【映画評】ブラック・ダリア (2006) The Black Dahlia

いちおうミステリなので、あえてネタバレはなしです。あの有名な死体写真も(本物も作り物も)あえて載せてません。でも死体切断についての話はあります。

Black-Dahlia1ブラック・ダリア(実物)もそうなりたかったんだけどなれなかったんだな。別の意味で後世に名と顔を残しちゃったけど。

Director:

Brian De Palma

Writers:

Josh Friedman (screenplay), James Ellroy (novel)

♦ ‥‥神戸の少女がバラバラ死体で発見された日にこういうのを書くのはちょっと気が引けるんだけど。(いつものことですが、書き始めた日付とアップロード日にはかなりの開きがあります)
♠ それだけよくあることなんで、そんなこと気にしてたらこんな映画撮れないし見れない。
♦ それはそうかもしれないけど、なんかなー。
♠ こんなのただの映画評なんだから、変に気を遣わずちゃっちゃと片付けましょう。
♦ それじゃあ‥‥これは1947年にアメリカで起こった猟奇殺人事件を元に、ジェイムズ・エルロイが書いた小説を原作に、ブライアン・デ・パルマが撮った映画。「ブラック・ダリア」はその殺された被害者の女性のあだ名。あとはこういうのに詳しい♠さん、どうぞ。
♠ 私が好き、じゃなかった興味あるのはシリアル・キラーで、別にこの事件には関心なかったし、よく知らないんだけど。犯人捕まってないしね。
♦ 未解決事件だからこそ、こうやって後世の憶測を呼ぶんでしょ。「切り裂きジャック」みたいに。
♠ まあ、犯人に関してはなんとでも言えるからねえ。後世の奴らが勝手気ままなことを言う、そういううさん臭さがあるんで未解決事件って好きじゃないんだ。私は同じ実録犯罪映画でも、犯人の異常性や心理をじっくり掘り下げていくようなのが好き。
♦ それはこれにもいちおうあるんだけど、そこにはあまり主眼を置いてなかったかも。

♠ 「ブラック・ダリア」がなんで有名になったかというと、殺され方の異常性なんだ。殺人関係の本読んだことがあるなら、あの死体写真は忘れられないはず。宣伝も「世界一有名な死体」とかあおってたしね。
♦ あー、もうそういうグロい話はやめにして。
♠ それが不思議とグロくないんだよ。異次元過ぎて。白昼の光の中、全裸の若い女性が草むらの上に仰向けに倒れてるんだけど、へそのあたりで胴体が真っ二つに切断されていて、口が耳まで切り裂かれているの。
♦ 十分グロいです。
♠ だけど全身真っ白で血は一滴も流れていないので、人間じゃなくて壊れたマネキンみたいなんだよ。写真では見えない部分の話は本当にグロいのでやめておくけど。あれ見ると、私はいつもマルセル・デュシャンのオブジェ『(1)落下する水、(2)照明用ガス、が与えられたとせよ』を思い出すんだ。
♦ しかしあれ、ほぼそのまま映像で再現して見せたね。死体は見せないかと思ったけど。
♠ だって不謹慎な言い方だけど、この事件のアイコンだもの。見せないわけにいかないでしょ。でも上手に撮ったと思うよ。本物そっくりだけどきれいに撮った、というと変だけど、見てあんまり不快感がないように見せた。
♦ 普通の人には十分不快だと思います。
♠ しかし皮肉なことに、実物の写真を見すぎているから、あれが出てくると、まるで有名な写真の活人画を見ているような気がしてしまう。殺人マニアにとっては『モナリザ』が出てくるようなもので。あ、活人画じゃなくて死人画か。
♦ あー、やっぱり♠にこんな映画語らせるんじゃなかった! ほんとに変態だと思われる!
♠ 今さら何を(笑)。

Black-Dahlia2

さすがの私も死体写真は載せたくないので、美しいスカーレット・ヨハンソンの写真でもどうぞ。ちなみに彼女は殺人事件とは何も関係のないオリジナル・キャラです。

♦ で、やっぱりこれを見ようと思ったのは猟奇殺人が見れるから?
♠ いや、テレビだから見たけど、お金払ってこんな気色悪い話見る気はなかったよ。
♦ 言うことが矛盾しているような気がする。
♠ そもそもブライアン・デ・パルマじゃなかったら見なかった。
♦ デ・パルマねえ。なんかもう過去の人だと思ってたけど。
♠ うん、でも猟奇殺人は彼の十八番だし、原点に帰ったみたいな批評もどこかで見たので、確かめてみたくなって。

♦ で、結論は?
♠ そうあせるなって。でも結論を先に言っちゃうと、これはデ・パルマ・ファンにはけっこうたまらない映画。これぞデ・パルマって感じの映像のオンパレードだから。
♦ 全体はフィルム・ノワールを意識したダークなトーンなんだけどね。
♠ でもデ・パルマならではのケレン味のある演出とかカメラとか、知ってる人なら「やってるやってる!」と思ってニンマリできる。
♦ そのせいか、レビューも真っ二つに分かれてたね。
♠ それってシャレ? 人のこと変態とか言っといて。
♦ ただの言葉のあやだ! 一般の映画ファンは「暗い。つまんない」という感じで、マニアは「さすがデ・パルマ!」と絶賛するという。
♠ それが正常な反応だと思う。

♦ でも見てて思ったけど、さすがこれだけ長い間一線でやってる人は、やっぱりうまいなと。
♠ 最近、ハリウッドもほんとクソみたいなガキに作らせたクソみたいな映画よく作ってるからな。
♦ スコセッシなんかいくら駄作作っても、『タクシードライバー』だけあれば神って感じだけど、何かにつけてバカにされるデ・パルマだって、もう十分巨匠の域に達したよね。
♠ 私は『キャリー』は『タクシードライバー』にひけをとらないと思うけどね。
♦ ああいう「社会派」じゃなくてホラーだったから下に見られがちなのかも。
♠ だいたい、バカにしてるのは私らだけなんじゃない? もともと映画的テクニックに関しては定評があったんだし。ヒッチコックの再来とまでは言わないが、かなり共通点あったし。
♦ そうなんだよね。久々にこれ見て思い出したわ。ただそれがやり過ぎっていうか、まさに外連(けれん)の人で、これ見よがしでしつこいから笑ってたけど、なんか年取ってくるとそれも名人芸の一種かなと(笑)。

♦ よって映像やカメラはマル。ただストーリーは‥‥
♠ ストーリーのアラはおそらく原作のジェイムズ・エルロイのせいだから、デ・パルマさんを責めないで。
♦ 原作が小説だからいちおう筋立てはしっかりしてる。若い刑事2人の友情物語と三角関係をからませたのもいいし、いちおう「真犯人」探しのどんでん返しも用意されてるんだが‥‥
♠ あまり納得できないしおもしろくないね。特に真犯人捜しの部分は。
♦ しかしもうちょっとなんとかならなかったのかね。被害者のエリザベス・ショートは女優志望だったということで、映画業界との関係も取り沙汰されてたし、私はてっきり映画関係者がからんでくるんだと思ってたよ。
♠ 「映画」は撮ってたけどねえ。
♦ なんかものすごい陳腐な結末になっちゃって、せっかくそこまで積み上げてきたものがバラバラと崩れ落ちた感じ。
♠ だからそれは原作小説の責任だって。

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妖艶(?)なヒラリー・スワンク。私はけっこう好みですけどね。

♦ ヒラリー・スワンクの悪女もあまりにステレオタイプで、おまけにガラじゃないので苦笑もの。大富豪のわがまま娘で、しかもセックス・マニアックのヴァンプって‥‥
♠ ミスキャスト‥‥なのかなあ。ああいう人は見ようによってはすごくエロいんだが。
♦ だからそれがやり過ぎで臭いからバカにされるのよ、デ・パルマの演出は。
♠ スカーレット・ヨハンソンに地味で家庭的で清純な恋人役をやらせるのも、だめってわけじゃないんだけど、なんか浮いてるし。きれいなことは確かにきれいだったけど。
♦ むしろこの配役は逆でも良かったかも。やっぱり悪女は美人の方がいい。

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まともなほうのフィオナ・ショウ。これが狂うとどうなるかは自分の目でお確かめください。ちなみに彼女はヒラリーのお母さん役ね。

♠ それで最後はフィオナ・ショウのキチガイ演技にすべて持って行かれるという(笑)。
♦ 笑わないでよ。C.B.E.持ってる由緒ある英国女優よ。
♠ いや、だからそういう演技力がむちゃくちゃ高い人がこういう演技やるとやりすぎになっちゃうのよ。
♦ まあ、良くも悪くもフィオナ・ショウの映画だったね(笑)。

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ジョシュ・ハートネットとアーロン・エッカート。どっちも大変ハンサムだが’どっちがどっちだか覚えてない。

♠ 男性陣についても一言いってあげてください。
♦ ジョシュ・ハートネットとアーロン・エッカートはすごいがんばったと思うよ。
♠ 悪くはないけど、なーんかB級ホラーの主人公みたいな顔してるんだよな、2人とも。モンスターの方じゃなくて、ヒーローの方だけど。
♦ 量産型ヒーロー顔と名付けよう(笑)。
♠ 言えてるかも。
♦ こういう人たちを見てると、ヒース・レジャーとかがもてはやされた理由がわかるよ。つまりハリウッドでは、このレベルの美男でガタイが良くて芝居もできる人は掃いて捨てるほどいるわけよ。その中で抜きんでるためには、オーラというかヘイローというか、ある種の輝きがなくちゃならない。ヒースには確かにその輝きがあったもの。
♠ 確かにヒラリー・スワンクやフィオナ・ショウは、美人じゃなくてもその輝きがあるよね。この映画じゃ女性陣のほうが目立ってしまうのも当然か。
♠ ブラック・ダリア(実物)もそうなりたかったんだけどなれなかったんだな。別の意味で後世に名と顔を残しちゃったけど。

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