★【映画評】私がオカルト映画を嫌いなわけ インシディアス(2010)Insidious

insidious3(いちおうお化けの写真あります。どっちかというと爆笑ものですけど。あともちろんネタバレありです。ネタバレ見て客が減ってもどうでもいい映画ですけど)

♣ しかし、オカルトというと付きものの降霊会だけど、これほどひどいというかかっこ悪いのは初めて見たわ。
♠ 霊媒のおばさんが年代物のガスマスク付けてて、その口から伸びたホースが、なぜか助手の男の耳に!(笑) 糸電話かよ!

Director:

James Wan

Writer:

Leigh Whannell

♠ 前の『死霊館』で「監督のジェームズ・ワンはこれの前にも『インシディアス』というお化け屋敷ものを撮ってて‥‥」なんて書いてたが、こっちも録画してたのに気付かなかった。セットでやったんだな。というわけで本当はこっちの方が先なんだが、見る順序が逆になってしまった。
♣ 少なくともこっちは実話とは銘打ってないからましでしょ。
♠ それがそうとも言えないんだな。こっちはこっちですごいぜ。

♣ しかしこのタイトル、意味がわかりませんね。映画会社は単純な原題に長ったらしい邦題付けたりするのに、『インシディアス』でわかる日本人がどれだけいると思ってるんだろ
♠ 英語がわかっても意味わからんよ。Insidiousって「狡猾な」とか「陰険な」って意味だよね。それと映画の内容とどういう関係があるの? 誰が陰険なんだ?
♣ さあー? ワンワード・タイトルは向こうの流行りだけど、もう単語が使い尽くされて他にないんじゃないの?
♠ そういや、“The Conjuring”というタイトルも意味不明すぎる。魔法とか手品のことだろ。あれってエクソシズムの話なのに。
♣ もしかしてウォーレン夫妻のやってたことはただの手品というネタバレなんでは?
♠ まじかよ! そしたらちょっと見直すんだが。
♣ 『死霊館』という邦題もひどいですね。死霊関係ないし。お化け屋敷ものでもなかったし。
♠ 「資料館」か「史料館」のダジャレだし

♣ というわけで、今回は実話じゃないんだけど‥‥
♠ 『死霊館』のエド・ウォーレンが出てるー!
♣ と思ったら、別人の役なんだけど、またパトリック・ウィルソンが主人公なんですよね。今回は被害者側のお父さんだけど。
♠ 混乱するじゃないか! ホラーってのは毎度同じ役者を使わなきゃいけない決まりでもあるのか?
♣ 決まりじゃないけど、ホラーの常連役者っているよね。ここのおばさんコンビ、リン・シェイ(ヒドゥン)とバーバラ・ハーシー(エンティティー)なんてまさにそんな感じだし。
♠ 道理で見たことのある顔ばっかりだと。
♣ 一目でわかるホラー顔だなあ、二人とも。お化けよりこのおばさんたちの方が怖い。
♠ むしろこの二人が主役なら喜んで見たのに、クソみたいな役柄だし。
♣ パトリック・ウィルソンは?
♠ すごい嫌い。人畜無害な顔して、つるっと取り澄ました感じの顔つきなところが。
♣ それは前の役柄が嫌すぎたからでは?
♠ これも相当ひどい男だよ。
♣ 奥さん(ローズ・バーン)はきれいなのにね。

♣ 『死霊館』は家庭の主婦に悪魔が取り憑く話だったけど、こっちは幸福な家庭の子供が突然、原因不明の昏睡状態になり、霊能者を呼んで見てもらったら、幽体離脱した男の子がこっち側に戻れなくなっているのだと聞いて、お父さんが助けに行く話。これはジャンル的にはなんだ? オカルト系?
♠ どっちにしろ私の嫌いなタイプだなあ。霊能者とか出てくる時点で。
♣ 『ポルターガイスト』系かも。あれとほとんどいっしょだから。
♠ そんな話掃いて捨てるほどあるよ。特に消えた子供を親が「向こう側」へ探しに行く話なんて、スティーヴン・キングだけでも10本ぐらいある感じ
♣ とにかく何から何までステレオタイプなんで、そこも『死霊館』と似てる気がした。『死霊館』は昔の話だからレトロな感じなんだけど、これもそうだよね。とても現代の話とは思えない。
♠ オカルト業界なんて、19世紀から変わってないのよ。

間違いだらけの降霊会。さあ、間違いを探してみよう!

間違いだらけの降霊会。さあ、間違いを探してみよう!

♣ しかし、オカルトというと付きものの降霊会だけど、これほどひどいというかかっこ悪いのは初めて見たわ。
♠ 霊媒のおばさんが年代物のガスマスク付けてて、その口から伸びたホースが、なぜか助手の男の耳に!(笑) 糸電話かよ!
♣ もう何がなんだかわからないよ。これ、完全に笑いを取りに来てるよね? ホラーじゃなくてギャグだよね?
♠ ていうか、この助手のデコボココンビがもう完全に漫才師みたいだし。
♣ なんかもうこれだけで脱力しきって、ちゃんと見る気を失ったよ。
♠ 仮に霊がいたとしても、私が霊ならこいつら見ただけで出てくる気なくす。

♠ それでも私は息子の救出に行くシーンは、ほんのわずか期待しちゃったじゃないか。異世界を見るのが好きなんで。
♣ ここまで見てて期待する方がどうかしている。
♠ そうなんだけどさ。ところが実際は異世界どころか「向こう側」は前に住んでた家の中。そこにいるお化けはこんなの。

ただの化粧の濃いお姉さん

ただの化粧の濃いお姉さんに見えますが、これでも悪霊です。

♣ 単なる化粧の濃い女じゃないさ! もしかしてこの映画って超低予算?
♠ それは確実だけど、それでもなお、こんなもの金取って見せる神経がわからん!
♣ なんかこういう人よくいるよね。前に私が嫌いだと書いた、社交ダンスとかフィギュアスケートとかシンクロナイズドスイミング見てるとよくいる。この引きつった笑い方もまんまだし。
♠ ていうか、こういう女、最近は町歩いててもよくいるわ。ついでに言うと、ネットで「怖い絵」としてよく引用される、目が真っ黒な女の子の絵あるじゃない。あれも普通にそこいらにいるよね? ネットには写真はいくらもあるけど、さすがに中傷になりそうでここでは引用できないが。
♣ でかすぎるカラーコンタクト付けて、目のまわり黒々と塗った女の子ね。
♠ 以前に学生がらみで、ああいう化粧した女は近くで見ると怖いし気持ち悪いって書いたけど、でもああいうのが流行るのは男が好きだからだろ? いったい怖いのか好きなのかはっきりしてほしい。どっちにしろ趣味悪いとしか思わないけど。

♣ 話がそれたけど、ずっこけはとどまるところを知らないというか、あっちへ行っても納得できないことばかりです。悪魔(?)から息子を取り戻さなきゃならないので、どんな戦いが待っているのかと思ったら、かんたんに逃がしてくれるし。
♠ だって悪魔といってもこんなお調子者だもん。

主人公と悪魔のツーショット

うしろ、うしろ!

♣ 信じようと信じまいと、これがこの映画のハイライトっていうか、いちばん有名なシーンですからね。誰かがハロウィンの扮装でふざけてるわけじゃないですからね。
♠ この映画の幽霊のおもしろいところは白昼、平気で出てくるところだって言われるけれど、あまりにも普通に出てきすぎて、怖いとかそういうレベルじゃなくて、ふざけてるの?としか思わないあたりが‥‥ああ、だんだん頭痛くなってきた。
♣ 出てきても、ただそこにいるだけで何も悪さするわけでもないしね。

♠ 結局この映画で私がいちばん怖かったのは、男の子がいきなり昏睡状態になるところだよ。家族が突然重い病気になるというのは現実にもある恐怖だし。
♣ うん、お化けは思い切りふざけてるのに、寝たきりになった息子をひとりで介護しなきゃならない母親の苦悩とかはめちゃくちゃリアルに描いているので、そっちのほうがよっぽど怖い。
♠ それでピリピリしてる妻にビビったのか、無責任な夫は口実付けてなかなか帰ってこないので、さらに妻が切れるとか、そんな描写もすげーリアルだし嫌すぎるわ。
♣ 最初にどうしようもないダメ男として描かれてるから、子供助けたぐらいじゃ許す気になれないのよね。ラストもベッタベタだったし。

♠ とにかく、『死霊館』は嫌悪が先に立ってしまったけど、こっちはどんなに好意的に見ても、箸にも棒にもかからないホラーとしか。
♣ ホラー要素も音で驚かすだけ。SFXとかまったく使わず、ビジュアルは全滅。なんかひとつぐらいいいところないの?
♠ うーん‥‥家がきれいだった。最初の家も引っ越し先も、いかにも住み心地の良さそうな、センスのあるインテリアだなと。
♣ ホラーと関係ないやん!

♠ おかしいなあ。ジェームズ・ワンってこんなダメな監督とは思わなかった。くどいようだが、『SAW』は良かったのに。
♣ そう思って過去のリビュー読み返してみたんだけどさ、『SAW』ってそもそもジェームズ・ワンが手を引いた2以降のほうがおもしろくなかった? 1は単なる『セブン』のパクりで。
♠ そう言えばそんな気がしてきた。なんだよ、だまされた!
♣ それでもこの映画はヒットしたみたいで、続編も作られてるんだよね。
♠ こんなのおもしろいと思う人がいるってことのほうが、私にはオカルトだわ。