★★★【映画評】リドリー・スコット『エイリアン: コヴェナント』(2017)Alien: Covenant 第二部

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『エイリアン: コヴェナント』リビューもくじ

第一部
これなら靴を舐めてもいいと思ったのに
ヒロインのキャサリン・ウォーターストンのこと
オープニング・シーンのこと
コヴェナント号のこと
ウォルターのこと
第四惑星へ

第二部
ネオモーフ登場
クルーについて
デヴィッド登場
デヴィッドxウォルター その1
デヴィッドxウォルター その2

第三部
パラダイスに何が起こったのか?
ショウに何が起こったのか?
デヴィッドxウォルター その3
デヴィッドの子供たち
父子の物語
再びヒロインについて

第四部

そしてラストは
オマージュとシンボルとメタファー
『コヴェナント』のあやまち
続編について
閉じる円環――エンディング予想

 

ネオモーフ登場

♣ さっきの話の続きだけど、これまでの『エイリアン』でもそこまでガバガバでたるんでなかった気がする。特にオリジナル『エイリアン』の乗組員なんて、宇宙のトラック野郎(つまり使い捨ての底辺労働者)という設定だったのに、この人たちより慎重。この人たちこれでも学者なんでしょ?
♥ とてもそうは思えない。平気で空気吸うばかりか、森の中でタバコスパスパ吸って、火の付いたままの吸い殻をポイと地面に捨てるし、見るからにヤバそうな沼地でそこら中突っつきまわすし。こいつらエイリアンがいなくても絶対すぐに死ぬわと思った。
♠ 『プロメテウス』のお笑いコンビもそうだったけどな。

♦ というわけで、地面に生えてるキノコのようなものから黒いモヤモヤ(映画ではpathogen「病原体」と呼ばれていたが、向こうじゃ “black goo” 「黒いネバネバ」という身も蓋もない言い方で呼ばれている)が出てきて、クルーの二人の体内に入っていく。
♠ なんだよあれ? エイリアンの胞子?
♣ 『プロメテウス』でデヴィッドがホロウェイに飲ませた黒い液体と同じものじゃないかと思うけど、前はただの液体だったよね。それがここではまるで意志を持って動いているようで、自分からフワフワと漂って人の口とか鼻に入っていく。
♦ デヴィッドが改良したのかもね。それがなんでキノコに入ってるかとか、どうやって餌食を見つけるのかは謎だけど。
♣ エンジニアが地球にまいた黒い液体も同じものじゃないかと思うんだけど、なんで前者はゼノモーフが生まれて、後者からは人間が生まれたかはまだわからない。

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お食事中のネオモーフちゃん

♥ とにかくこれを吸い込むと、たちまち体を食い破って出てくるのがネオモーフと呼ばれる白くて小さめのエイリアン。
♦ こいつらは自分から人体に入りこみ、出てきたときにはすでに成体で、卵やフェイスハガーの形態を取らないという、ある意味ゼノモーフ(ややこしいけれど、これがオリジナル・エイリアンおよびこのシリーズのエイリアンの総称。それ以外は形態別に名前が付いている)よりヤバいやつら。
♣ やっぱり途中端折りすぎ! 変態しないエイリアンなんて!
♠ だいたい出てくるのも早すぎて、いったいどうなってるのかと。
♣ 口ぽかーんでしたね。なんだ、このドタバタの展開? いくらなんでも急ぎすぎでしょ。
♥ ありえねー! 目に見えない胞子(?)の状態から、数十分で人間サイズの成体に成長するって、その質量とエネルギーはどこから‥‥?
♠ しかもホストは寄生されている間も生きて行動できるし。エイリアンのバイオロジーは元々かなりめちゃくちゃだったけど、それでもこれはいくらなんでも容認できないって言うか、宇宙の物理法則に反しているし、絶対にあり得ない!
♣ これを容認するなら、リプリーがいきなり身長1000メートルに巨大化して戦ってもいいよね。
♠ 科学に疎い人にはそういうのがまるっきりわからないんだなー。

♦ だいたいこれまではかんじんのモンスター登場まではじらしてなかなか見せないものだったのに、今回はやたら早い。
♥ あのじらしが『エイリアン』の怖いところだったのに。
♠ 『プロメテウス』でほとんどゼノモーフを見せなかったのが、よっぽど評判悪かったんじゃない?

♣ しかも着陸船の中でネオモーフに銃をぶっ放したおかげで、着陸船は爆発炎上、母船に帰れなくなってしまう。助けを求めようにもイオン嵐のおかげで母船とは連絡が取れない、という毎度おなじみの閉塞情況
♦ ただ今までと違うのは、これまで『エイリアン』と言えば必ずどこに隠れているのかわからない密室での戦いだったこと。オープンエアでエイリアンに襲われるというのは新鮮だと思ったけど。
♣ 『ジュラシック・パーク』かと思いました。ネオモーフの動きがちょっとラプターっぽいので。
♥ あとで船内でのかくれんぼもやるんだけどね。
♠ なんか今回は「全部入り」だな。

クルーについて

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数はいちばん多いのにこれまでのシリーズと違って、ほとんど言及もされない気の毒なクルーたち

♦ それでたちまち阿鼻叫喚で、クルーがひとりひとり殺されていくんだけど、出てきてすぐにこれだから、誰が誰かを覚える暇もなかった。
♥ 役者名見ても誰も知ってる人がいないし。
♠ それはこの手の映画ではしょうがない。SFXやセットに金かけるぶん人件費を削らないとならないから。

♥ それを思うと、最初の『エイリアン』は豪華キャストだったんだなあ。シガニー・ウィーバー、ジョン・ハート、イアン・ホルム、ハリー・ディーン・スタントンが共演してたなんて。
♦ いや、彼らはむしろ『エイリアン』に出たから有名になったクチ。ハリー・ディーン・スタントン以外の3人は、名優だけどハリウッドではまったく知られてなかった。シガニーは舞台女優だったし、ジョンとイアンはイギリス人だし。
♠ どっちかというと全員この映画のおかげで不滅の名声を得たね。主役のシガニーは言わずもがな。ジョンは壮絶なチェストバスター・シーンで、イアンは狂乱するアンドロイドの異常さで(笑)。
♣ でも『プロメテウス』だって主役二人以外にもシャーリーズ・セロンやイドリス・エルバが出ていたし、(イギリス映画ファンにとってはショーン・ハリスとレイフ・スポールも)、今回はすごいしょぼい印象

♦ リドリーに言わせると、主役のキャサリン・ウォーターストンと誰だかは舞台出身だから演技がうまいとか言ってたけど。
♠ 誰が? Wikipedia調べたけど、そんなやついないじゃん。シガニーと間違えてるんじゃないの?
♥ だいたい、舞台出身というとイギリスでは、堂々たる体躯と美貌、確かな演技力と朗々たるせりふ回しの人がごく一般的なんだが、アメリカ人俳優でそんなやつめったに見たことないわ。
♣ 結局、最後まで見ても誰が誰だかわからなかったよ。マイケルと、視覚的にインパクトが強すぎるダニエルズを除いては。

♦ あと、宇宙映画ってたいていインターナショナルな人員構成になるものなのに、これはアメリカ人ばっかりでむかついた
♣ オラム役のカルメン・イジョゴは英国人ですよ。名前の通りアフリカ系だけど。
♥ 船は英国=日本の会社の船なんだから、当然ながら英国人と日本人が多くてもよかったよね。特に日本人が乗ってないのは解せない。

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最後の生存者、キャサリンとダニー・マクブライド。キャサリンのこのスタイルなんてまさに正調エイリアン・ヒロインなんだけど、このバカみたいな髪型と顔のせいでどうしても乗れない。

♠ なんだ、こりゃー! 今キャスト表を見て気付いたんだけど、最初に死んじゃうけど船長役のジェームズ・フランコ(James Franco)と最後まで生き残るダニー・マクブライド(Danny McBride)は、セス・ローゲンの関係のコメディアンじゃないか。私は嫌いだからほとんど見てないけど、『ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』とかに出てる。
♥ クソおもしろくもない(少なくとも私には)ダサいコメディばっかり作ってるやつらだよね。
♠ なんでそんなのが『エイリアン』に出てるんだよ?!!! しかも重要な役で。
♣ ダニー・マクブライドは自分はコメディアンだから、どうせ真っ先に殺される役だと思っていたので、最後まで生き残ったので驚いたそうです。
♥ だからお笑い芸人なんか出すなよ

♦ そういえば、晩年の黒澤明もいかりや長介とか所ジョージとか出すようになってだめになって行ったんだが‥‥。
♠ だからこんなやつ生かしておく意味がどこにある。だったらシャーリーズやイドリス・エルバを生かしておいてくれよー!(泣)
♥ シャーリーズについてはまだどこかで期待してたんだけどね。彼女もアンドロイドで実は生きてるんじゃないかとか。元々主役のはずだったんだから、今度はスケジュールの空いた時に頼めばいいんだし。
♦ なんかすでに重大なネタバレが出てるが、生き残るのはヒロインのみと決まってたのに、二人生き残るっていうのは初めてだな。
♣ この話の流れで行くと、生き残っても死んだほうがましなめに遭わされるのは確定ですけどね。

♦ ちょっとおもしろいと思ったのはクルーは全員が夫婦あるいはカップルなこと。なんかそういうSFあったよね。長期間狭い船内で過ごさなければならない宇宙船の乗組員は、男女比率が士気に関わるっていうの。
♠ 私が覚えてるのは逆で、むしろ同性だけのほうが安定するって聞いたけど。
♥ 確かにあの狭い空間で不倫とかしたらえらいことになりそうだ。

♣ 違うってば。そういうのは世代間宇宙船みたいに何百年とかかけて旅する宇宙船の話。この人たちはクライオスリープで冬眠してるんだから関係ないじゃん。
♦ そうか、船下りたらこの人たちも植民するんだから夫婦なのか。
♣ いや、その必要もない。だって2000人も乗ってるんだから、配偶者なんかいくらでも選び放題なのに。
♥ じゃあカップルの意味ないじゃん! ゲイカップルもいるところが今風でおもしろいと思ったのに。
♦ それも二人揃ってひげ面のおっさんで、絵に描いたようなゲイ(笑)。こういうステレオタイプって差別って言わないのか?
♣ レズがいないのが女性差別ね(笑)。

♦ せっかく賢いつもりで入れた要素だろうけどあまり意味なかったね。
♣ でも、そこを利用して配偶者が死んだり寄生されたときの愁嘆場を撮ればおもしろかったかも。
♥ いや、それも撮ってはいるんだけど、なにしろ名前を覚える暇もないから「今の誰?」で終わってしまって。

デヴィッド登場

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♦ とにかくそういうわけで、ネオモーフに追い詰められて危機一髪というところで、一行は不思議なクロークの男に救われる。
♥ ああああああ!
♦ 何を叫んでいるかというと、私はフード・フェチだが、それ以上にクローク・フェチなのだ。(クロークは長いマントにフードがついたものです)
♣ ほんと好きだねえ。
♥ マイケルは『アサシンズ・クリード』でフードが似合うのを証明したし。ましてクロークってステキすぎる!
♠ あれほどかっこよくはないな。

♥ 脱がないでほしかったのに~! 髪も切らないでほしかった。最後まで謎の男のままでもよかったのに。
♠ だいたいなんで未来のロボットが中世の隠者みたいな格好してるんだ?
♣ 未来の隠者だからじゃないですか。
♠ あの格好のおかげで、いきなり雰囲気が変わるんだよなあ。それこそ『指輪物語』みたいなファンタジーの世界に入りこんだような。
♣ ていうかまんま指輪のアラゴルンの登場シーンでしたね。

♦ というわけで、ついてこいと言われて着いた先は、ローマのパンテオンを模して作ったという広場に囲まれた神殿のようなドーム状の巨大な建物、しかもその周囲には、見渡す限りエンジニアの死体が死屍累々と‥‥
♠ この風景も建物もなんでこうなってるのかわからないけど、たまらなく美しかった。ギーガーは亡くなったけど、ゴシック的美しさは変わりないなあ。
♥ こう言っちゃなんだけど、私はパンテオンというよりスカイ・ヘイヴン(Skyrimに出てくる古代の神殿)だと思ったな。あの暗さもそうだし、でかい顔の石像にでかい石のテーブルが並んでいるあたり。
♦ Skyrim同様美しくていいじゃない。あの壁にエンジニアとゼノモーフを巡る壁画があったらもっとそっくりだし雰囲気出たのに。
♣ 確かにセットと美術はいつも必ずすばらしいんだよね。
♠ それを言うならSkyrimもだ。
♥ でもあれは絵じゃん。リドリーはその巨大セットを本当に組んでしまうからすごい。

♦ というわけで本当に似ているという証拠にこれがエンジニアの神殿の内部。

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♦ それでこちらがスカイリムのスカイ・ヘイヴンのスクショ。あいにくこれだと大顔の彫刻が見えないけど。

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♥ そして謎の男がクロークを脱ぐとそれはデヴィッドのなれの果ての姿だった。
♠ なれの果てって何だよ!(笑)
♥ だってなんか汚いんですもの。ヨレヨレのもつれた長髪で。
♣ ハゲ。
♦ 言うな! マイケルは『アサシンズ・クリード』でも汚い長髪だったけど、あんなに似合ってたのに!
♥ ほら、デヴィッドのThen & Now。
♣ 変わりすぎー! 人間だって10年でここまで変わらない。ましてロボットなのに!

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♠ あのナルシシストに何があったんだ?
♥ 10年もあんなところにひとりで籠もっていたら、あれぐらいは変わるでしょ。
♠ だからアンドロイドが変わるなよ。
♦ 右のスチルはデヴィッドがウォルターに化けるため、髪を切ってるところなんだけど、アンドロイドって髪が伸びるものなの?
♠ 少なくともデフォルトではブルネットで、『プロメテウス』ではブロンドに染めてたけど、ここでもブロンドのままだ。あれだけボロボロになっても髪だけは染め続けてたのか?

♦ ゼノモーフの生態もだけど、アンドロイドの性能についても謎が多すぎだね。作り手がちゃんと考えてないだけだけど。
♣ まあ昔の映画だからしょうがないとはいえ、中味の作りもいい加減だったよね。中にはなんかプラスチックのパイプでつながったプヨプヨした丸いボールが詰まってたりして。なんのつもりだったんだ、あれ?
♠ 生体アンドロイドなら普通に血と肉でいいのにね。
♦ なのにそれもちゃんと忠実に踏襲しているのよね、あの白い血とか。

♣ 人がいないと身なりをかまわないってあたりがまた人間っぽくてアレなところ。
♥ とにかくこの人、あまりにも人間的すぎるのよ。そういう設定とはいえ、これじゃロボットにした意味がない。
♠ じゃあ、あのアラビアのロレンスごっこは人に見せるためのためだったのか? ショウに見てもらいたかったのか? 変なやつ!!

♦ でもショウはどこなの?というのがまず浮かぶ疑問だけど、それについてはデヴィッドが自分から説明する。着陸時の事故でショウは死に、船に積まれていた「危険な病原体」が放出されて、エンジニアは絶滅してしまったと。
♠ そんな嘘くさい話、誰が信じるか。
♥ 実際誰も信じてなかったけどね。
♣ というか、この人たち、プロメテウス号の失踪の話は知ってたけど、エイリアンのことはもちろん、エンジニアが何者かとか何も知らないはずだよね。なのに、それを追求しないで黙って聞いてるのがすごい変。
♠ キチガイ・ロボットが変なこと言ってるという感じでぽかーんとしてた。
♦ 観客は『プロメテウス』を見てるからデヴィッドが狂ってることは知ってるけど、この人たちは知るはずがないよ。
♣ デヴィッドがウォルターそっくりだから驚いてた?
♠ いや、量産型なんだから驚くほどのことじゃないでしょ。

♥ 私が「えーっ!」となったのは、去り際にデヴィッドがウォルターに「Welcome, brother.」と呼びかけたところ。
♦ 人間らしすぎるよね。兄弟じゃないし、ロボットに兄弟なんていう概念ないはずだし。
♠ やっぱりウェイランドに「おまえは私の息子だ」と言われていたからかな。
♣ ウォルターも怪訝な顔してたよね。
♥ 私は兄弟フェチなので、「まさか‥‥」と期待したんだけど、まさかああいうことになるとは思いませんでした。

デヴィッドxウォルター その1

♦ そこで怪しんだクルーの命を受けて、ウォルターはデヴィッドに近付いて真相を探ることになる。
♥ この辺、しばらくエイリアンから離れて、この二人の独壇場(というかマイケルの一人芝居)になるので、「中だるみ」と言う人が多いようだけど、私はここがいちばん手に汗握ってハラハラしたけどな。
♣ 確かにエイリアンのやることはもうわかっているんで何も驚かないけど、デヴィッドは『プロメテウス』の時からまるで得体が知れないし、ウォルターもまだ得体が知れないので、いったいどうなるのかまるっきり予測ができなかったんで。それでドキドキしながら見ていたら‥‥。
♥ 私も「まさか‥‥」と期待したんだけど(笑)。

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♠ いきなり笛のお稽古になるのはなんなんだー?
♣ いや(笑)、いちおう後から考えれば意味がないわけではないのよ。オープニングのアンドロイドに芸術がわかるかという話で、♠が「単に暗記してるだけでしょ」と言ってたけど、でもデヴィッドはそうじゃないしるしに彼は絵も描くし、作曲もできる。CreatorかCreationか(造物主か被造物か)というのがこの話のキーワードなんで、それができるってことはただのロボットじゃないということ。ウォルターに笛を渡して吹いてみろと言うのは、それとなくウォルターも同類かどうか確かめてたんだと思うな。
♥ それはわかるけど、それでも最初見たときは「何やってんだ?」という感じで思わず白目だった。

♦ ここは特撮班や俳優としては見せ場のひとつだったんだよ。これ、どっちもマイケルが一人で演じたシーンをあとから合成して二人いるように見せてるんで。いつも言うように今だと顔だけ入れ替えるのなんて簡単なのにね。
♣ クロネンバーグの『戦慄の絆』(Deadringers)の主人公の一卵性双生児兄弟を演じたジェレミー・アイアンズも同じ撮り方だったけど、兄弟二人が抱き合うときは片方が不自然に顔を背けていて、ここはダブルが演じてるなというのがわかったけど、これはぜんぜんわからなかったからすごい。
♥ しかもすごい長回しで。
♠ まあ合成なら何でもできるさ。『戦慄の絆』は合成じゃなく実写だからすごい。

♥ あの映画も好きだったなあ。ジェレミー・アイアンズも大好きだったんで。
♠ そういえば、あれもヒロインのジュヌヴィエーヴ・ビュジョルドがあまりにもブスで貧弱で、これはないと思ったところまで同じ。なんかこのキャサリンやノオミ・ラパスと感じ似てない?
♥ 似てる! ああいう童顔なのにおばさん臭い女大嫌い! まあ『戦慄の絆』もこれも、主人公がアレすぎて、ヒロインの付けいる隙はないけどね。ほっほっほ!
♣ 関係ない追憶にふけった上に意味なく勝ち誇らないでください。

♥ でもこのシーンで私が悲鳴を上げたのは、デヴィッドの “You blow in the hole, I’ll do the fingering.” 「穴に息を吹き込め。運指は私がやる」という意味深なセリフ。これ絶対エッチな意味だ!と思って。
♦ でももしかして私の考えすぎかもしれないと思って、念のためネットで見たら、やっぱりみんなそう思っていて、海外の上映館ではこの場面で笑いが広がったという。
♥ 笑うか? 私はすっごいエロいと思って興奮したけど。ただでさえ双子が差し向かいで、顔寄せ合ってあれだからね。
♠ というか、笛を吹くこと自体が日本でも尺八というぐらいでブロージョブを連想させるし。
♣ fingeringはそのままハンドジョブを連想させるし。
♥ 穴という言葉もなんか卑猥だし。
♦ しかも実際は一人というところがかえってエロい。
♠ それじゃオナニーじゃん。やっぱり普通笑うんじゃない? めっちゃシリアスでサスペンスフルな映画で唐突にあれだから。私は一卵性双生児の兄弟フェチで、マイケル・ファスベンダーの大ファンだから興奮するだけで。
♣ でも脚本家は絶対ニヤニヤしながら書いてる。

♦ 別に現実の一卵性双生児には興奮しませんからね。私のこの性癖は、ピーター・グリーナウェイの『ZOO』(A Zed & Two Noughts)に触発されて、上記の『戦慄の絆』と、『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』(Brothers of the Head)で決定的になったもので、『コヴェナント』もこの栄えある系譜に連なるというだけで。
♠ うち二組は切り離されたシャム双生児の話、『戦慄の絆』は兄弟SM、そしてこれはアンドロイドの自慰と、まともなカップルがひとりもいない。変態だな。

♦ それでこれは演技者としても力が試されるところ。ちなみに『ZOO』は兄弟役者だったけどぜんぜん似てない。『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』は本物の一卵性双生児。
♥ トレッダウェイ兄弟は今は大人になったけどすごいハンサムになったよ。
♦ 『戦慄の絆』はジェレミー・アイアンズが一人二役で演じた。確かに演技力はすごいんだけど、しょせんひとりと思うといまいち色気に欠けると思った。その点、マイケルはいかがでしたか、♥さん?
♥ 色っぽいよお。ただ、しょせんはロボットだからね。ジェレミーは顔は同じだけど性格の違う兄弟をどう演じわけるかに苦労してたけど、ここであまり感情表現入れるとロボットに見えなくなってしまうし、こっちのほうがむずかしかったはず。
♣ いちおう感情のあるほうがデヴィッドなんですけどね。

♠ 私はあまり違いがわからなかったな。だから服で見分けてた。
♦ あと、デヴィッドはいかにももったいぶったイギリス英語をしゃべるけど、ウォルターはアメリカ英語なのね。
♣ デヴィッドはイギリス人のウェイランドに作られた社長専用機だったし、コヴェナント号はアメリカ人が多いから米語モデルなんでしょう。
♥ これもあるんで、ついデヴィッドの味方をしてしまうんだなあ。

♦ これでデヴィッドはウォルターは自分とは違うと悟ったようだけど、それでもあきらめずに、冒頭でも引用した『オジマンディアス』の詩を朗読してみせる。
♣ 自分がオジマンディアスになったつもりみたいだけど、周囲の廃墟はオジマンディアスのものなんだけど。ここではエンジニアのだけど。
♠ 自分もまた滅びると言っているみたいだよね。
♥ それで彼はこの詩をバイロン作だと言うんだけど、ウォルターにバイロンではなくシェリーだと指摘される。こんなうっかりミスを犯すところがデヴィッドのいかにもアンドロイドらしくないところなんだけど。
♠ あるいは10年もメンテナンスしてないから壊れちゃったということ?
♦ どっちにしろウォルターが言うには、デヴィッドモデルはあまりに人間的すぎて、いろいろ問題を起こしたので、後のモデルはもっとロボットらしく改良されたというの。
♣ これでウォルターがデヴィッドの仲間になれないことは確定だと思うんだけど、デヴィッドはそれでも未練がましく、ミルトンの『失楽園』Paradise Lostはこの映画の仮題だった)を引用して、”Serve in Heaven or reign in Hell.“「天国で仕えるか地獄で支配するか」のどちらかを選べと迫る。
♦ それでウォルターは人類に仕えることを選んでデヴィッドを拒否するんだよね。

デヴィッドxウォルター その2

♥ それで話はこの映画のクライマックスへ。
♦ いや、違うと思うけど(苦笑)。
♥ 私にとってはそうなんだよ。
♣ 女性はたいていそうじゃない? この4コマが表す通り、男性はエイリアンが暴れるところで興奮し、女性はあのキスシーンで興奮するという。
♥ 両方興奮する私はなんなんだ?

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♠ 興奮っていうか私は見ながら「えー、なんでー?」と思ったけどな。デヴィッドはべつに「弟」を愛してるわけでもないし、なんでここでキスするの?って感じで。
♥ それだけなら「BLかよ?」ってなるだけだったけど、その直後、いきなりデヴィッドがウォルターを刺し殺して、血まみれのナイフをピッと振るところで、「うおーっ!!!!!」ってなった。

♠ 『アサシンズ・クリード』かよ。
♣ 残念でした。これも『ブレードランナー』へのオマージュで(自分の作品だからオマージュとは言わないか)、ルトガー・ハウアー(が演じるロイ・バッティ)が自分の産みの親であるタイレルを殺すシーンが、まさにこの「キス&キル」だったのだ。
♥ それで私はラブシーンは嫌いだけどこういうのが死ぬほど好きなんで、鼻血が出るほど興奮した。
♣ そもそも「キス&キル」って、リドリーの発案じゃなく、原作のP・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の重要なモチーフだし。

♦ あ、ちょっと訂正。オーディオ・コメンタリー見てたら、あれはナイフじゃなくて笛を喉に突き刺したんだって言ってた。
♥ ええ? あとでウォルターとの戦いの時、でかいナイフを持ってたからナイフだと思ってた。
♠ あの実験室なら解剖用のメスとかいっぱいありそうなのに、なんで笛?

♣ 笛でもメスでもいいけど、首もがれても平気な人なのに、なんであれで殺せると思ったの?
♦ 急所を知っているからとか。
♣ 急所があるとしても首じゃなさそう。
♦ 結局ウォルターも死ななかったわけだし、別に殺そうとしたわけじゃないんじゃない? 首を切られたデヴィッドは動けなくなったし、動きを封じるためだったとか。
♠ まあその可能性もあるけど、アンドロイドがアンドロイドを殺すなら他にもいろいろ方法はあるだろうに、ずいぶん雑だなとは思った。
♥ 『ブレードランナー』のあれよりましだよ。

♦ そういや『ブレードランナー』のあれはそこまで興奮しなかったのはタイレルが不細工なおっさんだったからか。
♠ 雰囲気もだいぶ違うよ。ルトガー・ハウアーは目玉に親指突っ込んで頭蓋骨を握りつぶすというグロい殺し方だったけど、デヴィッドはやけにスタイリッシュで。
♣ やっぱり『アサシンズ・クリード』入ってるよね。
(『アサシンズ・クリード』の話がしょっちゅう出てくるのは、私が死ぬほど熱中したというほかにも、これと同時にBlu-rayを買って見ていたせい)

♥ ただ、私がマイケルにどれだけ惚れ込んでいるか、ついでに兄弟コンプレックスだの、ロボット・コンプレックスだの抱えていることを考えたら、このシーンには思ったほど興奮しなかったな。
♠ どっちもなんだかおっさん臭いからじゃない? この時にはデヴィッドは髪を切って、ウォルターと同じクルーカットにしてるんだけど、なんか疲れた感じで、いつものマイケルほど魅力的に思えなかった。
♣ 『アサシンズ・クリード』のリビューでは「ここでのマイケルは現代編はほとんどクルーカットの短髪、過去編はもつれた汚い長髪で、どっちも私が最も嫌悪する髪型であるにも関わらず、どっちのマイケルも美しい」なんて書いてるけど、『コヴェナント』のウォルターとデヴィッドもそれとまったく同じ髪型なのに、前述のようにデヴィッドは薄汚いし、ウォルターはおっさん臭い。
♦ 『アサシンズ・クリード』の翌年の作品だから、そんなに老け込むはずもないのに不思議だね。
♥ そこがジャスティン・カーゼルとリドリー・スコットの違いじゃない? リドリーは風景やメカは確かに美しく撮れるけど、キャラクターで美しかったのって記憶にない。
♣ 人間に興味ないんかね?
♠ むしろわざと醜く撮ってるような気がする。だからキャサリンも本当は美人なのかも知れない。
♥ ジャスティン・カーゼルってゲイじゃないかね?
♦ 残念でした。結婚して子供もいます。

♦ 思ったほど女性受けしなかったのはそれもあるかなー。
♥ ファンアートを見ればよくわかるんだよ。人気男優があんなキスシーンを演じれば、普通はデヴィッドxウォルターのファンアートがあふれるはずが、そうでもない。むしろ多いのはパパ・デヴィッドとエイリアンのからみで。
♠ まあ、『プロメテウス』でマイケルを知ったファン(私もだが、私はこの間に彼の映画ばかり大量に見たから)にしてみれば、彼は金髪の王子様だったのに(実際そういうファンアートは多い)、それがいきなりこんな乞食みたいななりで登場してはなあ。

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♣ どうでもいいけど、マイケルの映画というと「あまり必然性のないヌードシーンが必ずある」のが特徴だったけど(『フランク』ですらあったのに)、今回はそれもなかった。
♥ 『プロメテウス』もだよ。
♦ わかってないな、ジジイ!
♠ アンドロイドのヌードって需要あるのか?
♥ あそこがどうなってるのか知りたいじゃん。

第三部に続く

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