★★★【映画評】リドリー・スコット『エイリアン: コヴェナント』(2017)Alien: Covenant 第三部

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『エイリアン: コヴェナント』リビューもくじ

第一部
これなら靴を舐めてもいいと思ったのに
ヒロインのキャサリン・ウォーターストンのこと
オープニング・シーンのこと
コヴェナント号のこと
ウォルターのこと
第四惑星へ

第二部
ネオモーフ登場
クルーについて
デヴィッド登場
デヴィッドxウォルター その1
デヴィッドxウォルター その2

第三部
パラダイスに何が起こったのか?
ショウに何が起こったのか?
デヴィッドxウォルター その3
デヴィッドの子供たち
父子の物語
再びヒロインについて

第四部

そしてラストは
オマージュとシンボルとメタファー
『コヴェナント』のあやまち
続編について
閉じる円環――エンディング予想

パラダイスに何が起こったのか?

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パラダイスなのかどうかわからない第四惑星の宇宙港に近づくエンジニア宇宙船(デヴィッドが乗ってる)

♦ そうこうする間に、デヴィッドは本性を現し始め、エイリアンたちがクルーに襲いかかる‥‥というのはお約束だが、本当はこの場所で何が起きたのかも明らかになる。
♠ 着陸時の事故なんてなくて、「病原体」はデヴィッドが意図的にばらまいたものだった。それもショウを喜ばせたいという理由で。
♥ そこの動機がよくわからなかったんだけど。なんでエンジニアを絶滅させるとショウが喜ぶのよ?
♠ だから狂ったAIの考えてることなんてわかるかよ。自分が首もがれたから頭に来たんじゃないの?
♣ エンジニアは地球を滅ぼすつもりだって言ってたじゃん。
♥ それもデヴィッドが言っただけで本当かどうかわからないよ。

♦ 当然ショウがそれを容認するはずがなく、意見が衝突したので彼女には貴重な実験台になってもらったと。
♠ 実際に起きたことは“Advent”というショートフィルム(前作『プロメテウス』もそうだったが、映画本編とは別に数本のショートフィルムがYouTubeで公開されている)の中で語られている。デヴィッドはショウのために意図的にエンジニアを殺し、この星に「第二のエデン」を作ろうとした。ところがショウはこれに反対したので、彼女を「人間以上のもの」に改造する実験材料にしたと。
♣ ひえ~‥‥やっぱり狂ってる。

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着陸寸前のエンジニア宇宙船。デヴィッドの頭上にびっしりと並ぶカプセルに例の黒いモヤモヤが入っていて、この直後に地上へ向けて放出される。

♠ ちょっとその話に行く前に、ここはパラダイス(ショウとデヴィッドが目指していたエンジニアの母星)じゃないって説が気になるんだけど。
♥ は? それじゃなんでこんなところにいるの?
♣ なんでかは知らないけどさ(デヴィッドが間違えた可能性もあるし、エンジニアが彼をだました可能性もあるし)、ここのエンジニアは『プロメテウス』に出てきたエンジニアとは違うんじゃないかっていうの。まずエンジニアは巨人だったのにこの人たちは人間サイズで体が小さいし、身なりもなんか乞食みたいでみすぼらしくて、建物とかもそんなに高度な文明持った種族には見えないし、あとエンジニアは白目がなくて真っ黒な目だったけどこの人たちには白目があるとか。
♦ それはエキストラまでメイクしてないからでは(笑)?
♠ でもデヴィッドたちの宇宙船(エンジニアから盗んだもの)が降りていくと、なんか町中の人々が広場を埋め尽くしてうれしそうに駆け寄ってくるでしょう? 宇宙旅行が日常の種族でこんなことあるか?
♦ あっちのエンジニアって地球に生命をもたらした人はもちろん、宇宙船で眠ってた人も古代人だったんじゃないの? だから時間がたって退化したとか。
♠ 地球のようにエンジニアが種をまいた星のひとつでは?という説もある。

♣ とにかく何者であれデヴィッドが皆殺しにしちゃったのでわからない。
♠ とりあえずあの広場だけでもすごい数のエンジニアがいたよね。あの全員に寄生が成功したんでなくても、大量のエイリアンだかネオモーフだかが生まれたはずだよね。そいつらはどこ行っちゃったの? ネオモーフが生まれたときデヴィッドがすごいうれしそうな顔してたけど、今ではゴキブリ並みにどこにでもいるんじゃないの?
♦ 宿主全滅しちゃったから死に絶えたんじゃないの?
♥ 寿命10年かよ?
♣ キノコがいたじゃん。
♠ でも餌がないよ。なにしろ惑星中で生きているのはロボットのデヴィッドだけみたいだから。そういうときはああやって休眠してるのかも。

♥ そもそもあれって本当にゼノモーフにやられたの? ただの病気と違うの?
♠ あの黒いモヤモヤがゼノモーフの素以外のなんなんだよ?
♣ そんな「麻婆豆腐の素」みたいに言われても(笑)。
♥ だってあの死体ってどれも焼死体みたいじゃなかった? 真っ黒で生きてた頃の形のまま硬直してて。
♣ 暗いのでよく見えなかったけど、エンジニアが襲われるシーンでは触手っぽいのがバタバタしてたし、ゼノモーフなんじゃない?
♥ じゃあなんてあんな死体ばかりなのよ?
♦ 審美的理由。
♠ 確かにあのシーンは美しかった。よって問題なし。

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デヴィッドのラボ。中央の机の上には、輪切りにされたエイリアンの卵や、さまざまな形態の胎児が。

♠ それに「神殿」も美しかった。なにしろデヴィッドの研究室が怖いんだ。亡くなってしまったけど、ギーガーのアトリエを再現したんじゃないかと思うような、グロいスケッチやグロい標本でいっぱいで。
♦ 実際ギーガーのアトリエってあんな感じだった。よくこんなところで仕事してて気味悪くないなと思ったもん。
♥ ギーガー、マイナスエロ、プラス子供のような臆面のない残酷さって感じ。
♠ それ言えてる。ロボットだからエロには興味ないし、デヴィッドは本当にある意味子供だからね。

♣ そう言えば次はきっとギーガー追悼のメッセージがあるはずって言ってたけど、なかった! 代わりに知らない人に捧げる弔辞はでてきたけど。
♥ でもその直後にBased on~っていってギーガーの名前があったじゃん。
♦ まあこの映画全体がギーガーへの弔辞みたいなものだから。
♠ 実際、ギーガーそっくりとは言えなくても明らかにギーガー・オマージュと思える部分は多かったよね。
♣ そもそも未来SFの映画にゴシック調の不気味なのを持ち込むところがギーガーだよ。

ショウに何が起こったのか?

♦ というわけで、この10年間デヴィッドがここで何をしていたかというと、エイリアンやエンジニア、それにショウの死体を使って、口には出せないヤバい行為をしていたことは明らか。
♣ 壁全体を埋め尽くすデヴィッドのスケッチ、すでに “David’s Drawings” というタイトルで豪華本になってるんだけど、これが本当に気持ち悪いんだ。ギーガーよりグロいかも。

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Davidによるショウのスケッチ

♥ ギーガーはメカや無機質が入ってるから生々しさがないけど、このスケッチはすべて生命体のものだからね。
♠ 自分が機械だからだろうか? 興味深いね。
♣ 問題は生物をまるで部品か何かのように扱うことで。
♦ これはギーガーというよりクライヴ・バーカーが描いたんじゃないかと思うようなグロい解剖図がいっぱいで、彼がショウを解剖し、エイリアンとのハイブリッドを作ろうとしていたことがわかる。

♥ なんかこれあれだよね。実験室と言うより猟奇殺人犯の人体オブジェみたいな。エド・ゲインとかの。
♠ それ、私が『イベント・ホライゾン』のリビューで書いたことなんだけど。いかにもバーカー的ってことで。
♦ 確かに皮を剥いだエンジニアにダビデ像のポーズを取らせた剥製?とか置いてあるし。
♣ エド・ゲインと言うより、中国産の「人体の不思議展」みたいな(笑)。
♠ いや、それよりは芸術的。やっぱりクライヴ・バーカーの世界。なんか『イベント・ホライゾン』と意外なところでつながったな。リドリーにそんなの期待してなかったんだけど。

♠ そしてとどめが胸と腹をくり抜かれて、中味ががらんどうになったエリザベス・ショウの死体が、やっぱり何かのオブジェみたいに飾り立てられて机に載っているところ。
♥ これはいくらなんでも病的すぎるでしょうよ。morbidというのはギーガーの代名詞だから、エイリアンにそれは付きものなんだけど、これじゃギーガーよりひどい。
♣ フィンチャーのA3は、その前のキャメロンのA2が健康的なアクション活劇だったから、子供を殺してしまう残酷さがよけいきつかったけど、これじゃフィンチャー以下かも。
♦ だってヒロインだよ! 『エイリアン』はヒロイン映画だから、最悪ヒーローと子供は殺してもいいけど、ヒロインを殺しちゃう? しかもフィンチャーは事故だったけど、事故じゃなくて故意に殺しちゃう続編ってあり??
♥ A4のリプリーの出来損ないクローンもひどかったけど。だいたいヒロインは最悪なめにあわされる映画だからいいんじゃない?

♠ しかもね、不気味な話はまだあるんだ。映画本編には含まれてないけど、この映画のBDにはいくつものショートフィルムがついていて、そのうちのひとつ “The Crossing” というフィルムの中でデヴィッドがショウに何をしたかが明かされる。
♣ ショウがデヴィッドの千切れた首を修繕している最中、デヴィッドが「父でさえもこんなに優しくしてくれたことはない」と言っている場面から始まって、パラダイスに着くまでショウがクライオスリープに入るところが描写されている。
♠ 優しい言葉をかけて彼女を寝かしつけるんだけど、その後のシーンを見ると、どうやら彼はショウを生体解剖したらしい
♦ おえええ!!!
♠ もちろんはっきりとは見せないで、細かいカット割りで見せるんだけど、それでも骨を切り、肉を引きはがすようなシーンの連続。
♦ 私、BD買う前に一連のショートフィルムはYouTubeで見てたんだけど、このフィルムだけは見れなかったんだよね。話には何度も出てくるのに。でも確かにこれは確実にYouTubeの規約に引っかかるから絶対に公開できないわ。(YouTubeはグロには厳しい)
♥ ノオミ・ラパスは嫌いだったけど、さすがにここまでされるのはかわいそうだわ。女優としてもこんなの見せられて気分悪いんじゃない?
♣ リドリーってそういう人だったの?
♦ まさかね。誰の趣味か知らないが、これはいくらなんでも趣味悪すぎ

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安置されたショウの遺体

♥ 『プロメテウス』のラストについて「最後なら良かったんだけど、リプリーは結局、これならあの時死んでた方がましだったというぐらいさんざんな目に遭わされるからね。この場合も悪い予感しかしない」と書いたけど、まさにその通りになったね!
♠ エイリアンの母(というか培養器)にされたリプリーとどっちがましかっていう感じ。
♣ なんかこれの続編(作られるのかどうかも知らないけど)見なくてもキャサリン・ウォーターストンがかわいそうになってきたよ。彼女はいったいどういう目に遭わされるやら。
♥ 「彼女(ショウ)に何をしたの?」と言われて、「これからきみにするのと同じことさ」と答えてたけど。
♦ そのくせダニエルズを抱きすくめてキスしようとしたりする。ほんとに狂ってるわ、こいつ。
♠ うっとり‥‥
♣ なんかうっとりしている人もいるんですけど!
♦ とにかくここまでは「なんだ、こりゃー!」と言って笑って見てたんだけど、これ見て笑いが消えたわ。
♣ この映画が心底怖いのもそこのところ。

デヴィッドxウォルター その3

♦ それで死んだと思ったウォルターは生きていて、結局はデヴィッド vs ウォルターの兄弟対決になるんだけど‥‥
♥ なんかアニメとかにありそうな展開
♣ ウォルターは新型なので、なんと自己修復機能付きだったのだ!
♠ むしろデヴィッドにそれがなかったというのが驚き。それじゃあそこにあのままいたら、いずれは壊れて機能停止する運命にあったんじゃない。自己保存欲求ってないの? ウェイランドの強烈な不死願望を植え付けられてないの?
♦ だったら自分を修理してくれるショウを殺しちゃったら絶対まずいはずだよね。
♠ 破滅願望型アンドロイドというのも新しいな。

♦ というわけで、デヴィッドの正体を知ったダニエルズにデヴィッドが襲いかかる。また「キス&キル」をやろうとして、押さえ込むんだけど‥‥
♠ 「もうあいつは助けに来ないぞ」と言うとウォルターが助けに来るのはお約束。
♥ なんかやっぱりアニメみたいなベタな展開なんだよな。
♣ それよりなんでこのロボット、やたらと人にキスしたがるの?
♠ 性欲に目覚めた‥‥わけではないよな(笑)。

♣ あとやたらと愛してるとか愛してたとか言うよね。どう見ても意味わからず使ってるとしか思えないんだけど。
♦ それだけ狂ってるとしか見えないね。
♥ ヒーローとヒロインは愛し合ってないとならないという変な知識をどこかで仕入れてきたとか。
♠ これでノオミやキャサリンが私好みの女だったらめっちゃ萌えるシーンだったんだけどねえ。あの人たちだと「ああ、もう勝手にやっちゃって下さい」としか思えなくて(笑)。

♦ あの戦闘シーンについても一言。
♥ マイケルはアクションできるのは知ってるし、もっとちゃんとじっくり見せてほしかった。
♦ 外ではエイリアンが阿鼻叫喚やってるし、そんな暇ないんでしょ。
♠ なんでアンドロイド同士が肉弾戦やらなきゃならないのかとは思ったな。
♣ 『ブレードランナー』もそうだったから(笑)。
♥ 動きが速すぎて『マトリックス』みたいだ。

♣ 最終的にデヴィッドがウォルターを殺すシーンってあったっけ?
♠ ない。それを見せちゃうと観客に「ウォルター」の正体がばれちゃうから。
♦ ウォルターがデヴィッドを追い詰めて、デヴィッドがこっそりナイフに手を伸ばしながら、”Make your choice.” というところで切れる。そのあとは何食わぬ顔して「ウォルター」がクルーに合流する。
♣ うまくクルーと観客をだましたつもりだろうけど、あれは見え見えだったね。やっぱり「キス&キル」のシーンがいちばんびっくりした。
♦ ウォルターはエイリアンからダニエルズを守って片腕をなくしたんだけど、デヴィッドは自分で切ったんだろうか?
♠ まあ痛覚ないし。首切られても平気なアンドロイドだからね。

♣ でも、なんでそもそもデヴィッドにウォルターを殺せたの? 首もがれても死なないのに。
♦ だから同型だからどこが弱点か知ってるんでしょ。
♥ 新型のほうがいろいろ改良されて強くなってそうな気がするんだけどな。しかも最初は不意打ちでやれたかもしれないけど、もう敵だってことはわかってるんだから。
♠ でも最後のシーンを見るとまただまし討ちみたいだ。アンドロイドはだまされやすいのかも。

デヴィッドの子供たち

♠ ここらでエイリアンについても。わかってきたのはゼノモーフ(これが『エイリアン』シリーズのエイリアンの総称のはずだが、初代『エイリアン』のビッグチャップを指して使うことも多い。ほんとこのシリーズのエイリアンの呼び名はでたらめなんでなんとかしてほしい)は、エンジニアが(おそらくは生物兵器として)産み出したのをデヴィッドが改良した品種だってこと。
♥ でもビッグチャップ(Big Chap 『エイリアン』のオリジナル・ゼノモーフの愛称)とはまだだいぶ違うよ。
♦ 要するに『プロメテウス』の最後に出てきたディーコン・エイリアンを改造して(というか要するにエンジニアとのハイブリッドで)できたのが、この映画に登場する2種類のエイリアン。ビッグチャップはプロトモーフをさらに改良したものと思われる。
♠ 映画ごとに違うゼノモーフの進化については下の動画がわかりやすいよ。公式じゃないし、CGだし、『エイリアンVSプレデター』なんていうインチキ映画も含まれているけど、よくここまで作ったと思う。
♥ エイリアンはすごくよくできているのにリプリーの作りが雑なのが笑う。

♣ この映画で出てくるのは次の2種類。

ネオモーフ(Neomorph)白いやつ。
「エッグサック(卵嚢)」と呼ばれるキノコのような物から出て来る黒い粒子が生物に寄生し、わりとすぐに体を食い破って出てくる。こうして生まれたときから成体の形をしているところがゼノモーフとの違い。人間タイプだが四足歩行もする。

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プロトモーフ(Protomorph)黒いやつ。
ほぼ初代『エイリアン』のビッグチャップと同じ。卵から生まれたフェイスハガーが人間の顔に張り付くところも同じなら、胸を食い破って出てくるチェストバスターに変態するところも同じ。
ただしこちらのチェストバスターは成体と同じ姿をしていて、初代のような二度目の変態はない。オリジナルはヘビのような体で手足はない。
成体の形態はほぼビッグチャップと同じだが、バイオメカノイド(ギーガーの造語で生物と機械のハイブリッド)であるビッグチャップは、メカのような外骨格に覆われていたが、プロトモーフにはそれがなく、より人間らしい、というか骸骨っぽい形をしている。体もビッグチャップより華奢で、手足はきわめて細い。

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♠ どっちもいまいちかなあ。
♦ そりゃこれはまだプロトタイプだから。
♣ 白いのはA4のおそろしく醜いニューボーンを連想していやだし。
♥ 醜さではいい勝負。こっちはのっぺらぼうの白い顔に口の穴だけ開いていて、そこからゴブリン・シャークのようにあごがニュッと飛び出てくる。
♠ どっちも痩せっぽちでヒョロヒョロして迫力がないし、あの後頭部がなければただの骸骨じゃん。つくづくビッグチャップってよくできていたと思うわ。
♣ でもこうやってみるとプロトモーフもけっこうかっこいいよ。

♥ 私は獣脚エイリアンのほうが好き。あれが出たのはA3からだっけ?
♣ プロトモーフやビッグチャップのような人間型はあまりに人間に似過ぎてかっこ悪いんだよね。その点獣脚エイリアンは人間っぽさと獣っぽさと機械っぽさがうまく混ざりあっていたと思う。
♠ 獣脚だと走るときの躍動感が半端ないし。
♦ どっちも四足歩行もしていたけど、この足長の体型ではまず走れないし、膝をついて走ることになるからスピードも出ないと思う。

♦ 大昔、日本で「エイリアン展」やったとき見に行ったんだけど、そのとき会場に置いてあったゼノモーフの等身大モデルが死ぬほどかっこよくて、たぶん私がゼノモーフに本気で恋したのはあのときからだった
♣ いつの話?
♦ すごい昔だからたぶん初代『エイリアン』公開時だったと思う。
♥ パンフ持ってないよね?
♦ パルコかどっかの特別展みたいなのだからなかった。でもそれが獣脚だったような気がするんだ。ちょうど獲物に襲いかかる直前のデイノニクスみたいに、上半身を低く、尻尾をピンと上に挙げて、両手を大きく開いてつかみかかる格好の。
♠ このプロトモーフもいちおうそういう格好しますけどね。
♦ こんなガニ股のかっこ悪いんじゃないの。でも獣脚というとA3の時代だし、それよりずっと前の記憶なんだがなあ。

♦ でもファンアートを見ても結局みんなが描いてるのはビッグチャップか獣脚タイプだってことは、みんながあれを完成形と思ってるってことだよね。
♣ あ、でもA2のクイーン・エイリアンがけっこう人気なのは私は解せない。かっこ悪いじゃないあれ。
♦ みんな大好きキャメロンの映画だからじゃない?
♥ しかもあのイモムシみたいな白いブヨブヨの下半身ってシロアリの女王アリそのままでしょう? アリやハチの女王なら大きくてピカピカ光ってかっこよくて好きなのに、シロアリってキモいからきらーい!
♠ だいたいエイリアンは虫じゃないぞ。卵を産むのは女王だけなんて勝手に決めんな!
♦ 私のエイリアンのイメージはやっぱり恐竜=爬虫類だからね。
♠ どうもキャメロンはそこらへんわかってないようなのに、A2が変に人気になってしまったのがいやだ。

父子の物語

♦ このあたりからエイリアンによる虐殺が始まるんだけど、それはどんなに残酷でももう見慣れたものだし、エイリアンが残酷なのはあたりまえだし。それより、それを見つめるデヴィッドの慈愛に満ちた優しい顔が怖い!
♣ サイコものだったの、この映画?

♦ とにかく、デヴィッドはエイリアンたちを完全に「我が子」と見なしてるのよね。クルーを襲ったネオモーフと見つめ合って、オラム(新しい船長)がそれを殺すと「彼は私を信頼していたのに!」とすごい怒るし。
♣ 信頼してるんじゃなくて、ロボットは食べられないし寄生できないとわかってるだけじゃないかと思う。
♦ えー、でもオラムから生まれたやつはデヴィッドをお父さんと認識してるみたいだったじゃない。
♥ デヴィッドが両手を上げると真似したりして、初めてエイリアンをかわいいと思ってしまった。
♣ A4のニューボーンはいくら甘えたふりしてもまったくかわいくなくて、ぶっ殺せ!と思ってしまったのに。
♠ 当のデヴィッドは親ばかそのもの。これはさんざんファンアートでからかわれてる。

♦ とりあえずこれは父子の物語だと言った私の読みは正しかったね。ここまであからさまだとは思わなかったけど。前作のリビューに書いたのを補足すると、

「エイリアン・シリーズ」
リプリーと娘は母子
エイリアン・クイーンとエイリアンも母子
リプリーとニュートは疑似母子
3のリプリーとエイリアンは母子
リプリーとニューボーンも母子
リプリーとコールも疑似母子

「エンジニア・シリーズ」
エンジニアと人類は父子
ウェイランドとヴィッカーズは父子
ウェイランドとデヴィッドは疑似父子
ショウと死んだ父親は父子
デヴィッドとエイリアンは疑似父子

となる。
♥ 構図としてはきれいだけど、意味はだんだん薄まってるような気がするな。リプリーの母性は強烈だったけど、デヴィッドは単におままごとをして遊んでいるだけに見える。
♠ まあリプリーと違って(文字通り)自分のおなか痛めて産んだわけじゃないもんな。
♣ 自分の造物主である人間も不完全だと思うとあっさり切り捨てたし、その人間の造物主であるエンジニアも絶滅させたんだから、「子供たち」も気に入らないところがあればあっさり絶滅させそう。
♠ ありうる。そして宇宙は気の狂ったロボットひとりだけになる。”In space, no one can hear you scream.”
♦ そして漆黒の虚空で叫び声をあげるデヴィッドの姿が‥‥
♥ うわ! なにそれかっこいい! どうせ口からでまかせ言っただけだと思うけど。

再びヒロインについて

♦ デヴィッドがウォルターに取って代わる間も邪魔なクルーはどんどん殺されて行き、ラストの20分ぐらいはやっと出番の来たヒロイン、ダニエルズとエイリアンの一騎討ちになる。
♥ それも一難去ってまた一難というやつ。やっと母船から助けが来たと思ったら、そこにエイリアンが乗り込んできて、やっとの思いでエイリアンを振り落として母船に帰ったら、実は船内にもエイリアンが潜んでいてうぎゃー!
♣ どっちも最後は重機を使って撃退するんだね。なんとなくA2を思い出す。

♦ そう言えば、エイリアンを殺した場面って見たことがないような気がする。いつも宇宙に捨てるパターンで。
♥ 殺せないからそうするしかないんじゃないの?
♦ でもエイリアンは不死という設定なんてなかったと思う。
♣ 殺せないのは船内で殺すと強酸性の血液で船体に穴が開くからだよ。でも外でなら殺せるはずだと思う。
♠ 事実上不死身かよ。

♦ 普通だとこのシークエンスがクライマックスなのに、この冷淡さはやっぱりヒロインがアレだから?
♥ まあねえ‥‥
♠ この手のアクション・シーンはもちろん手堅くおもしろく作ってはあるんだけど、もう手の内は見えてしまっていて(「どうせまだ船内に一匹残ってるんだぜ」みたいな)驚きは何もないなあ
♣ それ言ったらリドリーがかわいそうっていうか、それを言うなら『エイリアン』を真似した何百って映画はどうなるの? やっぱりおもしろいから真似されるんでしょ。
♠ だからおもしろくないとは言ってない。『エイリアン』の時点では死ぬほどおもしろかったよ。でもこれはあまりにも図式通りで。
♥ だから『プロメテウス』のエイリアンの堕胎はショッキングだったし、だからショウは許したんだけど。

♦ むしろこれは意識して『エイリアン』そっくりに作ったんじゃない?
♣ 卵からフェイスハガーがピギャー!もあるし、チェストバスターもバックバスターもあるし、だいたい『エイリアン』の見所はすべて網羅してるのは意識的でしょう。
♠ 秒読みシーンがない! 『プロメテウス』にはあったのに。
♥ 二度続けてはくどいと思ったんじゃない?
♠ でもマザー役の声の人(ローレライ・キング)、すごくAIっぽくていい声だったから、あの声で秒読みしてほしかったのに。

♥ それより「下着姿で歩き回るヒロイン」がない! これは『エイリアン』の最も重要な部分なのに!
♠ あの女の裸なんて見たくない。ショウもいらなかったけど。
♦ いちおうタンクトップ姿にはなるけど。
♣ 下はズボンはいてるじゃない。パンツ一丁でないと。
♠ 見たくねーよ! おばさんのパンツなんか!

♦ 結局、見れば見るほど、いかにシガニー・ウィーヴァーが偉大だったかということしか考えられなくなるのよね。実はこれを書くついでに写真を整理しようと思って画像フォルダを見てたら、『エイリアン』のシガニーが若くてかわいかったのでびっくりした。
♣ おばさんだのブスだのさんざん言っちゃったけど、それって年取ってからの印象がかなり入ってたみたいで、『エイリアン』の頃は十分美人だしかわいかった。あの髪型はやっぱりないけど。

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♥ それで例の下着シーンだけど、これが記憶にあったよりエロいのよ。タンクトップは短すぎておなか丸見えだしさあ、生地は薄くてペラペラで、乳首が生地を押し上げてるのがはっきり見えるしさあ、パンツはビキニパンツで、しかもそれがずり下がってお尻丸見えだしさあ、伝説になるだけのことはあったよ。
♠ そこまでのリプリーがあまりにも男らしかったんで、脱いだときのエロさと無防備さがすごかったんだよね。
♣ べつにおっぱいやお尻がでかいナイスバディってわけではなく、単に背が高くて健康的な若い女性というだけなんだけど、それがなんともそそるのよね。

♦ 同じことがアクションにも言える。ここでもダニエルズは「ただの女の子がなんでこんなに強いの?」というアクションを繰り広げてくれるんだけど‥‥
♣ ヒロインがアンドロイドよりエイリアンより強くて不死身なのも、このシリーズの伝統。
♥ これがリプリーだと、「さすがお姉さま! かっこいいわー」となるのに、演じるのがノオミやキャサリンだと、「ありえねーよ!」で終わってしまう。
♠ そもそもあの人たちだと感情移入もできないのでハラハラもしないしね。いつも言うように、ヒーローは「はあ~、すてき」と思って眺めるだけだけど、ヒロインは自分の分身だから。

第四部に続く

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