のために別れた夫に預けてこなくてはならなかった息子のことを心配している。息子は死んではいないので、確かに他の二人のトラウマとくらべると弱いが、逆にクルーがトラウマ持ちだらけだったらそれも不自然なのでこれはこれでいい》

副長のスターク(ジョエリー・リチャードソン)にはそういうのはなかったが、トラウマなんぞに悩まされない現実主義者ってことでしょうか。そういえば、生き残った人たちにはトラウマ持ちはいなかった。トラウマなんぞに悩まされるような人間は死ねってことでしょうか。

それからクルーがひとりずつ、むごたらしい死を遂げるあたりはまさに『エイリアン』か『物体X』。月並みだけどこういうのほんと好き(笑)。
ただ、殺しに来るのは怪物じゃなくて船の悪霊(としか言いようがない。船自体が生きているという説も)に憑依されてしまったウィア。でなきゃ幻覚による事故死や自殺。

EventHorizon_11

もうこの絵を見ただけで、クライヴ・バーカーだと思いました。恐ろしいと言うよりは美しすぎる。(でも逆光じゃなくアップで見るとやっぱりグロい)

特にメディックのD.J.の殺され方(犯人はウィア)が本当に情け容赦なくてグロ。ほんとはこれもスクショを貼りたいんだが、さすがにちょっと過激すぎるので自粛して文章だけにすると、全身の皮膚に鉤を突き刺して、皮膚がすべてビローンと伸びたのを手術台の上に宙吊りにし、切り開かれた胸と腹からこぼれ落ちた中味が全部手術台の上に載っているのを何かのオブジェみたいに見せるとか。
《ただ、この下卑た描写からは想像できないぐらい絵としては美しい。確かにグロいけど、猟奇殺人犯が死体で作る「アート」的な美しさがあり、やっぱりこれもクライブ・バーカーのセンス》

何も恨みがあるわけでもない人にそこまですることないじゃないかと思うが、これはもうB級の範疇を超えてるよ。こういうのはB級映画だとアホらしいだけだが、これには不思議なアートっぽさがあるってところが、一目見てバーカーとわかる。少なくともグロだけは一級品だな。あいにくこの映画自体がB級なんで、芸術一歩手前で終わっていて、だから『物体X』とかバーカーの『ミディアン』とかの領域には達していないんだが。

ただしやっぱり観客に対する配慮からか、こういうのは本当に一瞬しか見せないし、「えっ? 今の何?」で終わってしまう。クライマックスの「地獄(*)」の様子なんか細かいカットをすごい早回しで見せるだけなので、これも一瞬で終わってしまい、私みたいにいちいちビデオを止めて見ない限り、なんだったのかよくわからないレベル。もちろんYouTubeにはそういうのをごていねいにスローで再生した動画とかもあるので、気になる方はどうぞ。(最後にそのシーンのgifを貼っておきました。確かにグロいけど美しいので)

*ラスト近く、「向こう側」を垣間見たミラーは、彼のクルーが全員、生きている人も死んだ人も、凄惨な拷問を受けて、切り裂かれ刺し貫かれてウジに覆われた姿で、オブジェか何かのようにさらされているのを見る。

で、見た感じ、これがすべてクライブ・バーカーのコピーライトマーク付きの映像。マジで彼がからんでるんじゃないかと調べたら、クライブはプリ・プロダクション時点でコンサルタントとして参加しているだけで、あとはあくまでクライブ・バーカー・オマージュということらしい。それにしちゃ良くできてるなあ。ほんとにバーカーが好きな人が作ったとしか。

この辺で、監督誰だ?と疑問が湧いて調べたら、イギリス人のポール・W・S・アンダーソン
なんか知ってる名前だなと思って調べたら、一般には『バイオハザード』シリーズの監督として、典型的なB級監督として知られてる。
でも私の知ってるポール・アンダーソン(当時はまだミドルネームがなかった)はイギリス映画『ショッピング』(1994)の監督だ。
これは彼のデビュー作でもあるのだが、なんで私にとって忘れがたいかというと、ジュード・ロウのデビュー作でもあって、若かった頃のジュードがあまりにも美しかったので私にとっては忘れられない作品になった。美少年からグログロへって3年の間に何があったんだ!(笑) もちろん元からこういうB級ホラーが好きだったんでしょうな。それもグロ系の。

なんでも世間ではもうひとりのポール・アンダーソンと区別して「だめな方のポール・アンダーソン」なんて言われてるそうだが、もうひとりって誰だ? ポール・トーマス・アンダーソンか。
私は彼の映画は『マグノリア』と『ザ・マスター』しか見てないが、変なことは変だけどべつにまったくおもしろくはなくて、「何だ、この変な映画?」と思っただけだったぞ。映画賞総なめにしてるからおもしろいとは限らないっていうか、いかにもその手の臭いやつって感じだったけどな。
それならこっちのほうがぜんぜん好きだわ。さすがに『バイオハザード』はグロ目当てで見たのに、つまんなすぎて最後まで見られなかったけど(笑)。ちなみに『ショッピング』は無軌道な若者が自滅する話だったけど、ジュードが美少年っていうだけじゃなく、イギリスの労働者階級の話なんで私は楽しめた。

狂乱演技がすばらしかったサム・ニール

次、役者について。サム・ニールは優しそうなヒーロー・キャラで登場することが多いが、元が悪役面なのでこの役はハマってた。最初は紳士的な感じで、そういう人が狂うほうがおもしろいしね。軍人ばかりの船の中で彼だけが民間人だから、『エイリアン』のイアン・ホルムみたいな感じかなーと思っていたら本当にそうだった。
ローレンス・フィッシュバーンは地のまま、いつも通りの頼りがいのあるタフなヒーローを演じたが、やっぱり似合っていると思わずにはいられない。最後はイベント・ホライズンもろとも自爆するところまでお約束。

頼りになる船長ローレンス・フィッシュバーンと美しいジョエリー

この二人が確実に死ぬのはわかっていたから、私は「エレン・リプリーは誰なのか?」というのがすごく気になっていた。つまり最後に生き残るのは誰かってことだけど。もちろんヒロインはジョエリーだからジョエリーが生き残るのが普通なんだが、この映画のスタークはどうもただの壁の花で、ただ職務を果たしているだけでちっともストーリーにも関わってこないし、内面の描写もなかったので、ただの殺され役かなと。生き残るのはもうひとりの女性のピーターズの方かと思ってたよ。

そしたら途中で見えなくなったから、死んじゃったかと思ってた。(なんかあっちこっちでバンバンやってるので) だから生きてたことがわかったときはほっとしたけど、最後までなんの見せ場もなく生き残ってもなあ。これなら『スターシップ・トゥルーパーズ2』のブレンダ・ストロングみたいに派手に玉砕してくれた方がまだましだ。
まだジョエリーも若かった頃だし、彼女がヒロインと知って、もしかしてジョエリーのアクションが見られるかとちょっと期待したけど、やっぱり無理だわ。彼女基本的にお姫様だし、体型はいっしょでもシガニー・ウィーバーやブレンダ・ストロングと違って汚れ役は似合わない。彼女が(自分のものではない)血を浴びて全身血まみれになるシーンとかもあるんだけどね。いまいちぴんとこないのよね。

《追記》
自分にとってヒロインだから勝手にヒロインと決めてかかっていたが、よくよく見たらピーターズを演じたキャスリーン・クインランがサード・ロールで、ジョエリーは4番目だった。
確かにキャスリーンの演技はすばらしく見せ場もあったが、この順位はちょっと納得がいかない。格から言ったらジョエリーが上でしょ? キャスリーン・クインランなんてただのおばさんだし、知らない人だし。
と、思ったら、アメリカではけっこう有名な女優さんみたいね。「『アポロ13』でアカデミー助演女優賞にノミネートされた」というのが売りだから、メジャーってほどでもないけど。まあ、ジョエリーは確かに作品にはあまり恵まれないので、アメリカではもっと無名なんだろうけど。

その代わり、と言ってはなんだが、この手の宇宙映画のヒロインと言えば、体にぴったりした下着姿で歩き回るのがお約束。(元祖はやっぱり『エイリアン』のシガニー) そう思ってたらやっぱりジョエリーが脱いでくれた。(まあ、この人は昔からオールヌードもしばしば披露してるんだが)
ただこれがなんか違うというか、これじゃないって感じなんだな。モデル以上にスタイルがいいのは事実なんだけど、彼女は胸がぺちゃんこだし、脱いでもあんまり色っぽくないのだ。あのブスでごついシガニーでさえあれだけ色っぽかったのに!

宇宙下着美女対決 ジョエリー

《追記》

あれだけ愛したシガニーにひどい言い方! と思って、二人の下着シーンを見くらべてみた。それでびっくりしたのは若い頃のシガニーの色っぽさ!

宇宙下着美女対決 シガニー

これは『エイリアン: コヴェナント』のリビューに書いたせりふだが、一部引用すると、

タンクトップは短すぎておなか丸見えだしさあ、生地は薄くてペラペラで、乳首が生地を押し上げてるのがはっきり見えるしさあ、パンツはビキニパンツで、しかもそれが半ケツでお尻丸見えだしさあ、伝説になるだけのことはあったよ。

というぐらいのピチピチの肢体を披露してくれたシガニーと較べると、やっぱりジョエリーは色気ないわ。ほんと不思議。この二人は身長も体型もそっくりだし(痩せて長身で、惚れ惚れするほど長い手足)、年の頃もちょうど同じぐらいなのに(映画公開時の年齢でいうとジョエリーが2つ上の32歳)。
でも若い頃からおばさんくさいというか、男みたいだったシガニーに対して、ジョエリーは30過ぎのこの当時でもかわいらしく美しかった。
180cm級の白人女性って体も男みたいにごついことが多いのに、ジョエリーは肩なんか本当に細くて華奢で、手足が本当に細くて長い。身長は周囲の男優陣と同じぐらいなのに、すごい華奢だから目立つんだよねえ。うん、やっぱりジョエリーもステキだわ。でも服着てるほうがいいかも。

逆に儲けたと思ったのは、あの軍服や作業服がすごく似合うこと。これまたジョエリーというといつもドレスのイメージで、ズボンすらはいたのってほとんど見たことがなかったのだが、あれだけ足長くて細い人だから当然だけど男っぽい服装が似合うんだわ。作業服姿の女の子ってすごい色っぽいと思いません?


これこれ、この足見て! これは片足を折りたたんで椅子に乗せてるところなんだが、この足の細さと長さ! こういうぴったりしたTシャツと、後半はほとんどタンクトップ姿というのも目の保養でとてもうれしい。あと上の写真にあるけど、顔小さいのでキャップが死ぬほど似合う!
それで彼女も最後はけっこうボロボロになるのだが、やっぱり汚しは似合わない。と、なんか消化不良気味。
何よりジョエリーにちゃんとした役をつけてくれない脚本が悪い。他の殺され役のメンバーもちゃんとキャラ付けをしてくれればもっと泣けたのに、その辺があまり頭良くないB級映画らしいところ。(『スターシップ・トゥルーパーズ2』をほめたのとちょうど逆)

しかも彼女ひとりが生き残るならまだしも、他に2人(重傷の若い男ジャスティンと、軽い黒人クーパー)も生き残っちゃうのも、この手の映画にしちゃ気前が良すぎる。結局地獄とやらも見かけ倒しでたいしたことないのがバレバレだし。(あくまでも精神攻撃しかできなくて、しかも波長の合う一部の人にしか効かない?) まあ実際あの程度で撃退できるんなら、たいしたことないな。と、常にほぼ不死身のエイリアンを見慣れていると思ってしまう。

そしてラスト、生き残ったクルーは尾部にあるブラックホール発生装置を破壊して、地獄の「ゲート」を閉じようと奮闘するが、あと一歩に迫ったミラーをウィアが襲い、もうだめだ!というところでミラーがにやりと笑って発破ボタンを押して船とともに自爆する‥‥あたりは、もちろんお約束。

生き残った3人は(駆動装置もなくなったしおそらく)睡眠ポッドに入って宇宙を漂流していたが、72日後に救助船に発見される。
最初にポッドから出されたスタークを「もう大丈夫だ」と救助隊員が抱え上げるが、ヘルメットの中にあったのは、無残に傷ついたウィアの顔! きゃあー!
しかしそれは幻覚で、魂切る悲鳴を上げて暴れるスタークをみんなで押さえつけて「心配ない。もう安全だから」という場面でThe End。

う~ん、せっかくここまでわりと格調高く来たのに、最後がいかにもなB級ホラー落ちなのはちょっとなあ。
そしてみんなが「もう大丈夫、大丈夫」と言い合う後ろでは、最初に倒れたきり誰にも注目されていなかったジャスティンの体内でエイリアンがスクスクと‥‥というのは別の映画だったわ、ごめん(笑)。この手の映画の古典中の古典と言えば『エイリアン』なんで、どうしても頭が混乱してしまう。でも最初から最後までずっと寝たきりのくせに生き残るジャスティンはどう見ても怪しいよね。

結論。やっぱりB級映画には違いなかったが、これこそカルト的B級だし、実際そうなってる。グロさえ良ければすべてよし。

おまけ
いつも仲良し一卵性母子のレッドグレイヴ家なので、この映画のプレミアの写真を見ていたらヴァネッサも来てたみたいなんだけど、ママにあんなグロい映画見せたのか?! まあ、ヴァネッサはその程度でビビるようなタマじゃないけどさ。でも考えてみたら濡れ場とかあったらやっぱりママに見られるのって恥ずかしくないの? まあ、ヴァネッサも若い頃は平気で全裸とか見せてましたけど。

《あらためて追記》

というわけで、かなり気に入ったんだけど初回のリビューはずいぶんそっけなかったので、いくつか気付いたことを追記。

その1 殺され役の扱いについて

もちろんジョエリーの映画ですから意味もなく彼女のスチルを貼ります。でもあとでグロも出てくるから注意ね。

確かにジョエリーの役柄は軽い。いちおう最後まで生き残るからヒロインとしての位置付けなのに、内面描写がないし、私生活を匂わすものもないし、セリフはほぼ職務関係のものだけなのでファンとしては寂しい。それに対して、ピーターズのほうがはるかにていねいに描かれている。
しかしそれを言ったら、生き残りの他の二人も同じで、ジャスティンは最初に「地獄」に引き込まれたあとはずっとポッドの中で眠っているだけだし、クーパーはステレオタイプな軽い黒人キャラ。(それでもクーパーは船外作業中に宇宙に投げ出され、命からがら自力で戻るという見せ場があるんだが、船内は阿鼻叫喚の最中で、誰にも注目してもらえないという不憫な人

それに対して、死んでいった隊員たちのほうがずっと見せ場もあり、キャラクター描写もしっかりしているのだ。
特にD.J.役のジェイソン・アイザックスの演技はすばらしかった。(彼はイギリス人俳優で、日本だと『ハリー・ポッター』のマルフォイの親父さんと言ったほうが通りがいいだろう) 死に方もすばらしかったけど。

なるほどこれ(生き残るクルーより、殺され役のほうがていねいに描かれている)は変則だけどちょっといいかもと思い直した。『エイリアン: コヴェナント』で不満だったのは、クルーが名前を覚える暇もなくバタバタ死んでいくことだったので。やっぱり同じ死ぬでも人柄を知っているほうが恐ろしさも増すし、同情もわくよね。それにホラー映画の本当の主役はやっぱり食われ役なので(笑)、脇役をちゃんと描いてあげるのは大切なことだ。

ただ個人的には「戦う女」が好きなので、スタークが(軍人だし副艦長なのに)あくまで男たちに守られ助けられる役柄だったのは気に入らなかった。やっぱりちょっとミスキャストなんだよね。ジョエリーはやっぱりお姫様や女王が似合う。

その2 イベント・ホライズン号のデザインについて

私が「挽肉機の中」と形容した船内廊下

最初のリビューでは指摘するのを忘れたが美術とセットがすばらしい。もちろん『エイリアン』や『2001』と較べるのはなしよ。
でもイベント・ホライズン号は、ある意味『エイリアン』のエイリアン・シップにも匹敵するおもしろいデザインだったと思う。つまりギーガーのエイリアンに対して、バーカーのイベント・ホライズンということで。
おっと、これはクライヴ・バーカーは直接噛んでなかったんだっけ。と、つい間違えてしまうぐらいバーカー・テイストにあふれている。それでギーガーとバーカーというのは私にとってグロ系のニ大アーティストなんで、これはいやでも興奮する。

しかもそのデザインが好対照なのがおもしろい。ギーガーのエイリアンはなにしろバイオメカノイド(生物と機械の合体というコンセプト)だからして、エイリアンは生物なのにメカっぽく、逆に船は生物っぽくて、宇宙船の船内なのにまるで何かの巨大生物の腹の中みたいなのがおもしろかった。
それにくらべ(あいにく宇宙生物は登場しないので船だけだが)こちらは何がバーカーっぽいかというと、全体のSMタッチ。つまり、ギーガーはメカも有機的でヌルヌルグチャグチャした感じなのに、こちらは何もかも無機的で、刺だの針だの刃だの鉤だのが至るところに突き出していて、見るからに痛そうってこと。
まず、エンジンルームに向かう通路のデザインがどう見ても挽肉機の内部なところで笑ってしまった。途中のドアも絞りのように閉まるアイリスドアなんだが、なぜか内側に向かって刺が突き出しているし、どう考えてもここで人がミンチになったり、串刺しになる未来が見えるわけ。あいにくそういうシーンはなかったけどね。

こちらも痛そうなエンジンルーム。動かすと球体がまわり、このライトが付いた帯がバラバラに回転する。

エンジンもそう。なんか痛そうなゴツゴツだらけの螺旋が絡み合いながら回転していて、あれもはさまれたらすごく痛そう。まあそういうシーンもないんだけども、想像するだけでも痛そうということで、つまりこの船全体が、クライヴ・バーカーに捧げる苦痛の神殿みたいになっているのがすごい。
ラストのウィアが針なしのピンヘッドみたいになっていたのもオマージュかも。

あと暗い。宇宙船そのものも暗いが、電気が消えた真っ暗な中で進行するシーンも多かった。これは『エイリアン』がそうだった。だいたい陳腐な安い宇宙ものというとどこも真っ白でピカピカでショールームみたいに明るいのが定番なので(例:スターウォーズ、スタートレック)、そこもかっこいい。だいたい何がどうなっているのか見えないのが恐怖を煽るし。
それにくらべて彼らが乗ってきた宇宙船は明るいし内装も普通なので、よけいイベント・ホライズンの異様さが目立つ。

その3 マジで怖い

私はホラー映画や小説が大好きで山ほど見ているすれっからしだし、グロも(本物以外なら)ぜんぜん平気なので、映画を見て怖いと思うことはめったにない。むしろモンスターは大好きなので、出てくれば「やったー!」とワクワクするだけだし、幽霊とかはまったく怖くないし興味もないので、出てもふ~ん?というだけだし。
だからホラーには怖がらせてもらうことはまったく期待していないんだが、でもこの映画は夜中に真っ暗な部屋でひとりで見てるとけっこう怖かった

なんでかというと私は(比喩じゃなくて本当に)心臓が弱いので「びっくり系」に弱いのよね。それがこの映画は多いのだ。というか、普通のホラー映画では怖いものが出る場面はだいたい予期できる。登場人物がそれらしいシチュエーションに陥って、それらしい音楽が鳴って、ああ出るなというのは見え見え。逆に出ないと見せかけて「ギャー!」というのも、あまりにもありがちなんで慣れた。ところがこの映画はまるで予想がつかない
そもそも映画の後半まで、いったい何が起きているのかさっぱりわからないので、展開の予想がつかないのが怖かった。考えてみれば、最初の『エイリアン』の観客だってそうだったので、あの頃の感動を思い出した。

あと、上でも言ってるように本当に怖いシーンはフラッシュバックみたいに一瞬しか見せないのだが、それがわっと出て一瞬で消えるのがかえって怖い。「なんだなんだ、今のあれは何だったんだ?」という感じで。『エイリアン』論でも書いたことだが、見えないものがいちばん怖い
なんだ、ホラーとしても一級品じゃないか。

その4 ちょっとはSF的考察も

と言っても、ブラックホールをどうやって作ってどうやって維持してどうやって入るのかといった科学的考察はやるだけ無意味なので、あくまでフィクション視点で。

イベント・ホライズン号に異変をもたらしたのは、グラヴィティ・コアと呼ばれる超光速エンジンである。
細かい理屈はわからないが、要するに小型ブラックホールを発生させて時空に穴を開け、2点間を瞬時に結ぶワープ装置。ところがたまたま穴の向こうがバーカーの地獄につながって(どういう構造の宇宙だ?)、絶対来てほしくない何かが来てしまったわけ。

これなんかも意味はわからないが美しいシーン。突然ドアからあふれ出しクルーを押し流す大量の血。

ただ、その穴からお化けが出てきてクルーを襲うわけではない。ジャスティンのケースを見るに、中に入ることも致命的ではない。一連の惨劇も、幻覚症状によるものか、幻覚で発狂したクルーのやらかしたこと。だから、「あくまでも精神攻撃しかできなくて、しかも波長の合う一部の人にしか効かない?」と書いたんだけど、よく見たら、船全体に生命反応があったり、「船そのものが生きている?」というセリフもある。
じゃあ、やっぱり何かが出てきていたのか?

目に見えないモンスターというのはステキだしおもしろいと思うのだが、映画はあいにくそこらを追求する暇はなかったという感じ。その正体をもうちょっと突き詰めて、それなりに対策も考えればもっとおもしろくなったとは思うが、それではA級SFになってしまうし、爆弾で吹っ飛ばす程度でちょうどいいのかもしれないけど。

というわけで、最初は思いきりバカにしながら見始めたのだが、役者は無名俳優も含めて重厚な演技だし、美術は(パクリといえばパクリだが)見応えがあるし、ストーリーにも特に破綻はないし、サスペンスと恐怖は盛り沢山だし、これならカルト・クラシックになるのも当然でしょ、という映画だった。心残りはジョエリーがあまり活躍できなかったことだけだ。
監督のポール・アンダーソンについても、私はもうひとりのポール・アンダーソンよりこっちのほうがずっと好き。お上品ぶった自己満足映画ばかり撮っているもうひとりより、たとえB級でもこちらはあまりにも私のジャンルなんで。だいたいあっちのポール・アンダーソンの撮る映画って、私は吐き気を催す場面が多いんだが、こっちは純粋に気持ちいい

というところで最後にその「地獄」のシーンのgif動画をどうぞ。短いし小さいしよく見えないけど、人によっては本当に気持ち悪いと感じるかも知れませんので、いちおうスペースをあけておきます。何度も言うけど私はこういうの好きだけどね。特に人のおなかに空いた穴の中をカメラが通り抜けるところが好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これはその場面のスチル。

このあとグロい動画出ます。スクロールは自己責任で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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