【身辺雑記】大学教員がコロナで死にそうになったわけ

(これでも思い切りオブラートに包んで書いてます。つまり大学や教員や学生の悪口は書いてません。それ抜きでもここまで大変だったという話)

というわけで、ご存知の通り、今年は大学はすべて遠隔授業になった。
それだけならまだいいが、そのための支援は何ひとつ得られない状況で、初めてさわる授業システムの使い方を覚え、遠隔なんてまったく予想もせずに選んだテキストで、資料を集め、授業を作って毎週アップロードしなくてはならなくなった。

普通、ビジネスアプリひとつ覚えるんでも私なんか何か月もかかるのに、この授業システムというやつがありえないほどわかりにくくできていて、とにかく最初は出席の取り方、メールの送受信の方法、ファイルのアップロードの方法、試験やレポートやディスカッションやアンケートの出題方法と、それのダウンロードの仕方、そういうのをすべて暗中模索の試行錯誤で泣きそうになりながら覚えないとならなかった。
マニュアル? あー、そんなものは読んでもむだ。なぜか大学関係の書類はすべて何が書いてあるかわからないようにできているので。そもそもそれ以前に、そのシステムとやらがどこにあって、どこからどのIDとパスワードでログインするのかもわからず、必死で探し回った。

しかもそれが大学ごとに(日大なんか学部ごとに)すべて違う方式なのである。必死で覚えて授業を作っても、他大学のをやっているうちにまたすべて忘れて、翌週はまた一から調べ直してやり直し。自分で簡易マニュアルを作ったが、そんなもの書いてる時間もない。
しかもそのシステム自体があわてて作った間に合わせか、これほど大量のアクセスが集中するのは予期してなかったみたいで、しょっちゅうダウンしたりフリーズしたり、ファイルひとつアップロードするのに30分とかかかった。それを一度に5本とか6本とかアップしないとならないのに!
これは何か新しい拷問方法かと思った。(アップロード・ダウンロードが遅いのはうちのPCがボロかったせいもあった)

ほかにも、GoogleClassroomを使っていた大学があるんだが、Googleは実に性格がいいことにMicrosoft製品を使いにくくしてあるということを知らず(まったく使えないわけでもないのが、いやらしい)、WordやPowerPointで作ったファイルをアップロードしたら、学生から読めないとかダウンロードできないとか書き込めないという苦情が来て、原因がわかるまですごい大変だった。
まあMicrosoftがやってきたことも同じですけどね。おかげで昔からアンチMicrosoftで、ワープロは一太郎、表計算は1-2-3とかいう私(もう大昔のことです。さすがに今は使ってない)はさんざん苦しめられたけど。

あとやっぱりGoogleClassroomは私がメインに使っているFirefoxでは使いにくく、仕方なくChromeに切り替えたんだが、Chromeの使い方がまた慣れていないのでとまどうことばかり。
いや、ClassroomとかChromeの使い方なら、ネットで検索すればいくらでもハウツー記事が出てくるのは知ってるよ。だけどこちらは明日の授業を作るのにもうあと2時間しかないとかいう状況で、のんきに調べてる余裕なんてないわけよ。ひとつ作ったらまたすぐ次の授業に取り掛からないとならないし。

それで誰でも知ってると思うが、パソコンやネットってほんのちょっとしたことでつまずくと、(マニュアルや解説サイトを見ても)その原因究明と解決に3時間とか平気でかかるのだ。おかげで寝るのが5時6時になる日もしばしば。

というかそのWordとPowerPoint自体、実を言うと私は使うのは初めてなんだけどね(笑)。
私はもうものを書くのはHTMLか下書き用のメモ帳しか使わない(し、それ以外のアプリを持っていない)ので、これまではせいぜい大学に提出する書類に記入するのにOpenOfficeぐらいしか使ったことがなかった。
でも遠隔授業で必要だからと一夜漬けで必死で覚えたのに(幸いOfficeは大学に買ってもらった)、その上GoogleドキュメントだかGoogleエクセルだかなんだか知らないが、見たことも聞いたこともないアプリの使い方まで覚えていられるか!

ソフトウェアだけでもこの始末なのに、おまけにハードはすべて自分持ちで大学からはなんの支援もアドバイスもない。うちのパソコンにはマイクもカメラもなくて、何を買ったらいいのかもわからず、おまけにこの時期、在宅ワーク向けの機材はすべて売り切れで、なんとか使える環境を整えるだけでも一苦労。

さすがにパソコンが壊れたときは、代替のノートを貸してもらえたけどね。
ただ、これもすごい低スペックなので、授業作りには少なくともブラウザとパワポとアクロバットとメディアプレイヤーと画像加工ソフトぐらいは同時に立ち上げないとできないのに、そんなことするとたちまちフリーズする。前のパソコンは非力だと思ってたけど、それでも事務用のPCよりはずいぶんましだったんだなあと感心したりして。

あと、教科書もひどかった。これは私の手落ちもあったのだが、注文した教科書の出版社がなんとこの春に倒産して急遽教科書選びからやり直さなくてはならないこともあれば、遠隔だから当然紙の本ではなくデジタルでほしいのに、くれないところや、PDFはだめだが動画ならOKというところや、リスニングとかの音声を吹き込んだCDは教師用しかなくて、学生にはくれないところや、PDFをくれるところも一社ずつこちらから請求してパスワードだの念書の提出だのなんだの著作権問題でめちゃくちゃうるさかったりで大わらわだった。

おかげでパソコン移行に使う予定の春休みはすべてつぶれ、授業が始まったと思ったら、朝から晩までパソコンの前に釘付けで、買い替えどころじゃなくなってしまったわけ。

しかしひどかった。「コロナでゲーム浸りのはずが‥‥」にもちょっと書いたが、私は時給で給料をもらっているわけ。その時給だってパートに毛が生えた程度で30年間据え置きだが。
私は主に音声入りのパワポ(+Word、+Acrobat、+Googleなんちゃら)で授業をやったのだが、普通なら90分しゃべって終わりのところ、今年はその90分の授業を文章に書き起こして、著作権フリーの資料や素材を探し回り、写真とかビデオとか入れてファイル作って、レイアウトとかデザインとかフォントとかいじって、音声を吹き込んで、課題を読んで採点するのに朝から晩まで働いて丸一日かかる。
それもかなりいい加減に手抜きをして。なんで手抜きかというと、私は7クラス持っていて、1週間は7日しかないので、手を抜かないと回らなくなるから。なんと1時間分の給料で1日中働かされていたわけ。それを1年間ってやっぱり奴隷労働でしょ。
仕事がつらいつらいと思っていたけど、それは足のせいで通勤がつらいだけで、しゃべるだけなら私は半分寝ながらだってできるのに!

でも遠隔授業がこんなに大変なのは私がIT音痴でドジでのろまだからだと思っていたが、ほかの先生と話してみたらみんな同じことで悩んでた。
というか、大学教員には年寄りが多く、(特に文系は)本当の機械音痴という人もいて、いまだにパソコンも携帯もメールもNGだから連絡は手紙でという人もいるのに、そういう人はどうしているんだろ? 私はこれでもパソコン歴とインターネット歴だけは人一倍長いからね。私が話した先生も技術的なことはさっぱりみたいだったし。

答は「辞めた」。専任はともかく、非常勤はこれで辞めた人多数みたい。
私も音を上げて、足のこともあるし年だし体力的にももう限界なので、後期はやめさせてもらいたいと夏前に申し出たのだが、ものすごい勢いで慰留されて辞めるにやめられなくなってしまった。学期の途中でもなんとかもう少し多く持ってもらえないかと打診されたし、どうやら人がいなくて大変みたい。
そりゃそうだよねえ。こんな割の合わない仕事引き受ける人いないよ。たかが安時給の非常勤とはいえ、採用の時だけはものすごい高いスペックを要求するから、おいそれと新しく雇うわけにもいかないし。これが何年か続いたら、つぶれるところ増えるんじゃないか?

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