★★★【映画評】リドリー・スコット『エイリアン: コヴェナント』(2017)Alien: Covenant 第四部

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『エイリアン: コヴェナント』リビューもくじ

第一部
これなら靴を舐めてもいいと思ったのに
ヒロインのキャサリン・ウォーターストンのこと
オープニング・シーンのこと
コヴェナント号のこと
ウォルターのこと
第四惑星へ

第二部
ネオモーフ登場
クルーについて
デヴィッド登場
デヴィッドxウォルター その1
デヴィッドxウォルター その2

第三部
パラダイスに何が起こったのか?
ショウに何が起こったのか?
デヴィッドxウォルター その3
デヴィッドの子供たち
父子の物語
再びヒロインについて

第四部

そしてラストは
オマージュとシンボルとメタファー
『コヴェナント』のあやまち
続編について
閉じる円環――エンディング予想

そしてラストは

♦ やっとの思いでゼノモーフを退治して生き残ったダニエルズとテネシー(ダニー・マクブライド)は、本来の目的地である植民星Origae-6を目指すためクライオスリープに入るんだけど。
♥ 「ウォルター」はダニエルズを優しくポッドに寝かせて蓋を閉める。そこでダニエルズがふと思い出してのぞき窓を叩き、「向こうに着いたらキャビンを建てるの手伝ってね」と言うと‥‥
♣ ダニエルズと夫の夢は移住先で湖の畔にキャビンを建てて住むことで、それをウォルターに話したことがあるんだよね。
♠ しかし「ウォルター」はキョトンとしているのを見て、ダニエルズは彼が実はデヴィッドであることに気付く。ここで半狂乱になるダニエルズの演技は見応えがあった。

♦ でもデヴィッドは微笑んで”Sleep tight, don’t let the bed bugs bite…”と。
♥ 翻訳すると、「ぐっすりお休み。トコジラミに噛まれないように」です。
♣ デヴィッドのセリフはどれもみんな意味ありげなんだけど、このセリフもなぜかすごい印象的だった。
♦ べつにただの慣用句で、子供を寝かしつけるときのセリフなんですけどね。
♠ でもアメリカ人は言わなくない? アメリカ映画で見たことない。
♦ 私もすごく英国っぽいと感じたんだけど、コメンタリーでリドリーも「非常に英国的だよね」と言っていた。
♥ ほっこりするよね。恐ろしいはずの場面なのに。
♣ いやいやこのセリフは恐ろしいでしょ。”bed bug”は実在していて、ベッドどころか確実に体内に入り込んでくることがわかってるんだから。

♦ そしてデヴィッドは「子供たちを寝かしてくる」と言って、移住者の胚の保管庫に行き、
♣ マザーにわざわざかけさせたワグナーの「ワルハラへの神々の入城」をBGMにね。
♠ これは最初のシーンでデヴィッドがウェイランドのために弾いた曲。偽物の神が入城する場面というのもぴったり。
♥ そこで彼は口から取り出した2個のゼノモーフの胚を、いとおしげに人間の胚の中に置く。
♦ それでお決まりの地球への報告はデヴィッドがやるところで終わり。そして船は数千人の人間と、ひとりのアンドロイドと、2匹のエイリアンを乗せてOrigae-6へ。
♠ という露骨に「パート3へ続く」という終わり方だったんだけど‥‥

オマージュとシンボルとメタファー

♦ あ、でもその話に行く前にこれは言っておかないと。ストーリーを追うだけが映画の楽しみじゃない。随所に散りばめられたオマージュやシンボルやイースターエッグを探すのもこの映画の楽しみ。今回はそれがものすごくたくさんある。
♥ 『エイリアン』は自作だし、オマージュじゃないか。だいたいほぼいっしょだし。
♣ でも今回はすごく意図的にやってる。最後であの水飲み鳥を出してくれたところなんか、ファンはニンマリする。
♠ 『ブレードランナー』からの引用も多かったよね。出だしの目玉と、「キス&キル」と、“That’s the spirit.”(「その意気だ」BRのバッティのセリフをデヴィッドがダニエルズに言う)と、他にもあったかもしれないが忘れた。

♦ それより全編を通して「芸術」が大きなモチーフになっている。文学は上に引用したシェリーの『オジマンディアス』と、ミルトンの『失楽園』。音楽はワグナーの『ラインの黄金』。美術は前述のミケランジェロのダビデアーノルド・ベックリンの『死の島』
♣ しかもそれらすべて、この映画のテーマと共通するものを持っているところがえらい。
♠ デヴィッドは芸術がわかるという設定なので、意図的にハイブラウな芸術要素を入れてきたね。
♥ 確かに化け物映画でこれだけハイブラウなのはないね。さすがリドリーは賢いし趣味がいいし、こういうのはイギリス人監督でなくちゃ絶対に撮れない。

♦ 他のは説明したけど、ベックリンは解説が必要か。デヴィッドがウォルターを連れ出すバルコニーが、まんま『死の島』なんだよね。目の前は死屍累々だし。
♣ この絵大好きなんでうれしい。
♥ でも絵画はこれだけじゃないでしょ。海外掲示板を見て回っていたら、他にも類似を指摘してる人がいっぱいいたよ。ほとんどは憶測だけの思い込みだったけど。

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これは誰が見ても一目でわかるベックリンの『死の島』

♠ ギュスターブ・ドレの聖書を引き合いに出してる人が多かったけど、ドレは枚数もたくさんあるし、だいたいドラマチックな映画的構図は絵画にもあるんだよな。
♦ でも門に殺到するエンジニアの群衆なんかは、元ネタは浮かばないけど、いかにも古典絵画を意識した構図だと思ったな。
♠ デヴィッドを打ちすえるウォルターのポーズが、古典絵画にはよくある「悪魔を打ちすえる天使」にそっくりだとか。
♥ 考えすぎ。それ言ったらケンカなんてみんなそれになってしまう。

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何度も出てくるけどこれです。この「絵」はグロいけど本当に美しい。

♣ 私が気になったのはネオモーフが犠牲者の上にうずくまったシーンが、ヘンリー・フュースリの『夢魔』だっていうやつ。
♠ 考えすぎ。
♣ でもこの絵は私にとって忘れがたい絵だし気になった。
♦ フュースリかどうかは知らないけど、この「絵」は色彩といいライティングといい、すばらしく美しいと思ったわ。
♥ 映っているのはゲロ吐くほど醜い化け物と、グジャグジャに破壊された死体だけというグロい絵なのに。
♣ 色調が泰西名画風だよね。
♠ やっぱりこういうところ、リドリーは凡百の監督とは違うのは明らかなんだけど。

♣ あと、生まれたてのプロトモーフがデヴィッドのまねをして万歳するシーンなんだけど、これがやっぱりフュースリの『失楽園』連作の中の、「悪魔を召喚するサタン」だというの。
♠ あ、これは気付かなかったけど似てるかも!

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こちらがフュースリの『悪魔を召喚するサタン』

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♥ 万歳シーンのスチルがなかったんだけど、この直後、プロトモーフがデヴィッドの真似してバンザイするの。
♦ ここのデヴィッドはまさに悪魔を呼び出すサタンだし、『失楽園』を引用してしゃべるし、体の大きさの違いも同じだし、これはやっぱり意識したものか。
♥ 見ながら、「なんでここで万歳するんだろ?」と思ってたけど、そういうことだったのか!
♣ それを見たデヴィッドは満面の笑みを浮かべるんだけど、するとプロトモーフもパカッと口を開ける。それがまるで笑っているように見えるんだよね。たぶん単なる物真似だと思うけど。でもそれがすごいかわいくて、笑うエイリアンも初めてなら、エイリアンをかわいいと思ったのも初めて
♥ いや、プロトモーフの赤ちゃんのちょこんと立った後ろ姿だけでもうかわいい。

♣ まだあるよ。クルーのローゼンタール(テス・ハウブリック)のエイリアンに引きちぎられて水たまりに浸かった首が、ジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』だというの。
♠ あ、似てる!
♦ 確かにこのうつろな表情といい、目線といい、言われてみればそっくりだ。
♥ 生首なのに(笑)。
♣ まあオフィーリアも溺死体だし。映画は向きが逆なので、左右反転させてみました。

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ミレーの『オフィーリア』(細部 左右反転させたもの)

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と生首

♦ ワグナー以外はシェリーもミルトンもフュースリもミレーも全員英国人というあたりにもリドリーの矜持が見えますね。(フュースリはスイス人だが国外追放されて英国で活躍した)
♠ スイス人ってH・R・ギーガーと同じじゃん。
♣ ベックリンもスイス人だよ!
♥ スイス人って他にはユングぐらいしか知らないけど病的な想像力の持ち主なんだな。
♠ そこまで意識してスイス尽くしにしてたらすごいな。ある意味、これがリドリーのギーガーに対する弔辞かも。おもしろい! 一般受けはまったくしないだろうけど、こういうのすごい好き!

『コヴェナント』のあやまち

♦ それでは、ここらでまとめに入りたいので、各人が感想を述べるように。私はう~ん、いいところもたくさんあるんだけど、やっぱりストーリーがなあ。とりあえず、美術・特撮・デザイン・カメラとかは一級品なのに。
♥ キャサリン・ウォーターストン、これがすべて。『エイリアン』シリーズはヒロイン映画なのにヒロインがあのジャガイモでは。あとマイケルも期待したほど魅力的じゃなかった。容姿はともかく、普通ならドキドキするようなヤバいセリフはたくさんあるし、デヴィッドというキャラ自体が相当ヤバいのに、なんかわざとらしくて白けた。
♠ 『プロメテウス』と同じで脚本がまるでダメ。『エイリアン』4部作は賛否両論はあれど、脚本はどれもよくできていたのに。明らかな脚本の粗は別としても、話が迷走して何がやりたいのかわからない。
♣ 『プロメテウス』は謎だらけだったんで、当然ながら続編のここでその謎が解き明かされるだろうと思っていたんだけど、それがなんにも解明されていない。つまり『プロメテウス』を見て疑問を抱いたのは、

  • ウェイランドの目論見はわかったけど、デヴィッドの目的はなんなのか? 最初はウェイランドに秘かな命令を受けているんだと思っていたけど、彼はウェイランドや人類全体に反抗心を抱いているようだし、自分なりの魂胆を持って動いているように見えた。
  • ゼノモーフはどこから来たのか? エンジニアの生物兵器と言うならその根拠は?
  • ゼノモーフのライフサイクルはなんであんなにとっちらかっているのか?
  • エンジニアとはどういう人々で、何を考え、何のために種をまいたのか?
  • エンジニアはなんのためにゼノモーフを作ったのか?
  • エンジニアが地球にまいた黒い液体と、Black Gooは同じものだと思うけど、なんで前者から人間が生まれて、後者からはゼノモーフが生まれたのか?。
  • プロメテウス号が出会ったエンジニアはなんであんなに攻撃的で、(デヴィッドの言によれば)地球を滅ぼそうなんてしたのか?

というあたり。
♥ というかさあ、『プロメテウス』という映画全体が、どっちかというとゼノモーフよりアンドロイドよりエンジニアについての物語だったよね。だからそのエンジニアの故郷を訪れる『コヴェナント』ではそこが明らかにされると思っていたのに‥‥
♠ 明らかにされる前にデヴィッドが全滅させちゃった(笑)。これはひどい。これまで得られたわずかな情報もすべてデヴィッドの口を通したものだから、どこまで本当か信じられないし、おかげでエンジニアのことは何ひとつわからないまま。
♣ 前作をゴミ箱に叩き込むような暴挙。
♦ 仮にも人類の父なのに‥‥

♠ これは(A3を撮った)フィンチャーよりひどいな。
♣ フィンチャーがなんでああいうこと(前作のヒーローとマスコット=子供を冒頭で殺してしまう)をしたのかは想像がつくんだ。たぶんフィンチャーはキャメロンみたいな健全なヒーロー(ヒロイン)ものは嫌いだし、彼が撮ろうとしていた物語にはどこにもフィットしないから切り捨てるしかなかった。なのにリドリーは自作なのに!

♦ ということで私は悩んでいたのだが、IMDbを見てこの謎が解けた。実は彼は『プロメテウス』の「より忠実な」続編、つまり主にエンジニアに焦点を当てて、エンジニアがなんで人類とゼノモーフを作ったのかについての物語を考えていて、最後は『エイリアン』につながる形で終わらせようとしていたそうなんだけど‥‥
♠ それだよ! 私たちが期待していたのはそういう話だったのに!
♦ 『プロメテウス』の反響を見て、この路線が不評なのに気付いて路線変更したと。
♠ なんでだよ! 自分で作っておいていきなり路線変更するなよ!

♣ まあ、ファンの気持ちもわかるんで、っていうか私も同じに感じたけど、ファンはエイリアン・ムービー、しかもオリジナルのリドリー・スコット監督が戻ってきたとなれば、あくまでエイリアンを見たくて見に行くのに‥‥
♥ 出てきたのは見たことも聞いたこともない、エンジニアとかいう暗黒舞踏家みたいな白塗りのおっさんで、かんじんのゼノモーフは最後にちらっと顔見せだけ(しかもあの不細工なディーコン・エイリアン)だから、それはファンも怒るし混乱するでしょうよ。
♣ だからそもそも『プロメテウス』が間違っていたんだけどね。

♦ リドリーの当初の考えでは、ファンはもう露出しすぎたゼノモーフには飽きているに違いないと思ってたんだって。それで「エイリアンはどこから来たのか?」という原点に戻って、それを「我々はどこから来たのか?」というテーマにつなげようとして、エンジニアを出したんだけど、これがファンにはまったく受けなくて、実はファンが求めていたのはオリジナル『エイリアン』なんだと気付いたんだそうな。そこでエンジニアはあっさり捨てられ、完全に路線変更というわけ。
♥ だからあんなに『エイリアン』そっくりだったのか。
♠ しかし前も書いたけど、リドリーってこういうところ素直すぎ。もう少し自分の創造物に自信持てよ。
♣ 素直って言うより、もうやけくそのような気がする。「おらおら、おまえらフェイスハガーやチェストバスターが見たいんだろ。だったら見せてやるよ」みたいな。
♦ 確かにあの辺はサービスなのかも知れないけど、必要あるか?って思った。

♥ リドリー・スコットのことは前にも「あまりにスタジオ寄り」と言ったけど、ここまで観客に迎合できるのも彼ならではだね。
♦ そういう人だからこの年まで第一線でやってこられたんでしょうけどねえ。
♣ 技術とアートセンスは最高なんだけど、それ以上に映画はまず売れなければ意味がないと考えるタイプ
♦ スコセッシなんかもそうだよね。彼もリドリーもうまく折り合い付けてるほうだけど。
♥ 彼はむしろ職人気質なんだと思うな。たとえ気に入らなくても、スポンサーや出資者にこうしろと言われると「はいよ」と引き受けてしまう。
♠ むしろそういうところを自慢にしてるもんね。
♣ ところがそれがとんでもない間違いだった‥‥

続編について

♦ というわけで、リドリーは最初から『プロメテウス』は三部作だか四部作だかと考えていて、だからこの映画も前とまったく同じ宙ぶらりんエンディングで終わっているの。
♠ ところが『プロメテウス』はあれでもそこそこヒットしたのに、『コヴェナント』は大コケで、続編の話も立ち消えになってしまった。IMDbにもいちおうページはできているが、監督リドリー・スコット以外はすべて白紙。
♣ 「『コヴェナント2』今秋撮影開始!」とかいうニュースを見て「うおー!!」と思ったらエイプリルフールのジョークだったりして。ふざけんな!
♥ まあ、コケる理由もわかるわな。ヒロインの顔があれじゃ‥‥
♠ そうじゃなくて、『プロメテウス』は当然リドリーの『エイリアン』プリクエルだから期待した人々が見に行ったんだろうけど、話はわけわかんないし、かんじんのエイリアンも見られなかったから、みんながっかりして『コヴェナント』は見る気をなくしただけでしょ。

♣ ひいー! これで終わりなんてなったら最低だよ。
♠ というか、このままじゃデヴィッドが植民地でゼノモーフ軍団を作って人類滅亡の未来しか見えない
♦ そうすると『エイリアン』と矛盾するし、とにかくこのままではダメだ。ゴミだろうと老人ボケだろうと、リドリーには続編作ってもらわないと。
♠ だめじゃない? これがお蔵になったのは20世紀Foxがディズニーに買収されたからという噂もあるし。
♥ マジかよ! 20世紀Foxの栄光の歴史も21世紀で幕切れかよ!
♣ ディズニーのエイリアン! そっちのほうが悪夢の未来のような気がする。
♦ まさにディストピアとしか。

♦ ディズニーは『ナルニア国物語』も儲からないという理由でお蔵にしてくれたしなあ。
♠ これはもう無理でしょ。彼、制作会社も持っているんだから、もう自費で作ればいいじゃない。黒澤ですらそれやったんだから。
♦ ほんとそれ。弟のトニーや子供たちにも借金してさ。
♣ むしろ今の時代、リドリーがSNSで窮状を訴えて、ファンドみたいなの募ればファンはみんなお金出すでしょ。私も出すもん。
♥ それでもまだ足りないだろうけど、それならセットや特撮がヘボくても文句は言わないよ。ヒロインはあれじゃいやだけど、無名女優だっていくらでもいい人はいるでしょ。マイケルには友情出演でノーギャラで出てもらう。
♣ 勝手なことを(笑)。ノーギャラでいいのはシガニーぐらいだよ。
♦ とにかくこれで終わられては困る。何が何でも『エイリアン』につなげてエイリアン・サーガを完成してからでないと死んでは困るし。
♥ 彼はきっと作ると思う。劇中creatorとかcreationという言葉が何度も出てくるけど、『エイリアン』こそはリドリーの最大の創作物で彼の子供みたいなものなんだし。
♠ だけど切実な問題としてタイム・リミットがあるんだよ。当然マイケルを出すつもりだろうけど、彼が年取ってからじゃ遅い。ロボットが老けて出てきたらおかしいし。『ナルニア』もそれがあるからもうだめだろうと思うんだけど。

閉じる円環――エンディング予想

♦ それじゃあくまで続編が作られるものと信じて、その内容を予想してみよう。
♥ なんかここまで手ひどく裏切られると、とてもじゃないが予想する気力も失せるんですけど。
♣ じゃあ同じぐらいでたらめな予想をしてみれば? デヴィッドはオリガエ6に着いて、2千人の睡眠者を元にゼノモーフの楽園を作ってめでたしめでたしと。(もちろん人間は殺さず、繁殖させてゼノモーフの食料&ゆりかごにする)
♠ 『Matrix』みたいだ。
♦ だめよ。とにかくこのシリーズのエンディングは、『エイリアン』の発端につなげないとならないんだから。
♥ その前にいろいろな謎も解いてもらいたいし。

♠ でも単に話をつなげるだけなら簡単じゃない? おそらくデヴィッドの野望は♣が言ったみたいにコヴェナント号の乗員を生け贄にすることなんだろうけど、それは実現しなかったことはわかっているし。
♣ そうとは限らないよ。あの定時連絡のあと、船ごと行方不明になったことにしておけばいい。
♦ でもそれだと調査隊か第二の植民船が来ちゃうじゃない。
♥ 無事着いたと人質に嘘の報告をさせてもいい。
♣ とりあえず、どこかにエイリアンの惑星があるというのはロマンなので、そういうのも撮っておいてほしいな。

♦ でも『エイリアン』を見るに、ウェイランド=ユタニはすでにゼノモーフの存在を知っていたよね。だから持って帰らせようとしたわけだし。
♠ えーと、もう最後に見たのずいぶん前だから細かいことは忘れちゃったけど、知っていたようでもあり、たまたま非常に珍しい異星生物を見つけたから持ち帰らせようとしたのかもしれない。
♥ そこはYouTubeにクリップがあったから見てみた。アッシュが受けていた命令は最優先事項として“Bring back lifeform.”というだけで、それがゼノモーフのことだという証拠はないなあ。
♣ でもどんな生物でもいいってことはないし、あそこまでの犠牲を払っても欲しいということは、ゼノモーフの性質についても知ってたとしか思えないよ。

♦ それで会社がなんで知ってたかというと、それはデヴィッドから報告を受けていたとしか考えられない。
♠ それもあまり考えられないんだなあ。人類に対するデヴィッドの敵意からして。
♣ 「お父さん」がまだ生きていればそれもありうるけど、彼も死んじゃったし、愛する者も平気で殺すデヴィッドが会社に忠誠を尽くすというのはちょっとありえない。
♥ やっぱり彼の魔手を逃れたクルーの誰かが通報したんじゃない?

♦ じゃあそれはそれでいいとして、ゼノモーフはまだ最終形態ではなかったので、それをビッグチャップに改造したのは当然デヴィッドだよね。
♣ それはもちろん。彼のいう“perfect lifeform”があれだったんだろうね。
♥ 違いは前にも書いたように、バイオメカノイド化して、機械っぽい装甲に覆われていること。
♠ エンジニアの外骨格みたいに見えたあれが宇宙服だったのと同じように、ゼノモーフも服を着てヘルメットをかぶってるのかもとは思ったけど。
♥ それはない! 生まれたばかりでどこから服を手に入れたんだよ?
♣ 強化という観点では何もおかしくないですね。

♥ そういえばYouTubeに大量にあがっている考察のひとつでおもしろいのがあった。ビッグチャップ=プロトモーフ+機械、つまりビッグチャップはプロトモーフとデヴィッドのハイブリッドじゃないかというの。
♠ げっ! なんだ、そりゃ。デヴィッドがゼノモーフかわいさのあまりつがってしまったと?
♥ 地球を訪れたエンジニアが我が身を犠牲にして生命をもたらしたように、デヴィッドも自分を犠牲にしてビッグチャップを産み出したんじゃないかというんだけど‥‥

♣ その理論には重大な欠陥があるよ。デヴィッドは「機械の体」じゃなくてメカなんかどこにもないもんね。だったらあのメカはどこから来たの?
♦ 『ターミネーター』かなんかと混同してるんじゃないの。アンドロイドの「中味」は何度も見せられているのに。
♥ デヴィッドは環境に優しい有機質の生体アンドロイドだもんね。
♣ それにデヴィッドのDNAってどこにあるの?
♠ とにかくこの手の考察って、SF知らない人の考え方ってこうなのかとあきれるようなのばっかりで、ひとつも信憑性がないんだよな。作り手もだけど。
♦ とりあえず、「ゼノモーフはどこから来たか?」という問に対しては、エンジニアが生物兵器として作った人工生命体で、それをデヴィッドが改造したということで間違いないね?

♦ あと残るのはスペース・ジョッキー(『エイリアン』のLV426惑星で発見された宇宙船で死んでいたパイロットに付けられた愛称)の謎
♣ これは初代『エイリアン』を見たときからずーっと考え続けてきた謎。とりあえずこのプリクエルで、あれはエンジニアだったことと、チェストバスターに殺されたことだけはわかったけど、彼(彼女)が何のために、どこから来て、なんであそこにいたのかは謎のまま
♠ 漠然とだけど私が想像していたのは、彼は種族の最後の生き残りで、仲間がやられたあと一人だけ必死で船に乗って脱出したんだけど、自分もエイリアンに寄生されていて、あそこまで飛んできて力尽き、乗っていたエイリアンはあそこで卵を産んで休眠状態に入っていたのではと。

♥ でもそのためにはまたエンジニアに登場してもらわないとね。
♦ それは当然でしょ。デヴィッドが滅ぼしたのがエンジニアのすべてとは考えられない。あれだけいろんなところに種をまいて歩いた種族が、ひとつの星にとどまっているとは思えないし。
♠ ただねえ、だとしたらエンジニアと人類が今まで遭遇しなかったというのがおかしいのよ。人類もあっちこっちに植民して版図を広げているようだし。まして地球はエンジニアが育てた惑星。その後の様子を見に来たりはしてないのか?
♥ 来てたじゃん。だから原始人の壁画に残ってたわけで。
♣ だから私はエンジニアはその後なんらかの理由で絶滅したと思ってた。つまり古代に死滅した種族だと。だから、『コヴェナント』で第4惑星を見て「ええーっ!」となったんだけど。
♥ それは上に書いたようにエンジニアそのものじゃなくて、「子供たち」だと思えば問題ないじゃない?
♠ だったらスペース・ジョッキーもエンジニア自身でなくてもいいんだよね。

♦ エンジニアの母星はゼノモーフによって死滅したけど、かろうじて逃れた人々がゼノモーフ討伐隊みたいなのを作ってゼノモーフ狩りに従事していたというのはどう? おもしろそうじゃない?
♥ それはいいけど、エンジニアが地球も滅ぼそうとしていたのはなんだったんだよ?
♠ だからそれはデヴィッドが言ってるだけでなんの証拠もないし。
♣ 結局手がかりが少なすぎるうえに、話があっちゃこっちゃ行くのでわからないのよね。

♥ エンジニアが地球にまいた黒い液体とデヴィッドが第4惑星でまいたのは同じものじゃないかと思うんだけど、なんで前者は人間が生まれて、後者からはゼノモーフが生まれたかはまだわからない。
♠ だから人類は失敗作だったんだよ。それでエンジニアやその意を汲んだデヴィッドは人類を滅ぼそうとして、ゼノモーフこそは「星を継ぐもの」であったと。
♦ だいたいそのあたりに落ち着きそうな気がするな。

♦ たぶん次作が(作られるとすれば)最後になると思うけど、当然、『エイリアン』につなげて終わるんだよね。
♥ ということは最後にリプリー登場!
♠ それはいくらなんでも無理っしょ。
♣ そうでもないんだな。リドリーの監督作じゃないけど、『ブレードランナー2049』でレイチェルを復活させた技術(別の役者の顔だけをオリジナルのショーン・ヤングの若いころに差し替えていた)を用いれば。
♦ なんかちょっと屈辱じゃない? シガニー的には。

♥ そんなことないよ! 私はエイリアン映画はすべて例の地球への通信で終わらないといけないと考えているんで、最後の通信(「アイム誰それ、ローン・サヴァイヴァー・オブ・なんちゃら号」ってやつ)を誰がやるかがいちばん気になってるんだ。その最後の一人が誰かと言えば、エレン・リプリー以外にありえないでしょ!
♦ だから『エイリアン』のエンディングがそれだったじゃない。そこにつなげたいなら、あのフィルムをそのまま挿入すればいい。
♠ 私はデヴィッドがそれをやることになるだろうと思っていたんだけど、それはここでやっちゃったからなあ。
♣ 私はやっぱり前の章で書いた

♠ そして宇宙は気の狂ったロボットひとりだけになる。”In space, no one can hear you scream.”
♦ そして漆黒の虚空で叫び声をあげるデヴィッドの姿が‥‥

♣ というのがかっこいいと思うな。

♠ とにかくリプリーは何らかの形で出してほしいと思うけど、たとえばラストシーンでノストロモ号に乗り込むリプリーを後ろ姿だけ見せるのでもいいと思うな。
♥ なんでもいいよ、もう! キャサリン・ウォーターストンがヒロインとして終わるんでさえなければ
♠ もうこのプリクエルの主役はデヴィッドで決まったから、その心配はないと思うな。
♦ というわけで、まだまだ結論は出ない、続編の行方が気になる映画でした。

The End

『エイリアン コヴェナント』がやっと完成した記念に、38年前に書いた『ブレードランナー』のリビューをアップしました。ルトガー・ハウアー追悼も兼ねて、ついでに原作の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の分析にもなってます。

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